銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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11.最後の試練

 年が明けて、元日。今日から新学期まではずっとヒーローインターンである。

 朝早くから迎えのバスが来るので、それに乗り込んで各々各地のヒーロー事務所に赴くことになるわけだ。

 

 そんな時間にもかかわらず起きてきて、見送りに来てくれた妹が号泣するので私も半泣きになりながらハグだけでなんとか済ます。

 

 以前にも増して家族への愛着を感じるのは、気のせいではないのだろうな。でも、それでいいんだ。私はこれでいい。

 

「……宇宙はやっぱりナシですかねぇ?」

「ん? どうしてだ?」

 

 それを見たヒミコが、優しく微笑みながら言う。

 

「だってコトちゃん、寂しがり屋さんですもん。結構な頻度でおうち帰るって言いそうだなぁって」

「……どうにも否定しきれないのが妙に悔しいな……」

「それならもう、いっそファルコンに住みます? 超超長距離移動するためにみんなで大改造しましたから、居住性は抜群なんです」

「……選択肢の一つということで」

 

 と、そんな流れで将来の選択肢が一つ増えたりもしたが、それはともかく。

 

 ヒーローインターン。本職のヒーローの下で、本職同様に活動する制度なわけだが、本来は生徒の任意で行われる。今回は以前述べた通り、何らかの思惑があってのことなので特例だ。

 

 ただし、その中にも例外はいる。それがヒミコだ。実は彼女、今回のインターンには不参加なのだ。

 原因はもちろん、身体が本調子でないから。一応歩行や日常生活をする分にはほとんど問題ない範囲までは回復しており、今持っている杖も念のためという意味が強い。

 しかし、激しい運動が必須となるヒーロー業務に耐えられる状態かというと、やはりまだ否だ。

 

 いや、フォースを使えば問題なく可能だが、それでごまかせるのはあくまで筋力や攻撃力。体力の低下はいかんともしがたく、フォースばかりに頼っているわけにはいないのである。

 そういうわけで、ヒミコは雄英に戻ってリカバリーガール監督の下でリハビリだ。

 

 対する私がどこに行くのかと言えば、少し前に現役復帰したインゲニウム事務所になる。ずっと行きたいと思っていたので、念願叶った形だ。

 

 ちなみに、インゲニウムを心底尊敬している弟のテンヤだが、インターン先はかつて彼が職場体験に赴いたマニュアルのところである。

 なんでも、下手に私情を挟んでしまっては互いのためにならないから、とのこと。私としては、非常に理解できる決断だ。

 

 話を戻そう。

 

 そんなわけでインゲニウム事務所でインターンをする私であるが、ヒミコとは別行動をせざるを得ない点は正直不満である。一か月も離れ離れだったのだから、もう少し一緒にいたかった。

 

 とはいえ業務(?)命令とあれば、仕方あるまい。こうなることはわかっていたので、帰省前に派手に色欲に溺れたのはその前借りという意味も一応あったりする。

 

「行ってらっしゃいです」

「うん、行ってきます」

 

 一人先にバスから降りる私に、ヒミコがそう言って軽くキスをしてきた。私も目いっぱい背を伸ばしてこれに応じる。

 

 本当なら深いキスを交わしたいのだが、さすがに人前でそれは問題だからな。今はまだ、この程度でとどめておくべきだろう。

 それに、いざとなれば私とヒミコは距離を無視して繋がることができる。だからこれでいいのだ。

 

 彼女からの「またあとでねぇ」というテレパシーに、手を振りながらバスを降りる。

 

「やあ増栄ちゃん、久しぶりだね。インゲニウム事務所へようこそ!」

「おはようございます、マスター・インゲニウム。本日よりしばらく、お世話になります」

 

 そして出迎えに来てくれたインゲニウムとサイドキックたちとあいさつを交わし、事務所へと案内される。

 

「スーツの調子はいかがですか?」

「ああ、問題ないよ。おかげさまでね」

「それはよかったです」

 

 定期的に使い勝手や状態を確認していたのでわかってはいたが、インゲニウムのパワードスーツは今のところ一切問題ないらしい。ステイン以前と変わらず活動ができていると、インゲニウムは嬉しそうに笑ってくれた。役に立てたようで何よりである。

 

 そんな彼に連れられてやってきたインゲニウム事務所は、さすが大人数のサイドキックを抱える大手事務所ということで非常に広かった。ビル一棟が丸々事務所となっていて、中にはトレーニングルームや宿泊施設、食堂なども整えられている。相当な充実ぶりだ。

 

 だがその施設を褒められても、インゲニウムは謙遜して首を振る。

 

「うちは代々ヒーロー稼業だからさ。俺というよりは一族の力だよ。それでもなおエンデヴァー事務所には及ばないんだから、俺なんてまだまだ」

 

 そう言って笑う姿に、卑屈なところは見られなかった。純粋にエンデヴァーを尊敬し、自分には今以上の精進が必要なのだと考えている。

 

 この手の話をインゲニウムとするのは実は初めてなのだが、なるほどこれはテンヤの兄だなぁ。彼ほど突き抜けた生真面目というわけではないが、根となる部分は本当によく似ている。

 

「さて……一通り案内は終わったかな。ということで、改めてインゲニウム事務所へようこそ」

 

 そしてサイドキックたちを紹介されたあと、事務所でインゲニウムたちに囲まれながら歓迎を受ける。

 

「知っていると思うが、うちの方針はまず第一に『速さ』! 現場で不安な思いをしている人たちを一秒でも早く安心させる、が俺の信念だ。だから看板ヒーローとしてサイドキックを従えているエンデヴァーやホークスとは違って、俺自身が目立つ必要は必ずしもないと思ってるし、実際事件の解決数が事務所内で突出しているわけでもない。……まあこの辺りは承知して来てくれてるってわかっているが、一応念のためということで」

「いえ、ありがとうございます。元より目立ちたくない性分なので、それで構いません」

「おう。あとは、人海戦術も俺たちが得意とするところだが……そこが一番学びたいんだったね?」

「はい。私は……いずれ相当数を抱える治安維持組織を持ちたいと思っています。ですがそのために何をすればいいのか、見当がつかないもので……」

「ああ、ヒーローってどちらかというと個人でやる人が多いもんな。確かにその辺りは学校ではなかなか身に着けづらいか……よし、そういうことなら任せてくれ!」

「よろしくお願いいたします、マスター」

 

 ということで、インターンは始まったのだった。

 

***

 

 インターンの初日は、主に私が何ができるか、それをどの程度の精度、速度でこなせるかの確認作業で午前を費やした。

 結果、即戦力として通用するだろうということで、昼からはインゲニウムについて早速街へと繰り出すことになる。ヒーローインターン自体は今回が初めてなので、まずはヒーローとしての一般的な業務から始まった形だ。

 

 そうやって業務に従事していれば、急造のチームアップは本当によくあることらしい。別事務所のヒーローとかち合ってそのまま共同任務、という流れをみな手慣れた様子でこなしていた。

 

 こういう形で誰かと協力し合うということは前世を含めてもほぼ未経験なので、なんだかんだでヒーロー業務そのものも勉強になることが多かったな。

 私はやれることが格段に多く、その分判断に迷うこともある。以前にイレイザーヘッドに指摘された通り、器用貧乏で終わらないためにもありとあらゆる状況には慣れておきたい。

 

 そういう意味でも、常にチームとしてのヒーロー活動をしつつ、全体では結構な広範囲を担当するインゲニウム事務所は選んで正解だったようだ。

 

 あとは、施設の配置の仕方やその内容、人を従える際のノウハウなども学びを得られることも大きい。

 私が話したことから、組織運営についてもきちんと教えてくれているのだ。この辺りは完全に未経験だから、何よりもありがたい。

 

 なので、書類関係の仕事や各部署間のやり取りなども、私にとっては学習の対象だ。本当に文字通りの意味で、すべてを糧にしていきたいと思っている。

 

 そんな風に過ごした初日は、最後にささやかながら歓迎会を開いてもらって幕を閉じた。夜勤の担当者もいるそうなのだが、学生(しかも私の実年齢は低いので余計)に初日からそれはないだろういうことで、仮眠室へ入る。

 

 仮眠室とは言っても、その辺りのビジネスホテル程度の設備は整っているので不満は一切ない。さすがに入浴は難しいが、それでもシャワーは備え付けられているので当面は十分だ。

 

『知識としては知っていたが、ヒーローにも色々あるんだな』

 

 そうして私が一人になったタイミングで、アナキンが虚空から出現した。部屋の扉を閉めた瞬間に、ベッドに腰かけていたのだ。

 

 これ自体はいつものことなので私は動じず、焦ることなくそちらへ身体を向ける。

 

「ああ。でもだからこそ、やはりジェダイはヒーローと似て非なるものなのだと思うよ」

『似ているからこそ、改めてジェダイを興すとなると大変そうだよな。絶対に競合するぞ。まだ諦めてないのか?』

「もちろんだとも。……いや、確かに最近の私は色々とダメなところばかりだが。そこを見失ったことはないつもりだ」

『ふぅん……』

 

 私の答えに、しかしアナキンは懐疑的な顔をする。

 

 我がことながら、だろうなとは思う。暗黒面に堕ちた人間が何を、と言われても仕方がない。

 それでも、私の心は光でありたいと思うのだ。闇を知ったからこそ、光の尊さがわかるようになった……と思うから。

 

 そんな風に考える私の前で、アナキンの表情が変わる。きりりとした、厳粛な顔つきである。

 

 彼の変化を理解した私も居住まいを正した。

 

『……そこまで言うのなら、君に試練を与えよう。前に言っていた、試練だ』

「なんなりと、マスター」

『コトハ。今よりしばらく、君がジェダイを名乗ることを禁じる』

 

 だが、次に放たれた言葉に私は思わず顔が引きつった。確かに私は堕ちた身だが、しかし……と考えたところで、気づく。

 

 しばらく。マスターははっきりとそう言った。つまり、これを乗り越えるまではということか。

 

『……ふふん。どうやら少しは冷静になってるようだな』

「……恐縮です」

 

 そして、予想していたのだろう。私の心の動きを見透かして、アナキンが得意げに笑った。

 

『話を戻そう。肝心の試練だが……君が新たに興そうとしているジェダイの、新しい理念を考えるんだ』

「……新しい、理念?」

『ああ。君は今まで、共和国のジェダイのそれをほぼそのまま使っていたな? 「この星の自由と正義を守る」と』

「はい」

 

 世間には色々と勘違いされているものではあるが、そこは変わらない。そのつもりだった。

 

 しかしこれを、マスターは「論外だ」と断ずる。

 

『トガを助けるために、君は何をした? いくつもの罪を犯したな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな人間にジェダイを名乗る資格はない』

「……ごもっともです」

『だからこそ、それに代わる新しい理念を考えるんだ。ジェダイとしての本質を見失うことなく、しかし正義だなんてあやふやで不確かなものではない、別のものを見つけろ。これが君への()()()試練だ』

 

 ジェダイとしての本質を見失うことなく、正義ではない理念に相応しいものを見つけろとは……それは、なんというか、全面的に矛盾してはいるのでは?

 

 ……私は前世からずっと、同じ理念の中で生きてきた。銀河共和国の自由と正義を守るという、ジェダイの理念しか私は知らない。人生二回目だが、最初の人生で培ったこの生き方を、私はやはりどうしても捨てきれない。

 だから、どうにもわからない。正義を掲げずにどうやって平和を維持しろというのだ? フォースの意志とでも言えばいいのだろうか?

 

『この件については、僕はこれ以上の質問を受け付けない。ああ、心配しなくても別に期限は設けない。思う存分悩むといいさ』

「……はい」

 

 だが悩む私をよそに、アナキンはつれなく笑うばかりだ。

 

 むう。こういうとき、友人であり師弟であるという関係は少し面倒だな。どうしても反発心を覚えてしまう。今回ばかりは唐突かつ理不尽な試練ではないのだから、真っ向から乗り越えなければならないというのに。

 

 ……ところでこの試練、他者に頼ってもいい類の試練だろうか。特に禁止はされなかったが……しかし元ジェダイとしてはやはり、安易に頼ってしまっては試練にならないだろうとも思うのだ。

 

 なんとなくだが、父上に相談したら即座に解決しそうだという予感がある。オールマイトや……そうだな、イズク辺りに聞いてみても解決は早そうな気がする。

 この手の直感は大体当たるので、だとするとやはりこれは一人でなんとかすべき試練と考えるべきか。

 

 ううむ。なんというか、ある意味では今までで一番平和的な試練だと言うのに、なんだか一番こなせる自信がない。こういう、発想の転換を必要とする問いかけはどうも苦手だ。こういうのはアナキンの得意分野であって……。

 

 ……と、そんなことを考えてうんうんと唸っているうちに、アナキンはさっさと立ち去ってしまったようだ。

 確か那歩島の事件直後にカツキが試練を乗り越えたとかで、本格的にフォースの手ほどきを始めたとか言っていたから、そちらに行ったのかもしれない。技術的知識的な面では私は最初から及第点だったから、元々あまり教えられることがなくて暇そうにしてたものな……。

 

「コトちゃん? 何かあったんです?」

 

 そんな私の背後に、ヒミコが出現する。以前保須でもあった、距離を無視して直接触れて影響を及ぼせるフォースの幻影だ。

 彼女はこれを、ほぼ任意で引き起こせるようになっている。以前はそうでもなかったのだが、これもまた幽霊ながらに長年フォースについて学び続けた影響なのだろう。

 

 とんでもないことだとは思うが、とはいえ私にとってはありがたいことには代わりないので、大人しく何も言わずに恩恵を享受する。

 

「……いや、実はかくかくしかじかで……」 

 

 事情をヒミコに説明する。彼女は一瞬目を丸くしたが、すぐに納得の顔をした。

 

「……ちなみに、ヒミコは何か思いつくかい?」

「私、どっちかっていうとシスですよ? シスにアドバイスもらうジェダイって、どうなんでしょ」

「それはその通りだな……」

 

 正論中の正論だった。思わず浮かべた苦笑と共に、ため息が漏れる。

 

「それより、難しい話は今は置いときましょ? ね?」

「……うん」

 

 が、そんな苦悩もヒミコとキスを交わせば、一時的に吹き飛んでしまう。

 これはその辺りのことにも注意して、常に意識していないと試練のことを忘れてしまいそうだ。期限が設けられていないのも、もしやそういうことなのでは?

 

 と、私は真面目に思考できていたのはそこまでで。

 

 そこから寝るまでの間、私は気持ちいいと大好きと愛している以外のことを考えられないようにされ続けたのだった。

 




何も解決してない問題そのいち。
自分と自分に近しい人間のためだけに罪を犯した人間が共和国ジェダイの理念を掲げるのは、さすがにダメでしょっていう話でした。
一応言っておくと、最後いかにもな締め方したけど本番はしてません。チウチウだけです。チウチウだけでイける身体にされてるので、まあ似たようなもんですけど。

話を戻しまして。この試練は別に闇堕ちどうこう関係なく、理波にはやらせるつもりでした。
地球の環境や今世の生まれ、育ちが前世と異なる以上、地球でジェダイをやるにはやはり共和国のままではそぐわないわけで。
メインのストーリーラインがヒロアカなのであまり言及することは少ないですけど、一応作品のタイトルがタイトルですしね・・・ここは避けては通れないというわけです(復興できるとは言ってない(できないとも言ってないけど

ちなみにこの試練の答えについては、毎週日曜日に色んなヒーローが活躍する国で育っている皆さんにはなんとなく察しがつくんじゃないかと思います。
ボク個人としては、ジェダイの「共和国の自由と正義を守る」は実にアメリカらしいなと思いますね。アメリカの映画なんで、ある意味当然ではあるんでしょうが。
正義なんて誰かを攻撃するための大義名分でしかない・・・というのは、さすがに極論がすぎますね。
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