ぞわりと黒い靄が閉じて、床にボロボロの死柄木弔が横たわった。同時に、黒霧が隣に立つ。いかにも場末という様子のバーだった。
そんな二人を出迎えたのは、全体的に明るくポップな衣服で身を包んだ少女だ。弔同様白い髪を、後ろで無造作に束ねた彼女はやたら甘いと評判のコーヒー牛乳を片手に、高い椅子に座って足をぷらぷらさせていた。
「ぶっ、あっはっはっはっは! 弔ボロボロじゃん! なになに、もしかしてスコンスコンにやられちゃった感じ?」
だが彼女は、負傷していて倒れたままの弔を見て一瞬きょとんとしたあと、指をさして爆笑し始めた。
「うるせえぞテメェ……! お・兄・ちゃ・んが疲れてお帰りだってのに、もっと労えねのか……!? 妹の分際で偉そうにしてんじゃねぇ……!」
「はーん? 誰のことぉ? 鏡見てから出直したほうがいいんじゃなーい? ……ていうか、そこは労ってくださいませの間違いでしょ!」
対する弔は怒りに顔を歪めながら、身体を起こしてすごむ。
しかし少女がひるむことはなく、むしろ煽り返す始末である。当然、それで弔がとまるはずもなく。
「は? バラされたいのかクソガキがよ」
「お? やんのか受けて立つぞ?」
『そこまでだよ、弔。
「「先生」」
”個性”を使うつもりで手を伸ばしたところで、二人にとって頼れる大人の声が響き、それでようやく二人はとまった。同時に、黒霧が密やかに安堵の息をついた。
二人が声のしたほうへ顔を向ける。バーの隅のほう。何の変哲もないテーブルに置かれたパソコンが声の発信源だ。
ただしそこに二人が慕う人物の姿はなく、無機質に「サウンドオンリー」と表示されているだけだ。
「先生……話が違うぞ……! 脳無のやつ……! オールマイトどころか、生徒のガキにすら勝てなかった……!」
弔がそこに向けて恨めしそうに言う。
彼の隣で、あわよくばおちょくってやろうかと考えながらそわそわしていた少女……襲は、このセリフに「は?」と目を丸くした。さすがの彼女でも、脳無が子供にすら勝てなかったという話は不意打ちがすぎたようだ。
『なんじゃと? ワシと先生の作品が! オールマイトどころか生徒に負けたじゃと!?』
とそこに、また別の声が割り込んだ。
壮年を通り越し、老年ということがわかる声。それに黒霧が応じた。
「……いえ、脳無を倒すところまでは見れていませんが……一人の子供を倒せないまま撤退を余儀なくされました。死柄木弔は脳無へ『死ぬまで暴れ続けろ』と命令し、そのまま……」
『そうか……うん、脳無のことは残念ではあるけれど、最後にした命令はよかったね。悪い状況で、できる最善の手を打った。よくやったよ、弔』
『うう……ワシの脳無が……』
「先生のお話が聞こえないから、ドクターは黙って」
『襲ちゃんはワシに厳しいのう……』
「だってでかい口叩いてたわりに、ボクの力のことなんにもわかんなかったじゃん」
『うーむ、ぐうの音も出んな……』
ドクターと呼ばれるその老人は、襲の言葉を受けて沈黙した。
この結果に、襲は勝ち誇ったかのようにドヤ顔を誰にでもなく披露する。
『しかし……仮に弔が失敗したとしても、話は違わないと言うつもりだったけど……今回はちょっと想定外だな……』
「先生が想定外だなんて、そんなことあるんだね」
『いやいや、人生想定外ばかりだよ。世の中そんなものさ。……いや、だからといって済む話でもないな。僕もミスがあったことは認めないとな。すまない弔。すぐに情報を集めよう。それで償いとさせてほしい』
「すぐだ……すぐにくれよ先生……! わかり次第ぶっ壊してやるからさぁ……!」
謝る「先生」に対して、弔は荒れた口調で言い募る。いまだに彼の中で失敗した怒りが渦巻いており、下手に近寄ればそれだけで殺しそうな勢いだ。
『何か気づいたことはないかな? あればより早く調べられるんだけど』
「…………」
だが「先生」の質問を受けて、弔はぴたりと動きをとめた。
そうしてしばらく考え込んだあと、ゆるりと顔を上げ直す。
「そうだ……先生……そいつ、オールマイト並みのスピードだった……」
『……へえ。搦め手じゃなく、正面から脳無と戦ったわけだ?』
ようやく少し落ち着いた弔が、うっそりと言う。
それに応じて、「先生」の声のトーンが少し低くなった。
襲は知っている。彼がオールマイトを非常に嫌っていることを。
「それだけじゃない……! 襲みたいな力を使ってた……襲と同じだ……”個性”が二つあるんだ……! チートだチート……っ! そいつさえいなければ……ガキが……っ!」
だがそうこうしているうちに、再び弔が激し始める。感情の高ぶりに合わせて傷口から血がこぼれるが、彼はそれを意に介さない。
そんな彼に応じたのは、今まで口を閉ざしていたドクターだった。
『いや、襲ちゃんのアレは”個性”ではないぞ。ワシの施設でもなんもできんかったし、先生の”個性”でも動かせなかtt』
『ドクター、すまないが少し静かにしていてくれるかい』
『はい』
が、オタク特有の早口を、結構な声量でぶちかましたからか、「先生」からやんわりと遮られた。
途端に黙り込んだドクターに、襲が笑う。
しかしそんな彼女も、すぐに笑いを収めて先ほど感じた気配について話題に上げる。
「でもそーいえば、確かに。弔たち引っ張ったとき、ボクと同じ力感じた。向こうから引っ張られてた感じしたよ、先生」
『うーん、なるほどねぇ』
「もしかしてボクの
『近くまで行ったらわかるかい?』
「うん、気配がわかればそれでわかるよ。……先生あのさ、もし会えたらさ、こっち誘ってもいい?」
『もちろんだよ。友達は多いほうが楽しいだろう?』
「うん! そうだよね、ヒーローみたいな社会のゴミ目指すなんてバカなことやめて、こっち来ればいいんだよね!」
さすがわかっている、と言いたげな満面の笑みを浮かべる襲。
一方、弔は心底嫌そうな顔でモニターをにらんだ。
「おいマジかよ先生……本気で言ってんのかよ……!」
『友達や仲間は大事だよ、弔。多いに越したことはない! 特に、強い仲間はね。今回はそういう人材が足りなかったね』
返ってきた言葉に弔は理解しつつも、感情が完全には納得できないのか舌打ちをした。
隣で襲が得意げにうんうん頷いているのも、彼の神経を逆なでする。
「……じゃあさじゃあさ、
「……チッ」
『いいと思うよ。じゃあ任せてみようかな。弔は治療に専念しよう。無理をして変に治ってしまってはよくないからね』
「……わかったよ、先生……。クソ……っ」
その襲が、自分よりうまくやっているように見えるのも、弔にとってはストレスだ。
肌が乾く。かゆみが身体中をはい回る。
彼がそんなストレスを感じていることを理解している襲だが、しかし彼女は弔を労わらない。
勝ち誇った顔を隠すことなく、わざと目立つように弔の視界周辺をうろうろするだけだ。さながら「ねえどんな気持ち? 今どんな気持ち??」と言いたげに。
当然、沸点の低い弔はすぐに怒りの頂点に達する……が、残念ながら襲との付き合いは短くない。こういうときの彼女への対処法を経験的に把握している弔は、手を上げる前に意識を切り替えようと努める。
「んのッ……――スゥー……――」
深呼吸し、一拍の間を置いて。「先生」に教えられた鎮め方だ。
そして、今もなお挑発するようにうろうろしている襲に、軽薄な笑みを浮かべて言い放つのである。
「……そうキャンキャン吠えるなよ……弱く見えるぜ……」
「は? 殺すわ」
瞬間、それまでとは立場が逆転し、襲は表情を飛ばした顔で弔に拳を向ける。
いつものパターンだ。だから弔も、決まりきった単純な軌道をさらりと避けた。
「はっ、毎回毎回口より先に手が出る……頭の中カラッポなんじゃないの? ……ああそうか、栄養足らないんだったな……そうだったそうだった。身体はもちろん、頭も足りないんだっけ。ごめんごめん、気づかなかったよ……」
「だーれーがー頭カラッポのクソチビだオォン!? そのパッサパサの唇縫い合わせてやろうかァ!?」
「正論って、本当のことだから刺さるんだって話、マジなんだなぁ……誰もそんなこと言ってないのに。図星ってヤツだ……はは……」
「……はーキレた。キレちまったよボクはァ! 上等だクソダサ手マン表に出やがれギッタンギッタンにしてやんよ!!」
「おお、こわいこわい……」
今までの自分を棚に上げてキレ散らかす生意気な小娘に対して、弔はけらけらと笑う。
その程度のことが逆鱗に触れたのか、襲は遂に”個性”を発動した。処理しきれなかった激情が彼女の身体からあふれ、赤いスパークがばしりと駆け巡る。
『そこまでだよ、襲。君の悪いところは怒りっぽいところだ。いい所でもあるんだけどね』
だがその瞬間、成り行きを見守っていた「先生」が制した。途端、襲ははっとして”個性”を解く。
「……ごめんなさい、先生」
そうしてしゅんとする姿は、実に見た目相応であった。
「ぷっ……怒られてやんの……」
「……ッッ!」
が、それを弔があざ笑う。さながら殴れるうちに殴っておこう、とでも言いたげな態度に、再び襲の身体から赤い光が漏れる。
しかし彼女とて、これは日常だ。先ほどの弔同様に深呼吸を挟み、どうにか怒りを抑え込んだ。
『何はともあれ、今回は失敗だったわけだけど……悔やんでも仕方ない! 今回だって決して無駄ではなかったハズだ。失敗は次に活かせばいい。君たちはまだまだ成長できる。じっくり腰を据えてやっていこう!』
それを見計らって、「先生」は総括に入る。
『我々は自由に動けない! だから君のような「シンボル」が必要なんだ。死柄木弔! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』
彼の言葉に、弔は無言であった。しかしその瞳に宿る狂気はそれまでと違って揺らぎはなく、完全に落ち着きを取り戻している。そうして狂気は、闇は、研ぎ澄まされていく。
確かに今日、彼は失敗した。だが、「先生」が言う通り、失敗は次に活かせばいいのだ。失敗は成功のもと、とはよく言ったものである。
そう、弔には「次」がある。それは少なくとも明日やあさってというものではないが……しかし、年単位で先というわけでもない。
さして遠くない未来、いずれ来る「そのとき」を想像して、弔は昏い笑みを浮かべる。
彼のそんな姿を、名前を呼ばれなかった襲がむくれた顔で見つめていた。
***
トガの腕の中で、こくりこくりと船を漕いでいた理波が遂に眠りに落ちた様子を見ながら、爆豪勝己は渋い表情を抑えられないでいた。元からあまり感情を隠さないタイプだが、それでも表に出したくないものはあって……しかしそれを抑えきれなかったのだ。
なぜなら、それだけ直前までの経験が衝撃的だったから。
トップヒーローの本気の戦いを、初めて目の当たりにした。それもすぐ目と鼻の先で。これほど幸運なことはなく、またこれほど高い壁だとは思わなかった。
これがプロの世界か、と思わされた。己は所詮、まだ卵でしかないのだと思わされた。まったく、己の弱さに心底腹が立つ。
だが、それよりも爆豪の感情をささくれ立たせるのは、他にある。今目の前で寝落ちした理波だ。
オールマイトが強いということは、ある意味当たり前だ。日本どころか、世界に名を馳せるトップヒーロー。世界に冠たるナンバーワンヒーロー。それを長きに渡って維持してきた男に、たかだか高一の若造がすぐに敵うはずがない。たとえ爆豪がどれほど強がろうが、それが世間一般の評価だ。
だから、オールマイトがあの脳無とかいう黒い化け物を、一方的に圧倒したことは驚くことではない。
もちろん、あれと同じことが今の自分にはできないと自覚しているからこそ、それはすごいと思うのだが。しかしそれは、理解できる驚きだ。
だが、あれはなんだ? オールマイトが戦ったときより明らかに動きのよかった脳無相手に、一歩も引かずに戦い続けたあの女はなんだ?
ただ張り合ったのではない。相手の超再生という”個性”の性質を即座に見抜き、しっかり再生しなければ戦いに支障が出る……あるいは戦うことすら覚束なくなる箇所だけを的確に狙い続けた。そうして脳無についぞ全力を出させることなく乗り切り、オールマイトに繋いでみせた。
それをなしたのが、自分の同級生? さすがの爆豪も、これには思わず信じられない心持ちだった。
爆豪はその場に向かう最中であったから、実のところ遠目にしか彼女の戦いは見れなかったが……それでもわかる。五分近くもの間、脳無の凄まじい攻撃をかいくぐりながら急所だけを狙って、消耗を強い続けていた。
だがそれを実現するために、どれほどのものが必要になるだろう。極限の状態で敵の状態を見抜き、攻撃を予測する観察眼。対策を考える思考力、それを実行に移す行動力。さらには武器を振るう、立ち回る技術……などなど。
思いつくだけでも、これだけのものが即座に浮かぶ。言うは易し行うは難しだ。
そして、それらを自分が持ち合わせているかと言えば……プライドの高い爆豪であっても否と言わざるを得ない。今はまだ。
だが……そう、今はまだ、である。
ゆえに爆豪は、笑みを浮かべて見せた。オールマイトのそれとは異なる、不遜な色合いを帯びた勝気な笑み。
「絶ッ――……対に……! 超えてやる……!」
なぜなら彼にとって増栄理波という少女は、ただの通過点でしかないのだから。
そしてそれは――轟焦凍にとっても同様だった。
腹立たしいが、憎い父の教えゆえに同年代では抜きん出た実力を持つ轟には、爆豪同様理波が行った超絶技巧が見えていた。
同時に、近接戦……それも一対一の状況では、勝ち目が薄いことも理解できてしまった。だからなおのこと、暗い感情が鎌首をもたげる。
ただ……それとは別に。
あれほどの戦いを見せた人間が、まっすぐに……心底安堵した顔で……それこそ年相応の幼子のように、「ありがとう」と。「助かった」と。そう告げてきたとき、己の胸の内に去来した感覚は、不思議と悪いものではなかった。
あの言葉を告げられたとき、轟はなんとなしに思ったのだ。
――ああ。そういえば俺は、オールマイトみたいなヒーローになりたかったな、と。
その気持ちが、すぐに彼を光明面に引き戻すことは残念ながらない。それだけでは、長年積もり積もった気持ちは揺らがない。
けれども、彼の暗黒面に波紋を起こしたことは間違いない事実である。
……そうして。
のちにUSJ事件と呼ばれる一連の騒動は、ひとまず幕を引いた。
この件で、生徒側に目立った被害はなし。軽傷のものはそこそこいたし、敵を撃退するに当たって”個性”の反動で怪我をしたミドリヤのような生徒もいたが……全員リカバリーガールによる治癒で間に合う範囲。
理波についても、疲労困憊と栄養不足が原因なので被害と言うほどではなく、基本的には無事と言っていいだろう。
一方で、そうではなかったのが教師陣だ。13号は靄の男――黒霧との戦いで、自身の”個性”「ブラックホール」を返されてしまい、背中を大きく損傷。ただし、命に別状はない。
最も重傷なのはイレイザーヘッドで、彼は左腕の粉砕骨折の他、右足も骨折、肋骨には数本にヒビがあり、さらには右手は皮が大部分崩れてしまっていた。その他にも、それに比べれば軽いが、範囲の広い擦り傷がいくつかという有様だ。
これでも命に別状はなく、少なくとも
また今回の事件を受け、学校側は当然セキュリティの強化に乗り出した。
ただ、黒霧のような遠隔地から直接乗り込んで来られる”個性”の持ち主がいることを考えると、どれほど厳重な警備であろうと効果は薄いと言わざるを得ないだろう。
それでも雄英高校は、できる限りの対策を講じ、万全であると表明する。その中には、どこかの銀河共和国で稼働していたバトルドロイドによく似たロボットたちがいたという。
そして事件の翌日。臨時休校と定められた日の昼下がり――
***
――不意に意識が覚醒し、緩やかに目を開ける。私を迎えたのは、心配そうにこちらを見つめるヒミコの顔であった。
「コトちゃん……!」
「……やあ。おはよう、ヒミコ……」
「よかった、起きたぁー!!」
いまだ夢見心地な頭のまま、寝すぎたとき特有の少しかすれた声で応じれば、彼女は瞳を潤ませながら私にすがりついてきた。
そんな彼女の頭を抱きかかえ……ようとして利き手がうまく動かなかったので、利き手ではないほうで抱きしめた。
ちらりと横目に見れば、動かなかったのは点滴と繋がっているからのようだ。後遺症などではなくて一安心である。
「ごめん、ごめんねコトちゃん……! 早くあそこを出てちゃんとした治療してもらわなきゃいけなかったのに、私のせいで……!」
「……いいんだよ。それに……私も、心配をかけた……。君のことだから、ずっと傍にいてくれたんだろう?」
「それは……もちろん、だけど……でも」
「気にしていないよ。だから……私から言えるのは、一つだけだよ。ありがとう、ヒミコ」
あのときは私も全身がひどくだるく、栄養不足もあってつい当たるようなことを考えてしまった。まったく、修行不足も甚だしい。
それが申し訳ないと思う反面、ヒミコが心配してくれたことはとても嬉しく、ありがたかった。
だから彼女に礼を言うことはあっても、非難しようなどとは思わない。
そう言葉ではなくテレパシーで伝えれば、ヒミコは涙を流しながらもにこりと微笑んだ。
「……どういたしまして」
「ん」
そうして私たちは、抱き合ったまま唇を――
「――はいはい、仲のいいことは結構だけどね」
「ひゃあ!?」
「ん゛ッ! げほっ、げほっ!?」
そこにリカバリーガールの声が割って入ってきて、どちらからともなく大急ぎで身を引く私たちであった。
……いや、違う。そうではなく。
私は先ほど、何をしようとしていた? 寝起きで頭が回らない状態だったとはいえ、いくらなんでも流されすぎではないか……!
しかもリカバリーガールの存在に気づかなかったとか、どれだけ気を抜いていたんだ……!
「あと少しだったのに……」
君はこんなときでも平常運転か!? いや、確かに女性はたまに、ものすごく驚くほど一瞬で意識を切り替えることがあるが!
「それだけ動けりゃ大丈夫そうだね」
だがリカバリーガールは私たちの態度には何も触れず、淡々と職務を遂行する。
私はあっさりと点滴を外され、実にてきぱきと診察を終えて、退院の運びとなった。
いや、保健室から帰ることを退院と言っていいかはわからないが。
「あんたほとんど一日寝てたからね。栄養は点滴で入れてたけど、お腹空いてるだろ。ランチラッシュが来てくれてるから、食堂でなんかもらってきな」
という言葉と共に見送られた私たちであった。
「……その、じゃあ、行くか」
「うん。一緒に食べよ?」
「そう、だな。そうしよう」
そうして私たちは、どちらからともなく手を取り合って、歩き出したのであった。
・
・
・
EPISODE Ⅱ 「連合の攻撃」――――完
EPISODE Ⅲ へ続く
トガちゃんが連合にいない関係上、オリキャラを最低でも一人連合に配置することは、連載を開始したときから決まっていました。
ただ、それをフォースユーザーにするかどうかについては、最後の最後まで悩みました。ヒロアカとSW、それぞれの対立軸が並立する事態はよろしくないとわかっていたので。
で、悩みに悩んで結局フォースユーザーとして出すことにしたわけですが・・・これにはもちろん戦力バランスを取るためという理由もありますが、一番の理由はフォース的な意味でのバランスを取るためです。
フォースという概念の設定に忠実にあろうとした上で原作以上のハッピーエンドするためには、フォースユーザーが敵側にも一人は必要ではないかと考えたわけです。
最初に強いフォースユーザーを悪側に置くことで暗黒面に偏っているスタートラインを用意し、そこからフォース的にバランスに向かわせることで物語的にもハッピーエンドに持っていこうという魂胆です。
なので・・・これは少々ネタバレになるのですが・・・SWでジェダイと敵対していたシスの関係者はまったく出てきませんし、影響も存在しません。パルパティーンもエグザキューンも不在です。
なぜなら、あくまで本作の中心軸はヒロアカであり、SWではないから。
ジェダイとシスの相克、フォースの光と闇の対立はメインテーマではないので、そうした要素は極力薄めていく方針です。
このため今回遂に登場したオリキャラ、襲ちゃんはフォースユーザーですが正規の訓練は一切受けたことがなく、出力は主人公を上回るものの技術や知識は一切ない、という設定になっています。一般人(?)の弔に攻撃をあっさり避けられているのはそのせい。
それでもヒロアカ基準では十分強いので、あんな調子づいたメスガキになってしまったわけですが、見た目に関してはぶっちゃけ趣味です。
ボクっ子メスガキ合法ロリってよくないですか。いや、トガちゃんくらいの年齢は合法じゃないんですけど。
ボクはライトセーバーを振り回す幼女とクソでかい剣を振り回す幼女の戦いを書きたかったんです(その目は澄み切っていた
あ、今回も一つ幕間を挟んでEP3に入ります。
相澤先生視点のお話です。よろしくね。