銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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12.保須のその後と学校からのお知らせ

 その後の話をしよう。と、言ってもここからは又聞きなのだが。

 というのも、雄英にいるはずの私が離れた東京に出現した理由に関わる。

 

 このとき私は、もちろん雄英にいた。そこでヒミコの危機を察した私はルミリオンから”個性”の使用と戦闘許可を得て、全能力増幅と共に自らの精神体を遠方に映す技、フォースプロジェクションを行ったのだ。つまり、あれは幻影である。

 

 だがただの幻影ではない。ご覧いただいた通り周囲の物質に干渉が可能な幻影であり、そこにいながら存在せず、存在しながらそこにいないというものであった。その間本来の私は、ここでフォースプロジェクションに集中していた、というわけである。

 

 とはいえ、この技は極めて消耗の激しい技だ。おまけに、非常に難度の高い技である。前日、前々日と、偶然とはいえヒミコと繋がり互いにプロジェクションを交わしていなければできなかったことは間違いなく、そもそも発想として思いつきもしなかっただろう。

 

 どれくらい難しいかというと、私ごときの腕では全能力増幅中でなければ一秒とて使えない代物である。その最中であったとしても、私との繋がりが強い……私と同質の存在であるヒミコの周辺以外には投影できないだろう。

 

 ともあれそういうわけで、これは心身ともに非常に消耗する技である。ゆえに、ヒミコの安否を確認する時間をほとんど取れなかった。本当ならすぐにでも彼女に駆け寄って抱きしめたかったのだが。やるべきことを優先していたらそうならざるを得なかった。

 

 後悔は一切ないが、不安ではあった。ただ、それを気にしていられるほどの余裕がなかったのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。

 

 何があったかというと、急いで切り上げたにもかかわらず、私は凄まじい消耗でそこからほぼ丸二日間寝込んだのだ。おかげで死ぬかと思ったが、あれこれと考え込んで落ち込む暇もなかったわけだ。

 全能力増幅を日に二回しても一日寝込んだだけで済んだのに、これだ。フォースプロジェクションがいかにとんでもない技かは、お分かりいただけるだろう。

 

 というかアナキンいわく、彼の息子がこれのやりすぎで死亡したというのだから、意識は朦朧としていたものの、二日間寝込むだけで済んだ私は間違いなく軽症だ。

 まあ、寿命は確実に縮んだだろうが……ヒミコを助けられたのだから悔いはない。

 

 ともあれそういうわけで、私は寝込んだ。なのでそこから何があったのかは、人づてに聞いた話しか知らないわけだ。長い前置きになって恐縮である。

 

 で、その聞いた話だが。

 

 あの場に居合わせた人間はいずれも命に別状はなく、犠牲者もいなかった。何よりである。

 イイダはステインにより腕を負傷。ヒミコもあの少女からそれなりの重傷を受けていたが、最終日には職場体験にも復帰していた。

 

 ただ、最後に脳無が乱入してもう()()騒動あったらしい。対ステインのために保須まで出張してきたエンデヴァーと、それに帯同していたトドロキ。さらに被害者の搬送から戻ってきたイイダの三人がこれを取り押さえたのことだが……。

 直後、ステインが気絶から覚醒。拘束を逃れた彼は、そのまま脳無の捕縛に”個性”を用いて一役買ったのだ。

 

 それだけならまだよかったのだが……彼はそこからエンデヴァー相手に、おどろおどろしく喧嘩を売ったのである。

 ステインはすぐにまた気絶したのだが……問題はその喧嘩の売り方である。彼はエンデヴァーを相手に、こう言った。

 

「偽者が蔓延るこの社会も、いたずらに力を振りまく犯罪者も、すべて粛正対象」

「すべては正しき社会のために」

「誰かが血に染まらねば、英雄を取り戻さねば!」

「調子に乗るなよ贋作。俺を殺していいのは、捕まえていいのは、本物(オールマイト)だけだ!」

 

 事前の戦闘で受けたダメージが大きくろくに動けないはずなのに、彼がそう言っている間、居合わせたものたちは誰も動けなかったという。そこに宿るある種の正当性と、何より巨大な狂気がすべてのものを威圧していた。

 

 それで終わったなら、よかったのだろうが。このやり取りを野次馬が撮影していた。そして、ネットワークに流してしまったのだ。

 

 これがいけない。ステインの主張は、一種の劇薬だ。多少の正しさを内包するからこそ、認知されれば伝播してしまう。その姿もまた、人によっては魅力的に見えたに違いない。

 かくして、この動画は爆発的に拡散された。警察は躍起になって削除しているが、いたちごっこになっている。

 

 結果、私が動けるようになった頃には、世論の動きはどうにもならないところまで行き着いてしまっていた。あまりにもスムーズ、かつ劇的な燃え上がり方はいっそ清々しいほどに不自然で、恐らくこの流れを主導した何者かがいるはずだ。

 そしてそれは、あのときステインに同道していた少女……正確には彼女が所属する、ヴィラン連合を抜きには語れないだろう。

 

 このヴィラン連合。ステインと繋がりがあり、実際に一緒に行動していたこともあって、これまた評価ががらりと変わっていた。

 具体的には、社会への不満から雄英を襲撃して返り討ちにあった木っ端な犯罪者集団から、特定の方角を向いた思想集団であると。そしてそんな思想集団に、場所を求める犯罪者が集まっていくのは時間の問題だ。

 

 恐らくだが、世論を誘導した存在はヴィラン連合の評価の変遷も織り込んで行動している。それどころか、ステインが逮捕され、その間際に己の思想を打ち立てるところまで考えている可能性が高い。二つの動きはそれだけ密接で、連動している。

 そんな策を練り、行動に移し、成功させる。一体どれほどの神算鬼謀があれば可能となるのか、私には想像もつかない。下手したら、シスにも匹敵するのではないだろうか。

 

 ただ、そのブレーンは決してUSJに現れたトムラとかいう青年ではないだろうし、ましてやあのやたら怒りっぽく口の悪い少女でもないだろう。

 あの二人は、どう見ても子供だった。見た目が、という意味ではない。精神が、という意味でだ。そこまで群衆の心理を読んで策を考えることはできないだろう。

 

 とはいえ、そんな二人も脅威であることには変わりない。片や触れるだけでものを塵にまで風化させる”個性”、片やフォースウェポンまで持ったフォースユーザー。一筋縄では行かないはずだ。

 そしてそんな二人は、万全ではないだろうがいまだ健在だ。二人の背後に控える存在など、ほとんど何もわかっていないと言ってもいい。そんな連中を捕まえるには、やらなければならないことが……超えなければならない壁がたくさんある。

 

 事件の顛末を聞いた私は、そう思ったのだった。

 

 ……ちなみに。

 

「やりすぎ」

「面目次第もありません」

 

 職場体験最終日になんとか復帰した私は、イレイザーヘッドに絞られた。まあ、ルミリオンから諸々許可を得た上で実行したことなので、短時間ではあったのだが。

 そのまま流れるように事情聴取となり、結果として私はフォースについてのかなりの部分を彼と共有するに至った。詳細は伏せたが、ヒミコが私の影響でフォースユーザーになったこともである。

 

 当たり前だが、イレイザーヘッドは頭を抱えた。世間にうっかり情報が出回るととんでもないことになるのは間違いないので、彼の反応は正しい。

 だが知ってしまった以上は、もう戻れまい。彼には一蓮托生となってもらおうと思う。

 

 ちなみに私が遠隔地に「出現」したことについては、私が寝込んでいる間に闇に葬られ、箝口令が敷かれていた。恐らく公安が動いたのだろう。なので、イレイザーヘッドの懸念はひとまずは大丈夫……のはずである。

 

 ああそうそう。動けるようになったそのタイミングで、アナキンから

 

『やあ。前世込みで、生まれて初めて激怒した感想はどうだい?』

 

 と言われて私は思わずきょとんとした。

 そんなつもりはまったくなかったので、私は最後まで冷静であったと抗弁したのだが……普段の私なら絶対にしないであろう行動の数々を列挙されれば、それ以上は何も言えず。

 

『つまるところ、アレだな。君は冷静に落ち着いたままブチ切れてたわけだ』

「…………」

 

 私は「顔から火が出る」という、この国の慣用句の意味を魂で理解した。あれやこれやとからかってくるアナキンとは目を合わせることができず、私は顔を両手で覆うのが精いっぱいであった。

 

 それも当然だ。なぜって、どう考えても、私が激怒した理由はヒミコを害されたことしか思い当たらないのだから。

 違う、などとは言えない。言えるはずがない。

 

 わかっている……いや、違うな。わかってしまったのだ。もはや私にとって、ヒミコは家族に匹敵する大切な人なのだと。

 

『いや、僕はわりと褒めてるんだけどな。冷静さを保ったまま激怒するなんて、シスの奥義みたいなものだぞ。君は案外、シスの素養もあったんだな』

「それだけは嫌だ……」

 

 ヒミコのことは構わないが、シスだけは本当に嫌だ。何が悲しくてシスの才能を認められなければならないのだ。

 

 ゆえに私は、なお一層の精進を誓ったのであるが。

 

「コトちゃん! 助けに来てくれたのはとっても嬉しいですけど、ボロボロのコトちゃんもとってもスキですけど、でも身を削るようなのはもう絶対ダメだからね! 本当……本当に心配したのです……無事で、無事でよかったよぉ……!」

 

 職場体験を終えて戻ってきたヒミコには、怒られて泣かれた。これには心底参った。彼女を泣かせたかったわけではないのだ。

 

 ただ、他に方法がなかったとはいえ、彼女の言うことはまったくの正論だ。なのでその夜は彼女の好きなように、思うように扱われることを、甘んじて受け入れたのであった。

 

 ああ、まだまだ、何もかもが足らない。

 

***

 

 ただまあ、色々ありはしたが。

 

 結局のところ、今の私は資格も何も持たない小娘に過ぎない。推測はできてもそれを基に何か実行する権限も伝手もなく、できたことと言えばせいぜいS-14Oに情報収集を指示したくらいだ。

 あとは学生の本分に打ち込むのみである。結局のところ、何事にも近道はないのだから。

 

 というわけで、職場体験も終わって数日が経ったある日のこと。授業終わりのホームルームに現れたのは、いつものイレイザーヘッドではなくオールマイトであった。

 

「相澤くんは急遽お仕事で警察に行ってしまってね! 今日のホームルームは……私がやる!」

 

 普段は授業でしか現れない彼の登場に、クラスはもちろん沸いた。

 イレイザーヘッドなら、それを即座に黙らせるものだが……そこはオールマイト。本題に入ったのは、軽く生徒との会話に付き合ってからであった。

 

 さて、その本題であるが、

 

『授業参観ー!?』

 

 とのことであった。なんでも再来週の月曜日だという。なるほど、先日イレイザーヘッドが憂慮していたのはこれのことか。

 

「ヒーロー科でもそういうのあんだな」

 

 と言ったのは、キリシマだ。私も同感である。クラスもそのようだ。

 

 そこにオールマイトはプリントを配っていく。

 

「これは保護者の方への案内だ。みんな必ず渡すようにな。恥ずかしいからって渡さないのはダメだぞ?」

 

 生徒たちの同意の声が上がる。

 

「さて、じゃあその授業参観で何をするかだが……保護者の方への感謝の手紙だ! みんな、しっかりと書いてくるように!」

 

 だが続いた説明には、誰も同意の声を上げなかった。

 

「まっさかー! 小学生じゃあるまいし!」

 

 代表するようにカミナリが笑ったが、オールマイトはこれを笑い飛ばす。

 彼はちっちっち、と人差し指を振りながら生徒一同をゆるりと見渡した。

 

「HAHAHA! もっちろん……ジョークじゃあないんだなこれが!」

 

 そして一拍タメを作ってから、笑顔のままで言い放つ。

 イレイザーヘッドなら真顔で断言して教室を凍らせるのだろうが。この対応の差よ。

 

 しかし笑いながらとはいえ、オールマイトの言葉にウソはない。間違いなく彼は本心のみで話しており、それはクラスのみなも少しずつ理解したらしい。

 

「そして授業では、いつもお世話になっている保護者の方への感謝の手紙を朗読してもらう!」

 

 加えてそうきっぱり言われてしまえば、もはや誰も冗談とは思っていなかった。

 

 どよめく教室内。ただ、多くの生徒は思春期特有の恥ずかしさを覚えているようだったが、ヒミコだけは渋い顔だ。体育祭の翌日に口喧嘩をして以来、ろくに両親と会話がないらしいから無理もないが……。

 

「みんないいかい? ヒーローは誰かを救ける仕事だから、感謝されることが多い。けれどね、そうやっていると不思議と感謝する機会が減っていくんだよ。思う機会が、ってことじゃあないぞ? 口にして感謝を伝える機会が、って意味さ。

 けれど、人は持ちつ持たれつ。どんな人であっても、必ず誰かに助けられて生きているんだ。ヒーローだって助け合いだ。この私でもコスチュームを作ってくれているデイブをはじめ、警察のみんなに、他のヒーローたちに助けられている。教師としては新米もいいところだから、相澤くんや校長先生を中心に助けてもらっている。

 でも人間って、察することはできても完全に心を読めるわけじゃあない。そんな人たちに抱いた感謝の気持ちは、口に出さないと正確には伝わらないんだ。口に出したって、正確に伝わらないことだってある。

 それはまずい! そういうコミュニケーション能力は、ヒーローとしてやっていく上では地味に重要だ! だから今のうちに……身近で、かつお世話になっていることはまず間違いない保護者の方を相手に、その練習をしておこうってわけだよ!」

「なるほど……確かにチームアップをする上でも、救助者から状況を聞き取る上でも、コミュニケーション能力は必須……! そのための練習を、段階を踏んでさせていただけるということですね! 納得しました!」

 

 オールマイトの長めの演説に、イイダが目からうろこと言わんばかりに頷いている。相手は違うが、いつもの光景だ。

 

 そして彼が納得してしまうと、なんとなくクラス全体が話を受け入れる流れになるのも、もはやいつものことと言えるだろう。

 

「あ、でもその前に、施設の案内に合わせて軽い演習もやってもらうから、そっちも気を抜かないようにね!」

「むしろそっちが本命じゃないスか!?」

 

 最後におまけのようにして付け足された言葉に、カミナリが再び代表するように叫んだのであった。

 

***

 

「どうしよう……」

 

 下校時刻。ヒミコは頭を抱えていた。色々と励ましたのだが、まだ踏ん切りがつかないらしい。

 

 そこに、荷物を持ったハガクレが「一緒に帰ろー」とやってきた。

 

「トガちゃんどーしたの?」

「先ほどの手紙の件で、ちょっとな……」

「……トガは現在、お父さんたちと絶賛ケンカ中なのです……」

「あー、そりゃ気まずいねぇ」

 

 机に突っ伏していたヒミコが、のそりと顔を横にして答えた。

 

 その答えに、ハガクレは納得して苦笑する。

 

「でもさ、書き方としては仲直り系の内容でいけるんじゃなーい?」

「仲直りできる気がしないのですよ……」

「わあ、ひょっとしなくても深刻? これ以上聞かないほうがいい感じ?」

「そうでもないですけど……んー……価値観の違いがおっきくって……」

 

 なんともぼかしたものだ。当然、それだけで理解できるはずもなく、ハガクレは首を傾げている。

 

「簡単に言えば……笑うなって言われたのです」

 

 ここからどうするのかと思っていたら、ヒミコはのそりと身体を起こ……さず、両腕を枕のようにして、そこに顎を乗せた。

 どうやら話すつもりらしい。まだ言葉足らずなので、ハガクレはなおも首を傾げているが。

 

「私の笑い方が異常だって、言われたのですよ」

「はー? そんなわけないじゃん! トガちゃんこんなにかわいいのに!」

 

 だが語られた内容に、彼女は両手を振って憤慨した。

 

「……ずっとそう言われてきたのです。だから今まで我慢してました。でも、体育祭のあと……電話でめちゃくちゃに言われて、我慢できなくなっちゃって」

「それは我慢しなくていいやつだよ! 親だからって関係ないよ! 言っていいことと悪いことがあるんだよ!」

 

 ハガクレはなおもぷんすかと動いていた……が、ふと思い出したように手を叩いた。

 

「……そっか。だから体育祭始まる前、笑う練習なんてしてたんだ。全国放送だもんね」

「うん。……でも、お茶子ちゃんと透ちゃんが、『かわいい』って言ってくれたので。私、あれで自信がついたのです」

 

 そんなハガクレに、ヒミコはにまりと笑った。いつもの笑みだ。

 

「だから、二人にならたくさん感謝のお手紙書けるんですけどー」

「よせやい、照れるぜぃっ」

 

 うへへ、と笑いながらハガクレが手を振る。ついでに身体をくねらせている。

 

 なお、ヒミコが名を挙げたもう一人であるところのウララカは、スーパーのタイムセールを征するためホームルームが終わると同時にごめんと断り教室を飛び出していった。今日は何としてでも手に入れたい食材があるらしい。

 

「……でもさ、そういうことならやっぱりちゃんと仲直りしたほうがいいよ。もしかしたらできないかもだけど……一回も試さないでそれっきり、ってのはちょっと気が早いんじゃないかなぁ」

 

 ハガクレが、今までとは一転して真面目なトーンで言葉を口にした。

 その内容に、ヒミコも小さく頷く。体勢が体勢なので、頷くとは言えないかもしれないが。

 

「……透ちゃんもそう思います?」

「一応? まあ、でも。トガちゃんがイヤなら、無理しなくっていいとも思うよ。相澤先生にごめんなさいはしないといけないかもだけど……」

「コトちゃんとおんなじこと言ってるのですー」

 

 ハガクレの言葉を受けて、ヒミコはぷくりと頬を膨らませた。かわいい。

 

「きっとお茶子ちゃんもおんなじこと言うんだろうなー。だよねぇ、みんなヒーローだもんねぇ。お節介はヒーローの本質ですもんねぇ」

「あ、いいこと言うね」

 

 出久くんの受け売りですけどね、と応じたヒミコはため息をつきながらも身体を起こした。

 

「うー、正直ちっとも気が進まないですけど……できるだけがんばってみるのです……。なので、ちゃんとお手紙書けたら透ちゃん。いっぱい褒めてください」

「あはは、よっしゃどんとこーい! めっちゃ褒めたげる!」

「わーい、透ちゃん大好きー!」

「はっはっは、ういやつめーういやつめー」

「うひゃー! くすぐったいですよぉ!」

 

 ……私は何を見せられているのだろう。

 

 そう思っていたら、後ろから肩を叩かれた。振り返れば、そこではミネタが修行僧のような静かな眼差しで立っていた。

 彼に言葉はなかったが、その内では「大丈夫、お前らはちゃんと想い合ってる」と魂が叫んでいる。

 

 相変わらずよくわからないので、思わず首を傾げたのだが……彼はそのままの顔で力強く、それこそ励ますように一度頷くと、私から離れていった。

 

 一体なんだったんだ……わからん……まるでわからない……。

 

 だがそんなことをしているうちに、ヒミコたちのスキンシップは落ち着いたらしい。

 

「あ、そういやトガちゃん。来週の日曜って空いてる? 今なんか文化ホールで黎明期のヒーローの展示があるらしいんだけど、予定合わせてみんなで行こうって話しててさー」

「来週の日曜? それなら、ごめんなさいなのです。一日まるっと用事があるのですよ」

「ありゃ、残念ー」

 

 申し訳なさそうに、しかしきっぱりと答えたヒミコに、ハガクレも残念そうにしている。

 

「……ちなみに用事って何? どっか行くの?」

 

 そしてその問いに、ヒミコは意味深に笑った。ちら、と視線がこちらを向く。

 

「……ふふ、秘密なのです」

 

 ああ、そうだな。

 

 ()()()は秘密だ。




(´・ω・`)<私は何を見せられているのだろう。

というわけで、ここからは小説版のステージだ。
小説版とは本編の合間で繰り広げられた日常を切り取った作品、雄英白書シリーズのことですが、本作では期末試験の前にそちらを扱います。
まあ既に雄英白書とは若干展開が違うんですけどね。
原作では相澤先生がお知らせをしますが、本作ではオールマイトになっています。
これは本作のA組には心を読めるやつが二人もいるからで、すなわちオールマイトも本当のことを知らされていません。
さて、次回は一体、二人はどこに行くのか。
ヒントは「糖度高め」だ!

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