「ちょ……ちょっと、ちょっと待って!? 違う! 別に奪ったとかじゃないわ!」
「そう! 俺たち、あなたに会いに来ただけで! そんなんじゃないんです!」
レイちゃんが慌てて両手を挙げて、敵意はないアピールをします。一拍遅れて、フィンくんも続きました。
けど、それでもルークさんはシエンを解きません。それどころか、少しずつですがにじり寄ってきてます。
これはもう完全にそういうことでは? 私たちもライトセーバー抜きません?
『待って! 義姉さんもうちょっと待って!』
レイちゃんはまだ説得を続けるみたいです。まあ実際、本気の戦いになったらたぶん勝てないですし、間違ってはいないと思いますけど……備えくらいは必要だと思うんです。
「……お前は誰だ?」
と、心の中でレイちゃんと会話した直後。ルークさんがさらに表情を険しくしながら聞いて来ました。
「私はレイ。こっちはフィン。レイアに頼まれて、あなたに会いに――」
「――違う、君たちじゃない」
「……え?」
彼は続いて、自己紹介をしようとしたレイちゃんを遮りました。
彼の顔は相変わらず険しいままで、その鋭い視線はやっぱり私のペンダントに向いています。
っていうことは、これは……。
「そう、お前だ。この子の中にいる、お前は何者だ?」
ああ、やっぱり。
どういうことかはよくわかりませんが、どうやらルークさんは私をとっても警戒しているようです。別に隠れてなかったので気づかれるのも無理はないと思いますが、それでもこんなに警戒されるいわれなんてないと思うんですけど。
でも仕方ありません。なんでかわかんないのに敵視されるのはもやっとしますが、レイちゃんたちを危険にさらすわけにもいかないので、ここは素直に対応しましょう。
ということで、レイちゃんの身体から抜け出る私です。
「フォーススピリット……いや、オビ=ワンやヨーダのそれとは違う、か?」
『そですね、私はフォースさえあれば銀河のどこにでも行けるあの人たちとは違うみたいです。……初めまして、私トガです。ヒミコ・トガ。……遠い遠い、8700万光年離れた別の銀河から来ました』
私の名乗りに、ルークさんは少しだけ眉を上げました。言葉はなかったですけど、どうやらすぐに切りかかってくることはひとまずなさそうなので、説明を続けます。
私がこの銀河系に来た経緯に、レイちゃんとの関係。それから私が具体的にどういう人間なのか。その辺りのことを、できるだけきちんとわかるように気をつけながら話しました。隠してもいいことないと思ったので、私が闇寄りってことも一応。
未来人ってことと”個性”のことを説明をするとややこしくなるので、そこは省きましたけど。
その間、ずっとブレずにセーバーを構えてたルークさんは、もうそこそこなお歳なはずなのにすごいなって思います。私のますたぁがアナキンさんってことを聞いたときは、さすがにかなり思うところがあって思いっきり不満そうな顔をしてましたけどね。
ちなみに、ここでようやく私の正体を詳しく聞いたフィンくんは、ずっと驚きまくってました。
この辺のことは省いてたんですよね。混乱するだろうし、あの急ぎの状況で余計なことまで話すわけにはいかなかったですから。
おかげであまりにもいいリアクションを何回もしてくれる彼に、なんだか楽しくなってきちゃったのはここだけの話です。
「……改めて一つだけ聞く。君は
『決まってます。
この銀河に来てから……っていうより、ジャクーを脱出するっていう運命の歯車が回り始めてから、ずっと感じてきたことなんですけど。
この銀河の人たち、なんでもかんでも光と闇に分けて考えすぎだと思います。大抵のことって、そんな二つにスパって分けられないじゃないですか。
もちろん、根っこはヴィランな私がこういう風に考えるようになった理由はコトちゃんですけどね。光の立場なのに、私っていう闇を正面から受け入れてくれたコトちゃんがいてくれたからこそ、私はこういう風に思えるようになったのです。
まあ、私の受けた教えがこの時代までの失敗を元にして発展しただろうものだから、ってこともあるんでしょうけど。
『私にとって、フォースは道具なのです。包丁と一緒ですね。料理に使うか殺人に使うかです。でも、誰かを救けるために使いたいって思ってます。他の誰でもない、世界でいっちばん愛する人にそう誓ったので』
あの日、本当の私を見つけてもらったときから。それは、それだけは、もう何があっても絶対に変わらないのです。
「…………。……、悪かった。すまない」
そんな私の誠意が伝わったのでしょう。ルークさんはまだ完全に警戒を解いたわけではないですが、それでもライトセーバーはしまってくれました。
同時にフォースがほとんど感じられなくなったのは、もしかしなくても意図的にフォースとの繋がりを閉じてます? なんでです?
ですが私が首をひねってる間に、彼はそのままくるりと向きを変えて、ここから立ち去ろうとしてしまいます。
「あっ、ま、待って!」
慌てて追いかけるレイちゃんとフィンくん。
だけどルークさんは立ち止まりません。振り返りすらしませんでした。まるで逃げるかのように、直前までの力に満ちた様子とは正反対な、弱弱しい姿です。
「このままじゃ主な星系が数週間でファーストオーダーに支配されるわ!」
「だから必要なんです、ジェダイオーダーの復活が! ルーク・スカイウォーカーの存在が!」
レイちゃんとフィンくんが、追いかけながら言い募ります。ですが、
「……スカイウォーカーなど必要ない。帰れ」
返事はそっけないものでした。ルークさんはそのまま、家らしき建物に籠ってしまいます。
ばたん、と結構大きな音がして閉じた扉の前で、顔を見合わせるレイちゃんとフィンくん。
「……義姉さん、どうしよう?」
『扉なら、チューイくんに蹴っ飛ばしてもらえば一発だと思います。ウーキーは力持ちなんです』
「いや……それはどうなんでしょうね?」
『説得っていう意味でなら、たぶんすぐにはムリですね。もしかしたらずっと。それでもやるって言うなら、きっとここに永住する勢いがないと』
「そんな……。こうしてる間にも、ファーストオーダーは動いてるって言うのに」
「ええ、さすがに無期限でここにい続けるわけにはいかないわ」
ということらしいので、チューイくんに出番が回ってきました。
うん、たまには強引なやり方も必要ですよね。ルークさんを追いかけてるときに軽く周りを見てましたが、ここには危ない生き物もいないっぽいですし、全員で押しかけてもファルコンは大丈夫でしょう。
ってことで、ハイどーん!!
「チューイ!? なんでここにいる!?」
『R2もいますよぉ』
「R2!? R2! ああ、我が友よ……」
完全に押し入った形の私たちですが、案外ルークさんは迷惑そうにはしませんでした。
それは、チューイくんとR2を連れてきたからってのが大きいでしょう。さっきまでずーっと仏頂面だったルークさんですが、二人を見た瞬間子供みたいに表情と声と、それに心を弾ませたんですから。
けどそのまま彼の心が晴れることはありませんでした。相変わらず、彼の心は曇ったままです。ハンさんが言ってた、「ある少年の裏切りで、彼の心は大きく傷ついた」ってのはそんなに大きかったんでしょうか。
「……他者の内心にそう簡単に踏み込むものじゃあないぞ」
うーん、って唸ってる私を、ルークさんが軽く睨んできました。バレちゃいましたか。でもですよ。
『だってこんなとこに引っ込んだ理由も、ずっと隠れてる理由も、双子の妹に協力しようともしない理由も、なんにも話してくれないじゃないですか。じゃあ探るしかなくないです?』
「はあ……性根は闇寄りという自己申告に偽りなしか」
『フォースって便利ですよね。たまに勝手に見えちゃうのは、不便だなって思いますけど』
「ここは聖なる地だぞ、言葉に気をつけろ」
『そう言うってことは、ジェダイって生き方は捨てれてないってことでいいです?』
そんな言葉の応酬の果てに、ルークさんは「しまった」って言いたげに顔をしかめました。図星みたいです。
ふふ、どうやら私のフォース技術も捨てたものじゃないみたいですね。スキを突けば、ルークさん相手でも多少は有効打を出せるみたいです。
コトちゃんのところに早く帰れるように、今でも私にしてはびっくりするくらい真面目に訓練してるのが活きてるってことですね。嬉しい。
でもそれはそれとして早く会いたいです。
「……それでも。私にはできない」
「なぜですっ? あなたジェダイなんでしょう!?」
フィンくんが声を上げました。頑ななルークさんの態度に、もどかしくなったみたいです。
「ジェダイなどという、過去の遺物に頼る必要などないだろう。ジェダイは滅びるときが来た……それだけだ。それが時代の流れというものだ」
「滅びるって……そんな」
『そですね、共和国のジェダイは滅びるべくして滅んだと思います』
「ヒミコさん!?」
「私も同感」
「レイまで!?」
「でも、それとこれとは話が別よ。ジェダイは滅びるべきって意見と、命を脅かされてる人を救けたいって思うことは別。そうでしょ?」
「…………」
レイちゃんの言葉に、私も全面的に賛成です。フィンくんは「それだ!」って感じでうんうん頷いています。
けど、ルークさんの反応は沈黙でした。やっぱり、説得は難しそうですねぇ。これはもうどうしようもないんじゃないです?
「……R2?」
と、ここで前に出たのはなんとR2でした。彼は無言のままルークさんの正面に立つと、前置きなしにホログラムを投影したのです。
『クローン戦争であなたは父に仕えてくれました。今またあなたの助力を求めています』
現れたのは、若い頃のレイアさん。
そう、それはスカリフからデススターの情報を受け取り、けれど帝国の追手に捕まる直前に撮られた、オビ=ワンさんへのメッセージ。R2が預かり、3POと一緒にタトゥイーンに降りたことで届けられた、物語の始まりを告げたメッセージ。
ルークさんが……まだ何者でもなかったルークくんが、銀河系の自由と正義のために立つきっかけになった、あのメッセージだったのです。
「……ずるいぞ、それは」
これにはルークさんも、ため息交じりにそう言うしかありませんでした。私とチューイくんも思わず苦笑いです。
レイちゃんとフィンくんは、よくわかってないっぽかったですけど、そこはジェネレーションギャップってことで。
「……わかった」
観念したように、ルークさんが言います。それでもまだどこか暗い……というよりは、迷ってるような感じがするのは、気のせいじゃないんでしょうけど。
「私は行かない。もう光る剣を握って戦うような身分じゃない……だが君たちは違うんだろう?」
それでも、ルークさんは顔を上げたのです。
「ジェダイとは何かを教えてやろう。……滅び去るべき理由も」
彼の視線は、レイちゃんとフィンくんを行き来してました。それはつまり……。
「お、俺も、いいんですか!?」
「別に無理にとは言わんが?」
「い、いえ! ぜひっ! よろしくお願いします!」
ああ、ちゃんと素養があることまでわかってたんですね。ホント、才能すごいんですから。もったいない。
『……なんであんなに嫌がってるのかしら……』
『わかんないです。わかんないですけど……でも、やっぱり、きっかけがレンくんであることは間違いないと思います。そういうところが見えたので』
とは言うものの……それは本当に、あの人だったんでしょうか。
私には、どうも彼に何かがダブっているように見えたんですけど……。
フォースが言うことです。気のせいって片付けるのは、ちょっと軽率ですよねぇ……どうしたもんでしょ。
前半は、ジェダイの前に他人の身体に憑りついてる闇の気配漂う幽霊なんて出したら、そりゃあ警戒されますよねっていうお話。
バレバレでしたね。あまりにも当てられすぎて逆に笑っちゃいました。
後半は基本的に原作通りの展開ですが、原作と性格が違うレイの代わりにフィンが色々言う流れになっています。
リアクション担当フィン。やっぱこう、会話を転がすのは作中の物事に対して知識のない人間がいると楽だなって、書きながら改めて実感しました。