銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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10.体育祭 バトルトーナメント一回戦 2

 試合を終えた私は、控え室に来ていたヤオヨロズと少し言葉を交わしてからクラスメイトの下へ戻った。

 

 だがその向こう側では、早くもヒミコがカミナリを場外に落として勝利を収めているところで、展開の早さに私は目を丸くすることになった。

 

《瞬殺!! あえてもう一度言おう、瞬・殺!!》

 

 マスター・プレゼントマイクの言葉に、観客が大いに歓声を上げた。早すぎる決着は、それはそれで盛り上がるものらしい。

 

「もう終わってしまったのか。どちらが勝つにせよ決着は早いとは思っていたが、これほど早く終わるとは」

「増栄さん! トガさんが増栄さんに変身して放電を受けとめたんだけど、あれって何!?」

「騎馬戦のとき、増栄も同じことしてたよな? なんだありゃ!?」

 

 そのまますぐにミドリヤとキリシマから質問が飛んできたので、座席に着きながら答える。

 

「膨大な斥力で跳ね返しているだけだ」

「ウッソだろそんなことまでできるのか!?」

 

 実際はフォースバリアという技で、要はフォースによる障壁(厳密にはただのシールドとは少々原理が異なる)なのだが。それを言うとなるとフォースの説明もしなければならないので、混乱をきたしかねない。なので、既にクラスメイトには知れているもので押し通すことにする。

 

 まあ、私程度の技量ではフォースバリアも大したものにはならないので、実戦で使えるかというとまた別の話になってくる。グランドマスター・ヨーダのように、ダークサイドの力に満ちたフォースライトニングをも跳ね返せればいいのだが……それはまだまだ遠い頂きである。

 フォースバリアの習得ですら前世のどれほどを費やしたことかわからないから、そこに辿り着くためにはもう何度か生まれ直さないといけない気もするがな。

 

 それはともかくだ。

 

 ヒミコが既にフォースバリアを展開し、なおかつフォースが乗っていないとはいえ電撃を跳ね返すほどの技術を身に付けているはずはない。

 何せ、彼女がフォースに目覚めてまだ一年経っていないのだぞ。そんな短時間でフォースバリアのような応用技を簡単に使えるようになってしまったら、私の立つ瀬がない。

 それほどまでに彼女がフォースに秀でているとはアナキンも言っていないので、あるいは“個性”の精度がまた増したのかもしれない。

 

 まあそれについてはあとで確認するとして……私としてはそこ以外にも、私に変身するまでの時間があまりにも短くて驚いている。

 何せ電気は音よりもなお速く動くのだ。その攻撃に間に合うように私に変身して、しかも対応までしたのだからまさに一瞬の変身に見えただろうな。フォースユーザーだからこそ反応ならできるだろうが、反応はできても変身にかかる時間は別問題のはずなのだが。

 

 ……“個性”も身体機能であることを考えると、普段から私にばかり変身しているヒミコの変身技術は、私に対してのみ極まっている可能性はありそうだ。あるいは、変身速度や精度に関してもフォースが関わっている可能性も……?

 ううむ、考え出すときりがない。

 

 ……と、“個性”とフォースの関係性などについて考えるのはこの辺りにしておこう。

 

「あー……まあ、なんだ。父上の技を真似ているんだよ。色々考えた」

「え、増栄の親父さんってヒーローなのか?」

「そういえば、ヒミコとミドリヤ以外には言っていなかったか? 実はそうなんだ。今は引退しているし、活動期間も短かったマイナーなヒーローだがね」

「マジかよ!? なんて人だ? よかったら教えてくれよ!」

 

 一時的に場が盛り上がる。以前ミドリヤにしたような話をまたすることになったのだが、徐々に周囲の目が優しくなっていったのはなんだったのだろうか。

 

「そうか増栄さんのお父さんは重力ヒーロー・バンコだ……彼の必殺技は主にトラクタービームとリパルションビームだけどリパルションビームの応用で攻撃を跳ね返すなんてこともしてたっけ……やっぱり家族にヒーローがいると違うな……」

 

 そしてミドリヤは相変わらずだな。ツユちゃんが真顔で引いているぞ。

 

「……ところで、ミネタは何をそういきり立っているのだ?」

 

 先ほどから隅のほうで、退場していくカミナリの背中をミネタが凄まじい形相でにらんでいるのだ。一体何があったのだ?

 

「これが落ち着いてられるかよォ! 上鳴のヤロウ、百合の間に挟まろうとしたんだぞ! 万死に値するッ!!」

「……すまないが、私の日本語能力は未熟らしい。何を言っているのかわからない」

「安心しろ、俺らもわからん」

「まあいつもの峰田だろ」

 

 とりあえず、苦笑混じりのセロが軽く手刀を打ち込んでミネタを黙らせたわけだが。

 

「上鳴くん、試合前からナンパしてきたんですよ」

「は?」

 

 戻ってきたヒミコに顛末を聞けば、思わずそんな声が口をついて出た。自分でも驚くくらい低い声だった。

 

「もちろんお断りしました! 上鳴くんが嫌いってわけじゃないですけど、私のタイプではないので!」

「ほぉーう? じゃあじゃあ、トガちゃんのタイプはどんな人なのかなー?」

「私も気になるなー!」

「そですねぇ、努力家で落ち着きがあって、いつも一生懸命なカァイイ人ですかねぇ」

 

 唐突に始まった恋愛談義だっだが……名指ししないだけの分別がしっかりあったようで何よりである。私が言うのもなんだが、十六歳が十歳児に懸想している事態は法的に結構問題だろうしな……。

 

 そう思いながら女性陣の盛り上がりを見ていたら、ミネタに肩を叩かれた。

 振り返れば、彼はいつかのように菩薩のような笑顔で親指をこちらに向けて立てている。オイラはわかってるから、と言いたげに。

 

「増栄は心配しなくっても大丈夫だズェ……」

「何の話だ」

 

 毎度ながら彼のことはよくわからない。

 

 まあそんなことより、試合の続きである。ヒミコ・カミナリの次は、ヤオヨロズ・ジローの組み合わせだ。

 

 ヤオヨロズは、創造という私に匹敵する汎用性の高い“個性”を持ち、高い思考力を持つ推薦入学者だ。

 ただ、考えすぎるタイプなのだろう。とっさの判断はやや苦手なようで、戦闘中に選択肢を多く叩きつけられると目に見えて動きが鈍くなるところがある。突くならそこからだろう。

 

 対するジローは音を操ることができるが、サポートアイテムなしに攻撃手段にできるほど強大な力ではない。

 ただ、イヤホンジャックは鞭のように振るうことができる。鞭による痛みは独特で、どれほど痛みに慣れていてもなかなかに耐えがたいものだ。それを活かせると、一対一の状況ではかなり優位に立てるのではないだろうか。

 

 あとはルール上、開始の合図が出る前に“個性”で準備をすることは禁じられているため、開始直後のヤオヨロズは普通の人間でしかない。ジローがまず狙うべきはそこだろう。

 

 ……と、思っていた試合であったが、結果はヤオヨロズの勝利。

 

 ただしかなりの接戦であった。ジローの先制攻撃をヤオヨロズは凌ぎきるのに手一杯で、序盤は苦戦を強いられたのである。

 だが、中盤から装備が整い始めたヤオヨロズにジローの攻撃力が不足していき、決定打を打てなくなった。

 ヤオヨロズは、ジローのイヤホンジャックによる攻撃に人間を吹き飛ばすほどの質量がないことを理解すると、常に距離を取る形に立ち回りを変更。舞台の隅ギリギリに陣取って攻撃をかわしつつ創造で武器を創り、反撃に出たのである。そして数回の攻防を経て、ジローを場外に押し出すことに成功した……という流れである。

 

「耳郎のやつ、序盤からもっと積極的に攻めればよかったのに」

「いや、ヤオヨロズはアイキドーを嗜んでいる。下手に近づけばジローこそあっさり負けていただろう」

「マジか」

 

 カミナリの言葉にそう返す私である。

 

 なぜ私がそんなことを知っているかと言えば、バクゴーから宣戦布告を受けた日の訓練で、請われてヤオヨロズと一度手合わせしたからである。資産家の娘なだけあって、彼女は護身術は一通り身に着けていた。

 

「なるほど合気道! 確かに終盤の攻防ではそれらしい動きしてたな……そうか八百万さんの“個性”はものが出来上がるまでにタイムラグがあるからそれまでをしのぐためにそういう技術は必要不可欠ってことで……ブツブツ」

「緑谷ちゃん、相変わらず怖いわ」

 

 本当にミドリヤは相変わらずだな。

 

 ……なお、この次の試合はハツメとイイダの組み合わせだったのだが。

 レクリエーション前の私の予想通り、なかなかにひどいものであった。

 

 イイダを言いくるめて自作のサポートアイテムを持たせたハツメは、ミッドナイトの許可も得て合法的に試合開始。だがそこから始まったのは試合ではなく、ただのプレゼンテーションであった。

 ハツメはひたすら攻撃を避けながら、自作のサポートアイテムについて語り続けたのである。イイダはこれに終始翻弄され続ける羽目になる。

 

 そうして彼女はたっぷり十分ほどをかけて持ち込んだアイテムの説明を終えたところで、自ら舞台を降りて勝ちを献上したのであった。

 

「騙したなあああ!!」

「すみません。あなた利用させてもらいました」

「嫌いだああぁぁ君ーー!!」

 

 いつも以上のオーバーリアクションで叫ぶイイダから目を背け、しかしいい顔で笑うハツメ。両者の姿は実に対照的だった。

 

「きっと飯田くん真面目すぎたから、耳触りのいいこと言って乗せたんだ……あけすけなだけじゃない、目的のためなら手段を選ばない人だ……」

「あっはっは、商魂たくましいなぁ」

「飯田くんなら確かに言いくるめられてそー」

「だが機械の腕は確かなようだな。彼女には一度話を聞いてみたいな……」

「マジか増栄……」

「いや、実は機械いじりが趣味なんだ」

「マジか増栄」

「増栄さんはお父さんもサポートアイテム関係のライセンス持ってるもんね!」

「あー、うむ、そうだな」

 

 そこから少し私の趣味の話になり、なぜかまたしてもみなの目がだんだん優しくなっていったのだが、舞台にキリシマとトコヤミが上がってきたところで話題は一気にそちらに移った。

 

 それと同時に、その次に試合を控えているバクゴーとウララカが少し時間を空けて席を立つ。

 

 ……そう、一回戦第五試合は、バクゴー対ウララカである。戦力差は明らかであり、何より相手が相手だ。ミドリヤやヒミコを中心に、心配そうな目がたくさんウララカを見送っている。

 ただ、ウララカに負けるつもりはまったくない。ならば下手に気を回すことは失礼であろう。バクゴーに対してもだ。

 

 やがて思うところがあるのか、ミドリヤがノートを持って離席したが……さて、ウララカは彼の献策を受け容れるだろうか?

 




漢、峰田実。現時点において、二人の関係性への理解度が突出して高い人間の一人である。
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