銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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5.ケンカをしましょう! 上

 襲ちゃんのスマホを没収しようとしましたが、襲ちゃんもフォースプルをかけてきて拮抗しました。空中でスマホがピタリととまってます。

 

 うーん、このまま力づくで引っ張ってもいいですけど、まだ先は長いでしょうし疲れることはしたくないですね。

 

 ってことで、フォースプルはやめながら襲ちゃんに突撃します。同時に今度はフォースプッシュを思いっきりかけました。

 そうすれば、引力で引っ張られてたところに斥力まで加わったスマホは勢いよく吹っ飛んでいき、襲ちゃんの横を通り抜けていきました。うん、バッチリなのです。

 

「あ……っ、こんの……!」

「きゃっ、もしかして怒りました?」

「当ッたり前だろ!?」

 

 ものすごいスピードで振り払われた銀色の剣を正面から受け止めて、こわーい、と笑います。

 

 けど、思ってた以上にパワーがあります。どうやら既に憤怒の”個性”は全開みたいです。気をつけないとですね。

 

 ますたぁのシエンを思わせる激しい攻撃を、私はアタロで周りと跳び回りながらかわしつつ、適度に攻撃を挟み込んでいきます。

 あんまり足場が広くないので、これを追いかけるようにして攻撃を振り回す襲ちゃんの剣で周りがどんどん壊れていきます。

 

 こうやって見ると、襲ちゃんの”個性”ってワンフォーオールによく似てますよね。戦い方は出久くんとは全然違いますけど……あ、そこ。

 

「えいっ!」

「づ……ッ! クソッこの野郎ッ!!」

「私女の子なので、野郎なんてヤですよぉ」

 

 いい感じに反撃できそうだったので、襲ちゃんの膝を砕きました。片方とはいえ、立っていられないはずです。まあ襲ちゃんには超再生もあるので、これもそのうち治っちゃうんでしょうけどね。

 

 でも……うーん。襲ちゃんの相手を任されはしましたけど、どう無力化すればいいんでしょ? 拘束具はフォースがあれば外せちゃうでしょうし、腕とか足を切り落としたってそのうち治っちゃいます。

 さすがに首を落としたらとまるでしょうけど、それだと死んじゃいますし……。

 

「わっ、と」

 

 考えながら近づこうとしたら、フォースライトニングが飛んできました。もうできるようになったんですね。すごいなぁ。

 ひとまずセーバーで受け止めましたが、本当にどうしたものでしょう?

 

「……!」

 

 そう思った直後、フォースの導きに従って私は横に跳びました。そのまま壁を蹴って、さらに位置を変えます。

 

 すると直前まで私がいたところに、二本の剣が振り下ろされました。持ち主は――もちろん襲ちゃんです。

 

「……仁くん?」

「襲ちゃん! 間に合ってよかった! 反撃だ! 逃げよう!」

「トゥワイス、ナイス!」

 

 吹き抜けを挟んで反対側の通路から、仁くんが声を上げていました。手すりに前のめりになって言う彼に、襲ちゃんがにやりと笑います。

 

 彼女はそのまま隅のほうに転がっていたスマホを引き寄せました。私も同時に動いて阻止しようとしますが、二人の襲ちゃんが割り込んできたので応戦するしかありません。

 

「トゥワイス! ボクは弔を助けに行く!」

「マジで!? やめとけよ! 頼む! ここは俺がなんとかすっからよ!」

 

 怒涛の攻撃を繰り出してくる二人の襲ちゃんを凌ぐ私の視界の端で、頷いた襲ちゃんが消えました。

 

 仕方ないので、コトちゃんにテレパシーを飛ばします。コトちゃんなら大丈夫だとは思いますけど、このことは伝えておかないとです。

 

「あはははは! 死ね! 死ねぇ!」

「ぶっ殺してやる!!」

「死ぬのはヤです、ねっ!」

 

 物騒なことを言いながら攻撃してくる二人の襲ちゃんですが、連携は正直微妙です。ただでさえ場所が狭い上に、元々そういうのは得意じゃないんだと思います。ああいう性格ですし。

 

 だからこそ、同時とは言っても完璧には遠くって。フォースと共に感覚を研ぎ澄ませば、各個撃破はできます。

 

 二人の攻撃のズレに合わせて、身体を動かします。くるり、とセーバーを一回転して下段に構え直し、フォームをマカシに変えました。

 セーバー同士の、つまり剣と剣の戦いを強く意識したフォーム。その中から今、この瞬間に一番適した動きを、基本に忠実に繰り出します。

 

 そうすれば……ほら、一人目の攻撃をぬるりと受け流して、二人目の攻撃の目の前に襲ちゃんの身体をさらすように誘導することができました。

 攻撃に全力な襲ちゃんは、これを見て慌てて手を止めようとしますがもう手遅れです。

 

 間に入った襲ちゃんに攻撃が当たっちゃう、って意味じゃないですよ?

 当たっても当たらなくても、攻撃の手を緩めた時点で私に反撃の余地ができたからです。この余地は、とっても大きな余地でした。

 

「ぐぇ……!?」

「あぐっ!?」

 

 秒の時間差で、見事に攻撃が入った二人の襲ちゃんの身体がどろりと溶けて崩れます。

 仁くんの複製体はちょっとダメージが入れば消えるから、遠慮なく攻撃できるのがいいですよね。

 

 さてあとは……。

 

「仁くん」

「ひえっ」

 

 ぴょいっと吹き抜けを跳び越えて、仁くんの前に移ります。さっきまで複製の襲ちゃんに応援のヤジを飛ばしていましたが、セーバーを閃かせて近寄って来た私にちょっと逃げ腰です。

 

「アメリカぶりですね。元気でした?」

「え、お、おお……バッチリだぜ、まあまあだ」

「よかった。結構高いところから落としちゃったから、心配してたんですよ。連合に治癒系の人いなかったですもんね」

「あー、あれな。マジ死ぬかと思ったけど、襲ちゃんの瞬間移動でな。こう、シュバっと!」

「なるほど? シュバっと、です?」

「そうそう、シュバっと。だから気にしてない!」

 

 そっかぁ。じゃあよかったです。

 だって連合のみんなはお友達なので、あんまりケガとかしてほしくないんです。襲ちゃんは……まあその、すぐに治っちゃうので、ちょっとくらいはいいですよね?

 

 素直にそう言ってにっこり笑えば、仁くんはなぜか黙っちゃいました。

 

「仁くん?」

「ヤだなぁ……ヒーローはぶっ殺してやりてぇけど、トガちゃんとは戦いたくねぇよォ……。なんでトガちゃんはそっち側に……」

「私もあんまり戦いたくはないです。でも、私は愛に生きるって決めちゃったので」

「あァうん、そりゃそっか。そうだよな。女の子は愛に生きるもんだよなぁ」

 

 マグ姐もそんなこと言ってた、と手をポンとする仁くんに大きく頷きます。

 

「私、仁くんの生き方も嫌いじゃないですよ。不器用だけどみんなのために一生懸命な仁くんのこと、結構好きです。お兄ちゃんみたいで」

「ホントに? 俺も好き……。結婚する?」

「え、絶対しませんけど」

「生きててごめんなさい……」

「生きてていいんですよ!?」

 

 仁くんはちょっと自分に自信がなさすぎなんです。いいところもいっぱいあるんですから、そんなに卑下しなくっていいのにね。

 

「ありがとう……。でもトガちゃんも俺のこと、捕まえるんだろ……?」

「まあ、はい。今の私はヒーロー志望のトガなので」

「捕まえてひどいことするんでしょう!? 同人誌みたいに! 同人誌みたいに!!」

「しませんよぉ。少なくとも私はしません。私はただ……仁くんたちがしたいことをそのまましたら、私の大切な人やその家族が困っちゃうので。それを防ぎに来ただけです」

 

 やりたいことをやりたいようにするのは、別にいいと思ってます。私もそういう風に生きたいですしね。

 

 でもその結果、私の大切な人。コトちゃんやA組のみんな。その家族やお友達。色んな人たちが悲しむのは、やっぱりヤですし。

 

「つまり私は、私がやりたいことをやりたいようにしてるだけなのです。お揃いですね?」

「お、お揃い! ……お揃いかなぁ?」

「お揃いですよぉ。やりたいことが違うだけで、ワガママなのは一緒じゃないですか。細かいことは置いときましょう」

 

 そうかな……そうかも……とブツブツする仁くんに、思わずくすりと笑います。動きがコミカルで、ついつい笑っちゃうんです。

 

「お揃いでいいじゃないですか。だって仁くんたち、要するにヒーローたちに『そういうのどうかと思う』って言いたいんですよね?」

「まあ、そんな感じかなァ」

「私たちも、仁くんたちに『そういうのどうかと思う』って言いたいんですよ。だから、お揃いなのです!」

「そっかぁ! お揃いかぁ!」

 

 やったあ! と万歳する仁くんはカァイイですが、ちょっぴり心配にもなりますね。

 いえ、私に騙すつもりなんてないですけど、こうやって今まで何度も騙されてきたのかなぁなんて思っちゃうんです。

 

 でも心配はしても、同情はしません。そういうのがヤってことはわかりますから。

 どうしようもない人生だったとしても、今いる場所を選んだことは仁くんも、他の連合のみんなも後悔してないですもんね。

 

 それに、私だってヘンな同情はヤです。ヒーロー側にいる私がそう思うんだから、連合側に私がいたらもっとそう考えるに違いありません。

 だから私にできることは、正面から仁くんを受け止めてあげることかなって、そんな風に思うのです。

 

 だって、お友達ですから。

 

「……でも仁くん。どっちもおんなじこと言ってると、やりたいことがぶつかっちゃったときどうしようもないですよね」

「コレだもんなぁ」

「はい、コレですもん」

 

 ちらっと二人で吹き抜けの下を見ます。そこでは、ヒーローたちと解放戦線の人たちが激しくぶつかり合っています。

 どうしようもなさにあふれてますよね。

 

「そういうわけなので……仁くん、ケンカをしましょう!」

「なんで!?」

 

 マスクの向こう側で、仁くんが大きくお口を開けてるのがわかります。またくすってきました。カァイイね。

 

「ヒーローとヴィランの戦いって言うからややこしくなるのです。これからするのは戦いじゃなくってケンカです。ただのケンカ! そういうことにしましょう!

 ヴィランのトゥワイスと戦うんじゃなくって、お友達の仁くんとのケンカ。ヒーローのトランシィと戦うんじゃなくって、お友達のトガとのケンカ。そうすればきっと、最後はみんなで仲直りできます!」

 

 ――だって私たち、お友達なんですから!

 

 この言葉に、仁くんは目を大きく開いて固まりました。その頭の中に、思考は見えません。完全にフリーズしちゃったみたいです。

 

 けど、ゆっくり回復してきます。のろのろと、すがるような声が私に投げかけられました。

 

「どうしようトガちゃん……俺……友達と取っ組み合いのケンカとか、初めてかもしんない」

「大丈夫ですよ、私も初めてなのです」

 

 私の言葉に、仁くんがマスクの下でにやっと笑います。普段とあんまり変わらないニヒルな笑い方なのに、いつもより何倍もカッコいいです。

 

 私もにんまりと笑います。いつもはコトちゃんや透ちゃんたちに向けてる顔を、今は。

 今だけは目の前の、立場の違うお友達に向けます。だって私は、仁くんたちのことが好きですから。好きな人には、自分の一番好きな笑顔を見せるのです。

 

「あ、でも。仁くん、私の初めてをコトちゃん以外にあげるんですよ。だから手加減なんてしちゃヤですからね?」

「当たり前だろ、ダチにそんなことするわけねぇ! ……ああ、するわけねぇよ!」

「よかったです。それじゃ……」

「おう……」

 

 そこで私たちは、改めて構え直しました。私はセーバーを持つ手を弓を引くように構えるソレスで。仁くんは、「二倍」の複製体を作るための両手をかざしながら。

 

「思いっきりやろうぜトガちゃん!」

「はい、思いっきりです!」

 

 そして、私たちは同時に動き始めたのです。

 




原作における彼の終わり方を知っているので、この二人には絶対に正面から向き合ってもらいたかったのですが、具体的にどう向き合わせるべきなのか答えはなかなか出ませんでした。
プロットで「なんかいい感じで」とかふざけたこと抜かした一年ほど前のボクをぶん殴ってやりたかったですが、ともかく色々考えた結果、仲良くケンカしなって結論に達してこんな感じになりました。

本作のトゥワイスは、原作と異なり覚醒しておらずサッドマンズパレードができないので、複製できるのは二つまで。
なのでホークスからも脅威とはみなされておらず、対処を後回しにされています。結果として襲が病院に向かうことができ、トガちゃんと対峙することに繋がったというわけですね。
そんな状況なので、原作だと複製体のリ・デストロがヒーロー公安委員会の事務所で暴れてましたが、本作ではそれもナシです。
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