銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

5 / 288
4.友との再会

 四歳半ほどになった。

 

 結論から言うと、私が見たフォース・ヴィジョンは杞憂だった。

 いや、確かに母上には命の危険があったのだが、私が懸念したような事態にはならなかった。なぜならあのとき見た光景は、単に母上が出産しているときのものだったからだ。

 

 私に“個性”が発現し、色々とやらかし、退院して半月ほどあとになって、母上の懐妊が発覚したのである。その後私は父上と共に出産に立ち会ったのだが、そこでなるほどとなったわけだ。

 それに気づいたあとは、素直に妹が産まれるところを見ていられたのだが……いやはや、この星にもだいぶ慣れたと思っていたが、まだまだ慣れない部分はあるのだと思い知らされた。

 

 なぜって、共和国ではここまで出産は大掛かりではなかった。いや、もちろん出産が人の一生において一大事であることには変わりないのだが。少なくともコルサントのような医療が十二分に発達した場所なら、もっと穏やかに済んだものである。

 だがこの星では、いまだに出産はまさに命を懸けた行いなのだ。母上が本当に死んでしまうのではないかと気が気ではなかった。

 今となっては私も女の身なので、他人事ではない。将来的にもしものことがあればこれをするのかと思うと、血の気が引く思いであった。

 

 ただそれについては、そもそも男と性交渉を持たなければいいだけの話だ。禁欲を旨とするジェダイとしてはそれは元々慮外のことであるから、いいのだが……この調子で行くと生理も十分に恐ろしい。

 これもコルサントなどでは生理のデメリットを完全に抑止する副作用のない薬や処置などがあったものだが、この分では期待できまい。

 実際母上は月に一度、必ず体調が優れないときがある。娘の前では気丈に振舞っているが、フォースを使えなくとも多少観察眼のあるものなら気づくくらいには、明らかに具合が悪そうなのだ。将来を思い、早くも憂鬱になった私である。

 

 だがまあそれは置いておこう。なにはともあれ、私は姉になった。新たにマスエ家には女の子が増えて、四人家族となったのである。

 

 それで思ったのだが……いや、妹が可愛すぎるのである。なんだろうか、この心境は。赤ん坊を見ることなど、初めてでもなんでもないはずなのだが。

 

 客観的な事実だけを述べれば、一人では何もできない、あまりにもか弱すぎる存在で。その世話のために多くの手間暇がかかることを考えれば、腹も立つだろうに。なぜかそこまで感情がささくれないのである。

 これはもしや何か恐ろしい“個性”が既に発動しているのかとも思ったが、そうではないという。両親いわくそれが当たり前のことで、だからこそ過酷な子育てに耐えられるらしいのだが……よくわからない。不思議なことである。

 

 やはりジェダイに家族は不要なのでは……。他者に惑わされることなく、揺るぎない心を持つためには捨てなければならないものもあるのでは……。

 そうは思いつつ、暇があれば妹を眺めるなり構うなりしてしまうので、私はもうダメかもしれない。これもいいかと思っている私がどこかにいるのだ。かつてのマスターに知れたら、瞑想部屋に叩き込まれるだろうなぁ。

 

 だが、幸か不幸か今の私にマスターはいない。なんとか雑念を払い、身体を鍛えると共に、瞑想によってフォースとの繋がりをより強固にする。先のためにも必要な鍛錬であり、こればかりは妹の誘惑にも負けず欠かしていないから、許してもらいたいが……はてさて。

 

 なおこの鍛錬は、“個性”が目覚めてからというものより具体的になっている。というのも、なんと我が父上は元プロヒーローなのだと言う。道理であれほど“個性”の扱いに熟達しているわけである。

 ただ、彼の父……つまり私の祖父が急逝したために突如として家業を継がなければならなくなり、引退を余儀なくされたらしい。なので活動していた期間は、さほど長くないらしい。

 

 それでもヒーロー免許はまだ返納していないとのことで、私は彼の監督下で心置きなく“個性”を鍛えることができている。ついでに私の“個性”の詳細も、彼の考察を下にすることで手早く理解することができた。感謝してもしきれない。

 

 そんな私の“個性”だが、父上と相談して、役所には「増幅」として届け出ることにした。仕組みとしては、私が触れているものの()()()()()()()()()()()()()()()()()というものである。効果に比例して私の中の栄養素を消費するため、多用はできないが高い汎用性を持つ。

 

 また検証の結果、この“個性”は二種類に分けることができるとわかった。一つは永続する増幅。もう一つは一定時間で元に戻る増幅だ。

 

 前者のほうが効果は高く永続するため、貴金属や戦略物質を対象にすれば恐らく経済を破壊できる。ただしその分、消費も激しい。

 後者は続かないため時間経過で元に戻るが、コストパフォーマンスに優れるため連発が可能である。

 つまり、私が短期間で二度も死にかけたのは、この使い分けができなかったからだ。

 

 だがそれを抜きにしても、私の“個性”は恐ろしい。特に前者の効果は、言ってみれば無から有の永遠の創造にも等しい。はっきり言って、一人の人間が持っていていい能力ではない。

 私の体内のミディ=クロリアンを増やしたのは前者の永続系の増幅であるが、ミディ=クロリアンを後天的に増やすなど、共和国ですらできなかったというのに。それをたった一人の人間が、しかも身一つで行えるなど、どうかしている。シスに知られれば、実験動物として飼い殺しにされることは間違いないだろう。

 

 ジェダイとシスの相克はともかく、父上もそれを危惧しているのか、“個性”が目覚めてからというもの、過保護に拍車がかかった。一人での外出は家の敷地内ですら認められないのだ。

 そこは年齢的にも仕方ないだろうし、今の私ではどうにもならない脅威が多いことも間違いないので、修行にしろ鍛錬にしろ、必ず誰かといるときに行うようにしている。

 

 ……ただ、そうなってくるとフォースを目撃されることは避けられない。主にそれは父上か母上になるので、二人ならある程度はいいのだが……そのせいで私は“個性”が二つあるものだと両親には思われた。

 

 この説明が大変だった。フォースはあくまで技術なのだが、当然のように信じてはもらえなかった。

 

 まあ無理もない。私以外にフォースを使う人間は今のところ見たことがないし、この星では特異な力は例外なく“個性”とされているから。

 

 しかし、だからと言って複数の“個性”持ちとなると、ただでさえ希少価値がある私の価値がとんでもないことになってしまう。このため、表向きは人が眠らせている超能力を“個性”によって一時的に使えるようにできる、としている。それでもこの星の常識に照らし合わせると、十分常識外であるが。

 

 そしてそれゆえにか、私が個性犯罪に巻き込まれたとしても自ら対処できるようにする時機を早めるために、飛び級の話が来ているようだ。なるべく早くヒーロー免許を取得し、強力な“個性”で社会に貢献してほしい、とのこと。

 

 だがそれは恐らく表向きの理由だろう。いや、説明しに来た役人は本心からそう言っていたようではあるが、その上……ヒーロー公安委員会や政府などの本音は、単に私に首輪をはめておきたいというものだろう。つまり大人の都合というやつである。

 

 父上も母上もその点は見抜いているのか、二人ともこの話にはあまり乗り気ではない。愛娘には子供でいられる時間をしっかり確保して、同年代の友人と健やかに育って、その上で自分の意思で道を選んでほしいのだろう。

 

 だが生憎と、なるべく早くジェダイとして動けるようになりたい私には正直好都合である。既にこの星の初等教育に当たる部分は余力を持ってこなせるので、今さら一からわかり切ったことをゆっくりと学習しなおすのも少々気が滅入る。飛ばせるものは飛ばしてしまいたい。

 

 まあ受けるにせよ蹴るにせよ、一年以上先の話だ。今はともかく、将来のためにできることをする段階である。

 

 そんなわけで、今日もフォースの修行のため父上と共に瞑想をしていた(父上はフォースセンシティブとしてではなく、単に宗教家としてだ)私は、ふと背後に懐かしいフォースを感じて振り返った。

 

 そこには懐かしい衣装に身を包んだ、懐かしい顔があった。なぜか半透明だが、その顔を見忘れるはずもない。

 共に修行に励んだ同期。同じ趣味を持っていた友人。そして何より、私の首を刎ねた下手人。

 

 アナキン・スカイウォーカーがそこにいた。

 

「……アナキン……!?」

『君は……まさか、アヴタスか……!?』

 

 私の声に、彼が応じた。どうやら互いに互いを認識できているようだ。

 父上は「どうした、何かあったのか?」と言っているので、彼には見えていないようだが……? 私にだけ認識できるということは、もしやフォースの導きか。

 

 だがそう思ったのも束の間、アナキンは突然笑い始めた。それもただ笑うというレベルではなく、腹を抱え声を上げての爆笑である。

 

『ど、どうしたんだアヴタス! ハハハハハ! 随分、やけに可愛い姿になってるじゃないか! 何がどうしてこうなったんだ!?』

「わ、笑うな! 私とて望んでこうなったわけではない!」

『や、やめろアヴタス! その姿でその物言いはダメだ、イオン魚雷でももっと穏やかだぞ! わ、笑い死んでしまう!』

「そんなにか!?」

 

 久しく使っていなかった銀河標準ベーシック(スターウォーズ世界での標準語)で言い合うが、解せない。解せないぞ。

 何がそんなにおかしいと言うんだ。そりゃあかつての私は強面の巨漢だったと思うが……。

 

 ……いや待てよ、私がジェダイ公文書館に配属されたときも、彼は「外見詐欺」と評して爆笑していたな。思い出した、少しイラっとしてきた。せっかくの再会だ。当時のように軽くたわむれようじゃないか。

 まあ、どうあがいてもアナキンに効くはずはないのだが。

 

『おっと! 残念だが今の君のフォースでは僕には痛くもかゆくもないぞ。衰えたな、アヴタス』

「むむむ……仕方ないだろう、どういうわけか私は非センシティブに生まれ変わってしまったのだ。フォースとの繋がりを取り戻して、まだ一年程度なんだぞ」

『……オーケー、よくわからないが君の身に不思議なことが起こっているみたいだな。聞かせてもらえるか?』

「もちろんだが……」

 

 ここで会話を区切り、横を見る。父上が心配そうにこちらを見ていた。具体的には、心を病んでしまった者を見るような目だ。

 

「……このままだと私は精神病患者だ。一時的に君を見えるようにするから、自己紹介をしてあげてくれ」

『……言いたいことはたくさんあるが、とりあえず一つ。僕はこの星の言葉がわからない』

「…………」

 

 私は頭を抱えた。

 




気まぐれかつ今後使えるかどうかもわからないスターウォーズ用語解説第二回
「クローン戦争」
スターウォーズのナンバリングタイトルであるエピソード1~9のうち、アナキンが主人公となるエピソード1~3の時代に発生した戦争。名前の由来は、主力となった兵士が全部クローンだったから。
正確にはエピソード2の終盤に発生し、3中に終結する。
またさらに言うなら、戦争と言うよりは紛争。銀河共和国と、そこから武力でもって独立しようとする独立星系連合の間で発生した。
ジェダイは共和国の自由と正義のため、共和国軍の将軍となって戦争に参加し、様々な物語が生まれることになる。
そしてその物語は、「クローンウォーズ」のタイトルでアニメ化されている。今ならディズニーのサブスクで全シリーズ見れるはずなのでぜひ見よう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。