銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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10.残り二時間

 デクの指名手配という異常事態から、ちょうど一日ほどが経った。そこで事態は風雲急を告げることになる。

 

 ヒューマライズの首魁、フレクト・ターンがインターネットを通じて全世界に向けたメッセージを発信したのだ。無個性と呼ばれる純粋な人類を守るため、トリガーボムを二時間後に世界二十五か国同時に起動すると。

 これに続けて彼は、「我々と異なる考え方をしていようとも、平等にチャンスはあるべき」と称してトリガーボムの設置場所を公開した。場所は世界二十五か所、ヒューマライズ支部の存在する国と一致する。

 

「……えげつないことをする」

「え、どういうこと?」

「今回のことは、ヒーローの殲滅が目的と見ていいだろう。わざとトリガーボムの設置場所を公開すれば、周辺のヒーローは間違いなくそこに殺到する。だがこの情報は、インターネットによって配信されている。つまり一般人も見聞きしている」

「……! これから集団パニックが起こる……!」

「そんなことになったら、ヒーローは……!」

「そうだ、レッドライオット。トリガーボムの捜索に集中できない。二時間などあっという間だろう」

「……それでもウチらは諦めない。だってヒーローだから。だから……」

「ああ、そこを踏まえての作戦だろう。そしてヒーロー、特にこういう世界規模の作戦に参加できるだけの実力者を狙って排除すれば、国の力は暴落する。あとはどうとでも……という魂胆なのだろうな」

「……だから『えげつない』、ということか……」

 

 テンタコルに頷いて私が応じたところで、今度はトリガーボムの全設置地区で集団パニックが発生していることが知らされた。だろうな。

 これにより、我々は二手に分かれざるを得なくなった。他国のヒーローたちも同様だろう。

 

 インゲニウムの指揮で、待機所からヒーローたちが一斉に駆け出していく。

 

「マスター、こちらを!」

 

 その彼に、私はできたばかりの電子キーを渡す。

 

「これは……できたのか!」

「はい。ちょうど日本に設置されたトリガーボムの数、三つに合わせて三つです。無力化までにかかる時間は、推定ですがおよそ五分」

「よくやってくれた……! これがあれば少しだけ余裕ができる! 行くぞ、アヴタス!」

「はい!」

 

 彼に続いて外に出る。クラスメイトたちも同様に。

 

 だが外は既に、大混乱に陥っていた。街に張り巡らされた交通機関は軒並み麻痺し、人々は逃げ惑う。その数は見渡す限りと言うほかなく、このままではトリガーボムが起動せずとも犠牲者が出ることは火を見るより明らかだ。

 すぐさまインゲニウムがチームを四つに割り、捜索チームのリーダーを務めるヒーローに電子キーを手渡していく。

 

「行くぞみんな! 避難誘導および、トリガーボムの捜索だ!」

『おうっ!!』

 

 そうしてそれぞれのチームは、まったく別の生き物のように動き始めた。ここからが正念場だな。

 

***

 

 あまりの急展開に、さすがの本場のアメリカンヒーローたちも焦りを隠せていません。それでもやれることはやろうとしている辺り、やっぱりプロなんだなぁって感じです。

 

 きっとどこの国もこんな感じなんでしょうね。まったく、迷惑なことをしてくれるものです。人の迷惑になることはやっちゃいけませんって、学校で習わなかったんでしょうか。

 

「ツクヨミ、トランシィ! 避難誘導はアメリカ側に任せて、俺たちは空からトリガーボムを捜索する!」

「了解!」

「はぁーい」

 

 おっと、お仕事のお時間です。ひとまずコトちゃんと一緒に作ったトリガーボムを停止させる電子キーは三人で分け合って、三手に分かれました。コトちゃんに変身して、周辺の探索を始めます。

 

 ホークスが大量の羽を飛ばして、周りを探っているのが見えますし感じます。あれ、すごいですよね。あんなに細かい”個性”の制御なんて、まだ私できないです。コトちゃんならできるかな?

 まあそこはさすがナンバーツーってことなんでしょう。あの羽がどういう仕組みなのかはちっともわかんないですけど、そこは”個性”ですし。

 

 ……いえいえ、そんなことはどうでもいいのです。今はトリガーボムを探すのが先決です。

 周りにフォースを飛ばしながら、おかしな反応がないかを探りますが……パニックになってる住人たちの思考が邪魔で、わかりづらいです。うーん……変身相手、変えたほうがいいでしょうか……?

 

 と、思ったその瞬間でした。私の感覚が、突然近くに出現した強いフォースの気配を捉えました。

 思わずそっちに顔を向けますが……そんなことしなくっても誰なのかはわかります。これは襲ちゃんですね。間違いないです。

 

「ホークス! シガラキ・カサネが出現した! 対応はどうする!?」

『は!? なんだって!?』

 

 なのでとりあえず、この場の上司のホークスに無線で指示を仰いだら、ものすっごくびっくりしてて逆に私もちょっとびっくりしちゃいました。

 

 なんででしょう。ホークスは今ヴィラン連合でスパイをしてるので、襲ちゃんとも普通に面識があるはずです。何かそういう作戦なのかなって思ったんですけど、違うんです?

 

 ……あっ、襲ちゃんの気配が増えました。合計で三人います。ってことはこれ、仁くんもいますね?

 

『ええ……嘘でしょ……』

 

 仁くんのことも追加で報告したら、思わずって感じでホークスは絶句しちゃいました。

 ですが、言葉の裏に「あの子本当に来たのか……」って副音声がついてます。これは何か知ってる感じですね?

 

 ……あ、襲ちゃんの一人がホークスに一瞬で飛びつきました。瞬間移動、便利ですよね。私も使えるなら使いたいです。

 

『うわっ!?』

『ふふーん! よわよわなホークスくんを手伝いに来て上げたよぉ? 感謝してよねぇー?』

 

 無線に襲ちゃんの声も乗りましたが、ここでホークスは無線を切ったみたいです。会話が聞こえなくなりました。

 背後関係を他のヒーローはもちろん、民間人にだって知られるわけにはいかないので当然とは思いますが、これはいけませんね。

 

 仕方がないので、ここからは勝手にやっちゃいましょう。上司が通信を切っちゃったので、これは仕方ないことなのです。ええ、ええ、本当に仕方ないですよね!

 

「じーんくん! お久しぶりです!」

「おっ、トガちゃん! マジ久しぶり! 元気してた?」

「はい、私はとっても元気です。仁くんも変わってなくて安心なのです」

 

 ってことで、私は変身を解いて仁くんに挨拶に来ました。久しぶりに会えて嬉しいので、思わずにっこりしちゃいます。

 

 全身スーツに、顔も全部すっぽり覆うマスクをかぶってるのに、なんでか表情豊かに見える仁くん。コロコロ変わる顔色が面白くって、私はますます笑顔になりました。

 

「襲ちゃんもお久しぶりですね。元気そうで何よりなのです」

「チッ!」

 

 一緒に襲ちゃんもいたので挨拶しながら手を振りましたが、舌打ちと一緒に顔を逸らされてしまいました。いけずです。悪い子なのです。

 

「それより、今日はどうしたんです? ヴィラン連合で慰安旅行ですか?」

「ふん、オマエには関係ないだろ! 行くよトゥワイ」

「そうなんだよ! 実はトリガーボムの捜索を手伝うって襲ちゃんが」

「おいこらトゥワイスゥ!!」

 

 うーん、仁くんってば隠し事できないんだからもう。出久くんといい勝負ですねこれ。

 

 でもおかげで、マインドプローブをかけるまでもなく大体のところがわかりました。どうやら今回、本当に襲ちゃんたちはヒーローを手伝いに来てくれたみたいです。

 言われてみれば確かに、ヴィラン連合って”個性”保有者を根絶やしにしようとまでは思ってなさそうですもんね。そういう意味では、ヒューマライズはヴィラン連合にとっても敵なんでしょう。

 

 つまり……今回はアレですね? 敵の敵は味方、ってやつですね?

 

「何バラしてんのさこのっ、このスカポンタン! オタンコナス!」

「痛い痛い! 痛いって襲ちゃん! ごめんって! 俺は悪くねぇ!」

「はいはいこんなところでケンカはよくないのですよ」

 

 私が考えてる間に仲良くケンカが始まってたので、一応仲裁しておきます。

 

「それじゃ、せっかく来てくれたところですしお手伝いお願いしちゃいますね」

「嫌だね! 任せとけ!」

「このバカ! ……ああもう! いいか、オマエらの指図なんて受けないんだからな! ボクたちはボクたちのやり方でやるんだ!」

「はい、それでおっけーなのです。大事なのは周りに被害が出ないことですからね」

 

 なんて答えながら、こっそり手のひらを向けてマインドプローブをかけましたが、どうやら襲ちゃん、また手持ちの”個性”が増えてるみたいですね。

 しかもその内容が、コンピューターをかなり自由に扱えるみたい。「電子制御」って名づけられてるみたいですが、これはつまりフォースハックの代替ですかね? より強力っぽい代わりに消耗が激しそうなので、違うところもあるみたいですけど。

 

 それにしても襲ちゃん、やっぱりフォースに関する知識がほとんどないんですね。レイちゃんやベンくんなら、こういうかけ方でもマインドプローブには気づいてましたし簡単に抵抗されたものですけど。

 もちろんこれは私とコトちゃんが読心が大得意だからなので、襲ちゃんが悪いわけでもないんですけどね。

 

「ところでトリガーボムの見た目とかってわかります?」

「バカにするなよ! それくらいわかってる!」

「うちには頼りになるやつがいるからな! めっちゃネチネチしてる嫌味なやつだけど!」

 

 仁くんが矛盾なしにストレートに言うんだから、よっぽどなんでしょうねその人。でもそれ、ヴィラン連合の人じゃないですね?

 へえ、超常解放戦線? なんですそれ、初めて聞きますね?

 

 どうやら調べることが増えたみたいです。あとでコトちゃんにも教えて、一緒に調べてみましょう。うふふ、一緒にヒーロー活動なのです。

 

「わかりました、それじゃもし見つけたらホークスに教えてあげてください。今の私の上司はホークスなので」

「言われなくてもそのつもりだっての。ふん! ほら行くよ、トゥワイス!」

「へいへい了解っと。んじゃなトガちゃん! また会おうぜ! トランプしような! マリカーもスマブラもあるよ!」

「わあ、楽しみなのです。それじゃ今度は差し入れも持っていきますねぇ」

 

 と言ったところで、襲ちゃんたちとは分かれました。

 

 大股でのしのし歩いていく襲ちゃんの背中からは、普通に光の気配を感じるんですけど……人間変われば変わるものですねぇ。もちろんまだ闇の気配のほうが強いんですけど、光の側に戻って来る直前のベンくんくらいはありそうなんですよね。根っこはきっといい子なんだと思います。

 

 そんなこんなで襲ちゃんを見送った私は、とりあえずホークス……は、どうやらまだ無線は切ってるみたいですね。これじゃ報告もできないですね。

 ……うん、それじゃ引き続き、好き勝手にやっちゃいましょう。仕方ないですよね、だってリーダーと連絡がつかないんだし。

 

 とは言っても、トリガーボムの捜索はちゃんとやります。今回ばかりはかなり真面目に世界の危機ですからね。

 

 それに、私はヒーロー志望のトガなので。コトちゃんとおんなじように、私たちじゃない誰かだってちゃんと守るのです!

 




悪いことも考えつつ、そういうものは全部いいことのためにやろうとしてるトガちゃんは、光と闇が合わさり最強に見える世界一カァイイ普通の女の子です。

そして襲の四つ目の個性情報も解禁。クリスマスにドクターからプレゼントされた個性は、フォースハックの代替品です。
クリスマスに雄英に侵入したとき、センサーや監視カメラが軒並み不発に終わっていたのはこのためですね。
トガちゃんが察してる通り完全な代替ではないのですが、元々襲では逆立ちしてもフォースハックは習得できないので十分でしょう。

ちなみにホークスは襲の助けてあげる宣言は冗談だと思ってて、「お言葉に甘えちゃおうかな」は社交辞令も含めた適当な返事なんですけど、同時に襲の能力があればかなり助かると思っていたことも事実なので、襲はこれを真に受けてます。
なのでこのときのやり取りを普通に救援要請と認識しており、律儀に最初から救援にかけつけました。
まあね、ヒューマライズのターゲットに自分はおろかエリちゃんも含まれるだろうことを思ったらね、こうもなるっていう。
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