銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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あらすじを修正しつつ、タグを整理しました。
俺は今後堂々とヤンデレお姉さんとTSロリのイチャイチャがメインテーマだと言い張るぞ!!


13.USJ事件 1

「今日のヒーロー基礎学だが……オールマイト抜きで俺と別の教師で見ることになった」

 

 数日が経って、水曜日。午後のヒーロー基礎学開始前に、マスター・イレイザーヘッドが淡々と宣言した。

 

 マスター・オールマイトが外れる……? 何かあったのだろうか。

 可能性としては、先日の侵入者への対策で、ということかな? これが検挙のために不在であればいいのだが……そんな都合のいい話はないだろうなぁ。

 

 一方、オールマイトがいないことにクラスメイトから落胆の声も上がるが、イレイザーヘッドはいつものにらみでこれを鎮める。

 

「訓練場は少し離れたところにあるから、バスに乗っていく。以上、準備開始」

 

 離れたところ……つまり、即座に応援が来れない場所ということか。ということは、より警戒しておいたほうがよさそうだな。

 念のため、出発前にヒミコにも私の血を補給させておこう。何もなければいいが、万が一のときは増幅の使い手を増やせることはかなり大きいからな。

 まあ、何もないならそれでいい。ヒミコが私を吸えて満足するだけの話だ。

 

 それとコスチュームは自由とのことだったが、ジェダイ装束は着ていく。現状、ライトセーバーはコスチュームの一部……つまりサポートアイテムということになっている(これも世間的には父上の発明品ということになっている)ので、着ていかないと使えないのだ。警戒する上でセーバーは不可欠だしな。まあ、これを着ていると落ち着くという理由も否定はできないが。

 

 ……なお、今日の授業内容は救助訓練とのこと。個人的には、戦闘訓練よりもこちらのほうが興味深い。共和国とは技術力に大きな差がある星だから、この星の技術レベルでどういうことをするのか、できるのか、知っておきたい。

 

 それで移動のバスであるが、

 

「そうやってるの見ると増栄も年相応だよな」

「わかるぅー」

 

 私を膝に乗せ、後ろから抱きすくめて満足げなヒミコを見てのセロの言葉に、ハガクレがうんうんと頷いている。

 

「ヒミコがやりたいというからやっているだけで、私自身が望んでのことではないのだが」

「ダメですよ瀬呂くん。コトちゃんを抱っこするのは私の特権なので」

「いや、俺がやったら通報される絵面になりかねないからやらないぞ?」

「女児誘拐犯」

「やらないぞ!?」

 

 トコヤミが横からポツリと口を挟んだが、あれはもしやセロをからかったのだろうか?

 

「アリ寄りのアリ」

「何がだ……?」

「今……オイラは頭ではなく魂で理解したぜ……『尊い』って感情をよ……」

「日本語を理解できないと思ったのは何年ぶりだろう……」

 

 そしてミネタには、なぜか菩薩のような笑顔で親指をぐっと立てられた。彼の思考はたまにとてつもなく読めないときがあり、今がまさにそういう感じなのだが、つくづく不思議な少年である。ヒミコはわかっているのだろうか?

 

 と、話している私たちとは別のところで、ミドリヤの気配が激しく乱れた。

 思わずそちらに目を向けると、何やらツユちゃんに指摘されたようでものすごく焦っている。

 その後の会話から察するに、彼の”個性”がオールマイトと似ているという話だったようだが。

 

「派手で強えっつったら、やっぱ轟と爆豪だな」

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

「んだとコラ出すわ!!」

「ホラ」

 

 そこで彼らの話題が後部座席にも飛んできた。話を振られたバクゴーが、周りから茶化されて吠えている。彼の隣に座らざるを得なかったジローが迷惑そうだ。

 ちなみにトドロキはバクゴーの後ろで寝ている。よく寝られるな。

 

 対してバスの最後尾を陣取っている私は、そんなトドロキの頭上を通り越して、バクゴーに思わず口をはさんだ。

 

「しかしだ。君の攻撃的な態度は、今日のような救助の場ではご法度だと思うが」

「知っとるわボケァ!!」

「言いそうなんよなぁ……」

「同感ですわね……」

「ア゛ァ゛ンン!?」

「ひえっ」

 

 ウララカたちにも飛び火したらしい。まるで狂犬だ。

 

 すると私の上で、ヒミコがうんうんと頷いた。思考が漏れたらしい。

 

「だが実際問題、被災者にもそのような物騒な物言いを自然としてしまうようでは、免許は絶対に取れないと思うぞ。……そうでしょう、マスター・イレイザーヘッド?」

 

 バクゴーの視線が恐ろしいまでに釣り上がり、私を射殺さんとばかりの視線を向けてきたので、無視を決め込んでいるところ申し訳ないが、マスターに話を投げることにする。

 そしてああ見えて光明面の住人であるマスターは、こういう真面目な話は存外無視しない。案の定、彼は面倒そうな態度ながら、ぼそりとつぶやくように答えた。

 

「そうだな。俺が試験官なら即落とす」

「ぐ……!」

 

 彼の返答にバクゴーが詰まったところで、車内の起きている生徒全員の視線が集中した。

 その視線の意味するところは一致しており、今このクラスはほぼ完全に団結していた。

 

「ホラな?」

 

 代表するかのように、カミナリがにやつきながら言った。

 その言葉に、バクゴーの癇癪が爆発しなかったのは褒めていいのか悪いのか。

 

 ただ、それでもなおカミナリやセロを始め、キリシマと言った男子たちからあれこれからかわれていたので、どちらに転んでもバクゴーには面倒であったろうなぁ。

 

「お前らもうそろそろ着くからいい加減にしとけよ……」

 

 そんな喧騒を、マスターは”個性”を含めたひと睨みで黙らせるのだった。

 

***

 

 到着した場所は、大きなドーム状の建物だった。案内されるままに中に入れば、いくつかに区分けされた空間が。それぞれには倒壊したビル群であったり、土砂崩れ直後と思しき小山があったり、大きな池の中にぽつりと船が浮いていたりしていた。

 

 なるほど、それぞれの場所が特定の災害なり事故なりを再現しているのだな。そこでそれぞれの状況に応じた訓練をするのだろう。

 

「すっげーー! USJかよ!?」

 

 と、そこでそんな言葉が聞こえたが、よくわからないので首を傾げる私である。

 

「ゆーえすじぇーとは?」

「遊園地ですよ。時間ができたら今度一緒に行こうねぇ」

「……なるほど、私には縁のない場所のようだ」

 

 ヒミコの説明にそう返したら、周りの生徒からなぜかかわいそうなものを見るような目で見られた。

 

「え……っ、増栄ちゃんUSJ知らないの……?」

「物心ついたときからずっと鍛錬している。その手の娯楽施設で遊んでいる暇はないのだ」

 

 アシドの問いに素直にそう答えたところ、より一層かわいそうなものを見るような目で見られた。解せない。

 

 ……ああいや、バクゴーだけは妙に納得したような顔だな。どうやら彼は理解があるらしい。やはり向上心の強い少年だ。その点は好ましいぞ。

 

「注目」

 

 そこでまた、イレイザーヘッドの声と強い視線。瞬間、騒がしかった生徒たちがぴたりと静まり返り、彼に視線を向けた。順調に調教されているなぁ。

 

「そんじゃ、早速授業を始める。その前に紹介。本日俺とともにお前たちの指導に当たる、13号だ」

 

 とここでイレイザーヘッドに示されたのは、この星で言う宇宙服のような格好をした女性だった。素顔もまったく見えないので、フォース伝いの感覚頼りだが。

 

 とほぼ同時に、ミドリヤが嬉しそうに声を上げた。

 

「スペースヒーロー13号だ! 災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

 端的でわかりやすい説明に、周りからへえ、などと声が漏れる。

 一方、ウララカはファンのようで、目に見えてテンションを上げていた。

 

 対する13号は、そのユニークな名前と見た目になかなか似つかわしい、しかし機械を通した声で話し始める。

 

 自分の”個性”は簡単に人を殺せる力だ、と。

 そして君たちの中にもそういう力の持ち主もいるだろう、と。

 

 そう語られた瞬間、場の空気が目に見えて変わった。緊張感が走り、直前までの浮ついた雰囲気は消えていた。この意識の切り替えの早さは、子供ながら見事だ。

 

 ……ああいや、ヒミコだけは話半分といった様子だが。器用にそれを表に出さないで殊勝な顔をしている。除籍されても知らないぞ。

 

「超人社会は”個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えると簡単に人を殺せる”行きすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないでください」

 

 彼女は続ける。その言葉には、納得しかない。私が常々カルチャーギャップを受けている、まさにその根幹である。

 惑星人口の八割がフォースユーザーであっても、こうはならないだろうという現状。それを生み出す”個性”という存在の、なんと恐ろしいことか。

 

 だが、もはやこの星はそのように進化してしまったのだ。今さらなかったことにはできないだろう。

 であれば、その中でいかに生きていくかを考えねばならない。……それを深く考える人間が、あまりに少ないことも問題ではあるが。

 

 少なくとも、この学校に勤める教師陣は、そうした現状を正しく認識しているようだ。考えられる人間がいるなら、まだこの星の未来は閉ざされてはいないのだろう。

 

「君たちの力は、人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」

 

 そしてご静聴ありがとうございましたと締めくくり、13号は深々と頭を下げた。

 見事な演説であった。私はもちろん、周りからも拍手が巻き起こる。この賑やかな様子を即座に打ち切ろうとしない辺り、イレイザーヘッドも13号の言葉をかみしめる時間は必要という判断なのだろうな。

 

 そうして数秒して、緩やかにみなが落ち着いていくさなか。私は強烈な違和感を覚えて、ドーム内の中央部分付近に目を向けた。

 

 何もない。噴水の音がするだけだ。()()()()

 

「コトちゃん……!」

「ああ。……マスター・イレイザーヘッド! 侵入者が来ます!」

「は?」

 

 周りが私に奇異なものを見る目を向けてくるが、それに構っている暇はない。悪意が膨らみ続けている。破壊に満ちた邪悪な悪意が。

 

 噴水付近で臨界点を迎え、弾けた。

 

「……!」

 

 私が示した先に顔を向けていたイレイザーヘッドの顔が強張る。

 

 ぞわり、と。

 黒い靄があふれ出し、大きくなっていく。

 

 そこから、おぞましい手の飾りを身体のあちこちにつけた男が、ずるりと現れた。

 

 あれは……間違いない。先日校舎内に侵入していた男と、それを転移させた正体不明の靄の何者かだ。正確な目的は不明だが、遂に仕掛けてきたようだな。

 

 だが、現れたのは彼らだけではなかった。十メートル近くもの大きさに拡大した黒い靄からは、さらに大勢の人間が次々と出現してくる。それも数えることが億劫になるほどの人数だ。どうやら連中は、しっかり数を揃えてやってきたらしい。

 あの靄、あんなに大勢が通るゲートを展開できたのか。厄介にもほどがある。

 

「あれは……またか。あんなものが二体も……どうなっているんだこの星は……!」

 

 だが現れた中の一人。全身が真っ黒で、脳がむき出しになった巨漢に私は視線を奪われた。

 悪い意味で。なんだあれは、あのおぞましい存在は。黒い靄の男もそうだったが……あれもフォースが感じられない。

 

 何より、あの巨漢は靄の男以上に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!

 

 そんなもの、あっていいはずがない。そんなことは、あっていいはずがない! それは生命とフォースに対する冒涜だ!!

 

「全員一塊になって動くな! 13号! 生徒を守れ!」

 

 私の思考を切り裂くように、イレイザーヘッドの声が響く。常の彼からは考えられぬ、硬い声と表情だった。

 

 その声に、私は意識を引き戻す。そうだ、こういう日が来てもいいように、私は鍛えてきたのだ。侵入者があってから日は経っていないが、できる限り実践的にやってきた。

 使う機会が来ないことが一番だが……あの人数だ。教師二人が共にプロヒーローとはいえ、相手取るのは難しいかもしれない。

 

 であれば……そう覚悟を決めた私をよそに、キリシマが緊張感のない声を上げた。

 

「なんだありゃ? また入試んときみたいなもう始まってんぞパターン?」

 

 だが彼以外も、おおむねそういった反応だった。

 さすがのヒーロー科といえど、やはりまだ彼らは子供だ。抜き身の悪意に対する感覚が鈍い。こればかりは経験しなければわからないことだから、仕方ないが……この状況では守る立場の教師陣はやりづらいだろうな。

 

「動くな! あれは――ヴィランだ!!」

 

 キリシマたちを制し、イレイザーヘッドが前へ出る。ゴーグルを身につけ、首に巻いた捕縛布を展開しながら。彼の戦闘態勢だ。

 

 そんな彼を前に、人間を次々と吐き出し続けていた黒い靄が人の形を取り、口を開いた。

 

「13号に……イレイザーヘッドですか……。先日()()()カリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが……」

「チッ……あのワープゲート、随分と使い勝手がよさそうだな。まったく面倒な」

 

 イレイザーヘッドが苛立ちを隠すことなく舌打ちをする。

 

 そのタイミングで、手の飾りをつけた男が気だるげに、しかし地の底から這うような暗い声を出した。

 

「どこだよ……せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ……オールマイト……平和の象徴がいないなんて……」

 

 ここで一旦言葉を切り、彼は天井を仰ぐようにして私たちを見た。そう、生徒たちをだ。

 

「子供を殺せば来るのかな?」

 

 底なしの悪意を向けながら。

 




世間はエイプリルフールですが、章の佳境に入ったのでここからはシリアスのステージです。
というか、せっかくの四月バカだし何かネタでも書こうと思いましたが、すまっしゅの反転ネタしか思いつかなかったので見なかったことにしました。
いやだって、反転させたら「危ない笑い方をする美少年が二メートル超えのガチムチおっさんにかみついて吸血するシーン」を書かないといけないんですよ。
本作はの趣旨はヤンデレお姉さんと恋愛スペースキャットTSロリの百合なので、それは誰も望んでないでしょう? ボクも書きたくないです(正直

そんなことより、ジャンプラのデップーでオールマイトが出てきたことのほうがよっぽど大事件ですよ。
何が問題ってこれ、ヒロアカ世界とToLOVEる世界が同一世界ってことになるんですよ。
するってぇとアレですよ。本作はヒロアカ世界とSW世界は同一世界という建前の上で作ってる二次創作なので、本作の世界においては銀河共和国・・・コルサントとデビルーク星が同じ世界に並立していたということに・・・!

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