一方私はどうしてたかって言うと、レイちゃんからそっと抜け出して、周りを制圧しようとするストームトルーパーさんを逆に制圧してました。
私自身は幽霊で、フォースの塊みたいなものなので、こうやって活動すると間違いなくカイロ・レンさんに察知されますけど、レイちゃんが気を利かせてここから離すように突撃していったので、直視されることは少なくともないでしょう。見られたら面倒なことになるのは間違いないので、なるべく早めに終わらせたいところです。
でも幽霊にできることって、あんまり多くないんですよね。フォースを使って吹き飛ばしたり、瓦礫をぶつけたりするのが精一杯です。
生き物はフォースを持ってるから、生き物に直接攻撃する系のフォースは効きづらいんですよね。生命としてのフォースに少なからず相殺されるので。
かといって、フォースライトニングはすごく疲れるので連発できません。フォースブラストはコトちゃんに変身しないと使えません。一応ライトセーバーもありますが、これも動かすとなると疲れるので長期戦ができないんですよねぇ……。
まあでもこの戦い、長くは続かないでしょう。ちらりと上を向けば、どう見てもファーストオーダーのものとは思えないXウィングが飛来していて、タイファイターたちと空中戦を繰り広げていました。
たぶん、レジスタンスが来てくれたんだと思います。なので、あとはなるべく犠牲者を出さないようにこっちも早めに終わらせたいところです。
なんて思いながら、とにかくあえて激し目に暴れてた私なのですが。
「な、な、な、なんなんだ! 何が起こってる!? これもフォースなのか!?」
私の奮戦を見たフィンくんが、混乱しながらわめいてます。混乱しつつも、レイちゃんから預けられた私のペンダントもますたぁのライトセーバーも手放さないでいるのは偉いですね。
これで私に身体があったら、いい子いい子するんですけど。
そんなことを考えたときでした。
「
フィンくんが、明らかに私のほうを向いて叫んだのです。
思わずとまっちゃいました。目を見開いて、フィンくんを凝視します。
うん、これ完全に目が合ってますね。もしかして。これって、もしかして?
『あれ、もしかしてフィンくん、私のこと見えてます?』
「うわっ!? あ、頭の中に声が!?」
『聞こえてるのは間違いないですね。見えてます?』
「ぼ、ぼんやりとだけど……」
『そですか』
それは――とってもちょうどいいですね。
私は降って湧いたラッキーに、思わずにっこり笑顔になりました。コトちゃんが好きだって言ってくれる、いつもの笑顔です。
「ヒッ!?」
失礼なことにフィンくんはこれに怯えてくれましたが、今は非常事態なので寛大な心で許してあげます。
代わりに、その身体を借りることにしましょう。それでチャラです。
『ちょっと失礼しますね』
「ウワーッ!?」
ということで、レイちゃんの身体を借りるときみたく、フィンくんの身体を乗っ取ります。身体の隅々まで私のフォースで満たして、彼の意思を奥のほうに押しのけるのです。
どうやらフィンくんは、覚醒直前くらいの感じみたいですね。体育祭のときの爆豪くんくらいかな?
何も持ってないほうの手をぐーぱーして調子を確かめてみますが、具合は悪くなさそうです。これもラッキーですね。
男の人の身体を使うのは初めてなので、ちょっと不思議な気分ですけど。視線もすっごく高いので、新鮮です。
でもこんなにも高いとコトちゃんとかみ合わないので、私はいつものままがいいですね。
『なにこれ!? 俺の身体どうなっちゃってんの!? ねえ!? ちょっと!?』
「少しだけ身体を借りますね。先に謝っときますけど、たぶんあとで筋肉痛すごいと思うのでよろしくお願いします」
『どういうこと!? っていうかあんた誰だよ!?』
「細かい話はまたあとで~」
頭の中でフィンくんがまだ叫んでますけど、おしゃべりはここまでです。私はペンダントをズボンのポッケにしまって、ますたぁのライトセーバーを起動しました。
そのまま即座に、セーバーを左右左と連続して振ります。セーバーに弾かれたブラスターが跳ね返って、うち二つがトルーパーさんを倒しました。命中率としてはまあまあでしょう。
次に私の反撃に驚いたトルーパーさんたちが一瞬動きをとめたスキを狙って、フォースプル。ブラスターは没収なのです。
……全員の分を一気に、とはいかなかったのでこれもまあまあってところ。慣れない身体はダメですね。
でもこれであちらはいよいよ混乱し始めたので、ダメ押しのフォースプッシュ。ブラスターを没収できなかった人たちを吹っ飛ばしてそれなりに巻き添えにできました。これは大成功でしょう。
慣れてない身体ってことを差し引いても、身体はあったほうがやっぱり何かと便利ですね。そう思いながら、セーバーをアタロに構えて一気に前に飛び出します。
フォースをまとった高速移動です。トルーパーの人たちは反応できないまま、連続で振るったセーバーをほとんど無防備に受けて倒れていきます。
消えていく生命の気配を感じながら、けれど手は休めません。くるり、くるりと立ち位置を変えながら、一人ずつ確実に。離れたところにいてちょっとすぐには届きそうにない人には、フォースプッシュの応用で地面にたたきつけて無力化します。
誰かの命を奪うことに関して、私は特に思うところがないのです。この辺り、私の根っこはやっぱりヴィランなんだろうなって思いますね。
まあ、コトちゃんも会ったばかりの頃から相手を殺すことを最終手段として受け入れてたので、その辺はお揃いって思ってます。私は生まれつきで、コトちゃんは前世の経験からって違いはありますけど。結果が同じなら、私はそれでいいのです。
「ふう、こんなとこですかね」
『す、すげぇ……』
とりあえず、近場はなんとかなりましたね。あとは、まだ避難し切れてない人たちを避難させましょう。
ヒーロー基本三項……撃退、避難、救助でしたっけ。撃退がひとまず終わったので、ここからは避難と救助のお時間です。むかーし習ったことを思い返しながら、避難を促していくのです。
怪我してる人は、動ける人にも手伝ってもらって優先的に。下手に動かしたらまずい状態の人がいなかったのは、不幸中の幸いですね。
けど、そうしている間に、どうやらここでの戦いは終わったようです。周囲に伝わったフォースの揺らぎから察するに、レイちゃんは負けちゃったようですね。
無理もないです。レイちゃん、ライトセーバー同士の本気の戦いは初めてでしたからね。強い暗黒面の使い手と戦うこともです。私も言うほど経験があるわけじゃないですけど、ゼロとイチとじゃだいぶ違いますからね。
でも殺されてない……どころかほぼ無傷みたいなので、結果オーライですかね。あっちはあっちでルークくんの場所が知りたいようなので、ジェダイの技を見た以上は情報源として貴重ってことなんでしょう。そして生きているなら、救けることができます。
情がないのかって? あるに決まってるじゃないですか。それとこれとは別ってだけです。
起きちゃったことはもう取り消せないんですから、今は今できる最善を考えるべきです。こういうときこそ合理的に行くべきなんです。相澤先生みたいに。
『ああっ!? レイが!』
カイロ・レンさんに抱えられたレイちゃんが、スターシップに運ばれていくところが見えました。
これを見たフィンくんが強い意思を発露させたので、私は身体の主導権を返します。もう私じゃなくっても大丈夫でしょう。
「ダメだ! 待って! 行くな!! 待てェ!!」
フィンくんが全力で走ります。けど、ただ走るだけじゃ間に合いません。
視線の先では、カイロ・レンさんに抱きかかえられたレイちゃんがスターシップに運ばれているところが瓦礫の隙間から垣間見えます。気絶してるのでしょう、ぐったりしてます。
そして予想通り。フィンくんが近くまで辿り着いたときにはもう遅く、スターシップはタイファイターたちを従えて空の彼方へ飛び去ろうとしているところでした。
愕然として立ち尽くすフィンくん。周りの戦闘はもう全部終わっていて、やっぱりファーストオーダーのものではなさそうなスターシップが着陸して救助に当たり始めています。
……だけど、ここで絶望しないところはトガ的にポイント高いです。フィンくん、やっぱりやればできる子ですね。
彼は周りの変化に気づくや否や、バッと身体を翻して走り出しました。向かった先は、ハンさんのいるところ。
「さらわれた! 見ましたか!? レイが連れていかれた!」
フィンくんの必死な言葉に、ハンさんは「ああわかってる」と短く返しながら手を振りました。
その視線の先には、着陸態勢を取りながら近づいてくるスターシップ。
なんでそんなに落ち着いていられるんだって、内心が荒ぶるフィンくんにチューイくんが軽くいなないて諫めます。言葉が通じないので、フィンくんはあっけに取られているままですけど。
でも、そんな彼でも着陸したスターシップから降りてきた人と見つめ合うハンさんを見たら、何も言えなくなったみたいです。
だって、そう。ハンさんと見つめ合う女の人は。私が知るより老けていますけど、間違いなくレイアさんだったんですから。
「あれま! ハン・ソロ!」
そんな感動的な再会の間に文字通り挟まりに行ったC-3POには、いくらなんでも空気読みなさいって思うのは仕方ないと思います。これにはみんな毒気を抜かれたように、あるいは呆れたように、ため息をつきました。
「わたくしですよ。C-3PO。おわかりにならないかも。腕がこんなですから」
そう言う3POの左腕は、確かに私の記憶とは全然違って真っ赤です。イメチェンでしょうか。
「どなたがおいでになったと思います? ……あ」
まあそれはともかく。
嬉しそうに振り返って、肩をすくめるレイアさんを見て、ようやく3POも自分の失態に気づいたみたい。しばらく言葉を濁したあと、「失礼します、将軍」と、何事もなかったかのように離れていきました。いつの間にか近くまで来ていたBB-8と一緒にです。
お邪魔虫がいなくなったので、テイクツーです。ハンさんがレイアさんに話しかけます。
「髪型変えたな」
「同じジャケット」
「いや? 新しい」
そんな、ちょっと不器用なカップルみたいなやり取りをまず最初にやって。
チューイくんとも再会のハグを済ませたあとで、ハンさんが真剣な顔で言いました。
「あいつを見た。俺たちの息子を」
この言葉に、黙って様子を見ていた私とフィンくんは首を傾げました。
「ここに来てた」
そんな人、この辺りにいましたっけ? いやまあ、私はハンさんの子がどんな人かまったく知らないので、気づきようがないんですけどね。
けど、レイアさんには全部伝わったんでしょう。彼女は顔を少しこわばらせました。
フィンがフォースセンシティブかどうかについては諸説あるかと思いますが、原作でもそれらしいムーブはしているので、本作ではセンシティブということにして進めます。
いやだって、あれだけの描写しておいて才能ゼロってことはないでしょ・・・ないと言ってくれ。