銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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16.ベン・ソロ

 どさり、というものが落ちる音で私の意識は現実に引き戻されました。どうやらスノークが死んだことで、空中に拘束されていたレイちゃんの身体が床に落ちたようです。

 急いで周りを見渡してみればすぐそこに、スノークを真っ二つにしたますたぁのライトセーバーを引き寄せたベンくんの背中が見えました。

 

 ただ、こんなことされて周りの赤い護衛さんたちが黙ってるわけないのです。スノークを殺したのがベンくんだと理解した瞬間、八人が八人とも一斉にそれぞれの武器を構えました。

 

『レイちゃん、今はこの場を切り抜けないと!』

「……っ、わかってる!」

 

 護衛さんたちが走り始めると同時に、レイちゃんは機敏な動きで跳ね起きながら、床の隅のほうに転がっていたベンくんのライトセーバーを引き寄せて展開しました。

 十字みたいに展開される、赤いライトセーバー。普通のと違って、ベンくんの心を示すみたいな揺らぐ刀身が印象的な、シスのライトセーバーです。

 

 その赤が、護衛の人が振り下ろしてきたエレクトロ眉尖刀(びせんとう)――なぎなたみたいな武器です――を受け止めます。

 わかってはいましたけど、刃部分にプラズマエネルギーの保護がありますね。ライトセーバーと切り結べる物理武器です。

 

 ……まあ護衛さんたちはフォースユーザーどころかセンシティブでもないみたいなので、スノークのマインドプローブをほぼ私が引き受けた分無傷に近いレイちゃんにとっては、ちょうどいい訓練相手ってとこでしょう。数が多いのもその一環ですかね。

 

「義姉さんはベンを!」

『おっけーなのですよぉ』

 

 なので、私はベンくんを手伝うことにしました。

 

 ベンくんはますたぁのライトセーバーを手にすることはできましたが、スノークを倒せたのはあくまで彼の注意が完全に私に向いてたから。油断していない、守るべき相手を殺されてげきおこな護衛さんたちを複数人相手にするのはちょっと難しいです。

 何せまだスノークの拷問の影響で、身体が弱ってますから。

 

 私はそこを補います。ただ、私がするのは本当に純粋に援護だけです。

 相手の攻撃を逸らしたり、食い止めたり。動きを邪魔したり、弱ーいフォースグリップをかけたり。そんな感じです。

 ベンくんの身体は弱ってるので乗っ取ったところでですし、他に乗っ取れる人もいませんからね。

 

 まあ、ベンくんは元々強い人です。レイちゃんもそう。そこに普通の人には見えない私までいて、負けるはずがありません。

 

 大体二分ってとこでしょうか。八人の赤い護衛さんたちが全滅するまでにかかった時間。

 

「はあ……ッ、はあ……ッ!」

「ベン! しっかり!」

 

 ただ、怪我をおして奮戦したベンくんは、追加の怪我こそなくてもだいぶしんどそうです。敵を全滅させると同時に、ライトセーバーを取り落としつつ膝をつきました。

 慌てて駆け寄ったレイちゃんが、その身体を支えます。

 

 幽霊の私にはできないことなので、私は私にできることをしましょう。ルークさんたちは今どんな感じでしょ?

 

「……もう大丈夫。あとはここから逃げるだけ……それも問題ないわ。準備はできてる……はずだから」

 

 傷ついたベンくんにフォースヒーリングをかけるレイちゃんをよそに、テレパシーを飛ばしてみる私。

 ルークさんからの返事は、問題なく終わったという回答です。

 

 ふむ? と思って、ちょうどよく近くに置いてあったオキュラス――要はとってもすごい望遠装置――を覗いてみれば、スプレマシーの前を逃げ続けていたレジスタンス艦隊の姿が消えていました。

 

 おお、うまくいったようで何よりです。じゃあ私たちもここからおさらばしないとですね。

 

「……なぜ来た」

 

 一安心したところで視線を戻すと、だいぶ楽になった様子のベンくんがレイちゃんをにらみつけていました。まだ身体を支えられてるので、あんまり威厳はないですけど。

 

「俺の心を覗いて同情したか? それとも、ハン・ソロかルーク・スカイウォーカーにでも頼まれたか」

「それ、今必要な話?」

「施しなどいらん! 余計なことをするな! 俺は――」

 

 だいぶ回復したみたいです。レイちゃんの手をはねのけて距離を取れるならもう十分ですよね。

 

「――でも、あなたが救けを求める顔をしてた」

 

 そして、それでも言葉を続けるレイちゃんに、ベンくんが硬直しました。

 

「だから来た。それだけよ。他は、何にも」

 

 真顔で言った彼女は、続けてにっと笑います。

 

 うーん、これはヒーローですね。今のレイちゃんなら、未来の地球でも十分やっていけると思います。

 

「ハンとかルークとのことは……うん。家庭の事情ってやつでしょ? 私から何か言えることはあんまりないかな。強いて言うなら……」

 

 レイちゃんはそこで言葉を切ると、この部屋の入口のほうに顔を向けます。

 

 ベンくんがつられてそちらに顔を向けると、血相を変えたハンさんとルークさんが入ってきたところでした。

 

「ベン!」

「レイ!」

「……!」

「ベン無事か!? 無事だな! よし……よし!」

 

 そのままベンくんを抱きしめるハンさん。ベンくんは身動きがとれません。

 

 別にそれは怪我が痛むとか、ハンさんが特別力が強いとかじゃなくって、強いフォースユーザーのベンくんには、ハンさんの内心がくっきりはっきり見えてしまったからでしょうね。

 

「……家族とはきちんと話し合っておいたほうがいいわ。あなたはまだそれが間に合うんだから」

 

 途方に暮れる顔を向けてきたベンくんに、レイちゃんは二人の乱入で遮られた言葉の続きを言いました。

 

 ジャクーに置き去りにされたレイちゃんが言うと重いですね。ベンくんも同じことを思ったんでしょう。ハンさんとルークさんに、交互に視線を送っています。

 

 けれど、間近で見るハンさんの心に、揺れていた視線と心が少しずつ定まっていくのが見えました。

 

「……ずっと……苦しんできたんだ……」

 

 ぽつり、ぽつりと、ベンくんがかすれるような声を上げました。震えていて、とても弱い声です。迷子の子供みたいな。

 

「小さい頃から、ダース・ヴェイダーのことが好きだった……。俺の、ヒーローだった……。でも、みんなが彼のことを、悪く言う!」

 

 だんだん声が大きくなっていくベンくん。同時に震えも大きくなっています。

 

「わかってる! ダース・ヴェイダーはシスの暗黒卿で、大量殺戮犯だ! 大勢の人間を殺して、苦しめた! でも……! でも、それでもっ、誰にも負けない……っ、どんなに大勢の敵に囲まれても、あの伝説の英雄ルーク・スカイウォーカーと戦っても、勝つ……っ! そんな無敵の男の背中に憧れたんだ!」

 

 んー。実際のところは無敵でもなんでもなくって、オビ=ワンさんに負けてますし、シディアスのおじいちゃんには逆立ちしたって勝てない上下関係があったんですけどね。

 

 でも、帝国の時代に表立ってフォースとライトセーバーを前面に出しての絶対的な強者による恐怖支配を体現したのは、他でもないますたぁです。シディアスのおじいちゃんは、あんまり直接手を下すことはなかったですからね。そこからの印象は大きいかもです。

 あとは、ビジュアルの力とか。パッと見ただけの印象だと、ますたぁが一番強そうですよね。

 

「その正体が、実の祖父だって知ったときは……むしろ誇らしかった! それだけだったら、よかったのに……なのに、なのに! そんな爺さんの娘だからって理由で、…………、……っ、か、母さんは……告発されて、新共和国の主席議員を降ろされた! ますます俺の憧れは誰からも認められなくなった……! あんたも! 誰も!

 ……なあ! 俺のこの気持ちは、俺の抱いた憧れは、間違っていたのか!? そんなにおかしいことなのか!?」

 

 でもまあ、なるほどです。なんていうか、すっごく親近感。

 

 つまりベンくんは、この国の「普通」ではなかったわけですね。周りの「普通」に耐えられなかったんでしょう。

 私にはコトちゃんがいました。周りと違う私の「普通」を正面から受け入れてくれる最愛の人が。でも、ベンくんには……。

 

「……その力で、ヴェイダーと同じ力で、ベン、お前は何がしたかった? 教えてくれ。息子のことを何も知ろうとしなかった馬鹿な父親に、お前の憧れの、『始まり(オリジン)』を教えてくれ」

「俺も強い戦士になって……! フォースで、この力で……! か、母さんを! 守りたかった!! 忙しそうに銀河のあっちこっちを飛び回ってたあんたの代わりに! シディアスから息子を守り抜いた、爺さんみたいに!!」

「ベン……!」

 

 ハンさんが、ベンくんを改めてぎゅっと抱きしめました。その目に、きらりと光るものが見えましたが、それについては黙っていましょう。

 

「ああ……間違ってない、間違ってなどいるものか……! すまないベン……! お前のその優しさに気づいてやれなかった、俺が悪かった……!」

「…………。……父、さん……父さん……!」

「ああ……! ……さあ、一緒に帰ろう……。母さんがお前を待ってる」

「…………、うん……」

 

 だって、親子の再会なのです。そこに口を挟むのが野暮だってことくらい、私にもわかります。コトちゃんと再会したとき、誰かに割って入られたらって思うだけでイラっとしますもん。

 

 でも、そろそろここから脱出しないと危ないんですよね。スノークが死んだってことはまだスプレマシー内の誰も知らないでしょうけど、レジスタンスが逃げ切ったことで誰かがここに来る可能性は高いです。

 誰も来なくっても、最高指導者スノークの意見を求めて通信を入れてくる可能性はかなり高いんです。さてどうしたものでしょう?

 

 あ、ちなみにですが、最初ここに入って来たとき以降、ずーっと無言なルークさんは終始申し訳なさそうに顔を歪めて所在なさげに立ち尽くしてました。誰かが何か言うたびに心にダイレクトアタックって感じですね。

 

 まあ彼については、スノークの偽装がうまかったことを差し引いても結構悪かったとこがありますからねぇ。

 でも、彼に文句を言えるのはハンさん一家くらいでしょう。この件で私に言えることはないので、こっちにも触れないでおきます。

 

「レイ! みんな! まだ時間はかかりそう!?」

 

 そのまま少し無言な時間が続いていましたが、しばらくして。

 

 スノークと連絡がつかなくなってこっちに大勢トルーパーが向かってる、早く脱出しよう。そう言いながら、フィンくんが玉座の間に飛び込んできました。

 間の悪いことがちょくちょくあるフィンくんですが、今回はグッジョブな感じです。

 

 実際、状況が大きく変わってることは事実なので、とりあえず私たちは撤収を始めました。

 

 ルークさんとフィンくんを先頭に、ハンさんとベンくん、それに警戒のため部屋の外で待機でしてくれてた暗号破りさんが続きます。

 最後尾は、私とレイちゃんです。混乱中のスプレマシー内をさらに混乱させるために、フォースハックを仕掛けながら戻りたかったので。

 

 そんなにいるかな? とも思いましたけど、念には念をってことで。

 実際、ハックス将軍? とかいう人に見つかりかけたので、やっててよかったです。

 

 けど、意外とハックス将軍も有能みたいですし、スプレマシーが戦力として残存するのも困るってことで、最後に置き土産を残していくことにしました。暗号破りさんと一緒に、スプレマシーの中枢システムに深刻なダメージを残しておくのです。

 スプレマシーの宇宙船としての機能は生かしておきますが、基地としては使えない程度に抑えてズッタズタにしてあげましょう。生かさず殺さずってやつです。

 

「やるね、お嬢さん」

『私のはフォースを使った邪道なので、それほどでもないのです。ホントのホントに』

 

 暗号破りさんとそんな会話をして――もちろん私のフォースハックや発言は全部レイちゃん伝いなので、彼はレイちゃんがやってるって思ってます――、ちょっとだけ交流も深めました。

 

「よしチューイ、ずらかるぞ!」

 

 ま、それはともかく、みんなで無事にファルコンに到着です。ハンさんの号令でチューイくんとドロイドコンビが同時に動き、即座にスプレマシーから発艦。

 暗号破りさんがもう一度シールドコードに穴をあけて、私たちは一気にこの辺りの宙域から脱出するのに成功したのでした。

 




ベンは生まれる前からフォースに親しみ、物心つく前からフォースを使うことができたというのが公式設定になっています。
それはルークはもちろん、あのアナキンですらできなかったこと。
だからこそ、いかにベンの持つフォースの資質が大きいかがわかるのですが・・・それはつまり、乳幼児特有の癇癪でさえフォースが暴れ、周りに何度となく被害を生んでいたということでもあります。

要するにハンとレイアの夫婦は、ハリポタ世界において純マグルの夫婦なのに魔法力を持つ子供が生まれたのと同じような環境に置かれていたわけです。しかもあの銀河のおいて、唯一。
それはどうあがいても、あの銀河の「普通」ではないわけで・・・彼らが「自分の世界に逃げ込んだ」のもわからなくはないです。

そんな状況なので、どうしても周囲の目はベンという人間ではなく、彼が持つフォースの特異性に向きます。よしにつけあしきにつけ。
周りの人間がベンを見誤ったのは要するに、ベンという人間をちゃんと見ていた人間がいなかったってことなんでしょう。
見られていたのはフォースの才能という一面だけで、あのルークでさえそこにばかり気にかけてしまっていたわけで。
だからこそ、本当の自分を一度も誰からも見つけてもらえていないことに絶望したベンはダークサイドに堕ちたのでしょう。
なので案外、ベンの心境はトガちゃんと近しかったのではないかなぁなんて思う今日この頃です。

なお劇中でハンが言う「ヴェイダーに惹かれた」という言葉は、ベンの中の凶暴性とかそういうものを指しての比喩みたいな感じの意味らしいのですが、ダース・ヴェイダーの人物像をある程度知ることができる家庭で生まれ育ったこと自体は間違いないでしょう。
ルークの下を離反する時点ではまだアナキン=ヴェイダーの事実を知らされていなかったらしいですが、ヴェイダーの強さや恐ろしさ自体は教えられていたでしょうから、であれば言葉そのものの意味で「ヴェイダーに惹かれた」という解釈もできるだろう、という判断の下でベンのオリジンをこんな感じで書きました。
そこに「ヒーロー像」と「憧れ」という要素を入れたのは、やはりヒロアカクロスなので、こういう解釈の仕方もありじゃないかと思ってのことです。

・・・ディズニーはベンの生い立ちをスピンオフとかで後出しせず、映画本編中できちんと描写すればよかったのでは?(名推理
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