その後、私たちはレイアさんたちの先導でタコダナを離れました。レイちゃんのことは心配でしたが、一人でどうこうできる問題でもないので、まずは味方集めからです。
辿り着いたのは、ディカーという星。土星みたいに環っかがあって、それに緑もたくさんある星でした。
私の知らない星です。まあコトちゃんから教えてもらったことがないってことは、たぶん帝国になる前の時代にはそんなに有名じゃなかったんでしょう。
そんな星に、私はフィンくんと一緒にやってきました。ここまでの道中で私のことはある程度話したので、彼も私についてはとりあえず落ち着いています。さすがに未来から来たってことは、話すと面倒なので内緒のままですけどね。
それで、ディカー到着後はBB-8の主人であるポーさんとフィンくんの再会シーンなんかもありましたが、今一番大事なのはそこではないので置いときます。
重要なのは、惑星を何個もまとめて吹き飛ばしたファーストオーダーの兵器について、フィンくんが詳しいってこと。つまりそれは、今後の作戦には彼が欠かせないってことですね。
少し前のフィンくんなら、冗談じゃないって言ったでしょうか。
でも今の彼は、さらわれた友達を……レイちゃんを救けたいって、そのためならどんな危ないことでもやれるって、そういう意思に満ちてます。
本当、そうやって自分より他人を優先するところ、出久くんタイプですよね。これで普段から怪我が多かったら、なかなかに私のタイプですよ。コトちゃんを超えることは絶対にないでしょうけど。
話を戻しましょう。
そういうわけで、フィンくんはレジスタンスの中でも情報を取りまとめて作戦を立てたりするところ……参謀本部ですか? そっちのほうに連れていかれました。
けど私はそっちにいても、特に手伝えることがありません。なのでフィンくんには断って、基地の中を探検することにしました。
ペンダントは預けたままにします。普段はレイちゃんか、ペンダントの周りから離れないようにしてるんですけど、別に離れられないわけじゃないんです。ジャクーの治安がそれだけ悪かったってだけで。
でもここでは盗難の心配なんてしなくてもいいでしょうから。フィンくんなら預けてても大丈夫でしょうし。
……私は元々は、どこにでもいる普通の女子高生でした。軍隊なんてまったく縁がなかったですし、その基地だって興味もありませんでした。
コトちゃんが機械いじるの好きだから、好きな人の趣味って意味では一切興味がなかったわけでもないんですけど。でも、自分からそんなに積極的にかかわろうとまでは思ってなかったくらいには、興味がなかったのです。
それでも、こうやって実際に目の当たりにすると、なんだかんだで思うところはあります。レイちゃんに付き合ってあれこれするうちに、造詣が深くなったからってのもあると思いますけどね。
でもやっぱり、ここで見聞きしたことをいつかコトちゃんのために使えないかなって気持ちが一番大きいので、私にとっては興味の対象とはちょっと違うんでしょうね。
「残念ながらBB-8の持ち出した地図は不完全なものでした」
なんてことを考えながら基地の中を探検してると、3POの声が聞こえてきました。どうやらレイアさんたちと何か話してるみたい。
レイアさんは間違いなくフォースセンシティブで、もしかしたらフォースユーザーです。私を視認できるでしょうから、ちょっと隠れながら近づいて様子を見てみましょう。
するとそこには、ミレニアムファルコンの中で見た星図の断片が投影されていました。
「そればかりか、記録にあるどの星系の星図とも一致しません。ルーク様を探し出すには、あまりに情報不足です」
「……ルークを見つけて連れ戻そうなんて、バカげた考えよね」
ですが、どうやらレイアさんはルークくんにそこまでこだわってはいないようです。
今まで何年もかけて探してきたのに見つからないなら、それは当てにするべきじゃないって考えなのでしょう。現実的です。
あ、ちなみにですが、R2-D2は何やらルークくんがいなくなってからずっとスリープモードになってるみたいです。うんとんもすんとも言わないみたいです。何があったんでしょうね?
「レイア」
「やめて」
「何をだよ」
「何もかもよ」
一方で、ハンさんがレイアさんに袖にされています。
こっちは……こっちも、きっとルークくんをそこまで当てにしてるわけじゃないんでしょう。ただ、今までのことを謝りたい感じでしょうか。遭遇した場所が場所ですし、きっと夫婦としてはあんまり上手くいってなかったんだろうなって想像はできますしね。
「力になろうとしてるんだ」
「なれたことがあった? デススターを破壊したとき以外」
わあ、レイアさんってば言いますね。やっぱりこじれちゃってるっぽいですね。嫌いってわけじゃないんでしょうけど、こうなると大変そうです。
もちろん、私とコトちゃんはそんなことにはならないですけど。
「なあ、聞いてくれ。君が俺を見るたび、……あいつのことを思い出しているのはわかってた」
「忘れられると思う? 今でも取り戻したい」
「俺たちにはどうにもできなかった――」
と思ってたら、なんだか話の雲行きが怪しいです。
なんですかね、これは痴話げんかとかそういうのじゃないですね? 普通にとても深刻な家庭の事情では?
「――ヴェイダーに惹かれた」
「だからルークに鍛えさせようとしたのよ。それで……結局あの子を失ってしまった。……あなたのことも」
おや。ここでますたぁが出てきます?
「……もっとちゃんと向き合ってやるべきだった。でも……俺たちは自分の世界に逃げ込んだ」
「そうよね……」
「俺たちは……息子を失った」
あのー、二人の息子で、暗黒卿時代のますたぁに惹かれてた……ってことは。
失った、っていうのは別に死んじゃったとかではなくって、オビ=ワンさんがルークくんに対して、父親のことを暗黒卿に殺されたって言ったのと同じような意味ですか?
もしかして、ですけど、二人の息子ってつまり、あの人のことなんじゃ……。
「ええ、一度は。スノークのせいで」
あ、それは初めて聞く人です。
「あの子を暗黒面に誘い込んだのはスノーク。でも、まだ救えるわ」
なるほど、つまり黒幕ですね? シディアスのおじいちゃんみたいな。
「私と。あなたで」
「ルークにもできなかったのに?」
「ルークはジェダイ。あなたは父親よ」
……あ、これは。
ちょっと、風向きが怪しくなってきました。
「まだ希望はある。そう信じているわ」
『いやー、ごめんなさいですけど、それはやめといたほうがいいと思います』
「誰!?」
「え?」
なので思わず、首を突っ込んじゃいました。レイアさんが驚いて、後ろにいた私に勢いよく振り返りました。
けど、半透明の私を見て目を開いて驚いていますね。普通の人間ではない、とはすぐにわかったみたいです。
『家庭の事情っぽかったので黙ってるつもりでしたけど、ちょっと風向きが怪しくなったのでつい』
「……何者です?」
「おいレイア? そこに誰かいるのか?」
そんなレイアさんを、ハンさんが心配そうに見つめています。今しがたやって来た伝令っぽい人も、それを見て固まっていますね。
『私トガです。トガ・ヒミコ……あ、こっち風に言うならヒミコ・トガが正しいんですっけ。まあそれはどっちもでいいです。ご覧の通りの幽霊です』
「……フォーススピリット、ということ? あなたはジェダイなのですか?」
『うーん、そこは私もよくわかんないんですよね。オビ=ワンさんやヨーダさんみたいなスピリットとは厳密には違うみたいなんです。あの人たちはフォースのあるところにならどこにでもすぐに行けますけど、私はできないので。それと……私がジェダイかどうかは諸説ありますね。銀河共和国のジェダイか、と聞かれたらそれは違うって断言できますけど』
「……でしょうね。あなたからは暗黒面の気配がする」
おや? それを感じ取れるんですか?
『……ってことは、レイアさんはエンドアのあとジェダイとしての訓練を受けたんですか。最低でもセンシティブとは思ってましたけど、やっぱりますたぁの娘なんですかねぇ』
「……!!」
あ、ちょ、そんな怖い顔しないでください。落ち着きましょう?
『心配しなくっても、私のますたぁはダース・ヴェイダーじゃないですよ。私のますたぁはアナキン・スカイウォーカーです。なので、あなたたちの敵じゃないです。ちゃんと味方ですよ』
「それを信じられるとでも?」
『それ言われちゃうと、何も言えないんですよねぇ。信じてください、としか』
「…………」
『…………』
結局そこから話すに話せなくなっちゃいました。んんん、ひょっとしなくてもやっちゃった感じですねこれ。
「あの……将軍? 敵基地の偵察報告が入ってきましたが……」
けど、そこでさっきから困惑しながらも様子を見守っていた伝令っぽい人が、恐る恐る声をかけてきました。場を一旦落ち着かせるにはちょうどよかったです。
レイアさんはこの場のリーダーとして、優先しないといけないことが多いですからね。とりあえずはこの場はお開きになりそうです。
「あれ? ヒミコさんなんでここに……オーガナ将軍と面識があったんです?」
……フィンくん、間が悪いです……。
いや、これについては口止めしてなかった私が悪いですか。
で、結局私はフィンくん共々作戦会議の場に連行されることになりました。
もちろん、フォースなしに私をどうこうするのは不可能なんですけど。レイアさん普通に使えるっぽいので、そういう意味でも逆らわないほうがよさそうなのです。
ただ……その会議の最中に、例の兵器――スターキラー基地って言うらしいです。惑星一つを移動基地にした上に大量破壊兵器つきって、相変わらずこの国はスケールが頭おかしいのです――が再充填を始めたって連絡が来ちゃったのでさあ大変。
しかも照準先はディカー。つまりここで、発射されたらおしまいです。一秒も争う状況になっちゃったので、私のことは完全に棚上げになりました。
なのでこれ幸いとばかりに、私はフィンくんに憑りつきなおして逃げました。これはきっと、今はまだそのときじゃないってフォースが言ってるに違いないのです。
……まあ、フィンくんがレイちゃんを助けるためにハンさんと一緒にスターキラー基地に潜入することになったので、その見送りに来たレイアさんとまた鉢合わせる羽目になるんですけど。
ところでこれは愚痴なんですけど、恋人と引き裂かれて十年以上経ってる私の目の前で、イチャイチャするのはちょっとやめてほしいのです。悪気なんてないのはわかってるんですけど、それはそれなのです。
「……もしあの子に会えたら。連れて帰って」
『や、だからそれはやめたほうがいいのです』
だからってわけじゃないですけど、今の私はいい感じの二人の間に口を挟む、悪女なトガです。
レイアさんが睨んでるのは、邪魔されたからだけじゃないですね。でも言わないといけないことは言わないとです。
『フィンくん、またちょっと身体借りますね』
「もう好きにしてくれ……」
とりあえずこのままだとハンさんと話ができないので、もう一度フィンくんの身体を借ります。彼はどこか遠い目をしながら脱力してくれたので、スムーズに行きました。
「こんにちは、フォースセンシティブにしか見聞きできない幽霊です。お二人に話したいことがあるので、フィンくんには身体を貸してもらいました」
「……さっきレイアが警戒してたのはあんたか」
「はい。私、トガです。ヒミコ・トガ。アナキン・スカイウォーカーの弟子です」
「なんだと?」
「私はフォースの光と闇、両方の訓練を受けました。なので、どっちのこともある程度わかるんです。その経験から言うんですけど……暗黒面にいる人を下手に光明面に戻そうとするのはやめといたほうがいいです。意固地になって余計反発されるのがオチです」
「俺にはできないって言うのか? ルークは自分の親父を連れ戻したのにかッ?」
「子供が生き別れた親に願うのと、親が放置気味だった子供に願うのとでは意味が違いますよ?」
私がそう言うと、ハンさんは露骨に顔をしかめました。痛いところを突かれたって感じの顔です。
レイアさんのほうも似たような顔で、思うところがあるみたいです。垣間見えた内心からすると、二人がお子さんをルークくんに預けたときのことを後悔しているようです。預けたことそのものじゃなくて、そこに至るまでの過程と預けるときのやり取りなどを。
こういうところ、やっぱりなんだかんだで夫婦なんですね。
「……じゃあどうしろって言うんだ……俺たちは息子を失ってるんだぞ」
「
でも、だからこそ私はきちんと言わないといけないんだって思うのです。
「
でもたとえ真っ黒で、仮面つけてて、真っ赤なライトセーバーで人を殺してても。それがあなたたちの息子さんなんだってことから、目を逸らしちゃダメなのです。どれだけ性質が真逆でも、いる場所が違うだけなんですから。
オルデラン王女だろうとレジスタンス指導者だろうと、元老議員だろうとパドメさんとますたぁの娘だろうと……立場が違って周りからの見え方が違っても、みんなレイアさんなのと同じですよ。だから、息子さんはまだこの銀河でちゃんと生きてます」
「「……!」」
「だから、認めてあげてください。別に人殺しを認めろって話じゃなくて……子供って親に反発するものですけど、でも、それでも、心のどこかで親にわかってほしいって思ってもいるんです。血が繋がってるってだけなのに……あるいは繋がっているからこそ、どうしても思ってしまうときはあるのです……」
私もそうでした。普通には生きられない私を……どうしても血が好きで好きでたまらない私を、それこそが自分にとっての「普通」だって言い張る私を、両親はわかってくれませんでした。だから今はもう諦めてます。
でも……それでも、やっぱりわかってほしかったとは思うのです。わかり合えてる家族を見て、わかってくれる
けど、だからこそ私は思うのです。私は闇を否定しない生き方がしたい、って。
「だから。彼のいいところも悪いところも、全部彼なんだって……光のところも闇のところも全部まとめて一人の人間で、それが自分たちの息子なんだって、認めてあげてほしいんです。彼が光として生きるか、闇として生きるか……そんな彼が選んだ生き方を受け入れるかどうかは、そのあとの問題なんじゃないかなって……ジェダイとシスの両方を間近で見た私は、思うのです」
だって、それがヴィランになるはずだったであろう私に対して、コトちゃんが示してくれたあり方だから。私は、
離れ離れになっても、ちゃんと理波と過ごした日々はトガちゃんの中でしっかり生きてるのです。