銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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幕間 今は亡きものたちの集い

 時間は少し遡り、トガ・ヒミコの魂が現代から消えた直後のこと。

 それまでなぜか接触できないでいた息子たちから突然の呼びかけがあり、アナキン・スカイウォーカーは現世への出現をやめて宇宙に満ちるフォースへと還った。

 

 彼を待っていたのは、もちろんと言うべきか、呼びかけた本人である息子と娘。銀河の歴史に名高いジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカーと、圧政への抵抗者として民のために戦い続けた姫レイア・オーガナだ。亡くなったときの年齢の関係上、アナキンのほうが若く見えるのはご愛嬌である。

 

「……驚いたな。まさか本当に全員揃い踏みとは」

 

 だが、アナキンを待っていたのは子供たちだけではなかった。懐かしき師のオビ=ワン・ケノービと、銀河の数百年を見守った長老ヨーダの姿もあったのだ。

 いるとは聞いていたが、本当にいるとは思っていなかったアナキンは、彼らの姿を順繰りに見渡してはやや大げさに肩をすくめて見せた。一体何が? と言わんばかりに両手を開きながら。

 

「急に呼び出してすいません、父さん」

「別に気にしてなんかない。僕も薄々おかしいと思っていたからな。今回の件はそういうことだろう?」

 

 そしてルークの言葉に、アナキンは大体わかっていると言わんばかりに鼻を鳴らした。

 父親のどこか子供らしい態度に、ルークは苦笑する。隣のレイアに至っては、どうしようもないダメ親父を見る目でため息をついている。

 

 ただ、彼らはフォースで繋がっている。個を失ってはいないけれど、宇宙のフォースによって一つになっているもの同士。遠慮のないやり取りは足らない言葉であっても過不足なく伝わるからであり、どちらもそれを承知しているからこそ遠慮のないやり取りになっているだけだ。

 

 そんな前置きを挟んで、アナキンはルークたちに視線で問う。それで? という呼びかけに応じて、ルークも頷いた。

 

「既に分かっていると思うけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()。正確には僕たちの、だけど。今回はそのことを改めて共有するために、この場を設けたんだ」

「やっぱりか」

 

 そして放たれた衝撃的な言葉に、しかしアナキンが動じることはなかった。彼が口にした通り、おかしいと感じていたからだ。

 

 アナキンが最初に疑問を抱いたのは、爆豪に稽古をつけるため昔の記憶を思い返していたときである。

 

 アナキンにとって、フォースを語ろうとするなら必ずジェダイとシスの相克はついて回る話だ。中でも、暗黒卿ダース・シディアスのことは避けて通れない。

 もちろん、遠い昔遥か彼方の銀河系のことを爆豪に話すことはない。けれども、関連づいた事象を想起してしまうことはアナキンであっても避けられないことである。

 

 だからこそ、そんなふと何気なく思い浮かべた記憶に不自然な穴があることに、アナキンは気がついたのである。

 

 帝国が滅んだことや、その後釜にファーストオーダーという組織が座ったこと。

 そのファーストオーダーと、再建された新共和国の間で冷戦があったこと。

 ファーストオーダーの新兵器によって、新共和国が首都惑星ごと滅ぼされたこと……などなど。

 大まかな出来事……それこそ歴史年表の一文のようなことは覚えているのに、その細かい流れがほとんど思い出せないのだ。理波に説明したときはそんなこと思わなかったはずなのに。

 

 フォースが完全に均衡していると動けない――フォーススピリットが動くと少なからず銀河のフォースに影響が出る――ので、その時期の出来事にある程度抜けがあるのは仕方がない。しかしそうではないはずの時期のことですら、明らかに抜けがある。これはどう考えてもおかしいことだった。

 

 だからその辺りのことを深く思い返したアナキンは、奇妙なことに気がつく。

 それは新共和国とファーストオーダーにまつわる、そしてそれらの糸を引いていたシスの暗躍を解決に導いた人物と、それに関係した範囲だけがごっそりと抜けているということだ。その時代の出来事は見ていたはずなのに。その人物はアナキンにとっても関係が深いはずなのに。

 

 なのに、()()()()のことを歴史上の人物より少し詳しい程度にしか覚えていない。これ以上に奇妙なことはなかった。これに何も思わないほど、アナキンは間抜けではない。

 

 しかしそれについて確認しようとしても、息子も娘も一切反応を示さない。なので、致命的な状況でもないのだろうとも思っていた。

 だからこそ、アナキンは子供たちに無視されている状況を会話のネタにこそすれ、内心ではそこまで気にしてはいなかった。時が来れば、おのずとわかることだと割り切っていたからだ。良くも悪くも、フォースとはそういうものだと理解しているから。

 

 ただそうした感情の動きを、アナキンは理波たちには一切明らかにしてこなかった。自分だけの胸の内にしまうべきだと言う直感があったし、何よりもしスカイウォーカー家のゴタゴタか何かだった場合は知られたくなかったからだ。

 

 だが今このタイミングで呼び出されたということは、どうやらおかしなことになっている記憶は()()()()()()()()()()()()が関わっているのだろう。アナキンはそう推測を立てて、ここまで来たのだった。

 

「すいません、お父様。ですが、過去への移動とそれに伴う歴史改変の影響をなるべく減らすためには、そうするしかなかったのです」

「いいんだよ、どうせ過去の僕が了承したからこそこうなってるんだろう? レイアが謝ることじゃないさ」

 

 自分より年上の見た目をした娘の頭をなでて、アナキンは笑う。

 

「過去を変えたことによる影響で、未来と過去が相互に矛盾し合う。タイムパラドックスってやつだ。それを危惧したんだろう? ……そう、トガは過去に飛んだ」

「左様。しかしそれが、宇宙にどのような影響を及ぼすかは誰にもわからなんだ」

 

 ヨーダが応じる。緩やかに頷きながら、澄んだ瞳でアナキンを見ていた。

 

 次いでオビ=ワンも口を開く。

 

「かつて我々が生きていた時代、時空を超え過去に手を伸ばした人間が一人だけいる。エズラ・ブリッジャーという少年だ」

「ブリッジャー……ああ、あいつか。アソーカと一緒にいたことがあったから、覚えてる」

「そのブリッジャーだ。だが、彼が過去を変えたのかどうかは微妙なところでな」

「ブリッジャーが手を出さずとも、タノが死ぬことはなかった可能性が高いのじゃ。それはつまり、彼のしたことは時空的に意味がなかった可能性があるとも言える」

「つまり実際に過去を変えたとして、どんなことが起こるかは結局誰にもわからないままだと」

「うむ。しかしタノは、歴史を変えたことによる揺り戻しはある、と考えておったようじゃ」

 

 グランドマスター・ヨーダは語る。エズラ・ブリッジャーの手によって、過去改変が可能な場所に踏み込んだアソーカ・タノは、エズラが亡き恩人を救おうとすることをたしなめたのだと。

 

 エズラの恩人、ケイナン・ジャラスは仲間を助けるためにその命を散らした。そんな人間を死から助けた場合、代わりに誰かが死ぬことになるかもしれない。

 つまり、世界はあるべき姿からは外れることができない、と。

 

「アソーカの説は正しいかもしれないし、正しくないかもしれない。しかしそれを証明するわけにはいかない」

 

 その仮説を、オビ=ワンそう評した。

 

「タイムパラドックスの真実は、明らかになるべきではない。もしもいくらでも改変できるのだとしたら、それが世に広まってしまったら、それこそ何でもありになってしまう。しかし、遥か未来から来訪した人物が、帰る手段を持てないまま銀河に留まっていたことは間違いない事実だ」

「であれば、歴史改変はまず間違いなく起こる。わしもオビ=ワンも、それを強く予感した。もちろんそなたもじゃ、アナキン」

「その時点では僕もレイアもまだ生きていたから、そこまでは察知していなかったんです。レイやベンも同じくね。目の前のことに必死だった、ということもあるんだけど」

「けれど影響がどう出るかがわからなかったから、仮に影響が出たとしても最も影響が小さくなるだろう措置を施すことにした、ってわけだ。そうですね、ヨーダ?」

 

 三人の説明を受けて、アナキンは改めてヨーダへ問いかけた。

 返答は無言。しかしはっきりとした首肯を伴ってもいた。

 

 つまり彼らが採った手段は、改変の当事者と直接その影響を受けた範囲について忘れることで、時間転移前の当事者がいる時代でタイムパラドックスを起こしかねない言動を避けるためのもの。

 ()()が遡った時間が千年以上もの長きに渡るため、いつどこで誰に、あるいは何に、またどれくらい()()の影響が及ぶか誰にも予測できなかったからこその措置であった。

 

「絶対にそのことを、誰にもどこにも漏らさなければいいだろう、という意見もあったがのう」

「実に僕が言ってそうな意見ですね」

「実際お前が言ったよ。しかし、我々は既にフォースと合一した身。フォースとの繋がりによって、意図せず情報が流出する可能性はゼロではないと私やヨーダは考えたのだ」

「相変わらず用心深いお人たちだ」

「それも言われたな。だがルークやレイアも賛成に回ったことで、最終的に私たちの意見が通った」

「うーん、覚えていないけれどそのときの様子が目に浮かぶようだ」

 

 茶化すように言うアナキンだが、一理あるとは思っている。

 実際、長い宇宙の歴史の中で、彼らと同レベルのところまでフォースに精通し、踏み込んできた人間がいないわけでないのだ。オビ=ワンやヨーダの懸念はさほど間違っていないだろう、と。

 今の自分がそう思うのだから、当時の自分もきっとそう思ったのだろうと彼には容易に想像ができた。

 

「……ところで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「はい。彼女にとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……ベンはあの子がそうするなら自分も、と」

 

 とここで、()()()がこの場にいない理由を察したアナキンは、一番彼らと接触が多かったはずのレイアに尋ねた。消えている記憶の兼ね合いからして、レイこそが最も()()との関係が深かったのだろうと考えたのである。

 

 果たして彼女の答えは是であり、であれば仕方ないなとアナキンは納得する。

 フォースと一つになる条件として、たとえばたった一人の肉親であった母のことを忘れろと言われたら、自分とて断固拒否するだろうから。

 

 ともあれそう言ったところで、ひとまず話は一段落した。ヨーダたちも言うべきことは言ったという様子であり、また肩の荷も下りたといった雰囲気を纏っている。

 アナキンとしても、今までひっそりと抱えてきた謎について納得できたので、いきなり呼び出されたことに不満はない。

 

 ただ、思うところがまったくないわけではなかった。

 

「……にしても、事情はわかったけど。僕との接触まで完全に断つ必要はなかったんじゃないのか、ルーク?」

「念のためだよ。父さんのことを信じていないわけじゃないけど、銀河規模のやらかしをしたのは事実だし……」

「ルークだって人のことは言えないじゃないか」

「いや、僕は父さんみたいに大量虐殺なんてしてないからね!?」

「ルークが引きこもったことで結果的に何人が犠牲になったことか……」

「父さんにだけは言われたくない!」

「まあまあ……それらについては、全部皇帝が悪いと言うことでいいじゃありませんか」

「「レイアは黙っててくれ!」」

 

 大人げない男二人の言葉に、レイアは降参と言わんばかりに両手を挙げた。深い深いため息をつきながらだ。

 彼女はそのまま、あっさりと二人から距離を取ってヨーダたちの隣へ移動する。

 

「まったく、あの二人と来たら。地球には『バカは死んでも治らない』ということわざがあるそうですが、まったくその通りですね!」

「はっはっは、あまり言わないでやってくれ。あれはあれで、二人なりの親子のコミュニケーションなのだろうよ」

「ウィンドゥ辺りが目撃したら、激怒しそうじゃがのう」

 

 だが、年長者たちは笑うばかりで取り合ってくれない。

 

 もちろん、レイアもわかってはいるのだ。何せルークには親がいなかった。オーガナという名家に引き取られ、娘として不自由なく育てられたレイアとは異なるのだ。

 だから彼女も、あまり強くは言わない。言えない。彼女自身も、本気で怒っているわけではないのだから。

 

 その後も二人の大人げない口喧嘩はしばらく続いたが……かといって、それが生けるものたちに影響が出ることはなく。

 愛する人を失って失意に暮れる現世の幼女をよそに、死した者たちは至って平和に過ごしていた。

 

 現世に再び姿を現したアナキンが、そのことについては一切喋らず訳知り顔で「これは君たちの試練だ」と言い放ったのは、ここから数時間後のことであったという。

 




いっちばん最初に、スターウォーズキャラはアナキンしか出てこないと思うと言ったな。スマン、ありゃあ嘘だった。
いやでも、あくまで「と思う」って書いてたし・・・出したほうが物語的にわかりやすくなるだろうと思って、今回ルークたちを出した次第です。
ヒロアカの物語軸に関わってくるわけではないのでお許しを・・・と言いたいところだけど、実は他にもちょっとだけ出てくる予定が最近になってできたんだよなぁ。
もちろん誰が出てくる予定なのかはまだ言えないですけど、ヒントは今章の中にあります。よかったら探してみてね。

で、ここからはタイムパラドックスの補足説明です。二千文字くらいある上に、うまく説明できてる自信はないです。細けぇこたぁいいんだよ!という方はスルーしていただいて構いません。

スターウォーズにおける過去改変は本編中に書いた通り、してもしなくてもほとんど影響がない程度のことしかされていないので、本作のようにガッツリ過去改変に及んだ場合、どうなるのかは不明です。
なのでそこはボクの独自解釈が入っているのですが、ボクは「過去改変が行われると、それに応じて未来(記憶も)が少しずつ書き換わっていく。ただし未来と過去はある程度相補性があり、過去改変も少し織り込んだ形で未来は作られる」という説を採って本作を書いています。
いいとこ取りと言われたら否定できねぇ。

つまりなにがしかのジェダイ関係者が地球に来たという事実は、改変の有無に関係なく存在する。彼あるいは彼女はやはり那歩島に流れ着き、そこに根を下ろしたという当初の歴史があった。
その過程で、ジェダイの誰かが残した記録なり記憶なりを受け継いだゲオルグ何某が映画スターウォーズを制作。超常黎明期を乗り越えて現代に至ります。ただし、そのスターウォーズが我々の知るものと同じ内容であるかは定かではない。
本作と原作ヒロアカの差は、理波が個性発現時にソフトクリームの増やしすぎで死んだかどうかなので、原作ヒロアカはこの歴史に沿っているという設定になります。

ですが理波が個性事故によって死亡せず、トガちゃんという運命と出会い、トガちゃんと後天的にフォース・ダイアドになったことで、未来のトガちゃんがいずれ過去に飛ぶという歴史の道筋が確立。
これに影響されて、過去地球に来たジェダイはトガちゃんに書き換えられ、次いでスターウォーズに関する情報が現代にまで残る量が増え、映画スターウォーズEP1~6は我々の知るものと同じになり、スターウォーズという映画の認識が「ほぼ無名」から「知る人ぞ知る」程度にまで上向いた形に書き換えられていった・・・という流れです。

「少しずつ書き換えられていく」のがミソで、流れが確立した時点で一気に全部書き換わるわけじゃないんですね。
だから最初理波と出会ったアナキンがトガちゃんを知らなかったのはガチだし、ヒーローネーム考案の時点ではまだ誰もジェダイに反応できなかったし、フォースを知ろうとした公安はどれだけ探してもスターウォーズの設定資料集を見つけられなかった。
そして、本作は基本的に理波の一人称。歴史が変わったという認識ができる可能性のある人物の主観は出てこない。なのでそうした影響がどこに、どれだけ出ているかは誰にもわからない、という感じですね。前々話の「卵が先か鶏が先かもはや誰にもわからない」はそういうことです。
そんな経緯があるので、本作において原作スターウォーズEP7~9の情報が語られる機会や量が極端に少なかったのは、以前後書きで書いた通り私怨ではなく。
そこが一番改変によって書き換えられる影響がデカいので、下手に作中で描写するわけにはいかなかったからなのです。トガちゃんが過去に飛ぶプロットはかなり早い段階からあったので。

さらに、「少しとはいえ未来と過去は相補性がある」ので、書き換わった未来が過去に影響してはいても100%ではなく、どこかで誰かがまた歴史改変をやらかす可能性はゼロにはならない。
その可能性や頻度を極力ゼロに近づけるために、改変後のアナキンたちは過去改変やそれを行ったトガちゃんに関する情報を忘れる選択をしたわけです。
こうすることで、トガちゃんに初めて会ったときのやり取りも改変前と変わらなくなるという目論見もあります。
改変範囲を極力狭めたかったんですね、ジェダイの面々は。それが世界の秩序のためだと信じたわけですね。
実際、この措置を施していなかったらアナキンには異なる歴史の記憶が同時に混在することになったり、理波たちとのやり取りに支障をきたしていた可能性も十分にあるわけで。
となれば脳機能(幽霊のアナキンにこの表現が適切かどうかはともかく)に異常が出る可能性もあったので、一部の記憶をあえて捨てた判断はあながち間違いでもないという。

・・・と、まあ長々と書きましたが、結局のところボクは根っからの文系でして。
この手の考察が得意なわけでもないので、もっとしっくりくる説は普通にある気はしてます。
あからさまにおかしいところとか出てきたら、そのときはごめんなさいとしか言えないので、許していただきたく・・・!

ちなみに、フォースで記憶を消せるところはさすがに独自設定だろと思われるかもですが、これも公式設定。マジでやったフォースユーザーがいます。
とはいえ、劇中でも特に極まったフォース使いの一族であるザ・ワンズがやったことなので、ものすごく難易度が高い技なのは間違いないでしょう。
でもそんなザ・ワンズですらアナキンを選ばれし者と認めていたので、フォースと一体化した彼ならできると思います。
できるんじゃないかな。ヨーダもいるし、ルークもいるし、レイアもいるし。なのでできるってことにしました。
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