銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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6.フォースの申し子

 さて修行は始まったわけだが、それはそれとして、今の私には大事なものが欠けている。

 それはすなわち、

 

『簡単にではあるが、この星を調べてみた結果……どうもこの星にカイバークリスタルはないようだな』

「……ということは、ライトセーバーを造れないということか?」

『そうなるなぁ』

 

 やたら呑気に返すアナキンに、私は絶句する。するしかなかった。

 

 そう、カイバークリスタルだ。今の私にはこれが足りない。

 

 カイバークリスタルとは何か? それはジェダイの象徴にして、最も心を預ける武器、ライトセーバーの根幹をなす物質である。

 ライトセーバーをフォースと共鳴するものたらしめる中枢であり、セーバーの刃を構成するエネルギー体を収束させるためになくてはならないもの。これが手に入らないとなれば、ライトセーバーは造れない。

 

 ……いや、だが言われてみればそれも仕方ないのだろう。なにせカイバークリスタルは、あの広い銀河共和国においても希少な物質だった。それが生まれ変わった先の星で都合よく手に入るなど、それこそ天文学的な確率だろう。

 

「……ないなら仕方ない。ならば、色はこの際我慢して、アデガンクリスタルで代用するしか……」

『そのアデガンクリスタルを造る機材なんて、今の君に用意できるのかい?』

「…………」

 

 そりゃそうだ。私は項垂れるしかなかった。

 ……というか、仮に設備が整っていたとしても、アデガンクリスタルを造るには非常に根気と時間が必要になる。確か、どんなに早くても半年はかかったはずだ。それも、作業に専念して。それではいまだ幼児の身である私には荷が重い。

 

 しかもそれだけ苦労を費やして造ることができたとしても、アデガンクリスタルではセーバーの刃は基本的に赤になりやすい。

 別にそれで性能に大差があるわけではないが、赤いセーバーはどうしてもシスのものだという感覚があって、他に選択肢があるならできるだけ使いたくないのが本音だった。ジェダイなら、やはり青か緑だろうと。

 

『……まあ、そう落ち込むなよ。セーバーがなくともできることはあるさ。ひとまず、当面は木剣で代用すればいい』

「……それは、まあ」

『それに……』

 

 落ち込んだままの私から流れるように視線を外したアナキンが、空を仰ぐ。

 私はとてもそちらに目を向ける余裕はなかったのだが……、

 

『クリスタルなら、今ちょうど()()()()()ところだからな』

「は!?」

 

 あまりにも唐突な発言に、私は食い気味に顔を上げた。

 相変わらず空を見ているアナキン。彼に従うように、そちらに目を向ければ……。

 

「……隕石?」

 

 赤々と燃え盛る物体が激しい音を奏でながら、破滅的な光の尾を引いて空を切っていた。

 

『そうだな』

「……アナキン? こちらに落ちてきているように見えるんだが……」

『そりゃそうだろうな。何せあれを引き寄せたのはこの僕だ』

「……は?」

 

 今、この男は何と言ったのだ?

 隕石を? 宇宙から引き寄せた、だと? ここまで? ピンポイントで?

 どうやって? いや、フォース以外の何物でもないだろうが、それにしたってこれは……。

 

『カイバークリスタルがないなら、あるところから持って来ればいいだけのことだろう?』

「そんな簡単にできることじゃないだろう!?」

 

 どうやら我が友は、フォースと一体となったことで文字通り人ではなくなってしまったらしい。何をどうしたらそれほどのフォースを操れるんだ……。

 

 ……いや待て、それも問題ではあるが、それよりもだ。

 今、今まさにここに、結構な大きさの隕石が落ちてきているんだが!?

 

「アナキン、どうするつもりだ!? このままだと周辺に被害が……」

『心配するな。僕が誰か、忘れたのか?』

 

 にわかに慌てた私に対して、アナキンは実に彼らしいいたずらっ子な笑みを見せながら空に右手を広げて掲げた。

 

 すると。

 

 ――ぐん、と。隕石の速度が目に見えて落ちた。まるで見えない何かに行く手を遮られたかのように。

 いや、まるでではない。そのものずばり、あれは遮られたのだ。フォースが生み出す斥力によって。

 

 これぞ、フォースの基本技の一つ。フォースによって斥力を生み出すフォースプッシュだ。フォースの引力によって対象を引き寄せるフォースプルとは表裏一体の関係にある。

 

「……ッ!?」

 

 だがそんな基本技を見て、私は目を剥いて驚くしかなかった。

 なぜなら、基本技でありながら、そこにあったのは奥義の極致とも言うべき技量だったのだから。基本にして奥義……そのまさに格好の手本を見せられた気分だった。

 

 そして、そうこうしている間にも隕石の速度はどんどん落ちて行き……私たちの下まで辿り着くころには、隕石は完全に勢いを失い、アナキンのフォースに制御されていた。

 

 そのまま、私たちの隣に緩やかに下ろされる隕石。かすかな音すらもなく着地したそれに、私はやはり驚きがとまらない。

 

 何せこの隕石、結構なサイズだったのだ。具体的に言えば、直径が今の私の実に十倍近く! この星の度量衡で言えば、八メートルはあるだろう。

 スピードだって、かなりのものがあったはずだ。少なくとも、何もなくここにこれが墜落していたら、この裏山だけでなくマスエ家の敷地がほぼ全部吹っ飛ぶくらいの速度はあったように見えたのだが……。

 

『ま、ざっとこんなところかな』

「……ッ、……!!」

 

 そんなものの大気圏突入を、「こんなところかな」で済ませる……! なんという……なんという圧倒的なフォース量と制御力!

 しかも見ている限り、そこまで全力で集中していたようには見えなかった。アナキンは、本当に文字通りの片手間で、これほど大きな隕石を押しとどめてしまったのだ。

 

 ああ、どうやらこの友人は死してなお、フォースの申し子らしい。こんな鮮やかで、繊細で、しかし強大なフォースを、私は他に知らない……!

 

「……すごい……さすが、と、言えばいいのか……」

『だろ? ま、久しぶりだったし、何より弟子の前だ。無様な真似はできないと思ったから、ちょっとがんばったのさ』

 

 ふふんと自慢げに笑って見せるアナキン。

 こういう自尊心の高いところも相変わらずか。それでも若かりし頃に比べれば、だいぶ言い方も穏やかになったなとは思うが。

 

『……とまあ、そういうわけで。見ての通り、ちょっと近場にある小惑星帯から、カイバークリスタルを含有する小惑星を引っ張ってきた。再びジェダイを復興させたいという君への、ささやかなプレゼントさ』

「『そういうわけで』とか『ちょっと』で確保できるものではないと思うし、そもそもまったく『ささやか』ではなかったと思うが……」

 

 地球の近場にある小惑星帯と言うと、火星と木星の間にあるアレだろうか。どんなフォースの射程範囲をしているんだ……。

 

 いや、よしんばそこまで射程範囲だとして、絶えず自転・公転をしている惑星の狙った地点、狙った時間に持ってくるのが、どれほどとんでもない所業か……。

 一生をフォースとの対話に費やしても、私にはこの高みに辿り着ける自信が持てないよ。

 

『僕はこれから、この中からカイバークリスタルを取り出す。で、その後はクリスタルを街の各所に隠そうかと思ってる』

「あー……もしや、ギャザリングを?」

『そのつもりだよ。僕としてはあまり重要視してない儀式ではあるが……君はそうじゃないだろう?』

 

 彼の言葉に、私は無言で頷いた。

 

 ……ギャザリングとは、かつてジェダイで行われていた通過儀礼の一つだ。

 ジェダイは己が使うライトセーバーを自ら制作するが、そのために使うカイバークリスタルを見つける試練を乗り越えなければならない。そして本来であれば、この儀礼を済ませてからでなければ、パダワンとしてマスターに師事することはできない。

 

 パダワンであっても、一般人からしてみればもはやジェダイ。そのため象徴として、あるいは上を目指すために必要なセーバーテクニックを磨くため、ライトセーバーは必須だった。

 だからこそ、まずはギャザリングなのである。今回の私で言えば、あまりにも状況が特異なため仕方ないが。

 

 とはいえ、私自身が試練と言及したように、ギャザリングはただの宝探しではない。

 ギャザリングを受けるものは、迷路のあちこちにあるクリスタルの中から、自らのフォースと合致する、自らのためのクリスタルを見つけなければならないのだ。しかもそのためには、仲間と力を合わせフォースがなければ開くことのできないところを進みつつ、しかし最後は己一人の力でクリスタルに至る必要がある。

 

 ジェダイ・イニシエイトとして身に付けてきたすべてのものを用いて、踏破しなければならない試練なのだ。ギャザリングとは。

 これを抜きにジェダイへの道を語るわけにはいかない。少なくとも私はそう思っている。

 

「……しかし、この星で()()ギャザリングは……」

『ああ、惑星イラムにあったような環境を整えることは不可能だ。だから純粋に、複数ある候補の中から迷うことなく正解を引き当てる、フォースとの感応力を問う形になるだろうな』

 

 とはいえ、とアナキンが言葉を続ける。

 

『実際できるようになるまでは少し時間が必要だろう。そもそも一般的な感性をした親は、未就学児を一人で家から出したりしないしな』

「……それはそうだ」

 

 確かに、今の私はいまだヨーチエン生。ただでさえ治安のよくないこの星だから、その辺りの危機感はコルサントより上だろう。

 それに、私の“個性”のことも考えると、万が一ということもあるしな……。

 

『僕のほうでも準備すべきことがいくつかある。だから、そうだな……君が小学校に入って、しばらくするまでお預けだ。それまでは気にせず、基礎を固めることに専念するといい』

「わかったよ、アナキン」

『では、今日はひとまずシャイ=チョーのおさらいから始めようか。ここからは修行の時間だ』

「はい、マスター」

 

 こうして私は、私用に用意された木剣を手にしてアナキン……もとい、マスターと向き合うのだった。

 

 ……ちなみにシャイ=チョーとは、ライトセーバーの代表的な七つのフォームのうち、最も古く初歩的な第一のフォームのことだ。

 基礎が詰まった最もシンプルなフォームだが、それはつまり無駄がないということでもある。ゆえに、完全に熟達すれば、それだけで達人となれるポテンシャルも持つフォームと言える。

 マスタークラスにも愛用しているものが多かった。基本をやり直すための第一歩として、これ以上のものはあるまい。

 

 まずは前世の私を超えることを目標に、鍛錬を重ねて行こう!

 




今回はっきりと独自設定読字解釈だと断言できるものが出てきましたので、この機会に説明をさせていただきたいのですが。

本作の世界は、レジェンズ要素を持ったカノンのような世界、と設定しております。
カイバークリスタルとアデガンクリスタルが同時に存在していることになってる辺りは、顕著なところですね。カノンではセーバーの基幹物質はカイバークリスタルのみなので。
この他ライトセーバーの型も、レジェンズのほうに準拠しています。
原作の映画を見ていても、アデガンクリスタルとかそういうのは出てこないのであしからず。

で、ここからはコアな話になります。
スターウォーズの設定までご存知ない方に解説しますと、カノンとは権利元であるディズニーが公式であると認めている作品の総称であり、一般的に正史と翻訳されます。レジェンズはその逆です。
語弊を恐れずに言うなら、とりあえずカノンが公式、レジェンズが非公式と思っておけば大体はOKです。

ですがややこしいことに。
このレジェンズ。実は過去には公式扱いを受けていたのです。
というのも、ディズニーが権利を獲得する以前のスターウォーズは様々な媒体で活発に関連作品が展開されており、それらはみな本家本元とも言えるルーカスフィルムの公認だったのです。
その展開は壮大で、映画本編のン万年以上前から百年以上先まで網羅されている、とんでもねえ作品群として支持されていたわけです。

ディズニーはそれらの大半をレジェンズに分類し、整理したのですが・・・中にはカノンに採用された設定も一部存在するのが話をさらにややこしくしてまして。
おまけに、整理されたあとに製作されたカノン・・・いわゆるシークウェルトリロジー(エピソード7~9)やクローンウォーズなどで追加された設定を受け入れられないという人も一定数いたりして。
結果として、設定が整理された今もなお、レジェンズの設定は古参を中心に市民権を得ている状態になっているんですよね。

で。
スターウォーズ要素を持った二次創作をするに当たって、自分はどうしようかと考えたかといいますと。
ボクは使えるものは全部使ってしまおうという結論に達しました。
だってレジェンズの設定、おいしいもの多いんだもの! 伊達に歴史は積み重ねてないってわけですよ!
カノン側の設定に納得いっていない部分があるのはボクもですし、それならいっそおいしいところだけ使わせていただこうという・・・ってわけです。

ハーメルンにもスターウォーズが原作の作品は結構ありますが、それぞれカノン設定とレジェンズ設定をうまいこと織り交ぜて料理しているので、どれも面白いですよ。
そして作品ごとにカノン/レジェンズの使い分け範囲が異なるので、そういう差異を楽しむのも面白いんじゃないかなー、なんてボク個人としては思うわけであります。
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