銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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13.体育祭 バトルトーナメント二回戦 上

 控室に続く通路を歩く私とヒミコ。

 しかし、その途中のことだ。

 

「……コトちゃん」

「うん?」

 

 並んで歩いているヒミコに声をかけられた。同時に彼女が足をとめたため、私は少しだけ追い越し、前から向かい合う形となる。

 

 するとそこには、どこか決意を固めたような顔のヒミコが立っていた。

 彼女は少しだけ、ためらう様子を見せたが……本当に少しだけ。すぐに私と視線を合わせると、滅多にしない真剣な顔で言葉を続けた。

 

「……私、決めました。体育祭が終わったら……みんなに謝ります……。それで、許してもらえたら……チウチウさせてもらうのです」

 

 彼女の口から出てきたのは、まさに決意の言葉であった。

 

「だから……そのためにも。次の試合……コトちゃんに挑戦するのです。ちゃんと、全力で」

 

 さらに続けられた言葉に、私は思わず感動してしまった。

 

 ああ、そうか。遂に、君は進めたんだな。ただ盲目的に私だけを見ることを、やめることができたのだな。

 

 無意識のうちに、口端が上がった。どうやら私は、笑っているらしい。

 そうだな。私は嬉しいのだろう。彼女が前に進めたことが、何よりも。まるで自分のことのように、嬉しいのだ。

 

 だから私はそのまま、ヒミコに正面から応える。

 

「受けて立つとも。だが、たとえ君が相手だとしても……いや。君が相手だからこそ。私は手加減しないぞ」

「うん。そうだよね。ふふ……うん、そうだよねぇ」

 

 にまり、とヒミコが笑う。いつも通りの、可愛い笑みだ。

 そこから、じわりと暗黒面の気配が漂う。

 

 ……あえて心を隠さず、内心をそのまま出してきたな。仮に負けてもしないぞ、口づけは。先日のあれは、思考が緩んでいる隙を突かれただけなのだからな。

 

「コトちゃんのケチんぼ」

「ケチで結構」

 

 そうしていつぞや交わした言葉を再度交わし、私たちはそれぞれの控え室へと踏み入った。

 

***

 

《さあ待たせたな! こっから二回戦を始めていくぞ!》

 

 マスター・プレゼントマイクの言葉とともに、私たちは舞台に上がって向かい合う。

 

《二回戦第一試合! 同じ中学、同じクラス、そして同じチーム! ここまでずっと協力してきた二人が遂に相対するぜ! 勝つのはどっちだ!?》

 

 ふむ……言われてみれば確かに。こういう向き合い方は、ヒミコとは初めてかもしれないな。

 

《増栄理波! (バーサス)! 渡我被身子! レディィィィ……! スタート!!》

 

 そして試合開始が告げられ、私たちは同時に地面を蹴……らない。円を描くようにじりじりと動きながら、少しずつ接近していく。

 

 私たちはフォースユーザーだ。フォースを扱えるということは至近の未来を予知できるということであり、対峙した相手の思考を限定的ながら読めるということと同義である。

 

 しかし、その精度は本人のフォース量と技量、そして互いのフォースの属性への理解度に大きく左右される。

 結果、フォースユーザー同士の戦いは未来と思考の熾烈な読み合いとなり。いかに相手の予知と読心を出し抜いた行動ができるか……さらに言えば、いかに場のフォースを味方につけられるかが肝要となる。

 

 非フォースユーザーにわかりやすくたとえるなら、フォースによる制空権争いが行われているようなイメージでいてくれればよい。相手や場をフォース的に征することができれば、それだけ恩恵を多く受けられる。ゆえに技量の差は戦いの趨勢に直結する。

 

 そして私たちの場合は――フォース量は完全に同等。しかし技術に関しては、圧倒的に私が上である。ただし、互いのフォースの属性を左右する感情などへの理解度は私が劣る。

 このため、拮抗しているかのように様子をうかがうような出だしとなった。

 

 しかし、技量において私に分があることは事実。ゆえに最初は緩やかに始まりつつも、次第に場のフォースは私に傾き。

 

「はっ!」

 

 機は熟したと見て、私は一気に前へ飛び出した。アタロの要領で軌道を複雑に変えて回避と防御をくぐり抜け、的確な掌底をヒミコの鳩尾に叩き込む。

 同時にフォースプッシュを放ち、彼女を一気に場外へ押し出した。

 

「ぐ……っ!」

《互いに出方を窺う静かな始まりから一転、増栄強襲ーッ! 速ああぁぁい! 説明不要ッ!》

 

 吹き飛んでいくヒミコ。しかし私は油断なく追撃に出る。再び距離を詰め、駄目押しにまたフォースプッシュを放つためだ。そうしなければ即座に復帰される。

 

 だがその私の身体を、フォースプルがさらう。勢いをつけたところに来た引力により、体勢を……普通なら崩すところだが、それは読めている。

 ゆえに引力を利用する形で地面を蹴り、さらなる加速を行う。空中に飛び出し、攻撃を放つが……そのときにはもう、ヒミコの姿は私のものに変わっていた。

 

「私だって……! 負けないのですよコトちゃん!」

 

 そして向けられた彼女の手を見た瞬間、私は次の攻撃を避けられないことを悟った。ゆえに、咄嗟に身体に“個性”を発動させ防御力を上げる。

 

 直後、私の腹部を不可視の爆発が襲った。

 

「カハ……ッ!」

 

 その衝撃に、私は血を吐きながら吹き飛んだ。

 そのまま舞台に向けて落下するが、激突寸前に体勢を立て直し、空中機動で舞台スレスレのところで復帰。なおも残った吹き飛びの勢いをいなしながら、舞台に着地した。

 

 その私を追いかけるようにして、ヒミコが舞台上に戻ってくる。

 

 私と同じ姿の、しかし暗黒面に満ちた佇まい。

 だが光明面も内在している。どうやら思っていた以上の威力が出て、使った本人も焦っているらしい。

 

《なんだ何が起きた!? トガが手を向けた途端に爆発が起きたぞー!?》

《トガのやつが変身してる、っつーことは増栄の“個性”の応用なんだろうが……》

 

 ああそうとも、これは“個性”の応用だ。正確には、スーパーフォースプッシュ同様、フォースと“個性”の合わせ技だろう。

 

 前にも少し触れたが、私の“個性”は触れたものに対して発動できる。しかしフォースを合わせることで、その対象は直接触れていないものにも拡大できる。

 体内臓器である胃腸にまで簡単に効果を発揮できるのはその最たる例だ。私のフォースが触れているものも効果対象になるわけである。

 

 ではここで問題だ。フォースグリップとまでは行かずとも、相手の身体を拘束する目的でフォースを行使している状況で、その接触部周辺の空気を瞬間的に、大量に増幅したらどうなるだろうか。

 

 その答えが、直前の私が受けた攻撃である。空気爆発によって多大なダメージを負うことになったわけだ。これを仮に、フォースブラストと呼称しよう。

 

 空気の瞬間一時増幅自体は、私もよく使う。空中機動を行う際にやっているものがまさにそれであり、それだけならさほど問題ではない。あくまで身体を吹き飛ばす程度であり、殺傷力が出るほどの勢いでやらないからな。

 だがフォースブラストは、ほぼゼロ距離で起こる空気爆発だ。しかも、攻撃の意図を持って発動される。威力が低いはずがない。

 

 何せフォースが関わっている。そこに攻撃の意思がある以上、この攻撃は間違いなくフォースによって威力が上がっているはずだ。

 

 暗黒面の技の代名詞とも言われるフォースライトニングは、実のところライトサイダーも使えないわけではない。だが使っても静電気程度の威力にしかならないのだ。

 ダークサイダーが使うと見た目以上の高威力になるのは、そこに明確な攻撃の意思と害意があればこそ。だからこそフォースライトニングは、暗黒面の技の代名詞のように扱われるのだが……フォースブラストにも、それと同じ理屈が働いているはずだ。

 

 実際、私の腹部は対策を講じたにもかかわらず、かなりの痛みが生じている。体内を少々痛めたようだ。即座にフォースヒーリングと治癒力の増幅で対応する。

 

「えと、コトちゃん、大丈夫……?」

「問題ない。……が、迂闊に使うと人を殺し得るぞ。試合中にこう言うのもなんだが、その技は使わないほうがいい」

 

 これは間違いなく暗黒面の技だ。人に向けて使っていいものではない。

 

「ん……そう、ですね。わかりました」

 

 私の言葉に、ヒミコはほっとした顔でこくりと小さく頷いた。

 

 だが、フォースを通じて伝わってくる。もう彼女に動揺はない。人に向けて使うと殺しかねないなら、人に向けなければいいと考えている。ダークサイダーの面目躍如といったところか。

 

「えーいやっ!」

「まったく君と言うやつは!」

 

 直後、私は大きく跳んだ。

 それに一瞬遅れて、私が立っていた場所が爆ぜる。コンクリートが派手に砕け、白い破砕物が私を襲った。

 

 それらをテレキネシスとフォースプッシュでヒミコへ飛ばすと共に、空中に舞い上がって動き回り、彼女の背後から襲いかかる。

 

「あはははは!」

 

 対してヒミコは機嫌よく笑いながら、フォースブラストを連続発動して私を攻撃する。私自身を対象に取っていないが、やはり攻撃の意図が乗ったフォースの技だ。ただ空気が爆ぜるだけでもかなりの衝撃が伝わってくる。

 特に頭の近くで起こるものは要注意だ。そのまま脳震盪を起こしかねない。

 

 また、時折私自身を対象にしてくるので、ないとは思うがかけられたフォースの見えざる手を外すよう対処に迫られる。選択肢をより多く、そして同時に与えることは対人戦の基本だが、フォースブラストでそれをやられるとまるでミサイルに追いかけられているような気分だ。

 

《トガ、爆発しまくるー! だが増栄に当たらない! 騎馬戦でも見せた異次元の立体機動でかわすかわすゥ! 当たらなければどうということはないってかぁ!? まるでサーカスだな!!》

 

 もちろん私もただ飛び回っているわけではない。変則極まる機動でもってヒミコに近づき、そのまま接近戦に持ち込んだ。

 

「あーもー速い!」

「小回りの良さは私の取り柄だからな!」

「普段なら近づいてきてくれたら喜ぶんですけどねぇ!」

 

 とはいえ、いまだ私に変身しているヒミコは、触れているところをフォースブラストできることには変わりがない。ゆえに、さながらバクゴーを相手取っているかのように慎重に、しかし迷うことなく格闘戦へ移行する。

 

 ……だが、ここで一つ誤算があった。カミナリ戦でヒミコがフォースバリアを使ったと知ったときから抱いていた懸念が、現実のものとなったのだ。

 

 つまり、今のヒミコはまた“個性”が成長し、変身の幅が広がっているのだろう。彼女が戦闘訓練を始めてからまだ一年も経っていないのに、まるで本当に私自身と戦っているような挙動をするのだ。

 おかげで戦いは一進一退となり、互いの攻撃はほとんど当たらない。実況と観客は湧き立っているが、私はそれどころではないぞ。これはもう、対象の技量まで含めて変身できるようになっていると考えていいだろう。

 

「く……っ、か、身体がっ、追いつかない……っ、よぉ……っ!」

「まだまだ追いつかれるわけにはいかないからな……そら足下がお留守だぞ!」

「わあっ!?」

 

 だが、まだ完全に変身相手と同じになれるわけではないのだろう。具体的には、思考の形や咄嗟の判断力などがヒミコのままだ。おかげで生じるはずのないスキが生じるし、それを突くこともできる。

 

 まあ、体勢を崩して倒しても、フォースと増幅によって即座に復帰してくるのだが。それでも、無視できないほどのダメージがヒミコに蓄積しつつあることは間違いない。

 心得のないものには今もなお互角の殴り合いをしているように見えるかもしれないが、ヒミコの顔には明らかに余裕がないのである。変身も一部が綻んできているので、イレイザーヘッドなどは既にヒミコが詰み寸前であるとわかっているだろう。

 

「ま……だ! まだだよコトちゃん!」

 

 それでも立ち向かってくるのは、彼女なりに覚悟を固めたからなのだろう。ウララカの姿を見て、自分もと考えた結果だ。

 

 そんなヒミコと正面から戦えていることが、私は、きっと……――。

 

「はっ!」

 

 そして私は、何度目かとなる攻撃をヒミコの眼前に手を伸ばした。顎を狙った拳撃である。

 それは当たり前のように回避されるが……私の狙いはそれではない。

 

「甘い!」

「きゃっ!?」

 

 私は突き出した拳により、光を瞬間的に大量に増幅させる。擬似的な閃光弾だ。

 眼前で放たれた光にヒミコは対応しきれず、目をやられてしまう。そしてこの動揺により、フォース制御が決定的に揺らいだ。

 

 その瞬間を、私は見逃さない。伊達にアナキンに何年も師事していない。

 

「はあぁぁっ!!」

「きゃああぁぁっ!?」

 

 フォースで強化した“個性”で増幅したフォースで放つ、スーパーフォースプッシュ。これをヒミコの身体に打ち込み、高速で舞台から射出した。

 対応する暇もないほどの速さで吹き飛ばされた彼女は、そのまま選手入場口まで接地することなく飛んでいき、激しく地面を転がって通用路の中に消えていく。

 

「トガさん、場外! よって三回戦進出は増栄さん!」

 

 と同時に、ミッドナイトが手を掲げて勝敗を告げた。これを受けて、ようやく私は全身の緊張を解いた。

 

《決まったぁぁーー! 強い! 強すぎるぞこの幼女! この子をとめられるやつはいないのかぁぁーー!?》

 

 そして私はプレゼントマイクの実況をよそに、舞台上に転がっていたヒミコの服一式(靴を含む)を取って大急ぎでヒミコの下へ走る。

 

 ヒミコの変身は、服まで含めた変身だ。ゆえに服を着ている状態で変身すると、服を二重に着た状態になってしまう。私はヒミコより大幅に小さいので、自前の服が変身後の姿に合わなくて破れるということはないが……丈が余りまくることにはなる。

 なのでこの戦い、実はヒミコはかなり早い段階で自前の服を脱いで戦っていた。そうしなければ私と万全に戦えないのだから、仕方がない。

 

 だが、ならばその状態で変身を解除したらどうなる?

 

 答えは簡単だ。全裸になる。

 

「ヒミコ、早く着るんだ。このままフェードアウトするとあらぬ心配をさせることになる」

「はぁーい」

 

 ヒミコの裸はとっくに見慣れているが、公衆の面前にさらすなど絶対に許されない。だからこそ、私はヒミコとの位置関係が整うまで格闘戦を続けなければならなかったのだ。人目につかないところへ吹き飛ばせるようにな。

 

 ということで、なんとか服を着直したヒミコと連れ立って、私は一度舞台に戻った。そうして改めてプレゼントマイクや観客からの歓声を受け取ったあとに、ようやく退場したのであった。

 




ということで、真面目に戦った二人でした。
ボクとしても、訓練されたフォースユーザー同士のセーバー戦は書きたいのですが、たぶん本作では書けないだろうなぁ・・・。

ちなみにフォースブラストはもちろん本作オリジナルのフォース技なのですが、「フォースの影響で離れた相手に触れずとも効果を発揮できる増幅」という設定を思いついて最初に浮かんだ「やべーコンボ」がこれです。
他にも「脳の温度を増幅」とか「性欲を増幅」とか「感度を増幅」とかいろいろやべーコンボが思いついている(しかもいずれもやろうと思えばやれる)のですが、何もかも暗黒面の技なので理波がそういう使い方をすることは今後もないでしょう。
でもトガちゃんは使うかもしれませんね。ダークサイダーなのでね!
いや、何がとは言いませんけどね。
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