銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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2.開戦

 最前線、蛇腔総合病院。私はそこに、エンデヴァーやイレイザーヘッド、ミルコらと共に正面から踏み込んだ。

 目指すはオールフォーワンの腹心。ドクターと呼ばれている男、ガラキ・キューダイの確保だ。

 

 この病院は、彼のひざ元である。彼は「”個性”に根差した地域医療」を掲げて病院を設立し、多くの慈善事業に多くの投資をしてきた。

 だが彼こそが脳無を作成し、シガラキ・トムラを強化している男。今もこの病院の地下では、彼の手によってシガラキ・トムラの強化措置が進められている。

 

 だからまずは、ガラキを確保する。サーナイトアイの予知と、警察が潜り込ませた捜査員の報告によって大まかなところはわかっているが、重要な情報がまだわかっていないからだ。

 私が最前線に配置されたのはシガラキ・カサネへの対抗措置という意味が強いが、現場で情報を手に入れるためでもある。

 

「な、なんですか!?」

「わー、ヒーロー!」

 

 突然大勢のヒーローが警察と一緒になだれ込んだ来たのだから、病院にいたものたちは一斉に驚愕した。その後の反応は、喜ぶか訝るかだが……いずれにしても、彼らにはここを離れてもらう必要がある。

 

 病院という場所柄、居合わせた民間人は大半が病人か怪我人なので、避難には時間と手間がかかる。だからこそ、そのためにかなりの人数を割かなければならなかった。

 

 しかし私たちはそれをよそに、病院の奥へ奥へと進んでいく。そして、遂にその男を発見した。

 

「貴様か。脳無の製造者……オールフォーワンの片腕。観念しろ悪魔の手先よ!」

 

 ガラキに向けて、エンデヴァーが決然と言い放つ。その言葉は、この作戦に参加した多くのものの代弁でもあった。

 

 元々威圧的な外見のエンデヴァーが、はっきりと威圧のためにらみつけたからか、ガラキは悲鳴を上げて逃げようとする。どうやら、彼自身には戦闘能力はないらしい。

 

 だが無駄だ。私がフォースプルをかけ、その身体を押しとどめたからだ。

 もちろんそれだけにとどまらず、ガラキをこちらへと引き寄せていく。

 

 その途中、ガラキの身体が急速に老け始めた。

 

 原因は私の隣に立つイレイザーヘッドだ。彼の目が赤く光っていた。

 

「『抹消』で見た途端老け込んだな。届け出では無個性だったはずだが……”個性”を持っている。その”個性”がオールフォーワンの長生きの秘訣か?」

 

 問いかけるツカウチ警部をよそに、ガラキが私の手元にまで引き寄せられてくる。その身体を、イレイザーヘッドが捕縛布で受け止めつつ拘束した。

 

 拘束をそのままイレイザーヘッドに任せ、私は改めてガラキの頭へと手を向ける。

 

「”個性”の複製、あるいは”人造個性”か。お前はその技術をオールフォーワンに提供していた。そうだな?」

 

 続けられたツカウチ警部の言葉に合わせて、私はマインドプローブを発動させた。ガラキの心が、記憶が、私の前に開陳されていく。

 

 と同時に、私は顔をしかめた。

 

「皆さん、このガラキは本人ではありません。トゥワイスの”個性”の複製物を与えられた、小型の脳無によって造られた複製体です」

「な、なぜそのことを!?」

「本人は……どうやら、ここ数か月ずっと地下でトムラへの処置にかかりきりのようですね」

「やはりか」

「なるほど、我々の突入が既にあちらには気づかれていると見るべきだろうな。地下に先行したメンバーに死傷者が多かったのはそれも理由か」

 

 ただし、これ自体は予定通りだ。無線でミルコから大量の脳無が起動していることが告げる通信が入ったが、そこも含めてサーナイトアイの予知でわかっていたからな。

 

 だが彼の予知は「見る」ものであって、「聞く」ものではない。見た未来の中で、どういう会話がなされているかわからないのだ。

 だからこそ、ここまではあえて予知に従う形で進めたのである。わかっている地下への入り口は一か所しかないので、一度に大勢が通れないということもあったしな。

 

 それでも当初立てた作戦より、先に地下に向かうヒーローの数は多くなっている。その分、この先に起こる出来事に対しても、ある程度は対処できるだろう。

 

「地下に存在する黒脳無はそれなり以上にあるようですが……自律思考を持つ個体……ハイエンドと呼ぶらしい個体の数は、()。いずれの”個性”も『予知』通りのようです」

「なっ、な、なぜそこまで……! 素晴らしい”個性”じゃが、今はそれが憎い……!」

 

 すべて言い当てられたガラキの複製体がわめく。だがその身体は縛り上げられているので、抵抗は無意味だ。

 

「ひとまずはそれだけわかれば十分だ。我々は地下へ先行する」

「ええ、ここは我々警察にお任せを」

 

 ここでヒーローたちが一斉にきびすを返した。私もマインドプローブを打ち切り、彼らに続く。その後ろで、イレイザーヘッドが捕縛布に力を込めてガラキの複製を締め上げて消滅させた。

 

 病院内には、既に大量の脳無が出現していた。ここも予定通りではある。だから接敵したエンデヴァーたちは、早速戦闘に入る。

 

 しかし私はその横を抜け、先に進むことを優先する。打ち合わせ通りにだ。

 加勢はしない。増幅を駆使すれば脳無たちをすぐに破壊できるが、増幅のための栄養はまだ使いたくないからだ。

 

 何より、()()()()()()()()()()()()()()()。対エンデヴァーに特化した力を持つあの脳無は、エンデヴァーたちが地下に入る前になんとかしなければならない。

 

 大丈夫だ。この日のために、私たちのライトセーバーには出力を調整する機構を組み込んである。

 カイバークリスタルも増設した影響で、最大出力時の威力は人間相手に使うにはかなり過剰になってしまうが……まあ、元からライトセーバーは人間相手には過剰威力だ。それに、この超人社会ではそれも備えとしては悪くないだろう。

 

 それよりも、増幅に頼らずともライトセーバー本来の切れ味を発揮できることのほうが重要だ。今まさに、進路に存在する脳無を苦もなく切り伏せることができるのだから。

 もちろん今は移動が優先なので、対象はどうしても邪魔になるものだけだが。それでも脳無は雑兵と言うには強敵であるだけに、少しでも露払いはしておきたい。

 

『「ワープ」と「二倍」のチビ脳無は蹴っ飛ばした! けどハイエンドどもが起動した!』

 

 そのとき、そのミルコから再び通信が飛んできた。ハイエンドの起動は阻止できなかったらしい。

 ()()()()()()()()。今のところ、事態はほぼ予知された通りに進んでいる。

 

 もちろん予知の悪いところをすべて覆せれるならそれが一番いいのだが、今私たちの目標はあくまでこの戦いで最終的に勝利すること。過程のいくつかは受け入れるしかない。

 

 それに起きたこと自体は予定通りとはいえ、その開始は予定より少し遅れている。まったくの無駄というわけでもない。その分先行したヒーローたちが間に合うのが早くなる。

 

「はあァアーー!! セッせせ狭ァアア!!」

 

 私が辿り着いた地下の先、恐らくは広大な地下室を目前にしたところで、ハイエンド脳無の一体がヒーローたちに突撃していた。言葉通り、狭い通路を往くにはいささか以上に無理のある巨体の脳無だ。

 その脳無を、ナンバー6ヒーローのクラストが一人で押しとどめている。この隙間を縫う形で周りのヒーローが攻撃を加えているが、やはりハイエンド脳無の超再生は厄介だ。あっという間に治っていくため、押し通ることができないでいる。

 

「お任せください」

「! 君は」

 

 私はそこに割り込んだ。

 抜刀したライトセーバーの出力は最大出力。フォームはアタロ。狭い廊下の壁や天井を足場にして、私はハイエンド脳無に躍りかかる。

 

「ココんなモノ――」

「――せめて安らかに眠れ」

 

 橙色の輝きが、過つことなくハイエンド脳無の頭を唐竹割りにした。

 

 ただ切るのではない。すぐさま身体を動かし、頭を、脳を、素早くいくつもの塊へと細切れにする。

 

 脳無は死体から造られた生物兵器だ。しかしその挙動はやはり、人間がベースにある。脳が思考を、行動を、筋肉の動きをつかさどっていることに変わりはない。

 そして既に死体であるならば、その脳を機能停止させることにいささかのためらいもない。

 

 大きな音を立てて、脳無の身体がうつぶせに倒れる。それでもなお道を塞ぐほどだったので、さらにその身体もある程度裁断しておく。

 

「さあ、行きましょう」

「あ、ああ……」

「うむ! ミルコが待っている!」

 

 クラスト以外の居合わせたヒーローからは多少の恐れも買ってしまったようだが、それは今気にすることではないだろう。

 クラストもクラストで、脳無を瞬殺してなお無感動な私に何やらヒーローらしい勘違いをしているようだが、こちらも今は脇に置いておくとしよう。

 

 そうして踏み込んだ大広間。私が踏み込んだその瞬間、まさにミルコが渾身の一撃をゾウのような顔の脳無に撃ち込もうとしているところだった。

 だがその左腕が、ねじれ始めている。放置すれば、ねじ切れるに違いない。そうすればとんでもない痛みが襲うはず。

 

 私はそれを認識した瞬間、ミルコの腕をねじろうと遠隔で”個性”を発動させている脳無の頭めがけて、長さを増幅したライトセーバーの切っ先を叩き込んだ。これによりただの死体に戻った脳無による”個性”の制御は消え、ミルコの腕は軽く折れた程度で済んだ。

 直後、そのまま彼女の必殺技が狙っていた脳無の頭を砕いた。

 

 ……サーナイトアイの予知では、ミルコはここで左腕を完全に失っていた。失ってなお、必殺技をやめようとしなかったわけだが……ここは覆すことができたか?

 

 ただミルコのあの一撃をもってしても、脳無を機能停止するにはわずかに足らなかったようだ。直前にあちらも肉と骨を幾重にも束ねて頭部を守っていた。この機転と判断力は、ただの脳無にはなかったものだな。

 

「ミルコ! 無事か!」

「当然だろーが!」

 

 クラストとミルコが言葉を交わす。ゆらりと立ち上がるミルコだが、その前に三体の脳無が立ちはだかった。

 ミルコが蹴り倒した一体はまだ倒れているが、再生は既にかなり進んでいる。こちらが戦線に復帰するのも時間の問題だろう。

 

「よし、任せる!」

「ああ、任せろ!」

 

 だがそれを無視して、ミルコは奥へと駆け出していく。

 

 当然脳無たちは彼女を阻もうとするが、そうはさせまいとクラストをはじめとするヒーローたちが部屋になだれ込み、進撃を補佐する。そのまま三体の脳無と六人のヒーローが戦い始めた。

 

 私も同様だ。だが……ああ、そうだ。私が対峙すべき敵が、ここにはいる。

 

「キキ貴様……は、わ私、が必ずこ殺ススス……!」

 

 他のヒーローには目もくれず、ましてや造物主であるガラキを守ろうともせず、私の前に立ちはだかる黒い巨体。

 

 その身体つきは他と同様に黒いが、比較的人間としての姿をとどめている。だからわかった。その顔に、面影があると。

 

 そう、たちはだかった脳無の顔は。

 左右に両断された痕跡のある顔は。

 

 銀色の長髪の代わりに剥き出しの脳がさらされていようと、忘れはしない。

 

「ああ……久しぶり、と言うべきなのだろうな。――()()()

 

 年末のあの日、那歩島(なぶとう)で戦ったヴィランのものだった。

 

 そろそろ戦闘の邪魔になるであろうローブを脱ぎつつ、私は彼と対峙する。

 




ナイン(故人)再登場。
あのとき死体が回収されたのはここに彼を出すためでした。察していた方もいらっしゃるでしょうけども。
今章はこんな感じで、ほぼ全編戦闘シーンになる予定。全面戦争編だからね、仕方ないね。
仕方ないけどイチャイチャが不足気味で書いてて禁断症状が起きそうでした。

正直、本誌でのトガちゃんロスが重なったこともあって、今章は余計執筆に時間がかかったところはあります。
そこにようつべで、公式がうpしたトガちゃんとお茶子ちゃんのイフストーリードットアニメーションでトドメ刺された気分。
原作の世界では、何がどうあっても二人が仲良く笑い合ってる瞬間は最期の一瞬にしか来なかったんだと叩きつけられた気がして・・・。

それを覆してイフを現実にするには、前提を大きく覆す要素をぶち込むしかないんやなって・・・。
なので本作では絶対幸せにさせると心を新たにした所存。いや本作のトガちゃんはもうだいぶ幸せそうですけど。

なおライトセーバーに増設されたカイバークリスタルの出どころは、もちろんトガちゃんのファルコン便です。
元々二人が使っていたクリスタルは理波が調和させたやつを分割したものですが、今回のクリスタルはトガちゃんが調和させたものを分割しています。
今回もお揃いを続けるために、クリスタルは最初の一つと同様に分け合いっこ。オレンジ色はそのままに、標準のライトセーバーより少し出力が高いくらいを最大出力として使用できるようになりました。
今後の出力の調整は増幅ではなく、フォースでヒルト内の機構に干渉することで行います。
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