銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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13.レイ

 翌日も、ルークさんのわくわくジェダイレッスンは続きました。レッスン2は、ジェダイが犯した失敗についてです。

 

 時代に合わせてアップデートされてこなかった伝統のせいで、硬直化していたジェダイ。

 選ばれし者が現れたのに、教え方を失敗して不審でいっぱいにしちゃったせいで暗黒面に堕としてしまったジェダイ。

 未来を見ることができるからこそ、そちらに意識を向けすぎて今を見ることを疎かにしてしまったジェダイ。

 

 レイちゃんとフィンくんに、そんなジェダイの傲慢さと失敗の数々を講義するルークさんを見ていて、私はここで初めてなるほどって思えました。

 

 一番の敵だったシスの暗黒卿は倒せて帝国はガタガタになったとしても、たった一人の親玉を倒しただけで何もかもうまくいって、全部解決するなんてことはコミックの中だけです。現実はボスを倒したって続きますし、すぐに何かが変わるってこともそうそうないです。

 だからルークさんはエンドアの戦いのあと、きっとあっちこっちを探して回って色んな資料を集めて回ったんでしょう。混乱する銀河を平和にするために、ジェダイの教えと力が必要だと信じて。あるいはそう期待されて。

 

 けれどそうやって苦労して集めた資料の中から、そんな失敗を……ましてやその失敗で、お父さんが暗黒面に堕ちたんだってことを知ってしまったルークさんは、どう思ったでしょう?

 

 勝手な想像ですけど、失望したんじゃないでしょうか。もちろん闇に堕ちるような重いものではなかったでしょうし、もしかしたら自覚すらなかったかもしれないですけど……でも、何かしら思うところはあったはずです。

 

 だってルークさんが若者だったあの当時、既にジェダイはおとぎ話の一部みたいにまで落ちぶれていました。それだけ帝国が、シディアスのおじいちゃんが徹底的にジェダイを消してしまおうとしたからでしょうけど……でもだからこそ、神話として、伝説としてジェダイが美化されてたってところはあると思うんですよね。

 

 でもってそういうジェダイの悪いところを、時間がなかったので仕方ないとはいえ、オビ=ワンさんは何も教えていません。ヨーダさんは少しは教えてたかもですけど。

 

 とにかく、ジェダイの負の面については、きっとジェダイを復興させようとしてから初めて本格的に知ったんだと思うんです。今のルークさんがここまで頑なになった最初のきっかけは、そこだったんじゃないでしょうか。

 

 最後にルークさんは、自分もまたそうしたジェダイと同じく、自分を上回る才能の持ち主であるベン・ソロを、闇に惹かれている少年を自分なら導けると過信して、失敗したのだと締めくくりました。自分の過ちでベン・ソロはカイロ・レンになってしまったんだ、ってことでした。

 

 この話を聞いたフィンくんとレイちゃんは、それでもなおルークさんは裏切られただけで失敗はしてないって慰めてましたけど……ルークさんは苦い顔をするだけです。

 そんな姿を見て、二人は単にそんなにショックだったのかって思ってるみたいですけど……違いますねこれ。今、ちらっとですけど見えましたよ?

 

 ルークさんの言い方だと、ベンくんが自発的に闇に堕ちて裏切って、他の弟子を皆殺しにしたっていう感じでしたけど……そのきっかけってルークさんですね?

 

 いやその、さすがにびっくりするしかないです。だってあのルークさんが、弟子の心に広がる闇の大きさを見誤って手遅れって判断するなんて。あのルークさんが、弟子の寝込みを襲うようなことするなんて、思っても見なかったのです。

 

 ……と思いましたけど、よくよく考えるとルークさんもだいぶ血気盛んでしたっけね。そういうところはますたぁの子なんだなって感じでした。

 とりあえず敵だと思ったらライトセーバー! って感じでしたもんね。親子揃って。私に対してもそうでしたし。

 

 まあそれはともかく、本当のことを敢えて言わないでいるところに、ルークさんのちょっと卑屈なところが見えます。

 

 気持ちはとってもわかりますけどね。失敗なんて、人に知られたくないですもん。私だって小っちゃかった頃の失敗とか、コトちゃん以外には知られたくないです。たとえの重さが違いすぎるのはわかってるので、そこは気にしないでもらえると助かります。

 

 でもそう考えると、ルークさんもちゃんと人間なんだなっていうか……。やっぱり私も、色眼鏡で見ちゃってたんですかね。

 

 だって()()ダース・ヴェイダーを光明面に帰還させた人ですよ? そりゃあ人としてすごいんだって思っちゃいますよね。その前には色んな失敗してたはずなのに。そういう風に思いこんじゃうのは、人間のよくないトコです。

 

 けど……うーん。このことは隠すとあとあとの印象が悪くなる気がします。嘘って、嘘だってバレたとき一気に好感度下がるじゃないですか。

 でもだからって、ルークさんの葛藤に満ちた失敗を、私がバラしちゃうのはなんか違うなって気もして……。うーん。

 

 なんて思ってる間に、レッスン2は終わったみたいです。終わったって言うか、ルークさんが打ち切ったって言ったほうがいいかもですけど。まあお昼の時間なのでちょうどいいと言えばよかったんですけどね。

 

 で、問題はここから。なんでって、またレイちゃんがレンくんとフォースボンドを起こしたからです。

 

 二回目のフォースボンドは、一回目よりも鮮明でした。お互いの周りの光景も、少しですが見えるくらいに繋がりが強くなっていました。

 

 繋がった先は、どうやら医務室らしい場所。レンくんは、そこに寝かされていました。全身が傷だらけで、うなされているようでした。重傷です。

 もちろんと言うべきか、レイちゃんは慌てて駆け寄りました。相手に意識がないのにそこまでできるなんて、ものすごく強い繋がりです。そんなことあるんでしょうか?

 

 そうやって疑問に思って、遠巻きに様子を見ていたからでしょうか。私だけは気づけました。まるで押し付けるかのように、二人の……より正確に言えばレンくんのフォースが何かに後押しされていることに。

 

 邪悪な気配を感じます。そしてそれは、最初のフォースボンドで感じたものと同じでした。ということは、もしかしてこの繋がりは……。

 

 そう思ったところで、フォースボンドは切れました。

 

「……治しきれなかったわ」

『十分だったと思いますよ?』

 

 レイちゃんはどうやら、レンくんにフォースヒーリングをかけてたみたいです。レイちゃん、これがまた結構得意なんですよね。私はあんましなんですけど。

 ちょっと複雑な気分です。私もコトちゃんに変身さえできれば、増幅で同じことができるんですけど……今は身体がないので。それに、今はあんまし変身したいって思えないんですよねぇ。

 

 まあそれはともかく。

 

 この日はそのあとも、何回かフォースボンドが起きました。そのたびにレイちゃんはレンくんの惨状を見て、聞くことになりました。あるいは、対話することもありました。

 午後からレッスン3(本当の正義はいざというとき勝手に身体が動くもので、ジェダイの伝統で決めつけられるものじゃないって内容でした)もあったんですけど、それがかすむくらい何回も。

 

 おかしいですねぇ。私とコトちゃんは、こんな高頻度じゃなかったです。

 いや、恋人になった頃にはもう意識してフォースボンドを起こせるようになってはいましたけど。そうじゃない時期にこんな頻度って、まるで何かあるみたいですよね。そう、誰かさんの作為とか。

 

 あと、毎回私が離れてるときに起きるのは、偶然なのか必然なのか……。必然だとして、それは必要に迫られての必然なのかそうじゃないのか。さてどっちでしょう?

 

 その答えは、夜に遂に決定的なフォースボンドに至ったことでわかりました。レンくんとの対話を通じて、フォースが彼の記憶をレイちゃんにはっきりと見せたのです。

 

 レンくん……ベンくんの寝込みを襲おうとライトセーバーを起動する、ルークさんの姿でした。これにはさすがにレイちゃんも動揺するしかなかったです。

 

 元々、的確な指導をしつつも決して平和のために力を貸そうとしてくれない……立ち上がろうとしてくれないルークさんに対して、フィンくんはもちろんレイちゃんも少しずつ失望を抱き始めていたところです。そこにこれはちょっと、威力が強すぎました。

 

 おまけに、フォースダイアドだからでしょう。レイちゃんの心境や記憶もまた、レンくんに漏れているようです。それらを垣間見た彼から、レイちゃんがまだかすかに抱いている薄暗い感情を見抜かれてしまっています。

 彼はそこをつついて、闇に誘惑しようとしてしてきます。まるでそうしないといけないと脅迫されているみたいな感じでした。

 

 けれど。けれど、です。

 

『大丈夫です。私がいます。ここにいます』

『うん、わかってる。ありがとう、義姉さん』

 

 レイちゃんは一人じゃないのです。

 

 確かに、お父さんお母さんに置き去りにされたことは。お父さんお母さんがいない子供時代の寂しさは、孤独感は、私一人で埋められるものじゃないです。レイちゃんはその悲しみにずっと耐えていました。

 

 それでも、タコダナで見たヴィジョンはそれを思い出に変えるだけの力がありました。

 

 レイちゃんは捨てられたんじゃないのです。ちゃんとそこには理由があったのです。間違いなく、彼女は両親に愛されていました。

 だから、レイちゃんは動揺こそしても、折れることはありませんでした。

 

「あなたは一人じゃない。大丈夫、私はあなたを裏切ったりなんかしない」

 

 レイちゃんの強固な心を察知したのでしょう。愕然とするレンくんに、レイちゃんは手を差し出しました。

 そのまま二人は無言で見つめ合います。いや、レンくんのほうは、レイちゃんの顔を手を何度も交互に見ていますね。

 

 そして……この瞬間、私にははっきりと見えました。最初のフォースボンドから、ずっと警戒して観察に徹していてよかったです。

 

 そうでしょう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『……!』

 

 二人のフォースボンドに割り込んだ私の不意打ちに、巧妙に隠れていたスノークのフォースがはっきりと……そう、フォースユーザーならまず間違いなく認識できるくらいに、その意図までがはっきりとわかる形で引きずり出されたのです。周囲の警戒より、よっぽど夢中になることがあったみたいですね?

 

 直後、まるでコンセントごと切断されたみたいに、フォースボンドが消し飛びました。一瞬で夜のオク=トーに戻されて、呆然とするしかないレイちゃん。

 

 けれどあの様子を見れば、誰だってベンくんがああなるに至った経緯がわかります。何せまったく意識していなかった場所からの不意打ちに、慌てた様子でしたものね。

 どんな達人でも、不意打ちを決められたときは心が乱れるものです。すぐに落ち着いて、リカバリーしたところは達人だなって思いますけど……わからなくても察することはできますし、それさえできればスノークという存在に対する不信感を煽ることにはなるでしょう。十分です。

 

 何せ間近にいたレイちゃんと、物陰から恐る恐る様子を伺っていたルークさんには、丸見えでしたからね。

 

「「今のは……スノーク?」」

 

 自分とまったく同じ内容のつぶやきを耳にして、レイちゃんが慌てて振り返ります。そこには、物陰から踏み出してきたルークさん。その表情は、とっても暗いものでした。

 

 暗いって言っても、単純に嫌な目に遭ったとかそういう方向じゃありません。過去の自分がやったこと、判断したことが間違いだったってはっきりしたせいで、それを強く後悔する方向の暗さです。

 

「……本当なの? 彼を殺そうとしたって」

 

 黙ったままの彼に、しびれを切らしたレイちゃんが問いかけました。ただ文字だけにしたら咎めるようなものですけど、実際の口調はもっと穏やかなものでした。

 

「……闇を見たのだ。訓練のさなかに、闇が彼の中で広がる様を。しかもその闇は深く、私の想像を遥かに超えていた。既にスノークに取り込まれていた。……そう、見えた……」

 

 答えは明確なイエスではありませんでした。でも告げられた言葉は、ほとんどイエスって言っていいでしょう。

 

「……そう、見せかけられた……? 彼の後ろに潜むスノークの闇を、彼のものだと誤認させられた……?」

「……私の責任だ。私が悪い。私がルーク・スカイウォーカーだから。……そう思っていた……。レイアはスノークの差し金だと言ったが……ああ……彼女が正しかったようだ……私は……私は、なんということを……」

「レイアは彼の母親よ。……その、私はお母さんってものをあまりよく知らないけど。でも、そういうものなんじゃない?」

「残念ながら私も母親というものはよくわからないのだよ……」

『それは私もですねぇ』

 

 うーん、なんて偏ったメンバーなんでしょう。思わず全員が沈黙しちゃいました。

 

「……彼を救けに行こう」

 

 その微妙な空気を振り払うように、レイちゃんは結構無理やりに話を変えました。

 

「あなたが失敗したんじゃない。それが真実だったのよ。それに……見てたならわかるでしょう? 今も彼は迷ってる。まだ遅くはないわ。だから、今度こそ」

 

 彼を……カイロ・レンを、ベン・ソロを救けに行こうと、レイちゃんはそう言って手を差し出しました。

 

 けれど、ルークさんはその手を取ろうとはしません。私も、同じ立場だったら素直には頷けないと思います。

 

「……ことは君の考えているほど甘くは運ばん」

『そですね、私もそう思います。今彼がどこにいるのかもわかりませんし、そもそも救けに行けたとしてもたぶんそこにはスノークさんもいますよ?』

「その通りだ。これはまず間違いなくやつの罠()()()()。闇のものは……暗黒面の信奉者は、一つの行動に複数の意味を持たせるものだ。それは様々な枷となって、我々を縛るものだ」

「わかってる」

 

 それでも、レイちゃんの答えは変わりませんでした。

 

「でも……でも! さっき……最後の繋がりで、私を見た彼は……まるで子供みたいだった。暗がりでへたり込んで、泣いてる子供に見えたの!」

 

 彼女のその姿は。

 

「きっとすごく苦労する。私だけじゃない、誰かが大勢死んでしまうかもしれない。方法だって、どうすればいいかなんて今すぐには思いつかない。それでも――」

 

 彼女のその在り方は。

 

「――()()()()()()()()!」

 

 遠い未来、遥か彼方の銀河系でぽつんと佇む地球の、ヒーローそのものでした。

 

 私とルークさんは、思わず目を細めます。若いな、なんて思ったりします。同時に、それがとっても眩しくって。

 

 でも、そうですね。そうでした。

 A組のみんなや、オールマイトの話を寝物語に育ったレイちゃんは、そういう子に育ったんでした。

 

 私の()()で。

 

 なら、私にとめる資格なんてありませんね。むしろ責任を取らないといけない立場です……し、それに。

 

 そもそもの話。

 

 私だって、ヒーロー志望のトガでした。

 

 コトちゃんなら。私の愛する彼女なら、きっと。

 こういうときでも、きっと、諦めたりなんかしないはずなのです。

 

 私は、そんなコトちゃんと同じ場所にいたい。今までも、これからも。ずっと。いつも、いつだって、彼女の隣にいたい。

 

 そう、私はいつだって彼女の傍にいるのです。戦いのときも、災害のときも、どんなときだって好きな人の傍にいる、ちょっと過激な女の子になるって、そう決めたのです。

 

『……わかりました、なんとかしましょう。私だってヒーローで……私だって、ジェダイなのです。一応は』

 

 だから、私はそう言うのです。そうすれば、コトちゃんと一緒にいられるような気がするから。

 ここにコトちゃんがいなくっても。コトちゃんと同じことをしていればそれは、コトちゃんの隣にいるってことになるはずなのです。

 

 でも、それとは別に。

 

『あなたはどう()()()です?』

 

 そう言いながら、私はルークさんに振り返ったのです。

 

 彼の答えは――。

 




ヒロアカナイズされたレイの決意でした。ここからはほぼ完全に原作から離れていきます。
明確に歴史が書き換えられた瞬間とも言う。
いやまあボスキャラが原作と変わらない以上、節々でやることはそんなに変わらないんですけど。

なお、今回の彼女のセリフなんかは、意図的に31巻のデクくんに似せています。
スターウォーズはある種のおとぎ話ではあるけれど、そもそものテーマとして、割り切れない人間の中の光と闇があるわけで。
それでも確かにある種のおとぎ話なんだから、主人公が生粋のヒーロー気質でもいいじゃないかと思うんですよね。
これくらい強い光の人物を主人公にした王道少年漫画的なスターウォーズも見てみたいですが、それをやろうとするとヴィジョンズ案件かな・・・。ナンバリングではまず無理でしょうねぇ。
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