銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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EPISODE ⅩⅣ ヒーローの帰還
1.一つの未来を目指して


 超常解放戦線。それがヴィラン連合の今の名前らしい。

 デストロが提唱した解放思想によってまとめられたヴィラン組織、異能解放軍を吸収してそうなったという。

 

 異能解放軍とヴィラン連合が合併したのは、十二月の初め。私がヒミコを失い、失意に暮れていた時期に起こった泥花(でいか)市の戦いが、まさにそのきっかけであった。

 この戦いでヴィラン連合が勝利し、異能解放軍を吸収。この結果、ヴィラン連合は万単位の兵力を持つ強大な組織となって今に至る。

 

 そして今、シガラキ・トムラの強化措置が行われているという。年末から今まで不気味なほどに連合が沈黙を保っていたのは、来たるトムラの強化完了を待っているだけに過ぎなかったのだ。

 

 だが秩序の側はこれらの情報を、きちんと収集できていた。連合に送り込まれたスパイ――ヒーロー側からはホークス、警察側からはルクセリア――により、相手の構成員やスケジュールを、トムラが目覚めるタイミングまで含めてほとんど正確に把握していたのである。

 

 そして今……三月の下旬。すべての準備を整え終えた我々は、遂に行動を開始する。全国からヒーローがかき集められ、先制攻撃を仕掛けることになったのだ。

 

 目標は、主に蛇腔(じゃくう)群訝(ぐんが)。ここは前者がトムラ強化の拠点であり、後者が超常解放戦線の幹部が集まって会合を行う場所で、どちらも最優先で制圧すべきところである。

 

 しかし超常解放戦線の構成員は、総勢約十一万人。色んな意味でそれほどの人数が一か所に集まれるはずもなく、戦うべき相手は全国各地に散っている。

 だからこそヒーローを集めて全拠点に同時に攻め入り、超常解放戦線を全国一斉に掃討しようというのが作戦の全貌である。

 

 ただ、超常解放戦線の構成員は強い”個性”こそ優れた人間の証であるという思想柄、ほぼ全員がしっかり”個性”を鍛えたものたちだという。だとすると、この大戦力を前にヒーローたちだけでは明らかに手が足りない。

 そんな状況だからこそ、私たち学生にもお鉢が回って来た。ヒーロー科の生徒も参加するように、と通達されたのである。

 

 中でも私とヒミコは、あちら側のフォースユーザーであるシガラキ・カサネの対処要員として最前線に配置されることになった。

 これは学生としては異例の待遇であるが、異論はない。あの少女を相手にするとなると、非ユーザーではどうしても荷が重いからだ。

 

 ただし、肝心のシガラキ・カサネは複数持つ”個性”によって瞬時に長距離を移動することができる。

 また、あちら側には対象を増やすことができるトゥワイスがいる以上、どちらの戦場にもカサネが出現する可能性はかなり高い。

 

 ということでまたとなってしまうが、私とヒミコはそれぞれ別の場所に配置されることになった。私が蛇腔、ヒミコが群訝である。

 

「もー! また別々じゃないですかぁ! ヤですぅ! コトちゃんと一緒がいいですぅ!」

「今回ばかりは仕方あるまい。どうしても一緒がいいなら、なるべく早く相手を下して合流するしかないさ。()()()()()()()()()?」

「それはそうなんですけどー!!」

 

 ホワイトデーから付き合い始め、もどかしくも麗しいやり取りをしているイズクとオチャコ――同じ寮内に住んでいるのに、文通から始めようとしたのはさすがにみんなで止めた――が同じ地点に配置されていることもあって、ヒミコが駄々をこねる一幕もあったが……最終的には受け入れざるを得ず、私たちはそれぞれの場所へ向かうことになった。

 

 まあおかげで前日の夜はたっぷりかわいがられることになり、二人分の血と愛液で部屋の中がとんでもないことになったが、それについては何も言うまい。

 

 なお最前線に配置されたメンバーは、私たちだけではない。A組からはデンキ、フミカゲの二人が駆り出されているし、B組にも数人声がかかっているようだ。

 

 もっとも、彼らの場合は序盤での役割を終えたら他のメンバー同様に後方待機となるらしいが……私とヒミコはプロヒーロー同様、最後まで最前線にとどまることを望まれている。もちろんそれは他の学生と一緒にいるときには明言されず、別口からではあったが。

 

 とはいえ、私としてもそれは望むところだ。新たなジェダイとして、この星に根差したジェダイとして、ナイト昇格からすぐにここまで大きな仕事が来るとは思っていなかったが……しかしだからこそ、奮い立つというものである。

 

 そんな大一番を控えた朝。

 

「ん……んんんん。まだ満足がいかないが、時間もないしこれでよしとするしかないか……」

「コトちゃんってやっぱり凝り性ですよねぇ。私そんなに気にしませんよ? 何より、これでもちゃんとお揃いですもん」

 

 私たちは、私の部屋で互いの髪を結い合っていた。

 

 あの日パダワン卒業を果たした私たちは、その証としてパダワンであることを示す三つ編みを切り落としている。

 この結果自由に髪型をいじれるようになったため、以来私たちは毎日互いの髪を結い合うようになった。今朝のこれも、そういうことである。

 

 髪型はその日の気分によって異なるが、決まってお揃いだ。

 当然である。そうやって二人一緒の髪型にするだけで気分が高揚するのだから、心とは本当に不思議なものだな。

 

 ただ、いかんせんこの手のことにはまったく触れてこなかった私である。髪を梳くことすらろくにしてこなかったのだから、上手く結い上げることなどできるはずもない。

 

 だから毎日時間ギリギリまで試行錯誤をするのだが……今日も成果は芳しくない。

 もちろん、最初期に比べれば格段に進歩している。してはいるのだが、私にはこの手の知識がないので、毎日の髪型を決めるのはヒミコに一任しており……今日の彼女の気分は、シニヨンという難易度の高い髪型だったために、だいぶ不格好になってしまった。

 がんばったのだが、二つのシニヨンの高さを合わせるので精いっぱいだった。今の私にはここが限界のようだ。

 

 ……まあうまくいかないのはずっとであり、ここ最近ヒミコの髪型は不格好なままだ。それがとても申し訳ないし、何より悔しい。

 私の伴侶の魅力がこんなもので翳るなど欠片も思っていないが、この愛しい人の魅力を少しも引き出せないでいる己があまりにもふがいない。

 

「いいんですよぉ、私気にしてないですから」

 

 それでも、ヒミコはそう言ってにまりと笑ってくれるのだ。そんな優しい彼女に、なんとか報いてあげたい。

 

「それに、私もお団子ヘアーするのは初めてだったので。今回はそういう意味でも、きちんとお揃いですからいいんです。ほら」

 

 再度にんまりと笑って、ヒミコが私を抱き寄せる。

 そうして二人で覗き込む形になった姿見の中には、まとめきれなかった髪があちこち跳ねる不格好なシニヨンをお揃いにした私たちが映っていた。

 

 鏡の中の私が、困ったように照れている。されるがままに抱きしめられて、嬉しそうに微笑んでいた。

 

「二人とも―、そろそろ時間ギリギリだよー!」

「はーい、すぐ行きまーす!」

 

 そうこうしているうちに、トールが迎えに来たようだ。実際これ以上使える時間はないので、私たちはすぐに動き始めた。

 大丈夫。こうなることはわかっていたから、準備をすべて済ませてから髪を結っていたのだ。

 

14O(ワンフォーオー)、あとは任せたぞ」

了解了解(ラジャラジャ)、ますたーガタモゴ武運ヲ」

 

 まだ片付け切っていない部屋の清掃を14Oに任せ、私たちは肩を並べて部屋を出たのだった。

 

***

 

「今回の超常解放戦線との戦い、我々は敗北する」

 

 出撃前の全体ブリーフィング。居並ぶ面々を前に、サーナイトアイはそう断言した。

 彼の言葉に居合わせる全員が一斉に困惑の声を上げ、それがあたかも一つの合唱のように大きく響き渡る。

 

 それはここにいるものだけでないだろう。何せすべての場所で、すべての参加者がヒーロー、警察などの別なくこれを聞いているのだからな。

 

「この作戦の大枠が固まってからおよそ半月ほどの間、私は参加を受諾したヒーローたちの予知を毎日続けてきた。そのすべての予知結果が、我々の敗北を示唆している」

 

 普段なら、抗議の声がいくつも上がったかもしれない。だが、今回はどよめきだけだった。

 

 当たり前である。なぜなら、サーナイトアイの”個性”は「予知」なのだから。

 

「蛇腔では死柄木弔の覚醒を阻止できず、周辺一帯は彼の『崩壊』によって更地になる。群訝ではギガントマキアが暴れることで多大な死傷者は発生するし、ギガントマキアはその後蛇腔にまっすぐ向かうため、道中も史上最悪規模の犠牲者が出ることになる。

 そして……そこまでしてもなお、我々は死柄木弔を無力化することができない。オールマイトが築き上げてきた平和と秩序は崩壊し、社会は未曽有の危機に見舞われることになる」

 

 周りの様子を意図的に無視して、サーナイトアイが言葉を続ける。淡々とした口調は、意図してのものだろう。

 

「私の”個性”は『予知』……この結果は変えられるものではない。たとえ覆すよう行動したとしても、帳尻を合わせるように何かが起こっていずれは予知通りの未来に到達してしまう……」

 

 その絶望的な言葉に、早くも周囲に厭戦気分が広がり始める。特に、学徒動員されている学生たちにその傾向が強い。

 

 フォースを通じて心情がわかる私には、それがまだ絶望していない人間をも飲み込もうとしている様子が感じ取れてしまうため、思わず顔をしかめた。気持ちはわからなくはないのだが、サーナイトアイのこの説明が前振りであることもわかっているため、いささか煩わしく感じてしまう。

 

 誰かの「ウソだろ……」というかすれた声が聞こえた。それが発端になったかのように、周りの声が大きくなっていく。

 

 だが、サーナイトアイは口を開かない。ややうつむき気味の姿勢は、何よりも雄弁に絶望の未来を語っているようでもある。喧騒が、どよめきが、広がっていく。

 

「……そう思われていた!」

 

 十数秒後。ざわめきが最高潮に達しようかというところで、サーナイトアイは顔を上げて声を張り上げた。ぴたりと喧騒が消え、全員の意識が改めてサーナイトアイに集中する。

 

「そう……最近、私は私の”個性”の本質をようやく把握することができたのだ。私の『予知』は絶対ではない、という事実を! 雄英の協力のおかげで、私は私の『予知』を覆すための方法を特定することに成功した!」

 

 これは事実だ。彼は死穢八斎會の一件以降、フォースという同じく未来を予知する力との違いなどを調べるため、雄英で特別講師の傍ら予知を使い続けていた。

 一日に一回しか使えないために進捗は緩やかなものだったが……それでも、彼はその頭脳とある種の執念でもって、自らの”個性”の穴を見つけたのだ。

 

 おお、という歓声が上がる。

 

「私の『予知』を覆すためには、『予知された未来を覆したい』という強い意思をはっきりと持ち、そのために全力で邁進することが必要になる。

 だがそのためには、私一人のエネルギーでは足りない。大勢の人が一つの未来を信じ、願い、行動しなければ、必要なエネルギーには満たないのだ。

 そして……そのために必要な人数は、覆すことが困難な未来であればあるほど多くなる」

 

 一回の不意打ちを回避する程度であれば、数人がそれを願うだけでいい。

 しかし明確な格上の打倒を成功させようとすると、最低でも十人以上の人間が同じ結果を望まなければならない。

 人一人の死を回避するには……恐らく何十人という人間の意思が一つになる必要になるだろう。

 

 そう、サーナイトアイの”個性”は、一人で完結するものではなかったのだ。

 彼の”個性”は、見たものを誰かと共有して、初めて真価を発揮するものだった。それが「予知」という”個性”の本質だったのである。

 

 だが、大量の死傷者が出る上に敗北して社会が崩壊するという絶望的な未来を回避するためには、どれほどの人間が強く願い、行動する必要があるだろう。それは誰にもわからない。

 

 だからこそ、作戦開始の直前という場面で、サーナイトアイは演説を打った。日本にいるほぼすべてのヒーローと警察関係者が一堂に会する、今この瞬間に。彼らの……いや、私たちの意思を統一するために。

 

「今! 我々は絶望の未来を共有した! であれば、やることは一つ! その未来を覆し、平和を取り戻すのだ!」

『おオォ!!』

 

 雄たけびが上がる。絶望の気配は、既に消えていた。

 

 さあ、出陣だ。

 




この最終盤に来て、やっとトガちゃんの髪型が原作通りになりました。合わせて理波もお団子ツインでおそろいです。カァイイね。

ということで、皆さん大変長らくお待たせいたしました。
ちょっとあの世で俺に詫び続けたり、アストルティアを救ったり、メタルギアを破壊したり、メタルギアを破壊したり、シャゴホッドを破壊したり、ストーラーダを修復する旅をしたりで忙しい日々でしたが、どうにかこうにかまとまりました。
最終章、EP14「ヒーローの帰還」を全17話にて本日よりお送りしてまいります。お楽しみいただければ幸いです。
感想、評価、ここすき等々、いただけますとそれはとても嬉しいなって。

ちなみに予知を覆す過程で絶対に避けられないであろう「いくつかの死」について、ナイトアイは口にしてません。
なので演説ぶち上げた後こっそり憔悴してオールマイトに慰められてると思います。
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