銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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4.ヴィジョン

 タコダナは、たくさんの森に囲まれた星でした。どことなく地球を思わせますが、地球より陸地の面積が多いですね。それでも、ノスタルジックな気分は抑えられそうになかったです。

 

「銀河にこんな緑豊かな星があるなんて……」

 

 一方、この景色を見たレイちゃんが感動した様子で言いました。砂漠ばっかりのジャクーしか知らないですもんね。仕方ないです。

 仕方ないですけど、それを聞いたハンさんがどことなくやるせなさそうにしてたのが印象的でした。

 

 まあそれはともかく、ハンさんに案内されたのはすっごく古いお城でした。見た目はおんぼろで、フィンくんが不安そうにするもの仕方ないですね。

 でも、なんとなくですけど感じます。うっすらとですけど、フォースに関わる人の気配を。

 

『ってことは、マズ・カナタって人もジェダイなの?』

『んー、っていうよりはフォースセンシティブなんだと思います。世の中には結構、覚醒するほどじゃなくっても無意識にフォースを使ってる人いますから』

 

 ハンさんが言った「鋭すぎる勘で、ありとあらゆる危険を潜り抜けてきた」ってのはそう言うことなんだと思います。爆豪くんだって、最初からものすごく勘がよかったですしね。

 

『それで千年以上もやっていけるなら、ちゃんとジェダイで訓練すればもっとすごくなれたんじゃない? 内戦も起こらなかったかも』

『ジェダイは赤ちゃんからしか育てないので、仕方ないですねぇ』

 

 確か、生後十か月とかそれくらいじゃなかったでしたっけ? 親から引き離されて、親のこと何にも知らされないで育てられるんです。

 私は両親に対してとっても思うところがあるクチですけど、「普通」はそうじゃないってことくらい知ってます。

 

『……それは、ちょっと……おかしくない? それ、断れるの?』

『どうでしたっけ。ちょっと覚えてないです。でもまあ、私もおかしいって思いますよ。そんなだから、ジェダイは人の心がわからないって言われるのです』

『……そこも滅んだ一因なのかしら……』

 

 レイちゃんには、必要に応じてジェダイのいいところも悪いところも教えてあります。だからこそ、レイちゃんは共和国のジェダイとは違う(地球のヒーロー的な)方向に育ってます。

 それがいいか悪いかは、私にはわかんないです。でも共和国のジェダイは、私もあんまり好きくないので仕方ないですね。

 

「ハン・ソロ!」

 

 と、言ったところで女性の声が響きました。お城の中に私たちが入ってほぼ直後くらいのタイミングでこれなので、やっぱりマズさんはフォースセンシティブなんでしょう。

 

 彼女の一声で、賑やかだった室内が一瞬で静かになりました。でもすぐに戻りました。

 いかにもアウトローたちの住処、って感じですね。ちょっとワクワクします。でも注目は集めたくなかったです。

 

 そのまま私たちは、マズさんに案内されるまま一つのテーブルに着きました。

 

「地図? スカイウォーカーの居場所? ハッ、嵐の中へ戻る気かい?」

 

 早速の説明が一通り終わったところで、マズさんが嬉しそうに言いました。

 

「マズ。ドロイドをレイアのところに届けたい。頼めるか」

「ハッ、やだね」

 

 ところが、ハンさんのお願いはスパッと断られました。

 フィンくんとレイちゃんが、同時に「えっ」って顔をして見合わせました。二人ともカァイイですね。

 

「あんたが()()()()から逃げ出してもう随分になるよ、ハン? あんたが行きな」

「……レイアが嫌がるだろう……」

 

 海賊らしいストレートな物言いに、ハンさんが渋い顔をします。

 

 ははあ、なるほどです。そういえばハンさんとレイアちゃん、そういう関係になってたんでしたっけ。今は別居中ってトコでしょうか。

 

「……あなたの助けを求めてきたんです」

 

 と、ここで我に返ったフィンくんが助け船を出すかのように口を開きました。

 

「戦いって?」

 

 レイちゃんも同じように。

 

 この問いに、マズさんはぐるりと顔を向けて言いました。

 

「決まってるだろう。暗黒面との戦いさ」

 

 そしてされた説明には、かすかですけどフォースの気配がありました。話の内容自体がフォースに関係してることもありますけど……うん、やっぱりそういうことなんですねぇ。

 

「闇が銀河を覆ってる。その現実と戦わなきゃ。みんなでね」

「ファーストオーダーを敵に回して、勝てるわけない」

 

 で、即答するフィンくん。ファーストオーダーの中にいたからこそわかることがあるんでしょうけど、その言い方はトガ的にポイント低いです。

 

 マズさん的にも低かったんでしょう。彼女はずずいって身を乗り出すと、フィンくんの顔を……いえ、目を? じっと見つめました。

 

「長く生きてると、同じ種類の目を何度も見る。あんたの目は逃亡者の目だ」

「俺の何を知ってるって言うんだ!」

 

 でもストレートな言い方って、逆効果なときもありますよね。

 マズさんも、地雷を踏んじゃったことに気づいたんでしょう。それ以上は何も言わず、代わりに逃げるのを手伝ってくれそうな人を紹介してくれました。

 

「フィン」

「……すまないレイ。俺は一緒には行けない」

 

 早速そっちに行こうとすれば、レイちゃんに呼び止められてフィンくんは一回足を止めました。

 

「わかってる。あなたの境遇は少しだけ見えちゃったから」

「……そういう君も、俺と一緒には来てくれないんだろうな」

「……そうね。一度するって約束したことを破るなんて、私にはできない」

「……君のそういうところ、すごいと思う。尊敬するよ、素直に。……俺にはできない」

 

 苦しそうな顔で首を振って、背中を向けるフィンくん。その脳裏に、色んな光景が浮かんでいるのがフォースを通して見えました。

 

 物心つく前に親から離されて、ストームトルーパーとして殺すことだけを教えられてきたこと。

 最初の任務で……ジャクーでの任務で、殺すことに迷いが生じたこと。

 その場所で、無感動に人々を虐殺する同僚だった……仲間だったトルーパーたちの態度に、恐ろしくなったこと……。

 

 恐ろしい、怖い、っていうフィンくんの気持ちが、痛いくらい伝わってきます。

 レイちゃんにもそれが見えたんでしょう。優しい声で言いました。

 

「……気をつけてね。フォースと共にあらんことを」

「……ありがとう」

 

 それだけを告げて、フィンくんが席を離れていきました。

 

 ……このとき、借りてたブラスターをハンさんに返そうとするところが、なんていうかフィンくんらしいなって気もしましたけど。根本的にお人よしっていうか、なんていうか。

 持ってけ、って言えるハンさんはニヒルなアウトローだなとも思います。

 

「……あんたはジェダイかい?」

「え? いえ……違うわ」

「ふむ……」

 

 一方マズさんはというと、フィンくんには目もくれないでレイちゃんをまっすぐ見つめています。どうやら、別れ際の言葉が気になったようです。

 言われてみれば確かに、フォースと共に、なんてこの時代じゃジェダイくらいしか言わなさそうですもんね。

 

 とはいえレイちゃんは私が色々教えてるとはいえ、やっぱり正式なジェダイではないので違うとしか言えないわけで。

 だけどマズさんのほうも何か思うところがあるのか、しばらくレイちゃんの目をじーっと見つめてました。

 

「……ちょいとついて来な」

 

 どれだけそれが続いたでしょう。ふとした瞬間に身を翻して、マズさんが手招きしました。

 

「おいマズ? 俺の依頼はどうするつも」

「あんたの話は知らないよ! 言った通りだ、あんたが行きな」

「……やれやれだぜ……」

 

 やっぱりスパッと断られたハンさんは肩をすくめて苦笑しました。

 

 レイちゃんはそんなハンさんと、手招きし続けるマズさんをしばらく交互に見つめていましたが……ハンさんが行け、と言わんばかりに手をひらひらさせたので、迷いながらも席を立ちます。

 

「……どこに行くの?」

「いいからついてきな」

 

 マズさんに連れてこられたのは、地下でした。それも結構深いです。進むにつれて、フォースの気配が濃くなります。呼びかけられてるような気がします。レイちゃんが。

 

 それにしても、壁とか床とか天井とか、そういうところを見ると地上部分よりもさらに古そうです。冗談抜きで千年以上前からあるんですね、このお城。

 コトちゃんが知ったら喜びそうだなぁ。写真、撮っておきたいんですけどダメですか?

 

「ここだ」

「ここって……」

 

 ダメそうです。

 

 案内されたのは、どうも倉庫か何かみたいですね。あっちこっちに色んなものが整頓されて並んでます。

 見た感じ、骨董品が多い感じ? ここもコトちゃんが好きそうです。一つくらいお土産になりませんか?

 

「……こいつを」

「これ……ライトセーバー?」

 

 ダメそうです。

 

 それはともかく、部屋の真ん中辺りに置いてあった宝箱から、マズさんが取り出したもの。

 それは確かに、ライトセーバーでした。

 

 ライトセーバーですけど……でもこれ、見覚えがありますね? これって、もしかして。

 

『ますたぁのライトセーバーじゃないですか。なんでこんなところにあるんです?』

『マスター? 義姉さんの師匠のなの、これ?』

『そのはずです。ルークくんがシスと戦うときに使って、でも手首ごと切り飛ばされてどっか行ってたはずなんですけど』

 

 そう、それはますたぁのライトセーバーでした。ますたぁがクローン戦争当時から使っていた、青い刃のライトセーバーです。

 ルークくんがますたぁに負けたとき、紛失したと思ってましたけど……回収されてたんですねぇ。誰が見つけたんでしょう? すごいねぇ。

 

「そうさ。ただのセーバーじゃない、あのスカイウォーカーのセーバーさ。大切に取っておいたんだよ」

 

 私が感心してるよそに、マズさんはセーバーを差し出してきます。もちろん、レイちゃんは困惑しました。

 

「……私に?」

「ああ。随分長いこと保管してたけど、あんたに渡すべきだ。そう直感したんでね」

「…………」

 

 そんな大切なものを、自分がもらっていいのかってレイちゃんが葛藤してます。私なんかは、もらえるものはもらっておけばいいって思うんですけど。

 

 まあ気持ちはわかります。この銀河では、ルークくんは文字通り伝説の英雄です。地球で言えば、オールマイトみたいなものです。そんな人の持ち物を、本人の了承もなく第三者から渡されても困りますよね。

 

『義姉さん、どうしよう?』

『もらっとけばいいと思います。たぶんですけど、性能としては二人で造ったのよりこっちのが断然上でしょうし』

『……義姉さんのそういう図太いところは素直にすごいと思うけど、私にはちょっと真似できないわ』

 

 そうでしょうね、って思いましたけど口にはしません。伝わっちゃったかもしれないですけど。

 

 私たちがそんな風に心の中で会話してる間にも、マズさんは無言でセーバーを差し出し続けてました。根気すごいですね。

 だからこそレイちゃんも断り切れなくなって、恐る恐るセーバーに手を伸ばしました。

 

 けど。

 

 その瞬間。

 

「……っ!?」

 

 周りの景色が一変しました。宇宙船か軍事基地かの中。マズさんの姿も消えています。

 フォースが荒ぶっています。強い、強い力が渦巻いていて……それらがすべて、レイちゃんに何かを訴えかけているようで。

 

 揺れる世界。転倒するのに身を任せつつ地面を転がれば、現れたのは大雨の外。土砂降りの中で、フードを被った誰かがうなだれています。その傍らには――R2-D2?

 

『ママ! ママ!』

 

 女の子の声が、聞こえます。聞き覚えのある声です。

 

 次に、ライトセーバーが起動する音。赤い光が閃いたのに気づいて振り向けば、誰かが誰かの胸をセーバーで貫いているところ。

 

『嘘だ!!』

 

 今度は男の人の声。これも、聞き覚えのある声。

 

 雨が身体を打ち付ける感覚がします。()()()()()()()()()()

 

 だけど立ち上がりながらも呆然とするレイちゃんの前では、赤いライトセーバーを手にした黒づくめの誰か。

 その顔は黒い仮面で覆われていて、何も見えません。他にも何人かいますが、みんな似たような感じ。セーバーを持ってるのは一人だけですけど。

 

 セーバーを持ったその人が、こちらに気づきました。セーバーの切っ先をもたげさせながら、ゆっくりと近づいてきます。

 レイちゃんもこれに応じて、後ずさりながらもセーバーを抜きました。緑色の光刃が伸びます。

 

 けど、その瞬間でした。

 

『ヤだー!! パパぁ!! ママぁー!! 帰ってきてぇぇー!!』

 

 また、女の子の声が響きました。悲痛な声です。これに思わず振り返ってしまうレイちゃん。

 

 すると、いつしか場所はジャクーの砂漠の中。誰かに手を引かれながらも、手を伸ばして泣き声を上げる小さな女の子がそこにはいました。

 

 愕然として、その手の先に改めて振り返るレイちゃん。そこには、振り返ることなく宇宙船に乗り込んでいく男の人と女の人。

 

 こんな状況でもまだ、色んな声がたくさん響いています。

 

 でもその中に。その中で、確かに響いてきた声がありました。遠ざかっていく二人のものらしい心の声でした。

 

『ごめんなさい……ごめんなさい、レイ』

『すまない……だがこのまま一緒にいたら、みんな殺されてしまう。せめてお前だけでも生き延びて――』

「『――嫌だ……! 待って! 置いていかないで!』」

『レイちゃん!』

 

 すべてを投げうって追いかけようとしたレイちゃんを、押しとどめます。彼女から、ペンダントから抜け出して、幽霊の身体を全身使ってレイちゃんを抱きしめます。

 

『大丈夫……大丈夫です。私がいます。ここにいます』

「あ……あ、ね、義姉さん……」

『はい。私です。大丈夫ですよ。私はいなくなったりなんかしませんからね』

 

 いつの間にか、レイちゃんはぼろぼろと泣いていました。その顔に手を伸ばして、そっと胸元に引き寄せます。

 私のほうが十センチ以上低いんですけど、それでもです。……身長、追い抜かれたのはいつのことでしたっけ。

 

 でも、それでもやっぱり、レイちゃんは私にとって妹みたいなもの。大きくなっても、ずっとです。

 

 だから、ね。心配しなくっても、怖がらなくっても、いいんですよ。お姉ちゃんは、妹を守るものらしいので。

 

「……ハッ、ハァッ、はぁっ、はあ……っ!!」

 

 周りの景色が元に戻ります。ヴィジョンが掻き消えたのです。

 その落差が激しくて、レイちゃんは荒い呼吸を繰り返します。

 

「大丈夫かい? フォースが何かを見せたようだね」

「……は、はぁっ、はぁ……、ええ……」

 

 どうやらいつの間にか膝をついてたらしいレイちゃんが、マズさんの問いに答えます。

 

 ……そのマズさんの視線が私のほうに固定されてるのは、まあ、そういうことなんでしょうね、やっぱり。

 

『ヴィジョンです。たぶん、過去の。フォースはこういうこと、たまにします。意地が悪いのです。今回は……まあ、どっちかって言えば見れてよかったほうだとは思いますけど』

「……驚いた。長く生きてきたが、あんたみたいなやつに会うのは初めてだ」

『例がなかったわけじゃないって聞いてますよ? ……まあ、でも、今はそんなことより』

 

 予想通り、普通に会話できるマズさんは後回しです。

 

 私はその場にしゃがみ込んで、まだ息が整ってないレイちゃんの頭をそっと胸元に抱きしめました。

 彼女の手が、私の手に伸びます。もちろん拒みません。彼女の手を握り返して、その頭を、背中を撫で続けます。

 

『……レイちゃん。見えました? よかったですね……お父さんお母さんがレイちゃんを置いてったの、ちゃんとした理由がありましたね』

「……うん。……ありがとう義姉さん。もう大丈夫よ」

 

 私はレイちゃんがそう言うまで、ずっとそうしていたのです。

 




原作とはレイの心の在り方が違うので、物の見方も違います。であれば、見るヴィジョンもまた違うだろうということで。
・・・まあ、ここでレイが見るヴィジョンはこういう風でよかったんじゃないかとボクが思ってるのは事実なんですけどね。
EP7としてのストーリーの中では最初の明確な違いですが、まだもう少し原作を沿う展開が続きます。
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