第1話 久しぶりの人
俺は成人式の会場から1人で先に出た。まだ出ている人もまばらで、俺が見た限りでは3人くらいしか出ていない。外では両親などが車で待っていたが、俺は高校を卒業してから1人暮らし。大学には行っていない、ただの一般男性。身長だって171cm、体重も64kgと大体成人男性の平均あたり。
仕事だけは昔から地理や数学、電気関係、科学が得意だったためJR東日本の運転士。小山に所属している。今日は成人式の関係で休みになり、明後日からはまた勤務が始まる。
外には誰かの両親がたくさんいる中、1人だけ一際若い女性がいた。成人式のような格好ではなく、肩が少し見えた半袖。成人式はお盆の少し前だからまだ暑い。俺もYシャツは半袖。
その女性は俺を見て小さくお辞儀をした。相手は俺を知ってるのか?俺は女性に近づいた。近づくと、女性は「覚えてますか…?」と小さく遠慮しているように言った。俺は「失礼ですが、ご年齢は」と聞くと、女性は「19です」と答えた。19歳の知り合いってことだ。
俺は必死で思い出した。すると、俺は約2年前のことを思い出した。
俺が高校3年生のころ。その日は急な大雨で、たまたま前日忘れていた傘があり、俺はその傘を差した。それと同時に2年生が昇降口に続々と集まってきた。なんとなく混雑を避けたくて俺は脇の方で人を待っているかのように止まっていた。
やがて空き始めると、俺は歩きだした。すると、昇降口から小さな声が聞こえた。自信の無さそうな声だ。
「あ、傘忘れた…」
傘を忘れたのか。この中帰るのは大変だろう。俺は昇降口に戻って2年生に言った。
「一緒に入る?」
「え、いいんですか…?」
2年生の女の子は遠慮するように聞いたが、俺はすぐ答えた。
「もちろん。入って」
俺は女の子を右側にして、1つの傘に2人が入るようにした。相合傘みたい。
「最寄り駅どこだ」
「日暮里です」
日暮里か。だったら家まで一緒に行ってあげようかな。雨もひどいし。
「家まで送るよ」
「え、いいですよ!迷惑ですし…」
「大丈夫。迷惑じゃないから」
一回上野駅まで歩いて移動する。雨は全く弱まる気配もない。
「そういえば、名前は」
「
「
俺は桃内さんを同じ傘に入れて、上野駅まで歩いた。
しばらくして、桃内さんの肩が濡れていることに気づいた。俺は桃内さんを抱き寄せた。
「そっ、蒼先輩!?」
「濡れてたから。あと、敬語はいいや。ため口で呼んでくれていいよ」
俺は桃内さんを抱き寄せたまま歩いた。歩きづらいけど、濡れないからこれでいい。
「えっと、じゃあ、蒼くん?でいいの?」
「うん。俺も有希って呼んでいいかな」
「ぜひ!あっ、うん。いいよ」
言い直したのが気になるけど、もう上野駅は目の前。俺は傘を閉じて駅の構内へ。
「家まで送ってもらっちゃって大丈夫?」
「大丈夫。俺今日は遅くなるって言ってるから」
時計をみると、18:20。18:25発常磐線成田行きが1番早いか。
「疲れてたら寄りかかっていいからな」
「うん。じゃあお言葉に甘えて」
有希は俺の前に寄りかかった。けど、以外と軽い。重さがあまり感じない。
「眠くなっちゃう」
「寝たらすぐ起こすよ」
というか、俺たちって今日初めて話したんだよな?それを考えれば結構親しくなってる?
「もうすぐだからな」
「うん」
俺は常磐線を降りて、有希の家についていった。歩いて5分くらいで、すぐに道を覚えてしまった。ずっとまっすぐだし。
「ありがとう、送ってくれて。明日行く時間合わせない?」
「いいよ。何時にどこがいい」
「7時半に赤羽は?私京浜東北線で来るから」
東大宮からも遠くないしいいよな。俺ってこんなにフレンドリーだったっけ。
翌日、俺は6:53発上野行きにのって赤羽に行く。7:19に赤羽につくはずだから、予定まで10分くらいある。一番空いている15号車に乗る。有希は逆方向だから空いてるんだろうな。
赤羽には2分遅れた7:21に到着。有希はもう着いていた。
このようにして今に至るのだが、このあともすごいことがあったりした。なのに、どうして今いるの
「久しぶり、だね」
「あぁ…なんでここに?」
「成人式って聞いたから来たの」
成人式…ああ、たしかに公表されてたな。それで知ったのか。
「今帰り?」
「あぁ。一緒に帰るか」
「うん!帰る!」
有希は俺についてきた。ここは久喜。東大宮までは有希と一緒にいれる。
「独身なのか?」
「うん。結婚したい人はいるんだけどね…」
「俺も同じだよ。結婚したい人はいる」
結婚したい相手は結構近い関係にいる。たった一人だけだ。