銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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お久しぶりです、お待たせしました。
エピソード5、「I・アイランド:レスキュー・オーダー」を開始いたします。
全15話+幕間2話、どうぞお楽しみいただければ幸い。


EPISODE Ⅴ I・アイランド:レスキュー・オーダー
1.備えろ期末テスト


 六月も最終週となり、期末テストが近づいてきた。

 

 テスト期間が始まる前、マスター・イレイザーヘッドからは林間合宿がある旨と、テストに赤点があれば学校で居残り補習という旨が伝えられた。後者については合理的虚偽だが。

 言いながらの彼に念入りに睨まれたので、口外するつもりはない。というか、林間合宿行きたさに励もうとするクラスメイトを見れば、口外するという選択肢は出てくるはずもないのだ。

 

 しかし、である。

 

「まったく勉強してねーー!!」

 

 ある日のこと、カミナリが切羽詰まった顔で突然叫んだ。中間テストにおける彼の成績は、A組最下位の20位である。

 

 彼の隣では、すべてを諦めた様子で笑っているアシドがいる。彼女は19位。

 

 そして二人にならうように、ヒミコが笑いながらため息をつくと言う器用な真似をしている。彼女の成績は18位だが、カミナリやアシドとの差はほとんどない。

 

 ……ヒミコは一度、高校一年生をやっている。今また一年生をしているのは、私と同じ学校に行きたいがために高校を中退したからだ。

 つまり学業の面でも肉体の面でも、彼女には一年分のアドバンテージがあるはずなのだが……元々彼女はそこまで勉学に優れていたわけではないらしい。それでも雄英に入りなおすに当たって相当勉強したようだが、付け焼刃だったからか後が続いていない。

 

「問題集とか参考書なんてもう二度と見たくないです!」

 

 とは合格当日の彼女のセリフなのだが……ヒーロー科は普通科における授業も並行してやる関係で、普通科よりも一般科目はハードだ。おかげで学業は散々というわけである。

 ただ、死ぬ気で勉強して雄英に入れるだけの成績を過去に出したことは間違いないので、やればできると思うのだがなぁ。

 

 だが、期末試験はそれだけではない。

 

「いやーしっかし、アレだよな。期末は実技試験もあるのがなぁ。かーッ、つれぇわー。筆記に加えて実技とか、マジつれぇわーかーッ」

 

 つらいつらいと言いつつどこか得意げに言うのは、ミネタである。ああ見えて彼の一般科目の成績は悪くない。20人中10位なのだ。少なくとも、赤点を取ることはまずないだろう。

 

「あんたは同族だと思ってた!」

「そうですよ! 峰田くんズルいです!」

「お前みたいなやつはバカで初めて愛嬌出るんだろが……! どこに需要あんだよ……!」

 

 そんな彼に最下位争いをしている三人が口々に言うが、当人はどこ吹く風で断言した。

 

「世界……かな……」

 

 そして「フッ」とニヒルを気取った笑みを浮かべる。うーむ、調子に乗っているなぁ。いやはや若い若い。

 

 と、ここにミドリヤとイイダが割って入る。

 

「芦戸さん、トガさん、上鳴くん、がんばろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもん! ね!」

「うむ!」

 

 だがそう言う彼らの順位は、5位と2位である。人によっては素直に応援だとは受け取れまい。

 

「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねぇだろ」

 

 そしてここで、傷口に塩を塗り込む所業をしたトドロキは6位。

 

 案の定、カミナリは心臓を押さえるそぶりを見せながら三人から顔を背けた。

 

「言葉には気をつけろ!!」

「上鳴しっかり! 傷は深いよぉ!」

「俺はもうダメだ、致命傷だ……あとは……任せた……」

「上鳴くーん! もー、轟くんってば、人には得意不得意があるんですよ!」

 

 遂には寸劇まで始める始末である。これは重症だ。

 

「あの……お三方とも。座学なら私、お力添えできるかと」

 

 だがここで、救いの手が差し伸べられる。中間で筆記1位のヤオヨロズが手を上げたのだ。

 そこに三人が顔色を変えて殺到する。

 

「「ヤオモモー!」」

「百ちゃんんん!」

 

 ヒミコなどはそのままヤオヨロズに抱き着く始末である。

 

 ……座学なら、私も教えられるのだが。ヤオヨロズのほうに行くのか。

 ああ……いや、国語……日本語は私、少し苦手だからなぁ。特に古文。中間試験はそれで順位を落としているから、そこで選択肢に入らなかったか。

 

 むう、座学のほうももう少し本腰を入れるべきか? だが私には他に優先すべきことがあるし……。

 

「お三方じゃないけど……ウチもいいかな? 二次関数ちょっと応用つまずいちゃってて……」

「わりィ俺も! 八百万、古文わかる?」

「俺も」

 

 と、そう思っていたら、ジロー、セロ、オジロがヤオヨロズの席に近寄った。

 ヤオヨロズはもちろん、いいですとも、と答えて頷く。

 

 ……なるほど、その手があるか。

 

「ヤオヨロズ、私もいいか?」

「え……っ? ですが、私が増栄さんに教えられることはないと思いますが……」

 

 相乗りするように言った私に、ヤオヨロズは驚いた顔をした。周りも同様だ。

 

 まあ、うん。だろうなとは思う。私の中間テストの成績は、20人中3位なのだから。

 

 だが、こう、その。なんだ。仕方ないじゃないか。

 

 だって……ヒミコを取られたような気がしてならないんだ。

 

 それに、ちゃんと理由ならある。

 

「いや……昔から国語、特に古文の類はどうにも苦手でな。漢文などは理解が及んでいない部分のほうが多い。これが足を引っ張って順位を落としているんだ」

「……そういえば、国語だけ点数が」

「ああ。苦手は早いうちに克服しておきたい。頼めるだろうか?」

「はい、もちろんですとも!」

 

 ともかく私が頼むと、ヤオヨロズは嬉しそうに快諾してくれた。

 

 よかった。これで家で一人きりになることはない。

 

「……?」

 

 内心でホッとしていると、ヒミコから視線を感じた。

 目を向けると、彼女は笑っていた。どこかからかうような顔でだ。

 

「…………」

 

 それがどうにも気恥ずかしくて、私は彼女から顔を逸らすのであった。

 

 ああもう、顔が熱い。

 

***

 

 その日の午後。

 どこから聞きつけたのか、ミドリヤから実技試験の内容はロボットを相手にした戦闘演習である、という話が上がった。

 

 これを聞いて喜んだのは、もちろん筆記試験に自信がない三人である。

 

「んだよロボならラクチンだぜ!」

「私もー!」

「私もだよー!」

「上鳴と芦戸は対人だと“個性”の調整が特に大変そうだからな……」

 

 そんな彼らにコメントをするのは、ショージだ。

 

「ああ! ロボならぶっぱで楽勝だ! これで勉強のほうに集中できるぜ!」

 

 応じてカミナリが再び歓声を上げるが、果たしてそう簡単に行くかな?

 

 ステインの事件以降、世間はヴィラン連合との兼ね合いもあってか過熱報道が続いている。両者の繋がりが暴露された以上、恐らく行き場のなかった悪意はそこに集まり、いずれ激しく暴発するだろう。

 ヒーロー養成校としては日本一と言われる雄英が、そうなったときのために備えないはずはないと思う。そして期末の実技試験は、備えとしてはちょうどいいのではないかな。

 

 より具体的に言うと、実技試験の難易度を上げてもおかしくないと思う。

 というか、ほぼ確実に上がる気がする。上がり幅は、低く見積もってもバトルドロイドが複数出てくるくらいに。最大限高く見積もったら、先日のルクセリア……イッシキのような元ヴィランが仮想敵として招聘される可能性も、かなりあるのではないだろうか。次点でも、プロヒーローは出てくるくらいはあり得ると思う。

 

 なので、ロボットなら楽勝、という思考はいささか甘く見すぎだろう。この辺りは、やはり卵と言われても仕方がない。

 

 そしてこういう考え方を、蛇蝎の如く嫌う人間がこのクラスには存在するわけで。

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。何がラクチンだアホが」

 

 ほら、クラス一向上心の高い男の癇に障ったようだぞ。

 

「アホとはなんだアホとは!」

「何が相手だろうとやることは変わんねぇだろうが! 全力で勝つ! そんだけだ! ロボなら楽だとかクソみてぇなこと言ってるやつなんざ、アホで十分だわこのアホが!」

 

 うーむ、この言いよう。実に辛辣である。

 

 だが刺さるものがあったのか、カミナリは反論できずに「うっ」とうめいて一歩下がった。

 

 そんな二人の会話に、思わず笑いが漏れる。

 

 バクゴーとしてはそれが気に食わなかったのか、鋭い視線が飛んできた。

 

「ふふ、そうだな。バクゴーの言う通りだ」

 

 なので、言葉を添えることにした。

 

「どんな状況であっても、どんなものが相手だろうと、私たちは常に最善、最高の結果を求められる立場だ。消極的なことを言っていると置いて行ってしまうぞ?」

「アッハイ……仰る通りデス……」

 

 ……言いすぎてしまったかな。カミナリががっくりとうなだれてしまった。バクゴーがそれを鼻で笑っている。

 

 だが私がカミナリにフォローを入れるより早く、バクゴーがこちらに再度目を向けた。

 

「おい増栄、期末こそぶっ殺してやるから覚悟しとけや」

「受けて立とう。もう一度返り討ちにしてあげるとも」

 

 最近薄々わかってきたのだが、バクゴーにとって殺害宣言は宣戦布告のようなものらしい。これもそういうことだろう。彼は本当にブレないな。

 

 だが、私もまだまだ負けるつもりはない。元々戦闘面の才能の乏しい身ゆえに、いつかバクゴーには負けてもおかしくないと思っているが……少なくともそれを今許すつもりはないぞ。

 

「轟……テメェもだ。テメェには今度こそ完璧に勝つ……首洗って待ってろや」

 

 しかしとりあえず、私の答えに満足したのかバクゴーは視線をトドロキに移した。

 そして彼にも宣戦布告をすると、小さく鼻を鳴らして教室を出て行く。そんなバクゴーの背中を、ミドリヤがどこか輝いた目で顔で眺めていた。

 

 なお、トドロキは「首を……」とつぶやきながら、自身の首をさすっている。成績のいい彼なら慣用句の意味はわかっているはずだが、その上でこのリアクションは彼なりのお茶目だろうか。

 

 と、ここで教室の中が今までとは違う形でざわついていることに気がついた。視線を向けてみると、どうやら改めて実技試験が不安になったらしい面々が話し合っていた。その中には、しっかりカミナリもいる。

 うーん、やはり言い過ぎたかな?

 

 まあ、ここはフォローしておくとしよう。私はヒーローになるつもりはないが、将来有望な若者を手助けすることはやぶさかではない。

 

「……私でよければ、実技対策の相談に乗るが」

 

 なのでそう言ったら、午前中とは逆に私のところへ人が殺到した。ヤオヨロズまで来た。

 

「増栄ちゃん!」

「増栄ェ!」

「助かる!」

「お、俺も頼みたい……!」

「あの、私もお願いしてもよろしいですかっ?」

 

 思っていたよりも多く人が来たので少し困惑していると、ヒミコの視線を感じた。

 

 目を向けてみると、彼女は少し離れたところで小さくむくれているようだった。

 どうやら実技関係では、私を独占したかったらしい。

 

 そんな心境を垣間見た私は……笑い返すことにした。からかうつもりで、少し意地悪くだ。

 

 ……しっかり意趣返しになったようで、ヒミコはぷぅ、と頬を膨らませた。

 

 と、ここまで考えたところで私は我に返った。何をしているんだ私は。これではただの駄々っ子ではないか。あまりにも短絡的すぎる。

 ジェダイが恋愛を禁じるはずだ。まさかこんなにも判断力が落ちるなんて、思ってもみなかった。

 

 ええと、ともかく軌道修正を……見たところ顔ぶれは共通しているようだから……。

 

「あー、その、なんだ。どうやらメンバーは被っているみたいだし、ヤオヨロズの勉強会に併せるか? ずっと机に向かって勉強していても、集中が続かないだろうし」

「おお、それだよ! グッドアイディア!」

「わあい、ヤオモモ&増栄ちゃんのブートキャンプだ!」

「いいですわね。では講堂の他に、庭も使わせてもらえるようお母様に報告しておきますわ!」

 

 というわけで、そういうことになった。

 

 ……はあ。確かにこの間、己の気持ちを自覚したときにジェダイ失格でもいいとは思ったが、だからといって己を律することができないのは問題だ。心の修行をしなければなるまい……。




第一話からだいぶトばしていますが、EP4で両想いを達成しているのでここからは大体こんな感じの距離感です。
なお、まだ距離が縮まる予定があるものとする。

しかし今エピソードの元であるアニメヒロアカ劇場版第一弾、「二人の英雄(ヒーロー)」が金曜ロードショーで放映されることになるとは。
タイムリー過ぎて感謝すればいいやら、恐縮すればいいやら。
まあ、本作においては劇場版エピソードに当たる時系列に入るまで数話を要するんですけど、それはそれとして本作と原作がどう違うのか、を楽しめればいいかなぁなんて思うなどする。
ただそういう意味では、先に原作を知りたいという方もいらっしゃる方もいるかもしれません。
その場合は、8月6日の金ローを見るまでは本作をあえて見ない、選択肢もありかも・・・?
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