銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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12.合流

 大事なのは誰かを救けようとする心とそれを行動に移す勇気、か。なるほど納得の行くものである。

 アナキンは私に新しいジェダイの理念を考えろと言ったが、そういうことなのだろうか。

 

 だが、どこか違う気もする。……いや、違う、というのは違うな。

 何か……そう。何かが足りない。何かがもう一つ……足りない。そんな気がする……。

 

 と思考する私をよそに、R2が声を上げた。ハッと顔を上げれば、既に私たちはワシントンDCことコロンビア特別区周辺まで来ていた。

 

「すまない、助かった。……『トランシィ!』

『見えてるのです! そこもうちょっと北のビルまでお願いします!』

 

 テレパシーでトランシィと連携を取り、私は指定されたポイントまでファルコンを下ろした。

 

 と言っても、着陸したわけではない。ビルより上の高さの空中に静止したのだ。こうすることで、余人には辿り着けないようにしたわけだな。

 

「R2、ハッチを開けろ。合図をしたらすぐに閉めて発進させるんだ」

 

 同時に指示を出しつつ、コクピットを後にする。背中からR2の了解を受けつつハッチへと向かう。

 歴戦のアストロメクドロイドであるR2の操作は、ブランクがあるはずなのに完璧だ。私がハッチに辿り着いたそのタイミングで、ちょうど開放が完了したところだった。

 

 そして開いたハッチの向こうでは、既に私に変身したトランシィが増幅を用いた飛行ですぐ目の前にまで迫ってきていた。

 

「コトちゃん!」

「ヒミコ!」

 

 ファルコンの中に入るや否や、変身を解除したヒミコ……トランシィ。彼女の身体を抱きとめて、私たちは久しぶりの再会とパートナーの体温を堪能する。

 しかしこうしてはいられない。すぐにここを離れなければ……。

 

「ナニコレすっごいんだけど!? どうなってんのコレ!?」

「!? シガラキ・カサネ!?」

「俺は背景。俺もいるぞ!」

 

 だが次の瞬間、私たちのすぐ近くにシガラキ・カサネとトゥワイスが出現したことで、私は心底驚愕させられることになった。この二人の出現は、まったく予想していなかった。

 

「あらら、ついてきちゃったんです? できるだけ距離は取ったと思うんですけどねぇ」

「いいじゃねぇか少しくらい! ごめんねトガちゃん!」

「ふん、わざわざ手伝ってあげてるんだもん、少しくらいほーしゅーはもらわないとねぇ!」

「そっちから押しかけて来たじゃないですかぁ。助かってるのは本当ですけど」

「手伝った、だと……? いや、そんなことはどうでもいい。立ち去れ、これはお前たちに相応しいものではない」

 

 それでもなんとか気を取り直すと、私は即座にフォースプッシュで二人を吹き飛ばす。

 

「やっぱりこうなるのかよぉぉ~!!」

「ふふん、甘い……ね!」

 

 だがトゥワイスは吹き飛ばせたが、カサネはそうはいかなかった。

 もちろん彼女も吹き飛ばされたのだが、瞬間移動によって即座に戻ってきてしまったのだ。そのまま彼女は剣を抜き払い、私に向けて刃を振るった。

 それ自体はトランシィのライトセーバーによって防がれたが、この緊急事態に実に面倒な相手に絡まれてしまったものだ。

 

 まあ、それでも追い出すだけならやりようはいくらでもあるのだが。

 

「ぐぇっ!?」

 

 トランシィとやり合っている隙を突き、フォースプッシュと同時にフォースブラストを放つ。かつてカサネにかけたものよりも威力の上がったそれの対象は、顔面。より正確に言えば目だ。

 なぜならカサネの瞬間移動は、視覚に依存したもの。その視界に入っている範囲でしか使えないはずだからな。

 

 しかし、目は人体の中でも特に重要な器官だ。人間が視覚に強く依存する生物である以上は当然であり、ゆえにこそそこを狙った攻撃に対してはどれだけ気を付けていても必ず身体は勝手に動いてしまうもの。反射というやつだ。

 ましてや眼前で空気爆発などが起ころうものなら、目を瞑らずにはいられない。瞑らなくても、目に深刻なダメージを受けてどのみち目を開けていられなくなるだろう……というわけだな。

 

 そしてそれも問題ない。別にそういう行為を嬉々としてやろうとするほど私が暗黒面に堕ちているわけではなく、カサネには超再生の”個性”もあるため、すぐに元に戻るからだ。

 もちろんそれを妨害するために、カサネにはフォースイレイザーをかけることも忘れない。私はフォースプッシュとフォースブラストで手いっぱいなので、そちらは変身したトランシィがやる。私たちは以心伝心、互いのやろうとしていることはお見通しだからな。

 

 これでカサネほどの相手の”個性”を使用不能にできるとは思っていない。しかし今は、ここを離脱する時間さえ稼げれば十分なのだ。

 

「襲ちゃん、これあげます。トリガーボムをとめられる電子キーなのです」

「はぁ!?」

「今だR2!」

「待てこらあぁぁぁぁ!!」

 

 あとはハッチを閉じてしまえばいい。捨て台詞が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。そういうことにする。

 トランシィがしたことについては、まあ大目に見よう。これからオセオンに向かう彼女が持っていても、無用の長物だからな。

 

 そしてファルコンがこの場から飛び立ってから視界から消えるまでにかかる時間は、秒単位の出来事だ。ここからさらに接近され、ファルコンに張りつかれることはまずないだろう。

 まあ仮にされたとしても、一度宇宙を経由する。そこで放逐してしまえばいいだろう。

 

 とはいえ、さすがにくっついてくるということはなかったようだが。

 

「やれやれ、まさかヴィラン連合がアメリカにいるとは。何があったんだ?」

 

 宇宙空間に出て、オセオンに改めて航路を設定した私たちは、束の間の休息にカサネたちのことを話し合う。

 

「詳しくはわかんないですけど、あの二人だけに限って言えばふつーにヒューマライズをとめようとしてるみたいなのです」

「……あのヴィラン連合がか?」

「実際、二倍に増えた襲ちゃんの四つ目の”個性”のおかげで、トリガーボムの捜索は順調なんですよね。あと一個です。詳しくは襲ちゃんもよくわかってないみたいでしたけど、電子機器とかセンサーとかを色々できるヤツみたいです。

 それでもトリガーボムの周りにヒューマライズの団員とか雇われたヴィランとかがいて、なかなか近づけないでいるんですけど」

「また厄介なものを……いやしかし、彼女たちがヒーローに協力するなどにわかには信じがたい話だが……」

「コトちゃんは知らないかもですけど、仁くんは元々人情家で、仲間の危機とかに敏感なんですよ? それに久しぶりに話しましたけど、襲ちゃんはなんか結構光明面に寄ってましたね。もちろんヒューマライズの思想が受け入れられないってことも大きいみたいですけど」

「あのシガラキ・カサネが光明面に?」

 

 そんなバカな、と一瞬思いはしたが、よくよく考えれば彼女はエリに対してかなり強い関心を寄せていたな。子供を必死に守ろうと戦う姿を思い返せば、あり得ないとは言えないように思う。

 

 あれからもう半年近く経っている。私ですらたった半年でだいぶ変わったのだから、彼女にも何かしらの心境の変化があっても不思議ではない、か。

 

「……彼女を暗黒面から引き離せたりはしないだろうか?」

「どうでしょう? 私たちなんだかんだで縁はありますけど、それでもあんましお話したことないですからねぇ……」

 

 会話するだけの時間はあったかもしれないが、いずれも顔を合わせたタイミングでは戦う以外に選択肢がない状況だったからなぁ。

 

「……ああすまないR2、今はそれどころではなかったな」

 

 とここに、R2が割り込んでくる。オセオンの上空に着いたのだ。

 

「うふふ、コトちゃんとの初めての共同作業ですね。嬉しいです」

「私もだ。何より、心強い。背中は任せたぞ」

「はい!」

 

 突入前の最後のキスを一つして、私は改めて操縦に集中する。

 

 実のところあまり私がやることは残っていないのだが、それでも一つやっておかなければならないことがある。デクたちとの合流だ。

 

「そもそも出久くんたち、どうやって移動してるんです?」

「飛行機だ。それ以外で、時間内にクレイドから敵本拠地に到達する移動手段はこの星に存在しない」

 

 もちろん”個性”があれば話は別だが、デクたちの”個性”はそうではないからな。

 

 問題は今彼らがどの辺りを飛んでいるかだが……出発地と到着地はわかっているから、あとは移動速度と経過時間を加味すれば計算は難しくない。R2の手にかかればなおさらであり、彼らの現在地はほぼ筒抜けだ。

 

「見えてきたぞ」

「わぁい。さすがR2なのです」

 

 さらに言うと、ファルコンを修理・改造するに当たって最初に取り掛かったのはもちろん外装だが、内装で最初に手を付けたのは通信機器だったりする。

 正直その時点ではこんなにも早くファルコンを使うことになるとは思っていなかったのだが、それでも万が一と思って地球の通信機器と通信ができるようにしておいて正解だな。

 

「こちらミレニアムファルコン号。そこの軽飛行機、応答せよ」

『うわっ!? どこから……マジでどこからァ!? なんだあの飛行機……飛行機かあれ!?』

「デク、キングダイナ、ショートの現地協力者か? こちらマスエ・コトハ、ヒーロー名はアヴタス。応答願う」

『は? デクたちの? マスエ? え? マジでデクの知り合いなの? あ、えーと、こちら……ダメだこいつのコールサイン知らねぇや。あー、こちら現地協力者のロディ・ソウル。どうぞ』

 

 ロディ・ソウルと名乗った人物の声は、随分と若かった。恐らくだが、デクたちと同じような年頃の少年だろう。

 デクの指名手配には共犯者がいるとも追記されていたので、恐らく彼がその「共犯者」かな。もちろん、彼もまた巻き込まれた側なのだろうが……いや、デクのことだから巻き込んだのかな?

 

「よろしい。ソウル、君たちの目的地はヒューマライズの本拠地だな?」

『あ、ああ、そうだ。こちとらお急ぎ便でね、邪魔はしないでくれると助かるんだが』

「するはずないだろう。だがその機体では、到着できても残り時間がかなり少なくなるはずだ。それを短縮したい」

『短縮って……おいおい、まさかとは思うが』

「そのまさかだ。この船に君たちを収納する」

『ウッソだろおい!?』

 

 驚愕するソウルの声をよそに、私は既にファルコンを軽飛行機の前に着けている。彼我の速度差はゼロの状態。ファルコンとしては徐行みたいなものだが、航行に問題はない。

 

『どうやってやるんだよ!? こっちもそっちも時速三百キロ近いスピードで飛んでるんだぞ!?』

「問題ない。この船は空中に静止できるからな。あとはエンジンを止めたそちらの機体を、フォース……サイコキネシスでこちらに引き寄せるだけだ」

『思ってた以上に力業だった!!』

 

 それは言わないお約束だ。私もそれは思っていたのだ。

 

 だがやる。無理を押し通してでもやる。

 大丈夫だ、何十年もフォースを鍛え続けたトランシィなら軽飛行機の一機程度、どうにでもなる。

 

 そう、トランシィは既にコクピットを出てハッチのほうへ向かっている。これもまた以心伝心だ。

 

 いやはやそれにしても、私もすっかりスカイウォーカー閥だな。なんだかもう、気にならなくなってきた。マヒしたとも言う。

 

『……正直言って、あんたのことはまだ信じられない。けど……あんたをデクが信じてる。だから俺も信じるぜ』

 

 私が少し現実逃避をしている間、通信の向こうでは何やら言い合っている声が聞こえていた。

 それが終わったと思ったら、ソウルがすっかり覚悟を決めた声で話しかけてきたものだから、少し驚いた。ただ巻き込まれた一般人だと思っていたが、なかなかどうして。

 

 いや、デクの影響かな。彼のことなら信じられると言外に言っているのだから、間違いないだろう。

 相変わらず、いい意味で人に影響を与えるのが得意な男だ。オチャコが惚れるのもわかる気がするよ。

 

「ああ、それで構わない。ありがとう。ハッチが開いたらエンジンを切ってくれ」

『了解……!』

「R2、ハッチを開けろ。……よし。トランシィ、今だ!」

 

 エンジンが切られて緩やかに降下していく軽飛行機の前を飛びながら、しかし同じように速度を落としていく。あちらが少しずつ、接触するくらいまで近づいたらトランシィがフォースで捕捉。一気に手繰り寄せたら搭乗しているデクたちはこちらに飛び移ってもらう。

 最後に軽飛行機は中容量の圧縮収納装置で収納してしまえば、乗り移りは完了だ。

 

「うわっ、すごい……まるでSF映画みたいだ……!」

「マジか……マジか……!? もしかして今の飛行機技術ってここまで来てんのか!?」

「おお。かっけぇな」

「オイコラ増栄ェ!? なんだこのガラクタァ!!」

 

 少しして、デクたちが賑やかにコクピットにやってきた。見知らぬ少年も一緒だが、彼がロディ・ソウルか。擦れた心の中に強い光が見える。なんともまあ、見どころのある少年だ。

 

 一方でトランシィがコクピットに戻って来ていないのは、ちょっとした備えのために格納庫のほうに寄り道してもらっているためである。

 

 それはそれとして、彼らの反応も無理はない。彼らにしてみれば、数世代も先の技術を目の当たりにしているのだからな。

 しかし細かいことを説明している時間はない。彼らには悪いが、そんなことより準備を整えておいてもらわなければ。

 

 あ、だがこれだけは言っておかねばな。私のためというより、()()の名誉のために。

 

「口を慎みたまえ、キングダイナ。これはただのガラクタではないぞ、銀河最速のガラクタなのだ」

「「結局ガラクタじゃん!?」」

「ははは、仲がいいな。……ここから到着まで、二十分とかからない。心の準備は今のうちにしておいてくれ」

 

 デクとソウルがまったく同じ反応をする様子に思わず笑いながら、私は亜音速で飛行できることを説明しつつ速度を一気に大気圏内最大まで引き上げた。速度に命を懸けた改造が施されているファルコンは、秒と経たずにトップスピードに突入する。

 

 最初はその速度に驚いた四人だったが……どうやら私があえて発破をかける必要はなかったようだ。四人が四人とも、いい表情をしている。決意を固めたヒーローの顔だ。

 

 ふふ、私の友人たちは実に頼もしいな。おかげで失敗する気がまったくしない。私はどうしても口元が綻ぶことをとめることができなかった。

 




すっかり開き直ってしまった理波ちゃん。
科学とフォースによるゴリ押しオブゴリ押し。
これにはアナキンも後方師匠面でにっこり。
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