銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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2.体育祭の前に

 体育祭の開催は二週間後らしい。ということは当然、それに備え各自が自主練習に取り組むことになる。

 だが会場は違えど開催日は全校同時であるため、当然全学年がそれに向けて動き始めた。結果どうなったかといえば、校内の訓練施設の争奪戦である。

 

 この学校の施設は充実しているし、ここで起きた怪我などはマスター・リカバリーガールのところに持ち込むこともできるから、思い切り練習ができる。その回数を重ねられば、それだけ優位に立てる可能性はぐっと上がるからな。

 

 そして、これについては上級生が有利である。何せその手の制度があることを知っているので、情報がない一年生に比べたら先んじることができる。

 ただ今年のA組については、私がその情報を初日に皆に共有してしまったため、例外と言えるだろう。もちろん、申請から許可が下りるまでの時間差や、混み具合を体感で予測できないというディスアドバンテージもあるが……存在を知らないよりは動けるというもの。

 

 そういうわけで予定通りにいかないときもありつつも、時折訓練場を利用できる人間がいるという状況で過ぎていく日々の、ある日のことである。

 

「あの、増栄さん。その、今日……訓練場で一緒に訓練しない?」

 

 開催のちょうど一週間前、ミドリヤにそう話しかけられて私は首を傾げた。

 

「もちろん構わないが、君はそれでいいのか? 手の内を明かすことになるぞ?」

「いや実は……申し込みが殺到してる関係で取れそうなのがグラウンドベータだけだったんだけど、あそこ広いでしょ? だから十人以上の連名じゃないと使わせてもらえないらしいんだ。それで……」

「ああなるほど、場所は提供するから名前を貸してほしいと」

「そ、それもそうなんだけど……その、増栄さんさえよかったら、少し教えてほしいことがあるっていうか……」

 

 どうかな、と遠慮がちに問うてきたミドリヤに、私はふっと笑って頷く。

 

「構わないよ。そういう約束もしたしな。まあ、私が行くと自動的にヒミコもついてくるが……」

「あ、ありがとう! もちろん、トガさんも歓迎だよ! 実はまだ十人も集められてなくって……」

 

 私の隣に立ったヒミコに、いまだ緊張感を含んだ笑みを浮かべてミドリヤが言う。

 

 なお、今のところイイダとウララカが来ると言ってくれたらしい。いつものメンバーだな。ここに私とヒミコを加えて五人。

 

「あと五人か……」

 

 なのでそうつぶやいたところ、

 

「その話」

「ウチらにも」

「詳しく」

「聞かせてほしいな!」

「ケロ」

 

 女性陣が集まってきた。最初の段階からずっと耳をそば立たせていたので、さもありなん。

 男性陣の中にも、会話が聞こえていたらしい数名が気にしている様子がある。

 

「……いっそ来れる人間全員呼ぶか? 各自見られたくないものもあるだろうが、グラウンドベータの広さなら仮に二十人いてもあまり周囲を気にしなくて済むかもしれないし」

「確かに、隠匿の必要性は否定しない。しかし……」

「ちゃんとしたところで訓練できるチャンスのほうが大事! ってことで?」

「同感!」

 

 私の提案に、遠巻きに見ていた男性陣も群がってきた。

 そこにバクゴーとトドロキがいないのも、いつも通り……。

 

「おい」

「ひえっ、か、かっちゃん……」

 

 ではなかった。バクゴーが横合いから入ってきて、ミドリヤの肩をつかんだ。静かに、しかしすごみながらだ。

 

「俺も入れとけや。いいな」

「う、うん……わかったよ。じゃ、じゃあ……みんなの名前も使わせてもらうね……!」

 

 ということで、この日はクラスのほぼ全員が参加でグラウンドベータに集まることになった。

 

***

 

 そして放課後。

 グラウンドベータと言えば、最初の戦闘訓練で利用した場所だ。あのとき破壊されたビルは既に何事もなかったかのように修復が済んでおり、その手の業務に関わる人々の苦労がしのばれる。

 

 そしてここはご存知の通り、街を模した場所。二十人に満たない人間が、互いを見えないくらい離れて動き回ったところで問題ないくらい広いため、イイダ提案のもと各自が特定の範囲に配置する形で分散することになった。さすが委員長である。

 

「それで? 君は私に何を聞きたいんだ?」

 

 で、全員が散ったあと。ヒミコの腕の中で抱き上げられながら、ミドリヤに問う私である。

 

 ……視線を感じるが、これはミネタか。何を考えているのやら。

 まあそれはともかく。

 

「えーと、”個性”の使い方についてなんだけどね。こないだオ……師匠から、僕が使いこなせている力は100%中5%くらいだって言われて。最初に増栄さんに教えてもらったイメージで言うと、水を受け止めるコップが仕上がってないからそれくらいが限界らしいんだよね」

 

 ……待て。待つんだミドリヤ。

 

 今、君はマスター・オールマイトを師匠だと言いかけたな? いくら口を閉ざしても、君の素直な心はフォースでほとんど筒抜けだぞ。

 本当か、その話。私はもちろん、さすがのヒミコですら今ものすごく驚いているのだが!

 

 確かに二人の”個性”は非常に似通っているが、一体どのような繋がりが……。いや、ミドリヤの心の様子からして、両者の関係性についてはオールマイトの姿同様秘匿すべきことのようだが!

 

「それで……5%でもそこそこの効果はあるんだけど、結局そこそこ程度で。でもコップ……器を今から一週間で100%使えるように仕上げるのは不可能だから、これだけでもなんとかうまい使い方、ないかなぁって……」

 

 だがミドリヤは、私たちの驚愕に気づいていないのか、己の拳を見つめて話を続ける。

 

 うむぅ……とりあえず二人の関係性については置いておこう。そして、私たちは何も聞かなかったことにしたほうがよさそうだ。

 

『君もそれでいいな、ヒミコ?』

『も、もちろんなのです』

 

 と、テレパシーで会話しつつ。

 

 私は顎に手を当てた。

 

「とりあえず、その5%を君は今どう使っているんだ? 一度実戦で見せてくれ」

 

 ということで、私はヒミコの腕を軽く叩いて下ろしてもらい、ミドリヤの前で軽く身構える。

 

 その私と、私からヒミコが離れるのを見て一度目を瞬かせてから、ミドリヤも遅れて身構えた。

 

「ヒミコ、タイマーを。五分……いや、三分でいいか。セットしてくれ」

「はーい。……行くよー?」

「うむ。ではミドリヤ、タイマーが鳴るか相手を行動不能にしたら終わりということでいいか?」

「う、うん。よろしくお願いします!」

「わかった。……行くぞ」

「スタート!」

 

 ヒミコの言葉を合図にして、ミドリヤが距離を詰めてきた。直前、脚に力を集中したのだろう。普段の彼を上回る速度だ。

 

 だがそれは途中で失速し、私の眼前に辿り着く頃には腕に力が集まっていた。

 その力の移動に関する推測を、未来を読むことで確信に変えながら、ふむ……と少し考える。

 

 ミドリヤらしい素直な動き……に見せかけて、既に頭の中では今後どう動くかをかなり高速で考えている。彼はやはり、考えるより先に動くタイプではないな。理詰めで、しかし考えながら動くタイプだ。

 

 なら、こうするとしよう。

 

「……っ!?」

 

 私は脚力を増幅しつつ、攻撃をかいくぐるとともに、空気を増幅しての空中機動を組み合わせたアタロの動きを取る。立体的に、しかも高速で動きながらだ。

 案の定、ミドリヤはこれをとらえきれず私の姿を見失った。

 

 直後、私は彼の背中を蹴り飛ばす。

 

「ぐ……っ!」

 

 慌てて振り返ってきたが、既に私はそこにはいない。アクロバティックに動いて敵を翻弄し、追い詰めていくことこそアタロの本領。下手な思考は、考えるより先に動くより悪手だぞ。

 

 そしてこの動きをされた相手は、大体同じことを考える。ミドリヤもそうだ。

 つまり、なんとかして動きをとめよう、という思考。

 

 だが、アタロはそもそも動き回るフォームだ。相手がそう考えることは、最初から想定に組み込まれている。

 

「ふ……っ!」

「お」

 

 散々攻撃を喰らいながらも、私の動きを予測してかろうじて対応してきた点は見事と言っておこう。これが本気の実戦であれば既に手遅れだが。

 

 とはいえ、訓練だとしてももはや手遅れだ。その予測も、私には見えている。

 

「SMASH!!」

 

 私を振り払うように放たれた横薙ぎの手刀(しっかり”個性”の力は乗っていた)に合わせて少しだけ身体を浮かし、その手の上に私は乗ってみせた。

 

「うっそぉ……あいっ、いたたたた!」

「うむ、大体わかった」

 

 全体重+増幅で強引にその手を下ろさせ、腕ごと極めながら私は言う。

 

「三分もいらなかったですねぇ」

 

 その様子をどこか楽しそうな目で見ながら、ヒミコがタイマーをとめた。

 

「くう……っ! わかってはいたけど、手も足も出なかった……」

「思考はよかったと思うぞ。あの短時間で私の動きを予測して対応しようとしていたからな」

 

 もちろん、私とて本気でやっていたわけではないが。

 

 ともあれである。ミドリヤの身体を起こして、私は腕を組む。

 

「だが動きが硬すぎる。思考と身体がかみ合っていなくてちぐはぐだ。君、さては”個性”の発動を技かのように考えているだろう?」

「……? えーと……」

「”個性”は身体機能だ、本来なら呼吸や鼓動のように意識して行うものではない。だが君は”個性”の発現から一年程度しか経っていないから、感覚が身についていないのだろう。超パワーをいちいち『ここで使う!』という力みが透けて見えた。あれでは身体をうまく使えないし、相手にも次に何をするか丸わかりだ」

「あ……なるほど! そうか、毎回使うって考えてるから、反応がどんどん遅れていくんだ……」

 

 彼の理解力は高いな。将来有望だ。

 

「それとだ。戦いながら思っていたのだが、君の”個性”は身体の一部でしか使えないのか?」

「え?」

 

 そんな彼に、私は重ねて声をかける。

 

「力を集中する箇所は、君の意思で変えられるのだろう? なら、最初から全身を強化してしまったほうが色々と都合がいいのでは?」

「」

 

 そしてそう言ったところ、ミドリヤは眼球が零れ落ちるのではないかというほど目を見開いて、硬直してしまった。

 どうやら、まったく意識になかったみたいだな……。

 

「そ……そうか! そうだよね!! せっかく5%まで出力落としてるんだから、一か所だけで使うのは損だよね!!」

 

 彼が復帰するまで、たっぷりと一分ほどを要した。

 だがそこからは、独壇場だった。しばらく……また一分ほど、ノンブレスでブツブツと思考を開示にしながら考えた結果……。

 

「こんな、感じで、どうだ……!?」

 

 気合いを入れて身構えた彼の身体から、凄まじいエネルギーが迸った。

 それはきっと、彼の身体に収まりきらなかったのだろう。緑色のスパークとなって、彼の身体を覆う。

 

 ふむ……これは。

 

「いい感じじゃないか。動けるか?」

「わ……わから、ない……けど……!」

 

 やる気は十分、と。

 

 ならば。

 

「試してみるか?」

「ぜひ……!」

 

 そして再開された訓練であるが。

 5%の強化を全身に走らせただけで、劇的に動きが変わった。もちろん常に維持できるほど彼の身体はまだ仕上がっていないが……それでもだ。自爆覚悟な100%を放つようなやり方に比べれば、選択肢も増えたし安定性も増した。相当に化けたぞ。

 

 フォースによる先読みの前では手も足も出なかったが、これで100%を全身に巡らせられるようになったら、間違いなく先読みだけでは対処できないだろう。それこそオールマイトや先日の脳無を相手にするような覚悟が……。

 

 ……おや? まさかとは思うが、ミドリヤの”個性”の行きつく先はオールマイトなのか?

 だとすると、”個性”が似ているというレベルではないような気がするぞ。もしや……いやまさか。そんなまさか、な。

 

***

 

「おいガキ、ツラ貸せや」

「マスエ・コトハだ。君はクラスメイトの名前も覚えられないのか」

 

 ミドリヤをある程度相手したあと、私も鍛錬をしようと思って移動していたときだ。私に気づいたバクゴーが威圧感たっぷりに近づいてきて、なおかつこの言いようである。

 まあ、別に構いやしないがね……本当に彼は暗黒面の住人だな。

 

 ただそれでも、強くなるために努力を惜しまないところは評価に値する。遠目からちらりと見ただけなので詳細はわからないが、どうやら彼は”個性”の出力を伸ばすために試行錯誤しているところだったようだ。

 それは私が以前の反省会でしたアドバイスに基づいてのことだろうが、それでも人から言われたことを受け入れることのできる人間がどれほどいることか。

 

 ……実のところ、私は以前の反省会で彼にろくにアドバイスできていないのだがね。

 

 というのも、バクゴーは既に十分基礎ができている。彼に匹敵する技量の持ち主は、私を除けばトドロキしかいないと言っていいだろう。

 そのトドロキも、”個性”の制御、使い方という点では非常に大雑把だ。彼の場合は”個性”が強すぎるがゆえに、使い方を工夫する必要性が今までなかったからだろうが……それを抜きに考えても、バクゴーの”個性”制御は非常に繊細で緻密だ。それを誰から教わるわけでもなくやっているのだから、むしろ私が彼に教わりたいくらいだった。

 

 なので私にできたアドバイスは、「感情に身を任せるな」ということと、「”個性”の出力を伸ばしてみてはどうか」という二点のみ。

 それも彼くらい才能のある若者であれば、あっさりとものにしてしまいそうだ。私の優位性など、フォースユーザーであることくらいではないだろうか。

 

 ということを考えながら、バクゴーに正面から相対する。

 彼は私の言い分を無視して、突き付けるように口を開いた。

 

「いいか、決勝だ。そこでテメェをぶっ飛ばしてやる」

 

 ふむ。ぶっ殺すではなかった辺り、ここは褒めておくべきだろうか?

 

「黒目どもが騒いでたの聞こえてたぞ。絶対上がって来い。逃げたり手ぇ抜いたりししやがったらぶっ殺す。全力でかかってきやがれ!」

 

 一秒しかもたなかったか……。

 

 いやそれはともかく。

 あの会話、やはり聞こえていたのだな。確かにバクゴーからしてみれば、私の言い分はふざけているどころの騒ぎではないだろう。

 

 けれどこれは私のスタンスというか、矜持の問題でもあるからなぁ。それに、手の内を公共の電波に乗せて開示することもはばかられる。

 

 などと考えながら、もはや用は済んだとばかりに背を向け去っていくバクゴーを見送っていると、じわりと隣にフォースの揺らぎが生じた。アナキンが現れたのだ。

 

『いいのか、コトハ? あのバクゴーにあそこまで言わせて、自分はあくまで片手間でやるっていうのか?』

「…………」

 

 マスター・イレイザーヘッドではないが、合理的に考えるのであればこの体育祭、私やヒミコはむしろ全力を出すべきではない。人目に触れる機会が少ないことに越したことはないのだ、フォースは。アナキンもそれはわかっているだろう。

 

 だが彼の性格上、この手の競う場で手を抜くこともないだろう。もちろん序盤からずっと全力で、というほど考えなしではないから、手を抜くところは抜くだろうが……逆に言えば、手を抜くべきではないと思ったところでは遠慮なく全力で行くはずだ。彼はそういうところがある。

 思えばパダワンの頃の彼は、バクゴーと似たところもあったな。勝気で、向こう見ずで、しかし自信にあふれた才能ある若者であった。

 

『僕に言わせれば、礼儀を尽くした試合で手を抜くことのほうがあり得ないけどな。見ろよ、あのバクゴーが光明面に居座ってる。あんな真摯な若者相手に、おざなりにやる気か?』

 

 言われてみれば確かに、今のバクゴーの気配はほとんど光明面だ。普段暗黒面に寄っている彼にしては、非常に珍しい。

 これは挑戦者の気概とでも言うべきか。格上相手に、一歩もひるまず戦いを挑む勇者のそれだ。

 

 ……確かにそうだな。あのバクゴーが、全力で光に寄るほどの熱意を持っているのだ。きっとみなもそうなのだろう。

 そんな真剣に取り組んでいるものたちに対して、片手間で応じるというのは非常に失礼な話だ。逆の立場で考えれば、アナキンほどではないにせよ、私も思うところはあるだろう。

 ジェダイとしても、競い合うこと自体は禁忌ではない。仮にそれが世界規模に中継されていたとしても、今目の前にいる相手への礼儀は失するべきではない、か。

 

 ならば。

 

「……いいだろう」

「あ?」

 

 私の言葉に、バクゴーが足をとめて顔だけをこちらに向けてきた。

 

 そんな彼に、私は笑って言葉を続ける。

 

「もし君と直接戦うことがあれば……そのときは()()()お相手しよう」

 

 すると、バクゴーは一瞬目を丸くした……が。

 すぐさま好戦的な……先ほどよりもなお燃え上がる、気迫あふれる笑みを浮かべた。

 

「上等だコラ。その言葉、忘れんじゃねェぞ」

「無論だとも」

 

 そうして彼は、今まで以上にやる気をみなぎらせて立ち去って行った。

 

「……よかったんです?」

「正直、アナキンに乗せられたような気はしなくもない」

 

 彼の姿が見えなくなってから。今までずっと黙っていたヒミコが、ささやくように聞いてきた。

 私は思わず苦笑して、傍らで何やら含み笑いをしている友に目を向ける。彼はなんのことやら、と言いたげに肩をすくめた。

 

『君の気持ちはわからなくはないよ。特に、公衆の面前で手の内をさらす危険性については僕だって重々承知の上さ。それでも、君には一度真剣に競い合うことの意義ってやつを思い出してほしくてね。僕たちの世代はナイト昇格の時期がクローン戦争と重なったせいで、その手のことから離れざるを得なかったからな』

「それは……確かに、その通りだ」

 

 クローン戦争による情勢不安の影響は、ジェダイであっても逃れることはできなかった。共和国軍の将軍として、軍を指揮する立場になっていったのだ。私はジェダイアーカイブでの後方任務がほとんどであったが、今思い返すとそれでも色々とすり減った心はあったなとも思う。

 

 それが実に三年も続いたのだ。そして終結とほぼ同時にジェダイは滅び、私も死んだ。ナイトに昇格してからの時間は、すべて戦争に充てられていたと言っても過言ではない。そんな状況で、同僚と切磋琢磨する機会が得られるはずもなかった。

 

『だろう? ……何、うちは代々型破りで有名な一門だ。誰も深く気にしないさ。オビ=ワンは少しうるさいかもしれないけどね』

「君、そういうところだぞ」

 

 悪びれることなく言い放ったアナキンに、思わず苦笑する。マスター・ケノービの叱責の声が、どこからともなく聞こえたような気がした。

 

 だが、まあ、そんなアナキンであるが、今は彼が私のマスターだ。そして私自身も、彼の言い分に理があると思った。

 何より、礼儀知らずにはなりたくないと思った。だから、

 

「仕方ないな。これも経験と割り切って、精一杯やらせてもらうよ」

 

 私はそう言って、肩をすくめた。言うほど仕方なさそうな表情、声色でなかったことは、自覚するところであるがね。

 

 そんな私を見て、ヒミコが嬉しそうに笑う。

 

「じゃあ、全力でがんばるコトちゃんの応援ができるんですねぇ」

「いいや? ()()()相手するとは言ったが()()()相手するとは言っていない。全力を出すかどうかはクラスメイトたち次第さ」

「……あは。私、知ってますよ。そーいうの、詭弁って言うんだよねぇ?」

「駆け引きと言ってくれたまえ」

「んふふ、はぁい。……でも、どっちにしても私、一生懸命応援するので。カッコいいとこ、期待してますよぉ」

「ん……まあ、うん。しかしそれなら、君の前でみっともない姿は見せられないな」

 

 そして私もまた、笑みを浮かべて彼女に応じたのだった。

 

 ……ちなみにその後、私を見かけたものたち全員が何かしらアドバイスやら模擬戦を求めてきたので、私が鍛錬をする時間はあまり残らなかった。




ヒーロー側の現段階(体育祭開始直前)での原作との違い

緑谷:既にワンフォーオール・フルカウルが使える(原作では体育祭のあと習得
爆豪:追われるものではなく追うもの。いい意味で緑谷を気にかけていない。また、個性の出力が上がっている(原作では林間合宿までほぼ上がっていない
相澤:後遺症はなく、軽傷で済んでいる。個性への影響もない。万全。
オールマイト:活動可能時間がほぼ減っていない(原作ではこの時点で50分前後

この他、A組の轟以外のメンバー(緑谷や爆豪も含む)はそれぞれ少しだけ経験値が多くたまってます。
A組同士で戦いになった場合、差し引きゼロですけど。

体育祭、閑話の掲示板回の位置は

  • 時系列に合わせて本編と並行
  • 体育祭が全部終わってから一気

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