銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

209 / 288
EPISODE Ⅻ もう一人いる
1.君は今いずこに


 実務的ヒーロー活動推奨プロジェクトが終わり、無事那歩島(なぶとう)から戻ってきた私たち一年A組を迎えたのは、大量のマスメディアだった。飛行機から降りただけで、雨のように浴びせられるフラッシュと詰め寄る記者が向けるマイクに、辟易とするより先に驚くばかりである。

 沖縄本島から雄英に一番近い空港に到着し、あとはバスで戻るだけだと思っていたところでこれだ。全員が面食らったのは言うまでもない。

 

 幸いと言うべきか、帰りに付き添っていたマスター・オールマイトや、出迎えに来ていたマスター・イレイザーヘッドとマスター・プレゼントマイクが迅速に対応してくれたおかげでことなきを得た。相変わらずプレゼントマイクはこの手の対応が抜群にうまかった。

 

 一方我々生徒は何が何やらである。何せ本当に心当たりがないのだ。

 私もそれは同様で、フォースによってマスメディアが詰めかけていたこと自体は認識していたものの、さして深く考えていなかった。

 

「原因は、とあるヴィランが動画投稿サイトにアップした動画だ」

 

 その答えは、バスの中で提示された。イレイザーヘッドは、見た目だけでも機嫌がよろしくないと察せられる様子である。

 

「動画って……」

「島でのお前らの動画だ。ヴィランと戦ってるところのな」

 

 この言葉に、全員理解が及んだ。中には顔色を変えているものもいる。

 

「ご丁寧にお前らの名前や顔は隠してあったがな。那歩島でヒーロー活動推進プロジェクトをしている学生、とまで言われれば目敏いマスコミなら調べられる」

 

 そこから芋づる式でああなった、と吐き捨てるように説明を終わらせたイレイザーヘッド。彼のマスメディア嫌いは相変わらずのようだ。

 

「ヴィランが俺らの動画……って、もしかして」

 

 この説明を受けて、デンキがショートたちに振り返った。そこには、どこか納得の表情で遠いところに視線を飛ばしているショート、エイジロー、テンヤ、ツユちゃんの四人の姿が。

 

「……やっぱり梅雨ちゃんたちが遭遇したっていうヴィランの仕業なん?」

「……確証はないけれど……言われてみれば確かに、女性のほうがカメラを持っていたような気がするわ……」

「じゃあやっぱり、犯人はジェントル・クリミナル……」

 

 ジェントル何某の存在自体は、ショートたちからの報告があったのでクラス全員が理解している。だから、並んで座るイズクとオチャコのやり取りにも大袈裟な反応はない。

 ミノル以外はだが、彼が反応しているものは別のことなので今はないものとする。

 

「今んトコ警察が見つけ次第削除して回ってんだけどYO、こういうのは結局どこまで行ってもイタチごっこなワケ」

「情報化社会の弊害だね……私がデビューした頃は、この手のことはさほど問題になるものでもなかったんだが」

「……厄介なのは、例の動画の内容がやけにまともだったことだ。これが誹謗中傷の類なら、こっちとしてももっと強く拒否できたんだが」

 

 と、教師陣のそんな会話に、何人かが首を傾げた。

 

「せんせー、やけにまともだったって、私たちなんて言われてるんですかー?」

 

 その中から、ミナが代表するように挙手する。

 

「それが聞いて驚け、まるでPV! 絶賛の嵐! やれ若き英雄たちだの、次世代ヒーローの代表だの……そりゃもーマスコミが喜びそーな言葉の雨霰よ!」

「そこに、短いながらも証拠となる動画もセットとなるとねぇ……そりゃあ、メディアの皆さんが黙っちゃいないだろうなぁとなるわけだよ」

 

 プレゼントマイクの言葉に、オールマイトが苦笑しながら応じる。これには大半のものが、「あー……」となんとも言えない顔をした。一応理解はしたが、納得はできていない感じである。

 

「……ヴィランにそう褒められても……なあ?」

「しかもそれがきっかけであの取材攻勢に繋がったとなれば、納得などできるはずもない」

「ていうか、そのヴィランもなんでそんなことしたんだか」

 

 そんな会話があちこちから上がる。まったくもって全面的に同意である。

 

「……それについては、根津校長が言ってたよ。『これはたぶん、純粋に良かれと思ってやってるんだろうねぇ……』ってさ」

 

 すごく遠い目をしておられた……と付け加えたオールマイト自身も、遠い目をしている。これを受けて、私たちはますます何とも言えない気分にさせられた。

 

 何せ、かの校長の個性は「ハイスペック」。純粋に頭脳という点で、彼に敵うものはほぼいないも同然なのだ。

 そんな彼が導き出した答えなら、きっとそうなのだろうという信頼が彼にはあった。それが今ほど喜べないことなど、そうそうないだろうが。

 

「マジに嬉しくないんスけど……」

「余計なお世話」

 

 なので、キョーカとフミカゲの感想が、そのまま私たちの総意であった。

 

「HAAAA! 地獄への道は善意で舗装されている、とはよく言ったもんだよなァ!」

「まあ……マイクの言い方はともかく、プロになったらマスコミとの関係も少しは考えていかなきゃならん。連中も独りよがりな善意でやらかしがちだが、俺みたいに徹底的に避けたにしても、一切合切無視できるわけでもない」

 

 というわけで、とここで言葉を区切ったイレイザーヘッドに、私たち生徒はほとんど一斉に背筋を伸ばした。彼の態度が、授業などで厳しいことを言うときとよく似ていたからだ。

 

「週明けのヒーロー基礎学は、メディア対応を取り扱う。ゲストとして現役のプロも呼んであるから、よく聞いてしっかり学ぶように」

 

 ほら、案の定だ。

 

 とはいえ、こういうことを言われて腐るようなものはA組には一人もいない。

 私たちは当然と言わんばかりに、声を揃えて「はい!」と応じたのだった。

 

***

 

 マスメディアを撒いて、雄英に戻ってきたのは三時過ぎ。普段であればまだまだ授業のある時間帯だが、十日に及ぶ遠征を終えてきて即座にやるほど雄英も鬼ではない。

 そもそも荷物の片付けなどもしなければならないので、この日は最初から休日の扱いである。ちょうど今日明日は週末だしな。

 

 とはいえ、あんな事件に巻き込まれて最初の本格的な休みだ。みんな色々と思うところがあるようで、片付けなどが終わったあとは誰からともなく談話スペースに集まって、感想であったり意見であったりを話し合っている。それは夕食が終わったあとも続いた。

 

 だが私はそこに加わらず――食事前は付き合っていた――、自室に戻ってコンピューターに向き合っていた。

 

 傍らには、情報処理を専門とする我がドロイドI-2O。戻ってきてすぐに彼を起動した私は、必要な情報を集めて整えておくように指示していたのだ。

 そして食事も終わった今、それらの仕事に一定の目処がついた。であれば、今の私にはその確認が一番の優先事項である。

 

「結論カラ言ウト、一日アレバ準備デキルゼ。タダ、ソレデ誤魔化セルノハ精々一、二時間ッテトコダ」

「……つまり、その間になんとかしなければならないわけだな」

「ソレカ、回数コナスカダナァ」

「それは避けたいところだな。大まかな当たりだけでもつけておいてくれ」

「オウオウ、どろいど使イガ荒イコッテ」

「この十日間、十分休んだだろう?」

「アイアイ、ますたー。ソレヲ言ワレチャ仕方ネェヤ」

 

 何を話し合っているかと言えば、今現在国立博物館にあるだろうホロクロンを入手するための話し合いである。

 

 那歩島の洞窟にあった社に残されていた、ヒミコのメッセージ。それによれば、彼女は今この地球のどこかで眠りについているのだという。

 それがどこなのか、またどうすれば眠りから醒まさせることができるのかはまったくわからない。だがその鍵は、彼女が残したホロクロンに収められているらしい。

 

 ただ、ホロクロンはメッセージと同じ場所にはなかった。時代の流れの中で失われていて、どこにあるかは島のものにもわかっていなかった。

 

 しかし私は。私だけは、心当たりがある。以前にホロクロンについて知る機会があったからだ。

 

 もちろん、そのホロクロン……国立博物館にあるものが、ヒミコが用意しておいたものとは断言できない。彼女のメッセージは文章だけだったので、判断材料も残っていない。

 けれども、私はまず間違いないだろうと思う。なぜ、と問われればはっきりした理由は説明できないのだが。それこそフォースの導きと言おうか。

 

 ともあれそういうわけで、私はホロクロンをなんとしてでも手に入れたい。

 

 だが、一般公開されていないとはいえ、博物館の収蔵品はおいそれと手に入れられるものではない。文化的な意義などもあって、管理がなかなか行き届かないであろう個人に渡すわけにはいかないのだ。

 仮に実現できたとしても、それは相応の時間が必要になる。私個人の実績や発言力も……ましてや時間もない今、そうした正攻法は取れない。

 

 なので、私は博物館に忍び込んでものを失敬してくることにした。

 

 となると、重要なのは博物館のセキュリティをどうするかである。

 単純に突破するだけなら、フォースでハッキングができる私には簡単なことだ。監視カメラを無力化することは容易い。

 

 だがそれをやると、その日セキュリティに何かがあったと誰の目にも明らかになってしまう。それはよろしくない。最初から可能性すら悟らせないで済むなら、それに越したことはないのだ。

 

 そういうわけで、映像を差し替えるなどの工夫が必要になる。I-2Oにはその準備を任せたい。

 

「それができるまで、私はダミーのホロクロンを作成する」

 

 さらに万が一侵入に気取られたとしても、ものがないことに気づかれなければいい。

 ということで、目的のホロクロンの模造品を用意してすり替える方向で考えている。

 

「一日デナントカナルモンナノカヨ?」

「なんとかするさ。なに、明日は日曜日だ。見た目だけを整えるのならさほど難しくはない」

 

 アナキンほどではないが、私も機械にはそれなりに自信がある。

 材料も、普段から色々とやっている関係で潤沢にある。完成品を用意するとなるともっと時間がかかるが、見た目だけでいいなら十分だ。

 

 それでいいのかと思われるのかもしれないが、ホロクロンの真価はフォースユーザーでなければ引き出せない。フォースが元々薄く、センシティブですら滅多に生まれないこの星では、真贋を確認できるものは早々いるものではないからひとまずそれで事足りるはずだ。

 

「そういうわけだから、よろしく頼むぞI-2O。14Oも手伝ってやってくれ」

「「了解(ラジャ)了解(ラジャ)」」

 

 かくして私は、帰還早々動き始めた。

 すべてはヒミコに戻ってきてもらうため。

 

 ああ、ヒミコ。早く君にまた会いたい。

 大丈夫。必ず、絶対、迎えに行くから。だから、だから、もう少しだけ待っていてくれ――。




年末年始ブーストで結構早めに書き上がりましたので、本日より更新を再開します。
EP12の章タイトルは「もう一人いる」。本編15話+幕間3話(内1話はR18)の、計18話でお送りいたします。18日間、お付き合いください。
そしてもしよろしければ、感想ここすき等いただければ幸い・・・!

なお物語の内容としては、以前に後書きで書いた通りトガちゃんにまつわるあれこれが解決するものとなり、EP1以来となる大半オリジナルエピソードの章になってます。
オリジナル部分は割合で言うとEP1ほどではないですけどね。

ただ、今章の終盤には、物語のわりと根幹に関わる部分に結構大きめの変化が起こります。
そこが皆さんに楽しんでいただけるかどうか、そもそも受け入れてもらえるかどうか・・・。



ところでこれは有識者とどうしても共有しておきたいかなり重要な情報なんですけどね。

去年受注生産で注文して、一回発送が延期になったトガちゃんの七分の一フィギュアがちょうど誕生日翌日に届きましてですね。
イケないことだとは思いつつこれは資料だからとスカートの中を覗いちゃったんですけど、なんとぱんつの色がかなり黒に近い赤紫だったんですよ。

えっちくない? えっちすぎない??
普段からそういうの履いてるのか、それとも勝負下着なのか・・・いやはや、実に妄想がはかどりますね!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。