銀河の片隅でジェダイを復興したい!   作:ひさなぽぴー

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14.レスキュー・オーダー 6

 第二植物プラントは八十階の第一植物プラント同様、“個性”の影響を受けた植物を管理・研究するための場所である。

 ただし、あちらがよくある木や草に属する植物が中心になっているのに対して、こちらは野菜や果物……すなわち食用となる植物が中心だ。

 

 ……“個性”の影響を受けたものを食べたいか、という問題はあるが……まあ、そこは研究こそ存在意義の島だ。うまいことしているのだと思いたい。

 

 と、そんな第二植物プラントであるが、ここに誘導した理由はやはり単に場所が広いこと。そして鉄仮面の男の“個性”が操る対象である金属が少ないことが理由だ。

 

 私はここの一角に陣取り、腕を組んで静かに瞑想していた。

 やがて音が聞こえてくるようになる。ものを破壊する音。それが少しずつ近づいてくる。I-2Oに任せた誘導は、うまいことやっているようだな。

 

 まあ、そのために金属によらない区画封鎖……すなわち壁や床の破壊をするしかなかったところが何箇所かあるだろうと思っているが。その点については、ヴィランを捕縛することで大目に見てもらいたい。

 

 そう思ったときだ。

 

 ――来た。

 

 私はフォースによってそれを感知し、男のほうへ向き直る。

 

「……あん?」

 

 “個性”の操作で扉をこじ開けて入ってきた男が、怪訝そうに声を上げた。やってきた場所に、子供がいれば当然だ。

 しかもその子供は明らかに普通の格好ではなく、堂々と待ち構えている。警戒こそすれ、油断などするはずがない。

 

「ここまでだ。君がどこの誰かは知らないが、この先には行かせないぞ」

 

 そんな彼に、私はフォースをみなぎらせながら目を開き、宣言する。

 

「チッ……こんなガキに何をしていやがった。どいつもこいつも使えねぇ」

 

 だが、返事は返事とも呼べないようなものだった。

 その言いように、私は眉を片方ぴくりと上げる。

 

「己の人使いがまずいのだろうに。よくもぬけぬけと言えたものだな、()()()()()()

「……おいガキ……てめぇ何モンだ?」

 

 名前を言い当てられたウォルフラムは、明らかに顔色と意識を変えた。銃口が向けられる。

 

「ジェダイナイト、アヴタス。この星の自由と正義を守るもの。……ヴィランよ、投降せよ。もう君に逃げる道はない」

「その言い回し……そうか、てめぇ増栄理波だな? 見た目通りの青臭いことを抜かしやがる」

「……やれやれ、すっかり有名になってしまったものだ。これだから体育祭には出場したくなかったのだが」

 

 ヴィランにここまで知られているとなると、むしろ私のことを知らない人間を探すほうが難しいのではないだろうか。これは来年以降の出場は、本気で見合わせたほうがいいのでは?

 

 と、思っていたところに銃弾が飛んできた。無論、危なげなく最小限の動きで回避するが。

 

「無駄だ。その程度の武器では私を捉えることはできないと思いたまえ」

「みてぇだ……なッ!」

 

 だが、ウォルフラムはそれが無意味だと見るや否や、早くも別の攻撃に転じた。この判断力、切り替えの早さは敵ながら見事と言っておくとしよう。

 

 しかしそれも、無意味である。ここに来るまでに遭遇した警備マシンの残骸を持ち込んでいた彼は、その金属片を操りマシンガンのようにこちらに乱射してきたのだが……。

 

「無駄だ、と言っている」

 

 それらはすべて、私のフォースによって阻まれた。

 斥力によって動きをとめた金属片は、そのまま逆に発射されウォルフラムへと襲い掛かる。

 

 だがウォルフラムもさるもの、と言うべきか。それをされるより早く位置を変え、そこらに設置されている金属の手すりを操作し始めていた。鞭のようにしなり、襲いくる手すりの前に弾幕はすべて蹴散らされる。弾幕はこのための布石だったわけだな。

 

 まあ、それも読めているわけだが。

 

 ついでに言えば、鞭のように振るった手すりにより攻撃を仕掛けていること。たとえ回避されても手すりをしならせ、拘束するつもりでいることも、お見通しだ。

 さらに言うと、攻撃も拘束も回避された場合、手すりを投げ縄のように使ってこの場から離脱しようとしていることもわかっている。

 

 ゆえに、私はライトセーバーを抜いた。同時に出力を増幅し、その光刃で襲い来る手すりを正面から受け止めたのである。

 

 一時的に本来の出力に戻っているライトセーバーに、人が操るとはいえただの金属が触れたらどうなるか。

 

 簡単だ。一瞬で溶解する。

 

「何!?」

「言ったはずだ。無駄だ、と」

 

 勢いよくセーバーに突っ込んできた手すりは、光刃に飲み込まれるようにしてあっさりとこの世から消失した。これは予想外だったのか、さすがに狼狽するウォルフラム。

 

 そんな彼に、私は改めて声をかけた。

 

「もう一度言うぞ。投降せよ。君にもはや逃げ場はなく、また勝ち目もないのだから」

 

 この呼びかけに、ウォルフラムは怒りを募らせた。顔を険しく歪ませると、ふざけるなと叫びながら拳を振り上げた。

 

 ああ、身体能力を増強する力があるならそうするだろうな。ここは植物プラントだが、広大なフロアの中にいくつかの区画が皿を重ねるような形で複数、連なって収まっている。そしてそれら最小単位の区画を破壊するだけなら、彼には造作もないだろう。

 

 だが、それも読めている。

 

「ぬうっ!?」

 

 私はフォースプルでウォルフラムの足下をさらい、体勢を崩させる。

 

 それに合わせて、出力が元に戻ったセーバーの光刃を増幅した。

 今度の対象は長さだ。ほとんど無形の位であった手元でセーバーの切っ先が一瞬にして伸び、ウォルフラムの鳩尾に直撃する。

 

 急所に不意打ちで一撃を受けた彼は、直前に体勢を崩していたこともあって仰向けに転倒した。

 

「カハッ!?」

『I・アイランドの警備システムは通常モードになりました』

 

 そんなウォルフラムをよそに、無慈悲なアナウンスが響く。セントラルタワーのみならず、I・アイランドそのものがウォルフラムの手から完全に離れた証であった。

 これに合わせて、パーティ会場はヒーローたちに、また我がクラスメイトたちによって解放されるだろう。つまり、ウォルフラムに増援は一切来ない。

 

 その後も続く種々のアナウンスを聞き流しながら、私は改めてウォルフラムに声をかける。

 

「どうしても投降するつもりはないのか」

「くたばりやがれ!」

 

 やはり返事は否であった。

 

 ウォルフラムが床を引きちぎる。指を立てた手を突き立て、めきめきと。

 そこから顔をのぞかせたのは、区画の土台となる金属。

 すぐさま操られた金属の波濤が、私目がけて殺到する。

 

 これも読めていたが……頑として抵抗するなら仕方ない。心を攻めるとしよう。

 

「重ねて言う。――無駄だ」

 

 ……突然の講釈となるが、私の増幅の効果は、山なりに推移しない。効果量は私の任意によって決定され、発動した瞬間にその量の増幅が瞬時になされる。

 これは効果が切れるときも同様であり、これによって私は、近接武器で超遠距離攻撃が可能なのだ。それも一瞬にして。

 

 特にライトセーバーの刀身は実体がほぼなく、重量もない。その分実体剣に比べてコストパフォーマンスは格段に良く、“個性”との相性は抜群だ。

 

 そう、私はライトセーバーの出力と長さを再度、一瞬だけ増幅した。

 すると、セーバーはたちまち長大なユニバーサルカッティングツール(なんでも斬る剣)と化す。

 

 こうして生まれる、巨大な光刃。これを足場を切り捨てないタイミングで形成して、下から上へ、掬い上げるように一閃する。

 

 途端、あっさりと切り払われた金属の波は、ウォルフラムの制御から離れた。あとは飛ぶことでどうとでもなる。

 

 そうして金属操作の効果が途切れた金属塊の隙間を潜り抜け、高速でウォルフラムに肉迫。高威力であることを見せつけたライトセーバーをブラフとして、防御と意識をもかいくぐると、脛に蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐおおぁぁ!?」

 

 たちまちウォルフラムは野太い声を上げながら、その場にうずくまった。無理もない。

 

 この国では、弁慶の泣き所というのだったか。それだけ脛という場所は防御することが難しい急所の一つだ。

 ウォルフラムもそれは理解しているのか、簡易ながらも脛当てがあったようだが……攻撃力という概念的な力を増幅していれば、関係ない。

 

 蹴ったついでに彼にかかる重力を増幅し、動きも制限する。そして鼻先にライトセーバーを突きつけた私は、宣言した。

 

「投降したまえ。これ以上、いたずらに罪を重ねることはないだろう」

「ふ……! ふざけるな……! ふざけるな、こんな、こんなことがあってたまるか……!」

 

 彼はそれでもなお、破れかぶれになることなく、手持ちの札……この場合は増強系の“個性”を用いて接近戦に持ち込んできた。攻撃の一つ一つに、子供など瞬殺してしまえるような力が込められている。

 

 いやはや、ここまでされても戦意も殺意も衰えないところは、敵ながら見事ではある。私を殺そうとしつつも、逃げられる状況が整えば即座にそちらに作戦変更するつもりであることも、天晴れと言えよう。

 

 だが――それでも言おう。無駄であると。

 

 何せ、足りないのだ。増強されていることは間違いないが、その効果量が足りない。

 

 そもそもの話、私にはこの手の“個性”の敵との戦闘経験がある。直近だとシガラキ・カサネが。少し前に遡れば、脳無という強敵との経験が。

 

 断言しよう。ウォルフラムの“個性”は、結果としての効果こそ同じだが、前述の二人に比べると劣る。かかる重力が増していて動きが鈍っていることを差し引いても、近接戦闘の技術がしっかりしていることを加味しても、遅いのだ。

 

 恐らくだがこの増強系“個性”、ウォルフラム本来のものではないのだろう。

 その場合、どういう経路、どういう手段で“個性”を複数持つに至ったのかという問題が浮上するが……今は置いておく。

 

 ともかくウォルフラムの増強系“個性”は、金属操作に比べて明らかに練度が低い。全能力増幅自体を使わずとも、フォースによる身体強化だけで対処できるのだから、その程度がわかろうというものである。

 

 おまけに脳無と異なり、ウォルフラムには意思がある。どこを狙おう、どれくらいの力を込めよう、といった意思が。それは必ず彼の心理に現れ、偽ることができない。

 さらに言うなら、今のウォルフラムは決して平常心ではない。多少なりとも乱れた彼の心は、彼の狙いは、フォースによって悲しいほどに筒抜けだった。

 

 それらが致命的だ。フォースユーザーである私の前では、ウォルフラムの技はほぼ意味をなさないのだ。

 

 それでも私が手を抜けないのは、彼の力量が優れていることの証と言える。追い詰められているからこその爆発力も、諦めることのない精神力も、決して侮れない。その点は認めなければならない。本当に彼の力がなかったら、もっと早く無力化できていたはずなのだから。

 

 まあ、私としては彼を必要以上に傷つけるつもりはないし、してはならない立場でもある。加えて言うなら、普段なら有効な手持ちの拘束具が軒並み金属製なので、ウォルフラムとの戦いは中途半端に長引く羽目になったわけだ。

 

 しかし私も、相手を気絶させるべく何度も急所を打ち据えた(股間はさすがに狙わないでおいた)のだが。これで気絶しないのだから本当に大したものである。

 “個性”を含め、彼がもう少し弱ければここまで追い込まれることはなかっただろうに、とも思わなくはないが。

 

 ただいずれにせよ、ウォルフラムは詰んでいる。私が告げた「逃げ場はない」は客観的事実なのだ。

 

 最初の地点から少し離れた場所。数分の攻防の末、プラントのほぼ真ん中に位置する中央エレベーターの近くにまでウォルフラムを追い込んだ私は、今度こそ本当の最後通牒を出す。

 

「これで最後だ、ウォルフラム。これ以上の抵抗は真実無意味であり……それでもなお抵抗するのであれば、ここまで受けてきたどんな痛みよりも強烈な一撃が君を襲うだろう」

 

 既に全身に打ち身や擦り傷を作り、服もボロボロになったウォルフラム。

 

 だがそうなってもなお――彼が折れることはなく。

 

「くたばれガキがああぁぁぁぁッッ!!」

 

 中央エレベーターに触れ、“個性”でもってこのタワーそのものを破壊しようとしてきた。

 

 だが、そうすることはわかっていた。フォースを使うまでもなく。

 

 なんと言うことはない。追い詰められた悪人がやることは、銀河が違えど変わらないということだ。

 

 ゆえに――もう遅い。そう、遅いのだ。

 

「……残念だよ、ウォルフラム」

 

 私はそうつぶやくと、ライトセーバーの刃を収めて目を閉じた。

 

 直後。

 

MISSOURI SMASH(ミズーリースマッシュ)!!」

「ごぼぁっ!?」

 

 中央エレベーターから躍り出たオールマイトの手刀が、ウォルフラムの後頭部に叩き込まれた。

 最後の最後まで外れなかった鉄仮面が吹き飛び、ウォルフラムもまた猛烈な勢いで顔から地面に叩きつけられる。遅れて、竜巻のような突風が巻き起こった。

 

 そしてその風が収まったとき。ウォルフラムの膝がかくりと倒れ、力なく横たわった。

 

 そんな彼に……もはや聞こえていないだろうが、私は言う。

 

「言っただろう。ここまで受けてきたどんな痛みよりも強烈な一撃が君を襲う、とな」

 

 私がただ長々と戦闘を続けていたはずがないだろう。ヒミコとのテレパシーを通じて、オールマイトを誘導してもらっていたのだ。中央エレベーターにまで戦いがもつれ込んだのも、そのためである。

 

「……増栄少女、お疲れさん! 救かったぜ!」

「いえ、こちらこそ。お見事でした」

 

 かくして、事件は一応の終結を見たのであった。

 




個性持ちのジェダイと、複数個性持ちとはいえ非フォースユーザーが正面から戦ったらこうなりますよ、という見本市でした。
原作のウォルフラムはもっと絶望的なボスとして描写されてるんですけど、そのために必要なアイテムが手に入らないまま理波に捕捉されたので、こうならざるを得ませんでした。

原作通りにシールド博士からアイテム強奪に成功してたら、そもそもライトセーバーが使えなくなるのでめちゃくちゃな強敵になるはずだったんですけど。
無理やり原作沿いにするために主人公側をガバらせるわけにはいかないですからね。
強力なオリキャラをぶち込むタイプの二次創作ってこういうところで難しいです。加減が効かないから。
ていうかこういう展開は序盤にやるべきなんだろうけど、最初のボスが脳無って明らかに難易度バグってるよねヒロアカ。

ちなみに理波ちゃん。
ライトセーバーで遠距離攻撃ができることに気づいたとき、それはそれは大層はしゃいだ模様。
※ライトセーバーを神聖視する一般ジェダイは、頑なにブラスターとかその手の武器を使わないのです。
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