銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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6.体育祭 騎馬戦 上

 さて十五分が経過し、騎馬が出揃った。二人、三人、四人の組み合わせも様々に、十二のチームが揃い踏みである。

 

 投影されたスクリーンには、各チームの組み合わせと合計ポイントが表示されている。

 

 私たちは655ポイント。初期の持ち点としては、1000万を持つミドリヤチームに次ぐ数値だ。これは狙われるな。

 

《さあ起きろイレイザー!》

《……なかなか面白ぇ組が揃ったな》

 

 ……マスター・イレイザーヘッド、この短時間で寝ていたのか。いや、それはそれで得難い才能だとは思うが。

 

 そんな同期二人組の話を聞き流しながら、みなが一斉に騎馬を組む。

 もちろん私たちも同様だ。私たちは騎手に私、前騎馬にヒミコ。ジローとツユちゃんが後騎馬、という形である。

 

《よォーし組み終わったな!? 準備はいいかなんて聞かねえぞ! 行くぜ残虐バトルロイヤルカウントダウン!》

 

 マスター・プレゼントマイクのカウントダウンは適当に流しつつ、三人に声をかける。

 

「『では各々、抜かりなく』」

「はぁーい」

「オッケー!」

「ケロ。任せて」

《スタート!!》

 

 そして開始が告げられた。

 

 と同時に、バクゴー、トドロキ、ミネタ、さらにB組の中でも初期点が最も高いチームが一斉にミドリヤチームへ殺到する。まあ、そうなるだろうな。

 

 これに対して、私たちは逆にミドリヤたちから距離を取る。気になるのはミドリヤチーム狙いに加わらず、序盤は様子見を選んだチームだ。

 

 中でも特に気をつけるべきは、二チームだと当たりをつける。それは金髪の少年を騎手にしたB組のチームと、紫色の髪を上げた少年を騎手にした普通科のチームだ。この二つは、策に陥れようという気概が他より強く見て取れた。油断すべきではない。

 

 特に後者は、騎馬になっているアオヤマやオジロたちの様子が明らかにおかしいので、何か仕掛けがあることは間違いない。できる限り早くあれの謎を解くことが、我々チームの序盤でやるべきことであろう。

 

 だが、ミドリヤ狙いに動いていなかったB組のチームが、ここで一斉に私たちに向かってきた。

 

「来た!」

「B組は何かしら結託しているのかしら?」

 

 そう言う二人に反応するかのように、後ろに新たな騎馬の気配が迫る。前や横から迫る同じ組のチームすら囮に利用して。それはわかっていた。

 

 だが、私とヒミコはあえてこの動きを二人に知らせず、後ろから来る手を避けない。

 

「そういうこと」

 

 そう言いながら私から鉢巻を奪ったのは、最初に挙げた金髪の少年。名前は確か、

 

「やあ。よく来たな、モノマ」

 

 モノマ・ネート。私が見た限り、B組の中心的人物。そして同時に、先の障害物競走であえて順位を上げず、我々A組の様子見に徹した男。

 

「……! へえ、さすが首席。勘がいいんだね?」

「まあな。それは預けておこう」

 

 そんな彼に、私は655ポイントを献上する。

 

 当然だが、その行動にモノマは眉をひそめた。

 

「なんのつもりだい?」

「なに、言った通りさ。それは君に預けておくだけだよ」

「なるほど、後半追い上げる作戦? でも残念、そんなことにはならないよ」

 

 彼はそれだけ言うと、私たちから遠ざかっていく。向かう先は……バクゴーか。

 

《増栄チーム、なんと自らポイントを献上! 物間チームが一歩リードだ!》

《献上は作戦みてぇだがな。さて、これが後半どうなるか……お手並み拝見か》

「まずは作戦通り、だね」

「ケロ。本当にぴったり予想通りになったわね」

 

 まあ、ここまで含めてすべて作戦通りなのだがね。

 モノマに触れられ、”個性”をコピーされるところまでが、である。

 

 別に彼の”個性”を見聞きしたことがあるわけではない。前情報はまったくの無だ。

 しかし、あわよくばこうしたい、などと考えながらこちらをうかがっているようでは、フォースユーザーには筒抜けなのである。

 

 だからあえてコピーさせた。なぜなら、私の”個性”は練習なしに使えるような簡単なものではなく、また下手に使えば命の危険があるのだから。

 

「モノマ、忠告だ! 私の”個性”は下手に使うと死ぬから、使わないほうがいいぞ!」

「……!?」

「真剣な話だ! 忠告はしたからな!」

 

 そして、あえて忠告することでモノマの行動を縛る。こうすることで、私は彼の”個性”を見抜いている、あるいはそういう手段があるという心理的なプレッシャーをかけると共に、コピーした私の”個性”使用の是非について悩ませることができるというわけだ。

 ついでに言えば、いくつコピーできるかは知らないが、その枠を潰すこともできる。これでコピーした”個性”を使うまで再コピー不可能、とかなら言うことなしだが……それは高望みがすぎるだろうな。

 

 まあ私がどうこうせずとも、次のターゲットをバクゴーに決めた時点で彼の命運は尽きたようにも思うが。

 

「さて次は……」

 

 私はつぶやきながら、乱戦を避けて動いている残る要注意人物……シンソー・ヒトシに目を向ける。

 

 そちらに向かうようみなに指示を飛ばしつつ、ツユちゃんの舌から鉢巻を受け取る。もはや私たちに用はない、とばかりにターゲットを変えたB組チームの背後から、ジローのイヤホンジャックとの合わせ技で奪ったものだ。

 

 125ポイントか……まあまあだな。首に鉢巻を巻きつつ、奪ったチームから狙われないよう位置を取りながら移動する。次の狙いはシンソーだ。

 まあ、彼については能力の把握が優先なので、取れずとも構わないが……。

 

「やあミスター。すまないが、君のポイントを頂戴したい」

「ち……っ」

 

 だが思っていた以上に、あっさりとシンソーから鉢巻を手に入れることができた。285ポイント……これで410か。

 

 ついでに、その思考も読めた。舌打ちしていたが、彼はちっとも焦っていない。彼もまた私たちと同じく後半に追い上げる作戦のようだ。

 そして、”個性”にも察しがついた。騎馬の三人から意思が感じられず、シンソーの思考と合わせて考えるに、彼の”個性”は意図を持って声をかけそれに応答した相手を操るものだろう。

 

 思っていた以上に強力な”個性”の持ち主だったが、対処方法は比較的簡単だ。

 そして、今の私たちに彼の”個性”はほとんど効かない。

 

 なぜなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

***

 

「まず耳栓を用意する。……と言ってもヤオヨロズがいない以上、布を裂いて湿らせることで代用するしかないだろう。追加で私の個性により遮音性を増幅すれば、まず間違いなかろう」

「響香ちゃんの”個性”で自爆しないよう対策ということね」

「ああ。コスチュームが使えない以上、指向性は持たせられないだろうが……乱戦が予測されることを考えれば無差別のほうがいいだろう。普通に音も出せるのだろう?」

「できるけど、コスチュームなしじゃこの場全体に届くような音量には……あ、そうか。増栄の”個性”と合わせれば……」

「うむ。増幅できる。ついでに言えば音への耐性も増幅できるから、そちらも時が来れば増幅しよう。前半は周りに合わせてゆるゆると動き、機を見てジローの爆音でスキを作る。そこを一網打尽、というわけだな」

「そのときは私と梅雨ちゃんも取るのに動けばいいんですね」

「わかったわ。……でも、こんな大歓声の中で耳栓までしてしまったら、声が聞こえなくなってしまうわ?」

「それについては問題ない」

『なぜなら私はテレパシーが使える。他者の意思を読み取ることもできる』

「うわっ!?」

「ケロ!?」

『接触した状態なら、意思を持って放たれた言葉はほぼ確実に読み取れる。意思の疎通はこれで行う』

「……そういや超能力まで使えるんだった」

「確かに、テレパシーもよくある超能力の一つね。ケロ。これなら耳栓のデメリットを軽減できるわ」

 

***

 

 ……ということが、チーム結成後にあったのである。

 ジローの爆音攻撃への対処で行った処置(ちなみに犠牲になったものは私のハンカチ)であったが、ここでシンソーに刺さるとは思わなかった。

 

 とはいえ、念には念をだ。シンソーの”個性”に関する考察をみなに伝え、彼の声が聞こえても応じないよう要請する。

 

 そうこうしているうちに先ほど手に入れた125ポイントが取られてしまったが、会話中に対抗するのが面倒だったのでこれは返却しておこう。まだ焦る時間ではない。

 

 一方で、ミドリヤの周辺は一貫して賑やかだ。仕方ないことではあるが、彼は常に最低二チームから攻められ続けている。

 それを凌ぎ続けているのはさすがだが、どうやらミドリヤのみならずチーム全体がしっかりと協力してのことのようだ。サポート科の人間のアイテムをうまく使いつつ、ウララカのゼログラビティで移動を助け、防御に徹するトコヤミはダークシャドウによってほぼ鉄壁の守護神と化している。

 

 だが、全方位から攻められ続けてすべてどうにかするなど、難しい。特に攻めるという点に特化するバクゴーが参戦したとあっては、いずれどこかでほころびが出てくるだろう。

 

 ……というか、だ。

 

《おおおおお!? 騎馬から離れたぞ!? いいのかアレ!?》

 

 まったくもってプレゼントマイクの言う通りだ。いや、何を言っているかは正確にはわからないのだが、彼の心の動きから大体わかる。

 何より、彼が声を上げる原因が視界にちゃんと映っている。

 

 バクゴーと来たら、いつものように爆破を活かした空中移動を行っているのだ。あれでは騎馬も何もないではないか。プレゼントマイクが言いたいのはそういうことだろう。

 

 だが、主審のミッドナイトはそれを是とした。

 

「テクニカルなのでオッケー! 地面に足ついてたらダメだったけど!」

「いいのですかマスター・ミッドナイト!?」

「もちろん! 言ったでしょう? ウチは自由が売り文句だって! 主審の私がいいと言えばいいのよ!」

「……なるほど、よくわかりました」

 

 まったく考えてもいなかった。

 いなかったが……空中移動(それ)がありなのであれば。

 

「『みんな。作戦変更を提案する』」

「どうするの?」

「行くんですね、コトちゃん!」

「まさか爆豪みたいなことするつもりなんじゃ……」

「『そのまさかだ。積極的に攻めようと思う。どうだろうか』」

「私はコトちゃんのしたいようにすればいいと思うのです」

「マジか……まあでも、いいんじゃない? どうせなら一位通過したいしね」

「構わないわ。キャッチは任せて」

 

 満場一致か。ヒミコはともかく、二人とも勝つ気満々だな。

 

 そう決めた私は、脱ぎ始めた。

 

「『よし。では攻める』」

「いやなんで脱ぐ!?」

「『私の個性は、身体のどこかが触れてさえいれば使えるのだ。だから全力を出すには服も靴も邪魔なのだよ』」

 

 フォースとの合わせ技で非接触物にも使えるから、無理に脱ぐ必要はないのだが。それをやろうとすると思考をそちらにも割く必要が出てくるから、脱げるなら脱いだほうがいい。

 

「中継されてるんだけど!?」

「『下着は残すさ。というか、そもそも私の裸など誰も喜ばないだろう』」

「ダメよ理波ちゃん。本当にダメよ」

「そうですよコトちゃん。(コトちゃんのカァイイ身体は私のものですし人目はもちろんテレビになんて映させたくはないけどそれはそれとして今そんな押し問答してる時間の余裕ないし一度賛成しちゃったしでもそれはそれこれはこれなので私の心の平穏のためにも)最低でも脱ぐのは上着と靴と靴下だけにしてください」

 

 ヒミコにすら怒られてしまった。何やら怒涛の行間があったような気もするが、それはともかく。

 

 こういうとき、女は少々不便だな。下着程度でも許されないのか。

 まあでも、みな私より女としての経験は長いのだ。これは彼女たちのほうが正しいのだろう。

 

 仕方なく、私はヒミコに言われた範囲で脱ぐことにした。

 

《んー!? 増栄、なんか脱いだぞ!? オイオイこの体育祭を放送事故にするつもりか!?》

《合理的な判断だな》

《……もしもしポリスメン?》

《おいやめろ》

 

 毎度ながらイレイザーヘッド、慧眼である。生徒の”個性”は生徒本人と同じくらい理解していそうだな。そういう気配がちゃんとある。

 だが、恐らくいつものように短い言葉で済ませたのだろう。プレゼントマイクが割と本気で通報しようとしている。具体的に何を言ったかはわからないが、何事も言い方というものはあると思う。

 

 まあ、私が動くよりも先に解説の彼が答えを言ってしまったら、周りが有利になるから詳細を話せなかったというのもあるのだろうが。なんというか、運の悪いお方だ……。

 




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