銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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11.増栄理波:ライジング 上

 捜索開始からおよそ二十分ほどが経った。

 私は捜索チームであり、引き続きインゲニウムの指揮下にある。フォースを用いてトリガーボムを探しているが、ひとまず一つは見つけることができた。

 

 正確に言うと、フォースによる周辺の探索でトリガーボムを見つけたわけではない。ヒューマライズの幹部が見つかったのだ。

 だが彼らは設置したトリガーボムが回収されないよう、雇い入れたヴィランと共に周囲を警戒していたので、彼らが見つかればそこから芋づる式に……というわけである。

 

 今は武闘派のヒーローたちが彼らの対処に当たっており、一つ目のトリガーボム確保と停止は時間の問題だろう。

 残る二つも、当てはある。設置場所自体は特定できていないが、幹部勢の記憶を読むことでトリガーボムのために人員を割いた地点はわかったからな。

 時間はかかることは避けられないが、それでもタイムリミットまでにはなんとか間に合うだろう。日本はよほどのことがない限りは大丈夫だと思う。

 

 だが他の国はというと……どうだろうな。私のように効率よく他人の思考を読み取れる人間がいればいいのだろうが、そういう類の能力は現代でもなかなか希少だからな……。

 

 と、ここで統括司令部に一つの連絡が入ったようだ。驚くことにそれはオセオンにいるショートからで、トリガーボムの一斉解除キーを入手してヒューマライズの本拠地に乗り込むのだという。

 デクとの合流も済ませたとのことで……しかし彼らに合流する余力のあるヒーローがいない現状、世界の命運は彼ら三人の仮免許ヒーローに託されたということになる。

 

 聞けば彼らは今、現地の協力者が操縦する軽飛行機で目的地に向かっているらしい。到着までには一時間以上かかる計算であり、突入時点でトリガーボムのタイマーは三十分を切ると予想される。それはさすがに短いと言わざるを得ない。

 

 そしてこの情報を聞いた瞬間から、私は強烈な葛藤にさらされることになった。

 私なら。私が三つ目の選択肢を取りさえすれば、本拠地突入時の残り時間を大幅に増やすことができる。確実にそうだと断言できる。

 

 だがそれは、その方法は……。

 

「アヴタス、気が散っているな?」

「……申し訳ありません、マスター」

 

 インゲニウムが叱咤する声が耳を打つ。

 

 ああそうだ、今はそんなことを考えている場合ではない。一刻も早くトリガーボムを発見・無力化しなければ……。

 

 そう考えながらも、私の身体は急激に精彩を欠くようになった。どうしても、頭の中に浮かんだ三つ目の選択肢を振り切れないのだ。それが私の身体につきまとい、縛ってしまっている。

 

 私は、私は……!

 

「アヴタス!」

 

 そんな私に、インゲニウムが声をかけた。彼は私の前で膝をつくと、小さい私に視線を合わせる。

 

「……あるんだな?」

「え……?」

「あるんだな? まったく褒められたやり方ではないが、しかしそれを選びさえすれば著しく事態が好転する手段が。そうだろう?」

 

 穏やかな、しかし強い口調で問いかけてくる彼の目は、顔は、どこまでも澄み渡っていた。テンヤのそれとよく似た瞳が、私の中を見透かしているようだった。

 

 ヒーローの目だった。ヒーローの顔だった。

 誰かを、人々を守り、救ける男の顔がそこにあった。

 

「……! はい! あります! 私なら、デクたちがヒューマライズ本部に突入するまでの時間を大幅に短縮できます!」

「なら行け! ここは俺たちに任せろ! これ以上は俺たちだけでも十分だ!」

「……よろしいのですか? これはあまりにも……」

「いい! 俺が許す! 世界を救え! ()()()()()()()()()()()()()()()!」

「……はい!」

 

 その男が、いいと言った。文字通り、背中を押してくれた。

 

 言い訳が立った、と言ってしまうのは簡単だろう。そう思った自分がいることも否定はしない。

 だが、そんな簡単なものではないことくらい、わかっている。

 

 インゲニウムは、文字通り己の生命を懸けたのだ。ヒーローとしての生命すべてを懸けて、今この瞬間に脅威にさらされているすべての人を救うことを選んだ。のちになんと言われようとも。その覚悟で。

 

 ならば、私も。私がそれに応えなくてどうする?

 私は、私は増栄理波。またの名を、アヴタス。かつてジェダイだったもの。今はその道を外れ、しかしそれでも善たらんとあがくもの。

 

「……! おおおおおっ!!」

 

 声を張り上げる。今まで心身にまとわりついていた迷いを振り切るように。

 その勢いに任せてドクターヘリが使えるヘリポートを擁するビルの屋上まで飛ぶと、そこで懐から取り出した超圧縮収納装置の圧縮を解除する。

 

 中から現れたのは――かつて銀河一速いと讃えられた異形のスターシップ。

 

「さあ千二百年ぶりの出番だぞ、ファルコン!」

 

 その名はミレニアムファルコン。かつて伝説のアウトロー、ハン・ソロが仲間と共に宇宙を翔けた傑作機である。

 

()()、改めてよろしく頼む。また君の力を貸してくれ」

 

 そして中で私を待っていたのは、白銀の胴体に青いラインが描かれた小柄なアストロメクドロイド。

 かつて英雄と呼ばれた男の相棒であり、その息子の友でもあり、そしておよそ一世紀近くに渡って銀河の歴史を最前線で見続けてきた生き証人、R2-D2その人だ。

 

 彼は電子音声で応じながら、即座にファルコンのコクピットに向かって運転のための最終準備を整え始める。その様は勇ましく、実に頼もしい背中だった。

 私も彼に並んでコクピットに入り、エンジンに火を入れる。一つ一つの情報を確認し、すり合わせ、今のファルコンが問題なく飛行できることを確信した。さすがはR2、仕事が早くて的確だ。

 

 もちろん、だからといってファルコンが万全の状態というわけではない。千年以上放置されていた上に、燃料もギリギリだったのだ。それを私とトランシィの二人だけで、一か月で直しきれるはずがない。

 

「わかっている、まだ修理は手を着けたばかりで状態は最低限、燃料だってようやく三分の一まで増幅したばかりだ。けれどR2、ここでファルコンを使わずして、いつ使うのかという話だろう? ――うるさいな、どうせ私もアナキンの同類だよ!」

 

 それでも、間違いなく飛べる。少なくとも、太陽系を何周かするくらいなら何も問題がない。これならば、行ける。

 

 コネクタをソケットに挿して操作を続けるR2の軽口を軽く受け流して、私は操縦桿を手に取った。改造された亜光速エンジンが特有の甲高い音を奏で、機体が緩やかに夜の空に浮かび上がる。

 

「さあ行こう――ミレニアムファルコン、発進!」

 

 船首の向きを整える。直後にファルコンは瞬時に一つの速さの壁を越え、音を置き去りにして宇宙に旅立った。

 

 ファルコンの大気圏内における最高速度は、およそ時速1050キロと音速に劣る。だがそれは、あまりに速いスピードを長時間大気圏内で出すことによる周辺への影響を考慮したもので、出そうと思えばそれ以上の速度は簡単に出せる。

 

 もちろんそんなことをするつもりはない。だからこそ、一時的に宇宙へ退避するのだ。宇宙ならばどれだけ速度を出しても周りに害は出ないから、ここを経由してオセオンへ向かうのだ。

 

 大気圏を出入りするなんて、ファルコンなら数分どころか一分もかからない。地球の常識では考えられないが、その程度の間なら周りに被害を出さないのは銀河共和国では当たり前のことで、普遍的な技術なのだ。

 

「待てR2、まずはアメリカに行く」

 

 あっという間に地球の重力を振り切って宇宙に突入した私は、航路をオセオンに向けようとするR2を制止する。

 これを受けて彼は疑問を述べることなく、しかし呆れた声を出した。

 

「君の言いたいことはわかる、わかるが決して私情ではないぞ。トランシィがいれば取れる選択肢が増える。君も一人ではファルコンの操縦は難しいだろう? 」

 

 どうだか、とR2が声を上げた。

 しかし一応の理はあるとわかっているのだろう。仕方なさそうに、けれどそうこなくっちゃなと言いたげに、航路をアメリカに。トランシィがいる地点へと向けた。

 

 私はこれにありがとう、と言いつつテレパシーでトランシィに連絡を取る。

 

『トランシィ、今からそちらに向かう。離脱の準備をしておいてくれ』

『あはっ、ファルコン使っちゃったんですね? いいんです? そんなことしたら』

『わかっている。わかっているが……しかしこうすることで少しでも多くの人が救えるのならば、私がどうなろうと構わない。構わないことにすると決めた。今つい先ほど、決めたんだ!』

 

 彼女の返答に、私は声を強める。

 すぐにしまった、言い過ぎたと思ったが……トランシィの返事は、嬉しそうな笑い声だった。

 

『トランシィ?』

『やっぱりコトちゃんは私のヒーローで――ジェダイですよぉ。知りませんでした? 大事なのは誰かを救けようとする心とそれを行動に移す勇気であって、英雄の伝説とかジェダイの伝統とか……そんなのはどうだっていいらしいですよ?』

 

 そして放たれた言葉に、私は強い既視感を覚えた。

 だから思わず、聞き返さずにはいられなかった。

 

『一体どこの誰だ、そんなヒーローみたいなことをジェダイの教えと称して君に施したのは?』

『もっちろん、ルークさんです!』

『やはりか! つまりある意味スカイウォーカー家の家訓みたいなものじゃないか!』

 

 これだからアナキンの系譜は! かつてコルサントの上空で、半ば壊れたスピーダーによるカーチェイスに巻き込んでくれたときから何も変わっていない!

 

『でも嫌じゃないんでしょう?』

『……それは。そう、だが……』

 

 あの夜のカーチェイスの果て、救出した親子の再会を見届けたときのことが思い起こされる。確かにあれは何度も死ぬかと思ったし、心底くたびれた。

 けれどあのとき、アナキンと並んでそれを見たとき、どこか誇らしく思う私がいたことも――思い出した。

 

 アナキンの存在は、やはり私にとってはとても大きい。親友で、ライバルで。隣に並び立ちたいと願った。彼と同じ視座に立ちたいと。

 今この胸に去来する気持ちは、あの日のものと同じなのだろうか。これが彼の視座だというなら……彼と同じところに来れたというのであれば……私はとても嬉しい。

 

『……妬けちゃいます。コトちゃんは私のコトちゃんなのに。私じゃなくって、ますたぁと同じがいいなんて』

『待て、これはそう言うものでは……いや、君にとっては同じか』

『はい。……でも、いいのです。私が好きになったコトちゃんは、そういう人だってわかってますから。そういう人を好きになったんですから。「同じ」が持つ意味だって、今の私はちゃぁんとわかってます』

 

 トランシィはそこで、でも、と一度言葉を区切った。すぐに言葉は続けられたが、そこから先の言葉には、それまでにない蠱惑的な色とある種の冷たさもあって……。

 

『次に()()ときは、朝まで寝かさないので。覚悟しといてくださいね?』

 

 私の身体は、()()()()()()しまうのだった。

 




ライジング回のオチにえっちをぶち込む所業。後悔はしていない。
ま、まだ上だから・・・もう一回まじめなライジング下があるから・・・(震え声

まあそれはともかく、ファルコンおよびR2の限定的な解禁です。以前に感想返しで、スターウォーズキャラを出す予定が立ったという旨を書きましたが、それはR2のことでした。
・・・3PO? いや、彼はその・・・やかましいので・・・。
いや違うんです。メタ的な意味でではなく、余計なことをしゃべりかねない彼を秘密が多い理波が運用するのはリスクが高いということで、彼はまだお休み継続ってことなんです。
ファンの方に置かれましては大変申し訳なく。

ちなみにルークの教えはEP8で実際にあるレッスン3を、ボクなりにヒロアカっぽく表現した内容になっているんですが・・・この教え、なぜかカットされています。未公開シーンなのです。
なんでカットしたんだろう・・・めっちゃ大事な教えだと思うんだけどな・・・。
教え方が騙すような形になったせいでレイからの信用を落とすってところまで含めて、めっちゃ重要なシーンだと思うんですがね・・・。
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