銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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17.USJ事件 5

「――マスタァァーッ!!」

 

 私は全力で地面を蹴り、殴り飛ばされたマスター・イレイザーヘッドの下へ向かった。数回地面をバウンドし、挙句に顔から地面に突っ込みかけていた彼を、すんでのところで受け止める。

 

 恐らく、とっさに防御したのだろう。左腕が粉々になっていた。その骨のいくつかは肉を貫いて露わになっており、血まみれとなっている。控えめに言って絶対安静の重傷だ。

 だがこれに留まらず、地面を転がったときにあちこちがこすったのだろう。ひどい擦り傷が広範囲にできてしまっている。

 

 これらは私はもちろん、マスター・リカバリーガールの“個性”をもってしても完全には治らない可能性があるぞ……!

 

「ぐ……っ、く……!」

「マスター! その怪我で戦うなど無茶で……くっ!?」

 

 だが、マスターはなおも立ち上がろうとする。私はそれをとめるが……そんな時間はないようだ。

 

 脳無が再び襲い掛かってきた。私はイレイザーヘッドを抱えて跳んだが、成人男性を抱えた状態では満足に動けず、拳の風圧に煽られて彼と離されてしまう。

 

「……そうだ、それでいいんだ。さすが()()()脳無だ……!」

 

 そんな私たちを見て、手の男が楽しそうに笑った。

 その前で、脳無が悠然と佇んでいる。私が斬ったはずの脚は……完治していた。

 

「……! そうか……それの“個性”は肉体再生系か……!」

「正解。『超再生』……たとえ腕をもがれ身体が半分になろうと、数秒後に元通り! 最高のサンドバッグ人間さ!」

 

 私の言葉に、勝ち誇ったように笑う男。

 

 だが、そうだとすると非常にまずい。

 なぜって、ライトセーバーの傷口はプラズマの温度によって焼灼(しょうしゃく)されるのだ。つまり、傷口は切断されたそのときから完全に塞がっていることが、ライトセーバーという武器の特徴。当然、それが簡単に治るはずがない。

 

 にもかかわらず、それすらも乗り越えて完全に元通りになるだと? あまりにもバカげている!

 

「よし。そのガキを殺せ、脳無」

 

 そして、再び命令が下される。

 私はとっさにセーバーを抜いたが、突撃してきた脳無に攻撃する暇はなく、回避行動を取るだけで手いっぱいだった。

 

「く……っ! かくなる上は……仕方あるまい……!」

 

 超再生などという“個性”があるなら、多少手荒な方法も取り返しがつくだろう。ことここに至っては、仕方ない。

 

 そう判断した私は、ライトセーバーを身構える。アタロではなく、ソレスでだ。セーバーを持たないほうの手の人差し指と中指を立てて前に出し、セーバーを持つ手は後ろに引く。そうして、先読みと反射神経を活かして攻撃にカウンターで応じる、防御主体のフォームである。

 

 不幸中の幸いは、脳無の攻撃が単調であることだ。ただでさえ意思がなくて攻撃が読みづらいのに、これに熟練の技があったら恐らくもっと苦戦していただろう。

 だが、命令から時間が経てばたつほど手の男の意思が薄れ、さらに先読みが難しくなる。これは依然として、短期決戦で終わらせるべき戦い。いかに短い間に、相手を無力化するか。すべてはそれにかかっている。

 

 ゆえに私は、再度の全能力増幅に踏み切った。今度は五分超ほど続く一時増幅……つまり全力の発動だ。マスターが倒れた今、頼れるのは己だけ。ゆえにこうするより他に手はない。

 

 だが、一日にこれを二度もしたことはないので、効果が切れたあとどうなるかわからない。

 私の“個性”は発動時点で栄養が消費されるが、全能力を上げるとその消耗で倒れず踏みとどまった状態で動くことが可能になる。それでも発動したタイミングで既に私の消耗が進行することは変わらないため、動けるというのは全能力が増幅しているという全能感で諸々をごまかしているに過ぎない。

 

 そんな消耗した状態で、戦闘を行えばどうなるか。

 

 簡単な話だ。さらに消耗が重なるのだから、効果が切れることで棚に上げていた問題がさらに大きくなって襲い掛かってくるのである。

 効果が切れた際の虚脱感や喪失感はその表出であり、最低でもしばらく身動きが取れなくなることは確実。最悪、効果が切れると共に気絶する可能性も十分以上にある。そうなっては非常にまずい。

 

 しかし今ここを凌がなければ、私はおろかマスターの命もないだろう。ここは命の張りどころだ。

 

「……ここッ!」

 

 そして三度ほどの防戦を経て、私は反撃に出た。攻撃を回避しつつ、どう動いても次の攻撃を私に当てるためには攻撃前にワンアクションが必要な位置へ。そうして一瞬だけ生み出した敵のスキをつき、出力と()()()()()()()()()()セーバーを振るう。

 光刃特有の音を響かせながら、肉が焼き切れる音が続く。瞬間、脳無の右腕が飛んだ。

 

「何……!?」

 

 手の男が驚愕する。

 私はこの瞬間を見逃……して、再度脳無から距離を取った。腕を斬り飛ばされながらも脳無は反撃を開始していたから、欲をかいては返り討ちに遭うだけだ。

 

 脳無はそのまま攻撃を再開したが……やはり、腕が片方ない状態では動きに支障があるようだ。先ほどまでと異なり、少し精彩を欠いている。

 斬り飛ばした腕はそんな中、少しずつ再生を開始している。その回復は予想より遅い……と思っていたら、焼灼していた部分を治療し終わった瞬間、一気に回復速度が早まった。

 

 ……なるほど? この情報は重要だ。どうやら、セーバーの傷口が完治するまでにかかる時間は、相手にとって想定外らしいな。ならば、勝機はそこにある。

 

 そう思いながら、私はソレスを駆使して回避に専念する。もちろん反撃のスキをうかがいながらだ。

 

 右。しゃがんでかわす。蹴り。しゃがんだタイミングでスライディングを開始しており、これも下に潜り抜ける形で回避。

 股下を抜けながら股間に斬撃。有効打になるも、動きをとめるには及ばず。

 

 裏拳。これは跳んで回避。続くハイキックは、空中を横切って。

 

 着地を狙った踏みつけは、前に()()ことで回避しつつ膝裏を一閃。

 直後に斬った場所を蹴って転倒させつつ、別方向へ距離を取る。

 

 わずかに休憩をはさみ、再び右――と、ほぼ息つく間もない攻防を、どれほど続けたことだろう。だが、実のところさほど時間は経過していないはずだ。何せ、まだ増幅した能力が戻っていないのだから。

 

 それでも脳無が身体を切り落とされた回数は優に二十を上回り、周囲にはトカゲの尻尾切りさながらに落とされた四肢が、散々転がっている状況。

 相手に治療を強い続けることで全力を出させないことに成功しているが、それでも二回に一回は反撃する余裕がない。反撃できたとしても、常に四肢を落とせるわけでもない。本当に化け物だよ、この脳無とやらは。

 

 その少し向こうでは、重傷を負いながらもマスター・イレイザーヘッドがなおも立ち上がり、手の男と戦っていた。彼は満身創痍でありながらたびたび脳無に抹消をかけて再生を阻んでいたので、敵に排除すべきだと思われたのだろうな。

 だが手負いの状態で、どこまで戦い続けられることか。助けに行きたいところだが、私も脳無の相手で手いっぱいだ。

 

 その私も息がだいぶ上がってきていて、そろそろ身体の増幅も消える。体感的にも栄養の残りが少ないことがわかる現状、あとどれほど戦えるだろう。

 

 しかし、それは脳無のほうも同様らしい。少し前から、明らかに再生速度が落ちた。動きもかなり悪くなってきている。やはり何事にも限界はあるということなのだろう。

 

 問題は、拮抗しているだけでは勝てないということ。そしてこの時間は、もう残り少ないということだ……。

 

「む……!」

 

 そんな拮抗状態を崩したものは、轟音と黒煙を伴う爆発だった。容赦のない絨毯爆撃である。

 一瞬遅れて、今度は白煙を伴って氷がその周囲を覆いつくしていく。爆発がまき散らした噴煙とその中の塵が媒介になったのか、凄まじい勢いで周囲一帯が凍りついていく。それらが手の男と脳無を同時に襲ったのだ。

 

 フォースの気配からして手の男はどちらもギリギリ(あるいは運)で回避できたようだが、脳無は爆風にあおられて不安定な体勢となったところで身体を半分以上も凍らされ、動きがとまっている。よく見れば、その停止にはフォースグリップの気配もある。

 

 私はそんな脳無から距離を取りながら、一呼吸つけることに安堵の息を漏らした。

 いつもは暗黒面の力も共に振るわれるはずの氷や、どちらも同居する爆発が、ともに強い光明面の力を帯びていたことに疑問を覚えながらも。

 

 そして、こちらに近づいてくるなじみ深いフォースの持ち主に顔を向ける。

 

「コトちゃん!」

「ヒミコ!」

 

 ヒミコの顔を見た瞬間、身体の力が抜けた。増幅が切れたのだ。

 倒れそうになったところを、すんでのところで支えられる。

 

「大丈夫!?」

「ああ……怪我はないよ。怪我はな」

「よかった……無事でよかった……!」

 

 不安げな顔で抱きしめてくる彼女を抱き返しながら微笑みかけ、かろうじてもう一度自分の足で立つ。

 

 一方、マスターの下にはトドロキとバクゴーが駆けつけていた。彼らほどの力があれば、ひとまず手の男一人は余力を持ってしのげるだろう。

 

「増栄! 大丈夫か!?」

 

 こちらにはヒミコと、それにキリシマも来てくれたようだ。彼にも手を上げて応えておく。

 

「ったく、あんなの相手に無茶しすぎだぞ! ……マジですごかったけどよ!」

「私としては、二度と御免だがね……」

「だろうな!」

 

 本当、一日二度の全能力増幅はもうやりたくない。これほどの反動は、想定外である。

 

 ……と、ここでさらに近づいてくる気配が三つ。水辺のほうに目を向けると、そこからミドリヤ、ミネタ、ツユちゃんらが上がってきたところだった。

 

「増栄さん!」

「大丈夫?」

「ああ……なんとかね……」

「バカバカバカ! 遠目に見えてたぞ、あんなの相手にオマエ無茶しすぎだって!」

「あ、それさっき俺が似たようなこと言っといた」

「おいィィ!?」

 

 セリフを取られたと言いたげなミネタに、一同が苦笑する。

 

 だが、ここで敵方にも動きがあったようだ。靄の男が手の男のところに合流してきており、イレイザーヘッドたちからだいぶ距離を離すことに成功していた。

 

 フォースを用いても十歩以上を要するであろう距離を取った彼らは、憎々し気にこちらを睨んでいる。特に手の男の瞳はさらなる狂気が宿り始めており、何をしでかすかわからない状態に見える。

 

「くそ……! くそっ、くそっ、ふざけやがって……! 俺と黒霧以外全滅……!? ラスボスに辿り着けすらしないとか、どんなクソゲーだよ……!」

 

 男が首筋をかきむしりながら叫ぶ。声音は悲痛なものだが、肝心の中身があまりにも空虚だ。あれでは子供の癇癪と変わらない。

 

 そんな異様な光景を、ミドリヤたちは唖然とした様子を眺めている。マスターは……さすがというべきか、逃げられないよう靄の男に“個性”を使っているようだ。

 

 だが、力のある子供の癇癪ほど厄介なものもない。

 

「黒霧、帰るぞ……! レベリングして出直しだ……!」

「わかりました」

「けど……その前に……! 殺せるだけ殺して、平和の象徴の矜持をへし折ってやる……!」

 

 手の男が、地面に両手を置いた。

 




原作よりもかなり雄英側が有利なので、オールマイト到着前に連合撤退。
ただし原作より追い詰められているで、弔の咄嗟の判断が凶悪になってます。
まあまだ覚醒してないんで、崩壊がさらに伝播して何もかもぶっ壊すなんてことはないですが・・・地面を崩壊させるだけでも大惨事は間違いないですね。

ちなみに今回披露した「光刃の出力を増幅」+「光刃の長さを増幅」の組み合わせ、クソヤバい技だろうなって予感があります。
たぶんマジでガチの全力でやるとハイパーオーラ斬りとか約束された勝利の剣みたいになる。
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