その後もいくつか言葉をやり取りしましたが、結局のところ今が緊急事態なのには変わらないので、話し合いもそこそこに私たちはディカーを後にしました。
嫌な予感がとまらないので、「作戦の成功失敗に関係なくすぐにディカーを離れられるようにしといたほうがいいですよ」って別れ際に伝えられただけでも、ひとまずよしとしましょう。
ハイパースペースでの移動中は、改めての私の自己紹介で大体が終わりました。
そもそも幽霊ってことだけでも説明するのに時間がかかるのに、私の立場はそれに加えて別銀河からの来訪者で、レイちゃんの育ての親で、義理の姉で、おまけに未来人なんて肩書もセットなので、話すととにかく長いのです。
その中から話したらまずいことを省かないとなので、考えながら話す必要もあって、正直とっても面倒でした。
ついでに言うと、私はフィンくんを仲介しないとハンさんやチューイくんと会話できないので、それで余計に時間がかかったのです。フィンくんの身体をずっと借りてるわけにもいかないですからねぇ。
「どうやって抜けるの?」
とりあえずの区切りがついたところで、目的地が近くなってきました。フィンくんが聞きます。
スターキラー基地は、惑星一つをそっくりそのまま移動宇宙要塞にしてしまったっていうとんでもないモノです。しかも惑星全体をシールドで囲んでるので、侵入も不可能です。
「シールドには周波の隙間がある。光速未満の物体は捕まっちまうが、それ以上なら」
ところが、ハンさんはこともなげにそう言い放ちました。さすが、伝説のアウトローは一味違います。
まあ、ちょっとでもタイミングを間違えたらシールドに激突して宇宙の藻屑になるか、惑星に直撃して宇宙の藻屑になるかなんですけど。そういう紙一重の作戦を思いつくだけじゃなくて、実行しようとするのは控えめに言ってどうかしてると思いますよ。
そういう意味でも、伝説のアウトローですよね。私は普通の女の子なので思ってもしません。
「光速で侵入して、着陸するんですね」
そしてそんなアイディアに、ノータイムで乗っちゃうフィンくんもフィンくんです。やっぱり彼、出久くんタイプですよ。
でもまあ、他に方法がないのも事実です。仕方ないので、ここは私もお手伝いしましょう。突入するタイミングは、フォースで感知できるはずなので。
「行くぞチューイ……」
いよいよそのときが近づいてきました。ハンさんが集中します。
私もします。フィンくん、また身体借りますねぇ。
「今で「いやまだだ」す?」
そして見極めた私の合図に、ハンさんはノーを突きつけました。
私が首を傾げる間もなく、一秒にも満たないわずかな時間が過ぎたあと。
「今だ!」
ハンさんが一気にレバーを動かし、ファルコンがハイパースペースからリアルスペースに飛び出します。
現れた場所は、雪に覆われた山脈の手前。普通にしてたら余裕のある距離ですが、何分光速から脱した直後なので、ほっといたらそのまま山に激突です。
「引き起こしてるよ!」
チューイくんが咄嗟に指示を出しますが、ハンさんが自分で言ったようにとっくに操縦桿は限界まで引き起こされてます。ファルコンの船首が鋭角で上を向き、山にぶつかるスレスレをなんとか回避しました。
かと思えば、現れたのは深い森です。たくさんの木々が生い茂っています。
そんなところに突っ込めば、当然船は大変なことになります。シールドを張ってるので致命傷にはならないですけど、かなりの衝撃が船体を容赦なく襲ってきてます。
もちろんもう少し上に上がればいいんですが……。
「これ以上上げたら見つかる!」
そう、ここはもう敵の基地の中なのです。木を無視して森の中を直進するスターシップは正直それなりに目立つんですけど、かといって船体そのものをさらすともっと目立つので、仕方がないのです。チューイくんの抗議はそんな真っ当な理由で却下されたのでした。
このあとも雪原を滑べり下りたり、崖から落ちかけたりしましたが、なんとか私たちはスターキラー基地に降り立つことができたのです。
「俺の勘も、そう捨てたもんじゃないだろ?」
ファルコンを降りるとき、ハンさんがそう言いながらウィンクを飛ばして来ました。
ええ、はい。素直にカッコいいと思いますよ。ウィンクを飛ばした方向が微妙に違ってたのはしまらなかったですけど。
でもそれはそれとして、なんだか悔しかったので肩をすくめるくらいしか返せなかったのは、失敗だったかなって思います。
まあフォースも万能じゃないですし、私も鍛錬が足りないなってことには改めて気づけたので、そこはよしとしましょう。
あ、今の考え方はコトちゃんっぽかったですね? うふふ、ちょっと嬉しいです。
……はあ。早くコトちゃんに会いたいなぁ……。
「行くぞ。案内は任せた」
「はい!」
何はともあれ、ここからはフィンくんが先頭です。なんでも彼、スターキラー基地で働いてた時期があったみたいで、だからここのことはそれなりに詳しいみたいです。
実際、今回の作戦は彼の知識が元になって立てられています。侵入した私たちの目的はもちろんレイちゃんの救助もありますが、スターキラー基地の超兵器を支えている部分――サーマルオシレーターっていうみたいです――を破壊して兵器を使えなくすることもあるのです。
ここを破壊できれば、ディカーを狙っている超兵器をとめるだけじゃなくって基地を破壊することもできるらしいので、やらないって選択肢はなかったんです。
……なんだかデススターみたいですね。規模はこっちのが全然大きいですし、そもそも星を覆ってるシールドをまず解除しないと何もできないですけどね。
そんなわけで、私たちはスターキラー基地まで来ました。
「排水用のトンネルがあっちに。そこから入りましょう」
「……ここにいたとき、何をやってたんだ?」
その迷いのない言葉に、ハンさんが質問します。
「清掃作業です」
ところが返ってきたひどい答えに、ハンさんは目をむいてフィンくんの肩を引っ張りました。
「清掃作業だと!? それがなんでシールドのとめ方を知ってる!」
そうですね、ホントその通りだと思います。
「知りません」
これに対する答えは、もっとひどいものでした。ハンさんは愕然としますし、私もフィンくんの中であちゃーと頭に手をやります。
今回の作戦は、まず私たちがスターキラー基地の惑星シールドを停止。それから反乱軍のパイロットさんたちが、Xウィングでサーマルオシレーターを攻撃するって流れになってます。
ええ、シールドをとめられることが前提なんです。さすがのハンさんも、ここまでノープランだとは思ってなかったみたいですね。
「みんなが俺たちに期待してる! 銀河の運命がかかってるんだぞ!?」
「とめ方はこれから考えましょう」
なのに、フィンくんはなんでそんなに冷静なんです? 一周回って、ってやつです?
「……そうだ、フォースを使えばいい! そうでしょう、ヒミコさん!」
『それはダメですね』
「え!? ダメなの!?」
「おい。おい!」
フィンくんは閃いた! って顔してましたが、残念ながらダメなのです。
『ここにはレン
あとこれはこの場だと私にしかわからない感覚なので、言わないんですけどね。
「……よし! 行きましょう!」
「おい待て! お前いい加減にしろよ!?」
あ、フィンくんったらなかったことにしました。こういうところは、出久くんのが綿密ですね。
まあ出久くんも出久くんで、大体はいつも出たとこ勝負してますけど。そういう意味では、やっぱり似てるのかも?
はあ。これでホントになんとかなるんですかね? ルークくんやますたぁの経験を見てるときは、観客気分だったのであんまり思うところはなかったですけど……当事者になるとやっぱり不安ですよぉ。
***
なんとかなりました。なっちゃいました。
私はムリって思ったんですよ。どこにシールド制御装置があるのかわからないならわかる人を捕まえて聞き出せばいい、なんて作戦にもなってない作戦。そんなのできっこないって。
みんなもそう思うでしょ? そもそもそんな人がどこにいるかわかんないし、わかったとしてもそういう重要な立場の人が一人でうろついてるわけないじゃないですか。
なのにわかる人が一人でうろついてるし、普通に不意打ちが成功しちゃうし、シールド制御装置にも辿り着いちゃうし……。
そりゃあ、フォースでの探知はできなくってもフォースが告げてくる直感に従った案内くらいはしましたけど。だからって、そんな……ねぇ?
なんなんですかね。デススターも結構アレでしたけど、ここの基地もなかなかにアレですね? それでいいんです?
それとも軍隊って、わりとどこもこんな感じなんでしょうか。日本はそんなじゃないって私祈ってますよ?
あ、ちなみにレイちゃんは普通に自力で脱出してました。マインドトリックを使って独房から逃げ出したみたいです。
帝国時代のストームトルーパーもそうでしたけど、トルーパーの人たちってフォースに弱い人しかいないんです? クローントルーパーはそう作られてる以上、仕方なかったと思いますけど……。
でもまあ、おかげで無事に……はい、ホント、何事もなく無事に合流できたわけなんですけどね。
私のこの妙な疲労感というか、肩透かし感というか、徒労感というか……そういう、とっても釈然としない気分はどうすればいいんでしょう?
「……苦戦してる」
それはさておき。
基地から一度脱出した私たちですが、まだサーマルオシレーターは破壊されていませんでした。それどころか、タイファイターがXウィングを押し始めています。今も私たちの目の前で、二機のXウィングが撃墜されました。
「放っておけないな」
確かに、このままうまくいくようには見えないですね。ハンさんに賛成です。
「こういうこともあろうかと、爆薬は山ほど持ち込んである。やってやろうぜ」
そして不敵に笑う彼の姿は、やっぱり英雄って呼ばれるだけのことはあるなぁって思えるものでした。レイアさんはこういうところに惹かれたんでしょうねぇ。
と、いうことで急遽ですが、持ち込んだ爆薬でサーマルオシレーターを破壊しちゃおう作戦が始まりました。
やり方は簡単。二手に分かれます。片方はサーマルオシレーターの中枢部分に侵入して、爆薬を仕掛けるチーム。もう片方はそれを支援するチームです。以上です。
……わかってます、他にもっと何かあるだろってことくらい。でも、唐突に決まった作戦にこれ以上のことなんてないんです。本当なんです。
何はともあれそんなわけなので、チームは二つ。ハンさんとチューイくんが侵入、レイちゃんとフィンくんが支援です。
私はもちろん、レイちゃんと一緒です。改めてペンダントをかけてもらって、そこに宿りなおします。
「ほらこれ。君が持ってるべきだ。そうだろ?」
「ありがとう。……でも私、
そして、フィンくんからは二本のライトセーバーが渡されました。レイちゃんのと、ますたぁのです。レイちゃんのセーバーは、私がちゃっかり回収していたのです。
でもレイちゃんが言う通り、彼女はジャーカイが使えません。私がわからないので教えられなかったからなんですけど。
ともかくそういうわけで、レイちゃんはますたぁのライトセーバーをフィンくんに戻しました。私個人としては、素人未満のフィンくんにそれはもったいないって思いますけど……まあ今はいいでしょう。
それじゃ、作戦二つ目がんばりましょっか。
やたら警備がザルな敵基地はスターウォーズの伝統。
たぶん配備されてる人員が基地の規模にまったく見合ってない人数なんだと思います(名推理