「どうやって侵入するんだ?」
「まずはこうする。……『トランシィ』
『お任せなのですよぉ』
私の合図に応じて、ファルコンの中からトランシィの気配が消えた。
正確に言うと彼女は消えていないが、彼女は今完全にトールに変身している。それによってフォースが一時的に途絶えたのだ。
そして次の瞬間、私たち搭乗者ごとファルコンが透明になっていく。
「うわっ、なんだこれ!?」
「これは葉隠さんの……そっか、これなら気づかれる可能性もぐんと減る!」
そうしているうちに、目的地が見えてきた。断崖をくりぬく形で造られた、ヒューマライズの本拠地だ。
「ああ。そして仕上げに……今だ!」
『おっけー!』
通信機から、トールの声でトランシィが応じる。
すると次の瞬間、ファルコンの腹部から二連のレーザーキャノンが発射された。真紅の光弾は一直線にヒューマライズ本拠地へ飛んでいき……見事に着弾する。
『……は?』
四人の声が重なった。彼らの目の前で、入り口と思しき門が崩れていく。
「ななな何をしてるの増栄さん!?」
「見ての通り先制攻撃だが」
「いやだとしても威力高すぎないかな!? ていうか今の何!?」
「ただのレーザーキャノンだ。大したことはない。これで戦艦を落とすのは難しい」
「ただの!? それ絶対大したことあるやつでしょ!?」
「うるせぇぞクソナード」
「あいた!?」
賑やかなデクをキングダイナが制した。
「よく見やがれ、人間に被害は出てねぇ。それに……連中襲撃自体は想定してたみてぇだが、これはさすがに考えてなかったんだろうな」
「確かに大混乱だな。行くなら今だぞ、緑谷」
「そういうことだ」
「あれぇ!? おかしいの僕かな!?」
「デク……お前んトコっていつもこんな感じなのか?」
「いやかっちゃんはともかく増栄さんはもう少し大人しいというか、もうちょっと思慮深いというかなんだけど……」
「スターシップを操縦できて高揚していることは否定しない」
やはり故郷のものはいいな。もう二度と行くことはかなわないとは思うが、だからこそというか。
あとは正直、吹っ切れているということもある。たまにはアナキンの流儀で行くのも悪くないだろう。
「既にR2がハッチを開けている。デク、キングダイナ、ショートは空中からの突入も可能だったな?」
「ハッ、ったりめーだろうが!」
「おう、任せろ」
「で……できるけど! 確かにできるけども!」
「よし、先に行っていてくれ。私はファルコンを片付けてから行く」
そういうことになった。キングダイナからは、お約束のように「命令すんな」と言われたが。
ファルコンから次々に降りていく三人を見送り、私はファルコンを本拠地から少し離れた場所へと着陸させる。
と同時に、コクピットにトランシィが戻って来た。まだトールに変身しているので、船の透明化は維持されているが……木々の中に紛れたことを確認して、彼女は元に戻った。するとファルコンの透明化も解除される。
それからファルコンを降りたら、圧縮収納装置に収納だ。実に便利である。シールド女史には足を向けられないな。
「さて、では我々も行こうか」
「お、おう……行かせてくれって言った俺が言うのもなんだけど、本当にいいのか?」
私の声に、ストームトルーパー姿のソウルが応じた。
「ああ。君の内心から察するに、一人蚊帳の外に置いたら勝手についてきそうだったからな。それにこんなところに君を一人で放置したら、ヒューマライズに狙われる可能性もある。それなら最初からリスクは承知で同行させたほうがまだいくらか安全だろう」
ということなのだが、一般人の彼を敵地につれていくなら相応の装備は必要だろうということで、保管庫から引っ張り出してきたのだ。これさえあれば、ただの銃弾程度はまったく怖くない。
「だからって武器まで貸すかね。君もヒーローなんだろ? いいの?」
そう言ってソウルが掲げて見せたのは、ブラスターである。取り回しがしやすいよう、ピストルタイプのものだ。
これも当然だろう。丸腰で連れていくわけにはいかないからな。
これらの装備はいずれも、ヒミコが銀河共和国から来るに当たって私への土産としてファルコンに積んでいたものだ。彼女がデクたちとの合流後、一緒にコクピットに戻ってこなかったのはこれらを取りに行ってもらっていたからである。
時系列的に言うと千年以上前の代物ということになるのだが、それでも問題なく動くのだからさすがは我が故郷の技術力である。
「武器とは言っても、スタンモード設定にしたブラスターだ。殺傷力はない。スタンガンと何も変わらないさ」
「スタンモードじゃないときの威力はどうなんですかね……いやいい、言わなくていい! 知りたいけど知りたくない!」
「そうか。では行こう。トランシィ、すまないが殿は任せた」
「んふふ、おっけーですよぉ」
ということで森を抜け、派手に戦いが行われているヒューマライズ本拠地へ突入する。
どうやらデクとショートは中に入ったようだ。入り口周辺では、キングダイナだけが戦っている。
彼の周辺には”個性”が戦闘向けと見られる団員が伸びて転がっており、対峙しているのはどうやらヴィランだけのようだな。”個性”持ちの人間を排除しようとしているわりに、こういう輩もいるのか。ヒューマライズとしてはこれはありなのだろうか?
「キングダイナ、加勢はいるか?」
「いらねぇ! この程度のやつなんざ俺一人で十分だ!」
「わかった、では先に行く!」
そしてそのヴィランも、キングダイナは冷静かつ的確に対処して押している。最近フォースの腕前も上がってきているからな、負けることはまずないだろう。
そもそもの話、キングダイナはこと戦闘という分野において既に並みのプロヒーローを軽く凌駕するだけの実力を持っている。心配するだけ無駄というものだ。
「……ふーん、信用してるんだ」
「違うぞ、ソウル。これは信頼というものだ」
茶化すように言ってきたソウルにそう返すと、彼は口を濁しつつもどこか羨ましそうにしていた。
そうしている間にも、周囲からはヒューマライズの団員がやってくる。ただ、その動きは散発的だ。戦力の逐次投入のようなことになっている。
周辺に張りついた氷や燃え盛る炎、倒れている団員などから察するに、先に行ったデクとショートが派手にやったのだろう。その影響が残っているのだ。
であれば、相手は烏合の衆とさして変わらない。私たち行く道を、その程度で妨げるなど不可能というものだ。
「君も案外やるじゃないか。ブラスターがなかなか様になっているぞ、ソウル」
「そりゃどうも……! あんま当たってるようには見えないけどな!?」
「最初はそんなものだ。それに、だんだん当たるようになっている。少なくとも私よりは上手いさ」
「そりゃ君は使う必要なさそうだもんなー!」
それはそうだ。フォースを駆使して敵を吹き飛ばしたり、地面に伏せさせたりしつつ、ライトセーバーを伸ばしたりあるいは私自身が跳躍して攻撃を放ったりしているのだからな。
トランシィも同様だ。そもそもの話、ジェダイやシスにこの手の武器は不要なのである。
「む……穴?」
そんな調子で本拠地内を奥へ奥へと進む私たちの前に、突然大きな穴が現れた。床の一部が完全に崩落しており、下を覗き込むとそこには地下水脈になっているようだった。
「……何かあったのか?」
「恐らくショートだ。ここでヴィランと共に下に落ちたのだろう」
「んなことまでわかんの?」
「ただの推測だ。ここから先の道に、炎と氷が一切ない。それ以外の大規模な戦闘の痕跡も見当たらない」
「なーる……で、どうすんの?」
「決まっている。先を急ぐ」
幸いというべきか、穴は完全に道をふさぐ形にはなっていない。端のほうを進めばいいだろう。
仮にそれが駄目だったとしても、ワイヤーフックを使えばいい。私とトランシィは最悪飛べばいいしな。
「……ショートを助けには行かないんだな。それとも、これも信頼ってやつ?」
「ああ。キングダイナはもちろん、ショートだって負けはしない。絶対にだ。……さあ進むぞ」
ということで、私は先へと足を向けた。
その後ろから、ソウルの声が聞こえる。
「あの子ラテンもびっくりな情熱さだな……」
「でしょう? 私の自慢の彼女です」
「さいで。……え? 彼女!? マジで!?」
「ほらほら、ぼーっとしてないで行きますよロディくん」
「いやいや、誰のせいだと……わっ、たっ、押すなよ!? 俺は空なんて飛べないんだからな!?」
トランシィはまた余計なことを。別に今さら隠しはしないが……む?
「隔壁だ。ここから先は行かせないってか?」
ソウルが言う通り、分厚い金属の扉が道を完全にふさいでいた。触れてみたが、どうやら分厚い壁を下ろしただけのシンプルなものらしく、フォースハックは無理だ。
しかし周辺にデクの気配はない。恐らく、彼は先に進むことができたのだろう。
彼の場合、絶対に無茶をするだろうからそれはそれで心配ではあるが……だからと言ってすぐにどうにかされるほど弱くもない。少しの間は大丈夫のはずだ。
「どうする!? こんなのどうしようも……」
「いや、問題ない。君は後ろを警戒していてくれ。トランシィ、やるぞ」
「はぁい!」
何か言いたげにしながらも、ソウルは指示に従ってくれた。ならば私たちも、私たちの役目をこなそう。
ということで、トランシィと共にライトセーバーを展開する。すぐさまその出力を増幅し、ライトセーバー本来の威力を引き出す。
そうして揃いの橙の刃を、隔壁に突き刺す。すると、あっという間に隔壁の表面部分が赤熱し、融解し始めた。
単純な話だ。ライトセーバーの切れ味は、プラズマの超高温によるもの。大体のものは焼き切ってしまえるからこそ、金属製の隔壁など物の数ではない。
これがたとえば、ベスカー鋼などの耐性持ちの金属が使われていれば話は別だが……その手の素材がこの星に存在しないことは確認済みだ。隔壁の厚さからして多少時間はかかるが、二人がかりならそれもだいぶ短縮できるだろう。
だから待っていろよ、デク。頼むから早まってくれるな。
彼のことは信頼しているが、それはそれとして自分を省みない考え方についてはだいぶ思うところがあるのだ。彼が何かやらかす前に、合流しなければなるまい。
引き続きアナキンスタイルの理波ちゃんでした。
アナキンが同じ状況にあったら絶対こうしただろうし、悲鳴を上げながらもなんだかんだで的確にサポートしてくれるオビ=ワンの姿が見える。
さすがにルークはもう少し自重するんじゃないかな・・・「父さんと一緒にしないでくれ!」とか言いながら。
で、似たようなことやらかしてハンとケンカしながら切り抜けるところを、レイアから呆れられるまでがセット。