銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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本日2回目の更新です。読む順番にご注意ください。


2.“個性”とはなんぞや

 三歳も半分ほどが過ぎた。この間に様々なことがあったが、その内訳は大体がカルチャーショックに分類される。

 覚悟はしていたが、やはりこの星はなんとも技術水準が低かったのである。むしろ、今いる地域が星の中では先進的と知ったときは驚きすぎて固まってしまった。

 

 何せこの星、人工衛星などの初歩の宇宙技術はあったものの、惑星間航行は夢のまた夢。ドロイド関係も中途半端で、多くの労働が人力。紙と筆記具での手書きがスタンダードというのも驚くし、スピーダーなどは骨董品の内燃機関で動いているし、フォースの研究に至っては皆無であったのだ。

 共和国では、コアワールドから遠く離れた僻地のアウターリムテリトリーですら、人が居住する星には何かしらの宇宙産業があったことを考えると、またなんとも原始的な星に来てしまったものだ。

 

 おまけにこの星は、いまだに政体が整っていない。共和国では、一つの惑星が一つの自治体という感覚が強い。すべてではないが、星の中に複数の国家があるというのは、少数であったのだ。

 

 そしてその国ごとに言語が違うというのも、驚きである。コトハになってから覚えた言語は、三種類も文字を使うやたら複雑なものであった(カンジなる文字はいまだによくわからない。なぜ一つの文字に複数の読み方が必要なのだ?)が、こうも言語が入り乱れる星は珍しい。

 

 だが何より私を驚かせたのは、この星の住人のおよそ八割にも上る人間に、“個性”なる特異な能力があることだ。これは本当に、どれだけの言葉を尽くしても足りないほど驚いた。

 何せこの“個性”、ただ特異というものではない。フタを開けばそのほとんどが驚異的なものだったのだ。

 

 たとえば私の父上であるシゲオは、重力を操る。触れたものにかかる引力を上げたり、もしくは下げたりできる。この星ではいまだに重力制御装置は開発されていないが、彼一人である程度を解決してしまえるだろう。

 

 また母上であるヒロミは、触れたものを拡大することができる。この力にかかればただの小石が岩になるし、小さな金属片がえげつない刃になる。こんなもの、一人の人間が持っていていい力ではないだろう。質量保存の法則が息をしていないぞ。

 

 そして何より困るのが、“個性”という名の通り、この能力が個々人でまったく異なることだ。血縁者でもまるで方向性の違うものであることも珍しくないようなので、本当に危険だ。

 

 なぜなら、こんな強大な力を人間が持って、自制できるわけがないからだ。力を持ってしまったら、使いたくなる、振るいたくなる生き物が人間なのだ。

 そうした欲望を抑え、律することができる人間がどれほどいるだろう。それを旨としたジェダイですら時折離反者が出ていたのだから、普通の人間がどうかなど想像するまでもない。

 

 そして実際、この星では恐ろしい事件が日常的に起こっている。“個性”を用いた凶悪な犯罪が起こらない日などほとんどなく、毎日何かしらの事件が起き、誰かしらが亡くなり、もしくは消えている。なんと治安の悪いことか!

 

 何が恐ろしいって、今私がいる国がこの星では突出して治安がいい地域だ、という事実である。これだけ毎日何かしら起きている国で、突出して治安がいい? そんな感想を抱ける星、アウターリムテリトリーはおろか、ハット一族(共和国でもギャングとして有名な知覚種族)の縄張りですらなかなかお目にかかれないぞ!

 

 もちろん、政府も手をこまねいているわけではない。同じく“個性”を用いて、個性犯罪に対抗するヒーローなる職業を公務員として設けているという。それでもなお事件は起こり続けているのだから、私は相当な試練を課されているに違いない。

 

 なぜかって、それだけ治安が悪いのにも関わらず、今のこの国の状態を「ヒーロー飽和社会」などと評し、あまつさえそのヒーローの中にすら、犯罪抑止以外の活動に注力するような人間がそれなりに存在するのだ。

 

 正気か? この状態を良しとする? 狂気の沙汰だぞ、それは!

 

 こうした社会情勢が長く続いているからこそ、中にいる者たちは気づかないのだろうが……それにしてもこれはない。これで平和だと思っている人々が、何より被害に遭われた方々があまりにもかわいそうだ。

 これを打破しようと、個人単位で活動している人もいないわけではないが……彼らは少数派だ。恐らく何か大きなムーブメントがない限り、現状は変わらないだろう。

 

 ……少し話が逸れた。ともかくこの星には、“個性”という特異な能力がある。そんな中で、私は新たな人生を得たわけだが……どういう身の振り方をすべきか?

 

 答えは決まっている。私はジェダイの騎士だ。平和と正義の守護者である。それはもはや、私という人間の根幹なのだ。生まれ変わったとて、かつての自認が確たるものである以上、他の答えはありえない。

 

 つまり、私のひとまずの目標は再びジェダイとして立つ、ということになる。そして共和国へと戻り、シスとの戦いを征すのだ。

 

 まあそれを赤ん坊からやっと脱した程度の子供が言うなど、それこそ正気を疑われるだろうが……この星にはヒーローという職業がある。ジェダイとは多少異なるものだが、重なるところもある。

 だからか、私の目標はこの星の子供なら誰もが抱くヒーロー願望と認識された。ジェダイのことをあまり声高に叫んでもややこしいだけなので、私もひとまずはその扱いを受け入れている。

 それに、ヒーローになれずしてジェダイになることなど、土台不可能だろう。ジェダイは力のみで治安を維持するわけではない。それは最後の手段であり、人と人を繋ぐ粘り強い交渉こそが肝要なのだ。ならば第一段階として、ヒーローになることもやぶさかではない。

 

 結果、私は幼児が瞑想やらトレーニングやらをしていてもおかしな目で見られないどころか、無理をしない範囲で推奨されるという理想に近い環境を手に入れることができた。

 そんなわけで、私はヨーチエンなる施設に預けられているとき以外は、基本的に修行に専念する日々を送っているのだが……。

 

「……だめだ、フォースをかんじられない」

 

 やはり、何度瞑想してもフォースとの繋がりが戻ることはなかった。これはやはり、この身体はフォースセンシティブではない、ということなのだろうか……。

 

 前にも述べたが、フォースはジェダイの必須要件だ。フォースと言えばジェダイ、ジェダイと言えばフォースと言っても過言ではないくらいには。なのにこれでは、ジェダイなど夢のまた夢だ。

 

「……そろそろ、あきらめるべきか」

 

 はあ、とため息をついて、私は遠くに目を向けた。

 

 ここはマスエ家が保有する小山で、寺の裏にある。私はフォースとの繋がりを求めてここで瞑想にふけっていたのだ。眼下には街並みが広がっている。

 

 その視線の先では、ジオノージアンのような姿の人間が大きな金庫を抱え、ビルの上を次から次へと飛んでいく様子が見える。

 少し遅れてそれを追いかける、光のような何かを緩やかに放出しながら飛行する男が一人。今日も今日とて騒がしく、どこぞかの犯罪者がどこぞかのヒーローに追い回されているようだ。

 

 加勢したい……すべきだ……なのだが……。

 

「ぐむう」

 

 現実はどこまでも非情なようだ。思わず二度目のため息が出た。

 

 ……いや、究極のところ、平和と正義の守護者というものにフォースは必要ないだろう。必要なのは覚悟と実際の行動なのだから。

 子供の身体でそれは難しいにしても、身近なところから実践していくことは不可能ではない。具体的には、ヨーチエンの中でとか。

 

 だがそれに関しては既に行っているのだ。目が届かないところで何かがあった場合はともかく、私の目が届く範囲で起きたもめごとなどは積極的に仲裁するようにしている。もちろん、不当に怪我をさせられたりする子がいないようにもしている。

 おかげで保育士たちからは手間のかからない、子供たちのリーダー格のように思われているようだが、大人の意識を持って子供の中に放り込まれれば大抵の人間はそうするだろう。別に私が特段優れているわけではない。だからこの程度のことで、行動が伴っているとは思えない。

 

 ではどうすれば、ジェダイとまで言わずとも平和と正義のために立てるかと言えば……この星ではやはり、“個性”を用いるしかないのだろう。

 その場合、ジェダイとしての帰還はかなわなくなるだろうが……この星の秩序に寄与できるならば、それもまたよしと受け容れるべきなのかもしれない。

 

 私はフォースを扱いたいわけではないのだ。それではシスと変わらない。ジェダイはフォースを、護りのために使うのだから。

 

「うーん……」

 

 であれば、と思考をこの星に寄せる。己のまだ小さい手のひらを開閉させながら、ぼんやりとだが。

 

 この星の治安を悪くしている原因は、大部分が“個性”である。だからこそ、それに対抗するためには同じものが必要になるというわけだが、果たして私に“個性”は発現するのだろうか?

 

 聞いた限り“個性”とやらは、四歳前後に発現することがほとんどという。生まれつき身体が()()なっている異形型はともかく、だが。

 

 そういうわけで、もし私に“個性”が眠っているのであれば、そろそろ何かしら起こってもいいのではと思うが……一方で、そのようなものを誰も持ち合わせていなかった星の人間だった身としては、出るのもそれはそれで不安である。“個性”が何を起こすかわかったものではないからな。嫌な予感しかしない。

 

 何せヨーチエンでは、“個性”を目覚めさせた子供とまだそうでない子供が入り混じり、カオスなことになっているのだ。“個性”持ちが一人増えるだけで混乱は加速度的に増す。それを助長する側に回ることは私の本意ではない。

 

「……まあ、いずれにせよあせりはきんもつか。フォースにかぎらず、ひつようなものはたくさんあることだし……」

 

 今の私に最も必要なものは知識だし、次いでそれを活かす弁舌能力。また純粋な身体機能、思考能力。それらをうまく扱うための経験が続いて、フォースや“個性”といった戦力としての力の優先度はその下くらいだろう。

 

 うむ、落ち着いてきた。

 フォースに固執する必要はない。あればあったでいいことには変わりないが、まずはジェダイとしての生き方を貫けるよう努力すべきだ。

 

「べんきょうするか。ことしじゅうに、ジョヨーカンジはおぼえたいところだ」

 

 そうして自分に言い聞かせた私は、むくりと立ち上がった。

 

 視界の向こうでは、いつの間にか喧騒が終わっている。どうやら、あの光っていたヒーローは無事に仕事をこなしたらしい。

 少しだけその景色を目に焼き付ける。穏やかな街の景色は、私が理想とするものの一つだから。

 

「よし」

 

 ぱむ、と頬を強めに叩く。両手でしっかりと。

 




パパの個性:重力操作
ほとんどお茶子ちゃんの上位互換だが、重力をゼロにすることはできない。
あとオンオフの切り替えがかなり難しいので、使いこなすには相当慣れが必要。

ママの個性:拡大
小大ちゃんの「サイズ」より大きくする方向に特化した感じ。
その代わりに、生物にもある程度効果がある。ゴッドマンは関係ない。
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