銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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9.カイロ・レン

 さてそんなわけで二手に分かれた私たちですが、先にやることをやり終わったのは私たちのほうです。ハンさんたちが侵入しやすいように遠隔で扉を開けたりしてたんですが、目的地についたからにはもうあまりやることがないので。

 

 とはいえ、それで完全に終わりなわけはないです。撤退が一番難しいってのは、私だって知ってるのです。ハンさんたちが無事にここから出られるようにしないとです。

 もちろん、レイちゃんとフィンくんもそれはわかっています。なので警備システムをダウンさせたあと、改めて別のルートでサーマルオシレーターのある区画に侵入することにしました。

 

 幸い、と言っていいのか……今のところは襲撃に来てるXウィングたちの対処と例の超兵器のことを最優先してるのか、こっちに大々的な追手は来てないです。

 

 来てないんですけど……。

 

『あ。レイちゃん、レンくんが来てます。すっごく近いです』

「……! 急がなきゃ……!」

 

 そう、スターキラー基地に来たときはなぜか動きが鈍かったレンくんが、こっちに来てたのです。案外、ハンさんのことが気になるんですかね?

 

 でもだからって、レンくんがハンさんに絆されてくれるのを期待するのはやめといたほうがいいでしょうね。根っこがヴィランな私にはわかります。暗黒面ってのはしつこいのです。だから、急いだほうがいいのは本当。

 

 けど急かすまでもなくレイちゃんもフィンくんも状況は察してくれてたので、自発的に急いでくれました。おかげでレンくんとハンさんの対面に間に合いました。

 

 ……ああ……。こうやって近いところで見ると、やっぱり間違いないですね。レイちゃんと彼のフォースは同じです。光か闇かっていう、方向の違いはありますけど……それでも。

 

 フォースダイアド。二人はきっと、そうなんだと思います。

 

 信じられません。私とコトちゃんもフォースダイアドですが、私たちの同質性は後天的なもの。私の”個性”がそうさせたのであって、あくまで人工的なものなのです。

 

 けどこの銀河に、”個性”なんて便利で摩訶不思議なものはないのです。だからこそ、二人はきっと天然のフォースダイアド。それが一体、どんな低確率なのか考えたくもないのです。

 

 でもだとすると。二人がフォースダイアドだとしたら、このあと二人がどうなるのか心配です。この銀河で、フォースの使い手はそれだけ数奇な運命に愛されてしまいますから……。

 

「そのマスクを外せ。必要ないだろう」

 

 ハンさんの声で、私はハッとしました。

 

 大きな空洞の中、橋のようになってる足場を見下ろす私たち。その先で、橋の真ん中あたりで、ハンさんがレンくんに声をかけていました。毅然とした、というよりは、言い聞かせるような。そんな口調で。

 

「外してどうなる」

()()()()()()()()

 

 この言葉に、一人だけまだ事情を聞かされていないレイちゃんが「えっ」って顔をしました。気持ちはわかりますけど、この状況でそれはちょっとくすって来ちゃいます。

 ……あっ、ごめんなさい、怒らないでレイちゃん。

 

 なんてことを内心でしてる間に、レンくんがマスクを外しました。現れたのは、精悍な――でも、どこか迷子みたいな顔の男の人。

 どっちかって言うと、レイアさん似ですかね? 男の子はお母さんに、女の子はお父さんに似るって言いますもんね。

 

 ……私とコトちゃんの間にもし子供が生まれたら、どっちに似るんでしょう? 楽しみですね。ますたぁを生んだっていうフォースの処女懐胎……なんとか覚えて帰りたいものです。

 

「お前の息子は、死んだ」

 

 と、そんなことしてる間に二人のお話が始まりました。真面目にちゃんと聞きましょう。

 

「父に似て、弱く愚かだった。だから俺が消した!」

「いいや。息子は今もいる。ここに。ベン・ソロも、カイロ・レンも。どっちも等しく俺たちの息子だ」

 

 ハンさんの返答に、レンくんの目が丸くなります。言葉が喉でつかえてるみたい。その返しは予想してなかった、って感じの顔です。

 

 よっぽど予想外だったからか、この距離でも少し、彼の心の中が見えました。スノークのせいだ、とか言われるって思ってたみたいです。

 

 実際、ハンさんはそう思ってるみたいです。けど、今は言わないことにしたみたい。私の言葉が、頭の中でぐるぐるしてるように見えるのです。

 

「生憎と俺は、生まれついてのアウトロー。光とか闇とか、そんなことはどうだっていいのさ。そう、どうでもよかった……よかったはずなんだ。それを忘れてた……忘れて、お前を。大事な一人息子のことを、まっすぐ見てやれなかった……」

「な、にを」

「それは、それだけは、誰になんと言われようと。仮に神なんてくだらんやつがこの世のどこかにいたとしても、これは、この罪だけは、神にも許させはしない、俺たち夫婦の過ちだ!」

 

 懺悔するようなその宣言に、レンくんの顔が怒りに染まります。腰のライトセーバーに、手が伸びました。

 

「ふ……ざ、けるな……ッ、今さら何が罪だ……! ならば今すぐ死んで贖え!!」

 

 伸びる赤い光刃。それが一直線に、ハンさんの首に吸い込まれていきます。

 

「それは困る!」

「はあ……!?」

 

 けどその動きは、ハンさんの開き直ったかのような言葉に、揺らぎながらとまりました。

 

「死んじまったら、一回しかお前に償えないじゃないか。それじゃ困るんだよ。俺たちがお前にしたことを思えば、これから先寿命で死ぬまで償い続けても足りないんだからな」

「へ……屁理屈を……!」

「それでも理屈は理屈だ。そうだろ?」

「俺が許すとでも思っているのか!?」

「いいや? これっぽっちも思ってない」

「貴様ふざけているのか!?」

 

 ……なんだか、普通にただの親子喧嘩みたくなってきましたね。これにはレイちゃんとフィンくんもあんぐりです。

 

 お外ではXウィングに乗ったパイロットさんたちが死に物狂いでスターキラー基地を破壊しようとしてて、迎え撃つタイファイターも命懸けです。ときたま建物も揺れてます。文字通りの戦争中なんですけどねぇ。ここだけやけに平和です。

 平和……? 平和ってなんでしょう……?

 

「許されるなんて思っちゃいないし、許してくれとも思っていない。その必要もねぇよ」

「…………」

「何せお前も男だ。男なら、悪さの一つや二つするもんだろ。俺だって若い頃は派手にやったんだ。少なくとも、俺はそういう生き方しか知らんし、できん。なのに息子にはするななんて、どの面がって話だよ。

 だから、帰ってこいとも言わない。俺はな。母さんは、まあ。連れ戻してくれなんて言われたが……そこはなんとかするさ」

「…………」

「お前はお前がやりたいようにやればいい。応援してるなんて口が裂けても言えないし、スノークの野郎には正直何発かブラスターをぶち込んでやりたいところだが……それがお前の生き方だって言うんなら。

 ま、とはいえ俺にもポリシーってものがある。息子だろうと、それを侵すやり口を見過ごせないのも事実――」

「――……ッッ!!」

 

 とここで、レイちゃんとフィンくんが息を呑みました。レンくんが、切っ先を震わせていたライトセーバーを改めて振りかぶったからです。

 

 ハンさんは、まるで無抵抗です。ブラスターにも手を伸ばしてすらいません。振り下ろされれば、間違いなく死んじゃう状況です。

 

 でも。

 

「ぬおおおおお……ッ!!」

 

 でも、きっとハンさんにはわかっていたのでしょう。

 いいえ、信じていた、って言うのが正しいのかもですが。

 

 どっちにしても、赤いライトセーバーが振り下ろされることは。

 

 なかったのです。

 

「あああああ……ッ、あああああ……っ、う、ううううう……ッッ!!」

「――ベン。無理はするな。しなくていい……今まで一人にして、すまなかった。本当に……本当に、すまなかった……」

 

 感情が爆発しています。怒りと、悲しみと、苦しみと……それから、少しの嬉しさ。そういうものが、たくさん混ざって複雑になって、そのまま薄まることなく爆発しているように見えます。

 子供の癇癪みたい、って言うのは簡単でしょう。でも、私にはもっと深くて、純粋で、でもぐちゃぐちゃに絡み合ったものに見えました。

 

「あああああッッ!! くそッ、くそッ! くそォッ!! うおおおおああああああ!!」

 

 喉を潰すかのような勢いで絶叫するレンくんから、暴走したフォースが、光と闇が入り混じる歪な力の発露が、竜巻のように吹き荒れます。

 

 なんて大きなフォースでしょう。コトちゃんと比べても、すごく多いのがわかります。

 そんなのを感情に任せて思いっきり放出すれば、それは本当に竜巻以外の何物でもないです。物理的な力を伴って、周りのものをところかまわず吹き飛ばしてしまいます。

 

「ダメ!!」

 

 そんなことになれば、一番近くにいたハンさんは当然のように吹き飛ばされ……っていうか巻き上げられて、天井に向かってきりきり舞いです。

 十数人のストームトルーパーも一緒ですね。巻き込まれたんでしょう。彼らは不運だと思って諦めてもらうしかなさそうです。フォースで引っ張り上げられる人間は、せいぜい一人くらいなので。

 

 当然、レイちゃんが全力でフォースプルをかけたのはハンさんです。お世辞にも戦力にはならないですけど、フィンくんも見様見真似で追従してます。私も同調しておきましょう。

 

 三人がかりで――ほとんど二人がかりってのは言っちゃダメなのです――フォースプルをすれば、さすがにある程度余裕をもって引き寄せることはできましたが……攻撃性の乗ったフォースを至近距離で受けてしまったとなると、無事では済まないでしょう。外傷はなくっても、重傷者扱いしておいたほうが無難だと思います。

 実際気絶してるみたいだったので、慎重にここから運び出しましょう。

 

 おまけに、レンくんが放ったフォースの竜巻が仕掛けてあった爆薬に影響したのでしょう。あっちこっちから爆発が起こりました。

 ただでさえ破壊力抜群のフォースの竜巻が吹き荒れる中でのことです。泣きっ面に蜂って、たぶんこういうことを言うんでしょうね。

 

「チューイ! よかった、無事だったのね!」

 

 ここにチューイくんも合流しました。なんだか必死に叫んでますね。自分はまだ起爆させてない、って訴えてるみたいです。

 

 うん、そうですね。チューイくんは何にも悪くないです。悪いのは……うーん? でもこの場合、本当の意味で悪い人っていないような。

 

「わかってる! でも今は、早くここから脱出したほうがいいわ!」

「ああ、このままじゃ俺たちも巻き込まれるぞ!」

 

 まあ何はともあれ、そういうことになりました。

 四人がかりでハンさんを抱えて、なるべく揺らさないようにしながら。でもなるべく急いで、ファルコンに向かいます。

 

 その途中、私たちの頭上を複数のXウィングが飛んでいきました。向かう先はサーマルオシレーターみたいです。まだ完全には破壊できていなかったんでしょうね。とどめを刺しに行ったんだと思います。

 

 実際、私の推測は正解でした。一分もしないうちに、後ろから……つまりサーマルオシレーターのほうから、とんでもない規模の大爆発が起こりましたから。

 

 これに連動して、惑星を破壊するスターキラー基地の超兵器の駆動が急にとまり、それどころか足下……つまりは基地を埋めてある惑星そのものが、悲鳴を上げ始めました。どうやら、作戦は成功したみたいです。

 

 でも、せっかくサーマルオシレーターの崩壊に巻き込まれずに済んだのに、基地の崩壊に巻き込まれて死んじゃうのはヤです。

 なので私たちはさらに走る速度を上げて、どうにかこうにかファルコンにまで辿り着きました。

 

『こちらブラックリーダー、ポー・ダメロン! やったなフィン! レイ!』

 

 そしてファルコンを発進させると同時に、追いついてきたXウィングから通信が来ます。どうやら、サーマルオシレーターを吹き飛ばした功労者はポーさんみたいですね。

 

「こちらフィン! ああ、ポー! なんとかね……!」

『そっちは無事か?』

「とりあえず、全員生きてはいる! ……けど、ソロ将軍が意識不明で」

『……そうか。よっしわかった! 急いで基地に戻ろう! そうすりゃちゃんとした治療も受けられるはずだ!』

「……ああ、そうだな。まずは、ちゃんと帰ってからだな!」

『そういうこと! ……全機に告ぐ! 任務は終了だ。さあ、帰ろう!』

 

 その通信を最後に、私たちはファルコン、Xウィングの別なくハイパースペースへジャンプしたのでした。

 




EP7のストーリー内における明確な違いそのに。
設定を見る限り、カイロ・レンことベン・ソロの心の闇ってさほど強くないですし、原作でもここめちゃくちゃ葛藤してるので、理解ある姿を見せられたらもっと葛藤するだろうなっていう判断です。
原作だとハン・ソロのEP7における出番はここで終わりですが、直前にトガちゃんが色々吹き込んだ影響で流れが少し変わり、本作ではまだまだ出番があります。
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