銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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7.趣味の話

 何はともあれアナキンの弟子となった私は、パダワン特有の髪型へと変えた。三つ編みを一房作り、それを横に流した伝統的な髪型である。

 ただ、それ以外は短髪とすることが正式なのだが、両親がそれをひどく嫌がったので、それなりに長さを残した状態になっている。

 

 この星に限らず、女性が髪を伸ばす習慣は共和国でも普遍的に見られた風俗だ。だから両親の気持ちは私もわからなくはない。

 私としては伝統に則った正式なものとしたかったのだが、ジェダイの伝統は今や私の中にしかないものだ。

 

 また、良く言えば伝統に囚われない、悪く言えば型破りなアナキンもそこは拘らなくていいだろうと言ったので、私も頷くことにしたわけだ。両親を泣かせたくないなとも思ったことだし。

 ただ、三つ編みだけは拘らせてもらった。こればかりは譲れなかった。

 

 まあ、こちらについては存外好評なので、それはありがたいのだが……しかしそれはそれで、切り落とすときに一悶着ありそうだなと少し先が思いやられるのはここだけの話。

 

 ああ、うん。この三つ編み、パダワンを卒業してナイトに昇格したら、そのタイミングで切り落とすのが伝統なのだ。

 個人的にはヒーロー免許を取得したタイミングにやろうかなと思っているのだが、今それを口にすると必ず揉めるだろう。なので、それについては黙ったままだ。

 そのときが来たら……まあ、そのときはそのときだろう。

 

 さてそんな私であるが、無事に小学校へと進学を果たした。いやまあ、無事も何もこの国には義務教育制度があるため、よほどのことがない限り小学校に進学できないということはないのだが、ともかく。

 

 内面はかつてと変わらず大人の思考をしている私にとって、小学校での大半は退屈な時間である。子供と話を合わせることも、ときに任務の上では重要になることもあるから、無駄とは思わないが。

 

 ゆえに主に精神修行のつもりで通学しているが、今の私に必要な鍛錬とはやや離れていることには違いない。

 なので、両親と飛び級について本腰を入れて相談し、するという方向で話を進めることとした。二学期に入る頃には、大体のことが固まるであろう。

 

 私生活では、“個性”およびフォース、セーバーテクニックの鍛錬が中心であるが……それのみというわけではなく、息抜きもする。鍛錬だけでは息が詰まってしまうからな。

 

 こういう場合、多くの人間は趣味に興じるものだ。私もご多分に漏れず、わずかな余暇は趣味の時間に充てている。

 そして私の場合、それは機械いじりとなる。

 

「こんなところか。ではテストだ」

 

 この日、私は自作したちょっとしたドロイドの試運転を行なっていた。

 

 見た目はボールのようなそれは、ドロイドというにはかなり小さく、子供の頭くらいの大きさ。機能も大したことはなく、平らな場所を軽く走行したり、一定の条件下で特定の端末へ連絡を入れる程度。

 AIはこの星の中で言えばそれなりのものを積んでいるが、共和国の観点で言えばお粗末なものでしかない。

 

 だがこれは、今の私が作ることのできる限界とも言える。元々私はハード面の制作はそこまで得手ではない(私の観点ではであり、世間的には一定以上の水準だとは思う)のだが、今は子供の不器用な指先で、しかも必要な部品や機材もない中で作ったのだから。

 むしろそれでここまで仕上げたのだから、よくやれているほうではないだろうか。

 

『起動は問題なさそうだな。ま、この僕がアドバイスしたんだ、これくらいはしてもらわないとな』

 

 そんな私の傍らで、腕を組んだアナキンが得意げに笑っている。

 一見すると不遜だが、これはいつものこと。彼は基本的に何をやらせても卒なくこなせる天才肌で、その自尊心に見合うだけの能力の持ち主だからな。

 

 特に機械関係は、私が知る限り一番の腕の持ち主だ。私の苦手なハード面については彼の最も得意とするところであり、彼の助言がなければこれほどスムーズに完成にこぎつけることはできなかっただろう。

 しかし、私は逆に彼よりソフト面で上回る。AIについては完全に私の独力であり、同じ条件でこれを超える出来に仕上げることはそうそうできるものではないと自負している。

 

 この通りお互い機械には秀でていて、しかし得意分野がちょうど互いをカバーし合う形だった私たちは、だからこそ友人として長く付き合いがあった。それはパダワン時代からずっとであり、クローン戦争が激化するまで変わらず続いたものだ。

 そういう意味でも、あの戦争は嫌だったな。アナキンと顔を合わせる機会も極端に減ったし……もっと彼と会う機会があったなら、私とて彼が暗黒面に引きずり込まれていることに気づいて、何かできていたかもしれないのだから。

 無論、既に終わった話であるからして、そんなもしもを考えたところで詮なきことではあるのだが。

 

 え、彼とはどれくらいの間柄だったか?

 それはだな、アナキンが相棒としていたアストロメクドロイドの修繕や改良に私も少し関わっている、と言えばご理解いただけるだろうか。

 アナキンは彼をことさら大事にしていたから、彼らの中身に関わった人間はほとんどいないんじゃないかな。

 

 ともあれそういうわけで、私たちは同好の士である。それが再会したのなら、やはりかつてのようにすることは当たり前と言えるだろう。

 

 ゆえに六歳の誕生日に私が買ってもらったものは、工具一式となった。もちろん両親からはなんとも言えない顔をされたが。

 

 そしてこれに合わせて、私は父上が新たに買い替えたことで型落ちになった端末を譲り受けた。このおかげで趣味を本格的に始めることができた。

 ちなみに材料は、使われなくなって放置されていた家のものや、廃棄品を集めて調達した。

 

 もちろんこれだけに専念できたわけではないので、それなりの時間は要したが……ともあれ、こうやって無事にドロイドが完成したわけである。

 

「……よし、大丈夫そうだな」

 

 一通り動作確認を済ませて、私は満足して頷く。

 眼下では、ボール状のドロイドが電子音で鳴いていた。挙動にぎこちないところはなく、板張りの床を快適に転がる様子は微笑ましい。たまに跳ねたりするが、機体の表面はラバー系素材で処理してあるため、床を傷つけることはない。

 

 内容としては、造物主である私に向けて(アナキンにもしているが、見えていないので方向が頓珍漢)に挨拶すると共に、自分がお世話すべき相手はどこかと問うものだ。知識がなければただピロピロと音を発しているだけにしか聞こえないだろうが、その実態はしっかりとした言語である。

 

 ただし、ドロイド特有の電子言語だ。だからこそ、普通に異言語を理解するよりは難しいものだが、優れたメカニックがドロイドの発する電子言語を理解することは珍しくない。アナキンなどは、アストロメクドロイドと素で完全かつスムーズな会話ができるほどだ。

 

『いいんじゃないか?』

「ああ。ありとあらゆるものの規格が共和国のそれと違いすぎて、だいぶ手間取ったが……結果良ければよしだろう」

 

 私にじゃれつくように動く(挙動の参考にしたものは犬という愛玩動物である)ドロイドに小さく微笑み、私はアナキンと頷きあう。限られた中で作ったにしては、満足のいく出来だった。

 

「よし、ついて来い。私の母上を紹介する」

 

 一通りの動作確認を終えて、問題ないことを確認した私はドロイドを連れて居間へ向かった。

 

 なお、父上は今日も今日とて仕事である。宗教指導者というのは、とかく激務らしい。なので、帰宅したら優しくしてあげる毎日だ。

 

「母上」

「どうしたの?」

 

 さて、リビングである。私の呼びかけに応じて、妹と遊んでいた母上が顔を上げた。

 と同時に、私の足元を転がるドロイドに気づいて怪訝な顔をする。

 

「母上、これは私が開発した子守用ドロイドです。少しでも母上の負担が軽くなればと思い制作しました」

 

 私の紹介を受けて、ドロイドが鳴いた。

 そして私も、これの機能を一つずつ説明していく。

 

「……こ、これ、本当にコトちゃんが……?」

「はい。……ああまあ、多少はアナキンに手伝ってもらいましたが、基本的には私が」

 

 だが、私は愕然とした様子の母上を見て気がついた。どうやらこれでもやりすぎらしい、と。フォースの流れが困惑と驚愕の感情を伝えてくる。

 

 いや、よくよく考えるまでもなく六歳児がゼロからドロイドを設計開発したら、そうもなるだろう。それは理解している。

 ただ私としては、こういうところも飛び級の助けになればという思惑もあった。可能ならば飛び級を重ね、なるべく早く義務教育を終わらせたかったからだ。

 

 何せ、この星でフォースを用いた治安維持活動をするために都合のいいヒーロー免許は、専門の教育機関で取得することが一般的。しかしそれは高等学校クラスで行うことであり、本来は義務教育よりも優先されるものではない。

 であれば、飛び級はできるだけ重ねておきたい。あるいは、一度で多く飛び級しておきたい。

 

 だからこそあまり大したことのないものを作るよりは、それなりのものを出して飛び級認定に優位に働けば……と思って、このドロイドの水準を決めたのだが……。

 

『だから言ったじゃないか、ドロイドじゃなく玩具の範囲に留めたほうがいいって』

 

 呆れた調子でアナキンが言う。

 作り始めた当初、私たちは全力を出す出さないで意見が合わなかったのだが、私のほうが地球生活は長いのだからと押し切った経緯がある。彼の言い分は無理もない。

 

 どうやら、地球……というより、世俗における考え方に関わる視点では、私はアナキンに敵わないらしい。

 

「申し訳ありません、マスター」

『まあ先のことを考えると、悪いことばかりでもないだろうけどな。それでも、君に声をかけたがる輩は間違いなく増えるぞ?』

「……なんとかするしかありますまい。これも試練です」

『なんでもかんでも試練に結び付けるのは、ジェダイの悪い癖だと思うがなぁ』

「いや……その、それについては何も言いますまい」

 

 ドロイドに驚いた母上が、泡を食って父上に電話をかけている様を眺めながら。

 私は妹をドロイドと共にあやしながら、先のことに想いを馳せるのだった。

 

 ……なお、私の飛び級は無事、確定した模様である。

 




気まぐれかつ今後使えるかどうかもわからないスターウォーズ用語解説第四回
「ドロイド」
いわゆるロボット。スターウォーズ世界では、色んな分野で色んなドロイドが活躍している。
大体の場合「○○(業務となる分野の名前)ドロイド」という形でカテゴライズされている。
作中に名前が出たものとしては、

バトルドロイド:戦闘用のドロイド。兵士のようなタイプや、ガトリングブラスターを搭載した制圧用など、色んなバリエーションがある
アストロメクドロイド:宇宙船の運航を補助するドロイド。スターウォーズのマスコットとも言えるドロイド、R2-D2(青くて二本足のちっこいの)はここに分類される。
プロトコルドロイド:主に言語通訳を行うドロイド。スターウォーズのマスコットとも言えるドロイド、C-3PO(人型で小うるさい金ぴかの)はここに分類される。

など。
スターウォーズのドロイドは普通に自己進化するし、自我を獲得してるやつもかなりいるので、機体ごとにかなり性格が違う。
映画でもメインに近いところにいるドロイドは、下手なサブキャラよりよっぽどキャラが立ってて存在感がある。
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