銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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15.昇格の儀 光

 その後の顛末を語ろう。

 

 ヒーローデクたちの活躍により、日本とアメリカ以外のトリガーボムもすべて停止。世界の滅亡は防がれた。ヒューマライズの団員も、フレクト・ターンを筆頭に各国の幹部たちが逮捕され事件は収束に向かっている。

 

 そうした業務については、基本的に警察の役目だ。ヒーローはその手の権限を持っていないからな。

 だからこそ、事件が一応の落ち着きを見せたところで各国のヒーローたちは各々の持ち場に戻っていった。外国に派遣されていた日本のヒーローたちも、一人また一人と帰国の途に就いている。

 

 もちろん例外もある。首魁であるフレクト・ターンと直接対峙したデクをはじめ、オセオンで活躍したメンバー。それからヴィラン連合と遭遇したホークスたち、そして世界のためとはいえいくつもの法を無視した私たちである。

 

 デク……イズクたちについては、特に言うことはない。ただ話すべきことや裏取りをするべきことが多く、聴取に時間がかかっているだけだ。

 ヴィラン連合との遭遇についても、連合に潜入しているホークスが裏で報告していた内容と多くが合致したからか、そこまで時間は取られなかったらしい。連合との繋がりを表に知られないようにするのに相当苦労があったようだが、そこは仕方ない。

 さすがに新たに得た四つ目の”個性”については色々と調べることなどがあるようだが、推測は所詮推測。細かい話は引き続きホークスの成果待ち、ということでお開きとなったようだ。

 

 もちろんこの情報は、実際に顔を合わせたヒミコがフォースで探ったことや、I-2Oによる仕掛けによって得たものであるがそれはさておき。

 

 だが私とヒミコについてはそれなりの期間、統括司令部に留め置かれることになった。

 当たり前だ。何せ最低でも、不法出入国と領空侵犯を二回はしている。私たちがオセオンにいるのは、完全に真っ黒な行いなのだ。

 

 だからすぐにオセオンから撤収し、それぞれの持ち場に戻ったわけだが……それでも目撃者がいなくなったわけはない。

 そもそも、オセオンの現場で居合わせたことはイズクたちが証言しているし、彼らからファルコンのことも報告されている。隠しようがないのだ。

 

 ただし、私はこのことを後悔していない。ファルコンをああいう形で開陳することになったとしても、それが世界の大半を占める無辜の人々の自由と平和を守ることになったのなら、いくら罰せられようとかまわない。そう思っているからだ。

 

 実際、あそこで私が動いていなかったら、今頃どうなっていたかはわからない。逆に、私が動かなくとも解決していたかもしれない。その可能性も十分にあった。

 けれど今ほど円満に解決できたかはわからないのだ。イズクたちのことを信じてはいるが、三十分にも満たない短時間の中で万事つつがなく終わらせられたかというと、さすがに断言しかねるからな。

 

 それは上も理解しているのだろう。文字通りの世界滅亡の危機だったわけだし……そこを認識している現場のヒーローたちからも、擁護の声が上がっている。特にオセオン所属のヒーローたちからは、強く嘆願が出ていたと後から聞いた。

 

 だから結果として、私とヒミコの功績をすべての記録から葬ることと引き換えに、私たちの犯したことは不問となった。超法規的措置というやつであり、銀河共和国でもままあった政治的判断というやつである。

 

 なおこの背景には、日本政府、および日本のヒーロー公安委員会を牽制したい各国の思惑があった。

 

 今の私は、生まれも育ちも日本人である。だからこそ、私に対するあれこれは日本に優先的な権利があるわけだが……それを許した場合、日本一国だけにファルコンを筆頭とした未来技術が独占されかねない、という懸念を各国は抱いたのである。

 

 彼らはそんなことになるくらいなら、各種技術は私個人の中で秘匿し続けてもらったほうが幾分かマシと判断した。そして今回の件を少しでも恩に感じているのなら、いつか何かの形で返してもらえるかもしれないという可能性に賭けたというわけだ。

 

 既に世界の危機は去り、しかし世界は元々一枚岩ではない。それゆえに各国の思惑が入り乱れることになったため、日本側は無理を押し通すことができなかった。だからこその、すべて白紙にしてうやむやにするという結果に落ち着いたのである。

 

 この結果に、不満などあるはずもない。元々私は、国の枠組みにとらわれない治安維持組織としてジェダイを再興させたいと思っていた。今回のように、各国が勝手に私を一つの枠に押し込めようという動きを牽制し合っている状況が続くのは、都合がいいのだ。

 

 それを抜きにしても、私は富や名声がほしいわけではない。私が得るものなど、世界の平和だけで十分だ。ヒミコも同様である。はずだ。

 

 とはいえ、私たちの罪を不問にするため善意で動いてくれた人々……特に自らの判断で私を好きにさせてくれたインゲニウムには、きちんと報いなければならないだろう。人として、そういう義理は大事にしなければならない。

 ひとまずは、パワードスーツの強化や何かしらの武装を提供するのが無難だろうか……ということを考えながら、私たちはオールマイトと共に帰途に就いた。

 

 帰国した順番としては最後になったので、雄英に戻ったらクラスメイトたちから心配したと盛大に出迎えられる羽目にもなったが。

 いずれにしても後悔はない。むしろ、こんなにも仲間想いの友人がたくさんいることが嬉しかった。

 

 まあとはいえ、出迎えのドサクサに紛れてヒミコにキスをしに行ったトールに対しては、思うところがあるのだが。完全に留守番組だった彼女には相当心配をかけたことは事実だし、唇を狙ったわけではなかったので、正妻として寛大な心で許すことにする。ヒミコも拒んではいなかったし。

 

 ともあれ、そんな形で寮に戻った日の夜。私は一つの決意を胸に、虚空へと呼びかけた。

 

「アナキン、私は決めたぞ」

『へえ……それじゃあ聞かせてもらうとしようか』

 

 応じたアナキンの姿が、ふわりと浮かび上がる。どこか挑発的な、勝気な笑みが向けられている。

 

 用件など、口にする必要はなかった。だから私は、友人でありマスターでもあるこの男に、真正面から向き合う。

 

「私は……この星に生きる人々の、自由と平和のために生きる。それらを守るために……守れるジェダイとなる。これが私の決意であり、新しく掲げるものだ」

 

 私は、どうあがいても前世の価値観を捨てられない。ジェダイとして育った私は、ジェダイという生き方しか出来ない。

 

 けれど、その正義が必ずしも正しいとは限らないことも知ってしまった。

 だから私は、正しさを標榜しないことにする。正義の味方、と世間で言われるヒーローではなく。国の正義の守護者であったジェダイでもなく。

 

 あくまで、人々の何気ない暮らしを。愛し合うものと生きる幸せを、守る。そういうものに、私はなりたい。

 これが私の、新たな理念だ。私が再興する、ジェダイの。

 

 そんな決意を込めて、改めてアナキンを見据える。すると彼は、ふっと楽しそうに笑った。

 

『いいんじゃないか? 僕から言うことは何もない』

「……私は合格、ということでいいのか?」

『僕は最初から、君が何を言おうが合格と言うつもりだったぞ?』

「は?」

 

 だが、続けられた言葉に私は唖然とするしかなかった。

 

 なんだ、それは。では私の今までの苦悩は一体?

 

『ははは、そうふてくされるな。君もわかっているだろう? その悩んだ時間は決して無駄じゃない。悩みに悩んで導かれた答えなら、どんなものであってもそれが君にとっての正解だったってだけさ』

「それは……もちろんわかるが、しかしだな……!」

『わかったよ。それじゃ、改めて言っておくとしよう。……見事だ。僕が君たちに教えることはもう何もない。……この日、我らはフォースの宣言を知るためここに立つ』

 

 アナキンは不意に畏まると、大仰な仕草でそう言って見せた。その口上は割愛されてはいたが、確かにジェダイナイト昇格の儀式で述べられるものだった。

 

 私は一瞬目を見開いたが、しかし彼の意図は理解できたのでその場にひざまずく。たち、という呼びかけだったからか、ヒミコも小首を傾げつつも私にならった。

 

『前へ出よ、パダワン。マスターの権限とフォースの意思により、そなたたちは地球のジェダイナイトとなった』

 

 そしてアナキンは厳かな雰囲気、顔つきをそのままに、どこからともなくライトセーバーを取り出し刃を二回、閃かせた。

 これにより、前に進み出た私とヒミコが結っていたパダワンの証である三つ編みが、音もなく切り落とされる。

 

 ヒミコからの抗議はない。切り落とされたとはいえ、私たちの「お揃い」な髪型は継続しているからだろう。

 

『さあライトセーバーを持て、ジェダイナイト・アヴタス、ジェダイナイト・トランシィ。フォースが共にあらんことを』

 

 そしてその宣言を持って、この儀式は終わる。ライトセーバーがこの場にないので、持てと言われても持つものがないわけだが……そこは慣習的なものなので構わないだろう。

 

 私とヒミコは立ち上がり、同時に敬礼を取った。

 銀河共和国のものではない。地球式のものだ。私はもう、銀河共和国のジェダイではないからな。取るならこちらを取るべきだろう。

 

 これを見届けて、アナキンは表情を崩した。先ほどまでの大仰な仕草はすっかり消え、柄にもなく作っていた厳かな顔はいたずら小僧の笑みに戻ってしまっている。

 

 そんな彼に、ヒミコが問いかけた。

 

「……私もよかったんです?」

『ああ。元々君は過去から帰ってきた時点で十分だったからな。むしろコトハに合わせて待たせてしまってすまなかった』

「んふふ。コトちゃんと一緒がいいですから、別に嫌だなんて思ってませんよ。むしろこのタイミングでよかったです。だからその謝罪はいらないです」

 

 そう言って笑うと、ヒミコは私を抱き寄せる。

 

「これで本当の本当に、コトちゃんと一緒ですね」

「……ああ」

「これで、色んな髪型が試せますね。コトちゃんにしてあげたいのがいっぱいあるの。絶対似合うと思うんです。ね、してくれる?」

「もちろん。できればお揃いがいいな。好きな人とは、なんでも一緒がいい。そうだろう?」

 

 なんだかくすぐったい。だが、決して嫌な気分ではなかった。

 だから私も、小さく笑う。そうして二人で、くすくすと笑い合った。

 

「……えへへ。大好きです、コトちゃん」

「私もだよ。この世界で一番、愛している」

 

 ……かくしてこの日、ジェダイは地球において一応の再興を果たした。しかしまだ、ジェダイナイトが立っただけの……しかもたった二人だけの、組織と言うのもはばかられる状態でしかない。

 

 だから私は、まだまだ進み続ける。新しいジェダイの生き様を、歴史を、これからもこの星に刻み込んでいく所存だ。

 この星の、自由と平和を守るために……。

 

 

EPISODE XIII「テイルズ・オブ・ニュージェダイ」――――完

 

EPISODE ⅩⅣ へ続く




【速報】ジェダイ、復興【タイトル回収】

とはいえまだ互いへの愛以外は何もない、たった二人だけの組織とも言えない何かですが。
それでも認可されたジェダイナイトがいれば、やれることはあるので。
これからはより明確にジェダイという組織を作るために、色んなことに手を広げていく感じですね。

まあ、その前に戦争が挟まるんですけどね。ヒロアカ的に考えて。
本作の基本がヒロアカ側である以上そこは当然ですし、そもそも組織を作る地味かつ起伏の少ないストーリーを長々やると作品としてのジャンルも変わります。
なのでジェダイの直接的な復興に関する工作だったり政治的なアレコレは、深掘りしないかと思います。

とはいえその前に、幕間のお時間です。
先に予告していた通り今回の幕間は三つありますので、もう少しだけお付き合いください。
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