銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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連載する予定はないんじゃなかったのかって?
HAHAHA気分がノってしまったからうっかり書き進めてしまったのSA!!


EPISODE Ⅰ 新たなる人生
1.だいたい全部フォースのせい


 私の名前はアヴタス・イーダ。銀河共和国の平和と正義の守護者、ジェダイの騎士である。

 

 ……だった、はずなのだが。

 

 一度ジェダイとして戦死した私はどういう導きか、最後にいたジェダイテンプルとは似ても似つかぬ場所に寝かされていた。それも赤ん坊として、である。何が何だかわからない。

 

 主観的には、首をはねられて意識がプツリと途切れたあと、意識が戻ってきたと思ったら赤ん坊になっていたという感じだ。うん、やはり何が何だかわからない。

 

 最大の謎は、赤ん坊の身体にもかかわらず、私にアヴタスとしての意識と記憶があったことである。赤ん坊の小さな脳機能では、いくらフォースの申し子であってもそんなことはあり得ないだろうに。

 

 しかし、かような偶然があるとは思わない。これもフォースの導きか、試練なのだろうと納得し、私はひとまず未知の言語の習得に励むこととした。

 

 そう、未知の言語である。ジェダイナイトとしての私の仕事は、主に公文書館での情報処理であった。ゆえにコルサントから離れる任務はそこまで経験がないのだが、それでも嗜みとして主要な惑星の言語は習得していた。

 

 その私でもまったく見聞きしたことのない言語が、ここでは使われているのだ。つまり私の現在地は、コルサントどころかコアワールド(銀河共和国の中心地域)ですらないということになる。いずれコルサントに戻り、シスとの戦いに馳せ参じるにはそれなりに苦労がかかりそうではあるが、ともあれ言語を身につけなければどうにもならない。知覚生命の社会でそれは必須の要件だ。

 

 というわけで、暇な赤ん坊の時間を総動員して、言語の習得に努めた。私とてジェダイである。今さら新しい言語を一つ覚える程度は、わけもない。

 

 具体的な日数を数えていたわけではないし、この星の一日、一年が標準時間とどれほどの差があるかはまだわからないが、ともあれつかまり立ちができる頃までには概ね理解ができるまでになった。会話は……身体機能が未熟なため、まだ舌がうまく回らないが。

 

 そうしてまた、新しい一日が始まる。

 

「おはよう理波(ことは)、今日もいい天気だぞぅ。ほーら」

「あい、ちちうえ、おはようごじゃいましゅ」

「ん~~~~! いい子だー、今日もうちの子が死ぬほど可愛い……!」

 

 この頃の私の一日は、マスター・ウィンドゥのような頭の男の挨拶から始まる。彼が私の今の父親である。

 名はジュユー。もしくはシゲオだ。どちらが正しいのかはわからないが、たまに訪れる、彼と同じく頭を丸めているものたちからは前者、私の今の母からは後者で呼ばれていることから、恐らく役名と本名というような関係なのだろう。

 とりあえず、私は彼に養われている身。言うなれば娘なので、シゲオと認識している。それにジュユーだと、フォーム7、ジュヨーと似ていて私が認識しづらいし。

 

 ……ああそうそう。言語の習得が一段落してから気がついたのだが、なぜか私の性別は女に変わっている。それについては別にどうでもいいのだが、そうなってくると私はアヴタス・イーダという人間の延長線にない可能性が高い。

 つまり赤ん坊に戻ったのではなく、赤ん坊に生まれ変わったというべき状況ということだ。あるいは、死した私の魂がフォースに導かれ、この身体に宿ったと言うべきか。

 

 これには参った。なぜって、前者ならまだいい。だがもし後者なのだとしたら、私はこの子の身体を乗っ取ってしまった可能性が高い。それはあまりにも申し訳ないではないか。

 

 しかし散々悩みはしたのだが、現状がそうなっていることは変えられない。共和国の最新技術であっても、過去には未だ戻れないのだ。もはや考えたところでどうにもならない。

 これもフォースの試練なのだろうが、たまにフォースは酷なことをする。ジェダイだった私はともかく、生まれたばかりのこの子に課す試練ではない。

 

 だからこそ、もしもこの子の意識が戻って来る日が来たら、そのときは潔く私は消えようと考え禊とすることにした。起こらない可能性ももちろんあるが、こういう可能性はしっかり考慮しておくべきだ。

 なので身体がより動くようになったら、毎日日記をつけてそのときに備えようと思う。それで何卒ご寛恕願いたい。

 

 ともかくそうしたわけで、私にはアヴタス・イーダとしての自認があったが、しかしそれを口にしたとて誰もわかりはしないだろうし。

 何よりいずれこの身体を、本来の持ち主に返すときが来る可能性を考慮し、私はひとまずアヴタスの名は封印することとした。そしてシゲオが三日かけて考えたという名前を、受け入れた。

 

 ゆえに、コトハ。私の今の名前はコトハである。以後、お見知りおきを。

 

 ……話がだいぶ逸れてしまった。そう、私の一日だ。

 私はシゲオに連れられて、一家の食卓に向かう。この星では一日三食が基本、かつ家族が揃って食事することが習慣らしい。

 

「おはようコトちゃん。今日も可愛いわよー!」

「あいがとー」

 

 シゲオと私を出迎えるのは、今の母である。こちらの名は、ヒロミ。シゲオをよく手伝う良き妻であり、彼同様、娘に対して底なしの愛を向ける良き母である。

 この二人と、私を加えた三人が、マスエ家の構成となる。私は長女というわけだ。

 

「はいコトちゃん、あーん」

「あー」

 

 食事の際は、ヒロミの介助が必要になる。いまだ幼すぎるこの身体は、あまり器用ではないのだ。

 アヴタスとしての意識で言えばもちろん抵抗感はあるのだが、授乳よりは良い。あれは凄まじい試練であった。詮索はご遠慮願いたいところだ。

 

 そういうわけで、私はヒロミに食事をもらう。いわゆる離乳食というやつだが、両親の食事は当然異なる。

 

 彼らは主に白い小さな粒の集合体を主食とし、白みがかったスープが高確率でつく。あとは、時々によって異なる主菜、日によっては副菜もプラスというラインナップだが、その様を見るにこの星の食文化はかなり豊かである。私は家の敷地内しかまだ知らないが、あまりテクノロジーが発達していないように見えるのに食事だけはコルサントの富裕層にも匹敵する。

 恐らくこの星は、生活水準の向上よりも美食を選んだ文明なのだろう。なんと平和な星だろう。素晴らしい(などというのは思い違いも甚だしかったのだが、当時の私はそう考えたのである)。いずれあれらを口にする日が楽しみである。

 

 さて、食後は基本的にヒロミの管轄下に置かれる。彼女は原始的なコンピューターを用いて、何やらデータの作成であったり連絡を取っていることが多い。あとは食材の調達であったり、家屋の清掃、財政の管理なども主に彼女の仕事である。

 

 一方シゲオはと言うと、家の敷地内にある大きな宗教施設(テラ、というらしい)の管理、それとその信者の対応が主な仕事だ。特に後者は重要らしく、彼はよく信者のために彼らの家まで出向き、何やら儀式を執り行っているとか。

 

 ……私は彼が休養日を設けているところをいまだ見たことがない。この星特有の宗教の指導者の一人なのだろうが、熱心なことである。ジェダイにたとえるなら、マスタークラスに値するほどの人物なのかもしれない。

 

 ともあれそういうわけで、両親は二人ともかなり多忙である。ゆえにこの時間を、私は修行に充てている。

 

 なんの、と言えばもちろんジェダイのである。新たな身体になったためか、フォースとの繋がりが途切れてしまっているのだ。かつて物心がつく前からフォースに親しんできた身としては、フォースを感じ取れないことへの違和感はあまりにも大きい。

 

 そういうわけで、少しでもフォースの濃い場所に陣取り(いまだ繋がりができていないので勘だが)、瞑想を行うのだが……。

 

「フォースがかんじられない」

 

 思わずつぶやいてしまう。

 

 瞑想は実のところ、言語の習得に並行して取り組んでいたのだが、一向にフォースと繋がる気配がない。

 やり方が悪いのかと思い、かつて私がどうやって繋がりを得たのか思い出そうとしたが……そもそも物心ついたときからジェダイテンプルにいたので、思い出しようがなかった。

 

 というか、ジェダイに属するフォースセンシティブ(フォースを知覚できるものたちの総称)たちは、みな幼子のうちに各地から連れてこられている。具体的には、生後六か月以内にだ。

 これは成人するにつれて怒りや憎しみを覚える機会が多くなり、ダークサイドへ堕ちる危険性が増すからだが……直近での例外は、とうに自我を確立していた年齢なのにパダワンとなったアナキンだけである。

 

 つまり、ほぼすべてのジェダイは物心ついたときからフォースとの繋がりを得ているのだ。それが当たり前となっていた。

 

 だから翻って今の私の状況を鑑みるに、

 

「……もしや、このからだには、ミディ=クロリアンがたりないのか?」

 

 なるべく考えないようにしていたが、どうもその可能性が高い気がする。

 

 ……フォースとは、生物の細胞内で共生している微生物、ミディ=クロリアンの多寡によって扱えるか否かが決まるものだ。一般的な人間の場合、一細胞内における含有値は平均して2500程度。

 しかしフォースとの繋がりを得るためには、5000程度は必要となる。私は……このコトハの身体は、それに及んでいない可能性が高いのではないだろうか?

 

「……こまる」

 

 だがそれは困る。私は赤ん坊になったが、ジェダイの騎士だったのだ。戦う機会の少ない任務が主ではあったし、そもそも決して優秀なフォースユーザー(フォースの使い手の総称)でもなかったが、それでも平和と正義の守護者であることに相応の誇りを持っていた。

 

 そのジェダイとしての最低要件を満たしていないようでは、いずれコルサントに戻りシスとの戦いに参じることができないではないか!

 この星のテクノロジーからして、惑星間航行を確立していない可能性は高いが、それでもジェダイとしての使命を果たす機会が来たら、いつでも殉ずることができるよう備えておくべきだというのに。

 

「……これもしれんか」

 

 いかん、心が乱れている。ジェダイたるもの、常に冷静でなければ。

 

 ……うむ。そもそもの話、一歳児というのは成長の余地が有り余っている存在だ。まだ私の身体は伸び代がある。私の中のミディ=クロリアンも、少しずつ増えていくに違いない。

 いずれ規定値に達したときのために、今はひたすら心を磨くときなのだろう。これはそういう試練なのだ。恐らく。




というわけで連載始めました。
元ジェダイのTS娘がジェダイを再興するためにヒロアカ時空の地球で戦うお話です。
スターウォーズ由来の単語や設定が、特にエピソード1は多くなると思うので、見たことのない方はご注意ください。
一応、可能な限り注釈は入れるつもりですが、話のテンポとか考えると入れたない場所だってあるし、何より作者自身がおおむね把握していることなので普通に入れ忘れたりもすると思うので・・・。

あ、それと。
今作はがっつりガールズラブさせる予定なので、苦手な方はご容赦ください。

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