離れて近づいて 完結   作:月島柊

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今回の登場人物
影山蒼
影山有希
影山咲希
月島柊
月島かりな



第16話 温泉

 俺はかりなが帰ってくるまで待った。かりなが来ると、すぐに俺の傷は魔法によって治り始めた。

 

「……痛く無くなってきてる……」

「そうでしょ!回復魔法は私の自慢だからね!」

 

さすがだ。魔法一家はこういう風な生活を送っているのか。

 

「はいっ!なおったよ」

「ああ、ありがとう。あと、さっきから何が起きてるんだ」

「えっとね、高崎の爆発で、メイン電源が切れちゃったの」

 

高崎の爆発って……もしかして被害を受けたあれじゃないか?

 

「なぁ、それって、駅前にあったりするか」

「うん。けど、どうしたの?」

「それ、多分俺が受けた爆発だ」

 

 

かりなは驚いていた。驚くのも無理はない。そんなこと普通はないから。

 

「お兄ちゃんに伝えるね」

 

かりなは柊に伝えに行った。

1分もしないうちに戻ってきた。柊も驚いたような顔だ。

 

「蒼!本当か」

「駅前だったし、そうだと思う」

 

柊は「マジかよ……」と声を漏らしていた。

 

「少し手伝ってくれ。正確な位置を把握してないんだ」

「位置の確認か。いいぜ、手伝う」

 

俺は柊の手伝いに向かった。有希と咲希は俺の後ろをゲームのパーティのように付いてくる。柊はやけに咲希を見ていたが、気のせいだと思い、言わなかった。

 

「高崎の駅前なのは分かってる。何分くらいだ」

「東口を出てから、1分くらいだ」

 

柊はPCを使って場所をある程度絞っていた。俺は有希と密着していた。

 

「距離は半径50m以内。しかし、よくここまでの爆発で留まったな」

 

言われてみれば、確かにそうだ。高崎駅まで届いてもおかしくはなかった。

 

「あ、蒼。もう行って大丈夫だ。旅行の途中だろう」

「あぁ。じゃ、頑張れよ」

 

俺は有希と咲希と手を繋いで部屋から出た。それにしても、有希や咲希には申し訳ないな。

 

 

 しかし、そんなこと言えないまま草津ホテルに着いてしまった。個人用の風呂があり、俺は1人で入ることにした。

傷があった場所はどこにあったのか分からないほどになくなっていた。もうお湯を掛けたって滲みたりはしない。

 

「ふぅ……」

 

俺はシャワーを浴び始める。自然と声が出た。

外からは鳥のさえずりや、木々の葉がこすりあっている音、そして、自分が出しているシャワーの音が聞こえる。シャワーを止め、頭を洗い始めると、自然の音がよく聞こえる。都会の喧騒(けんそう)を忘れ、のんびりいられる。

 

「いくら居ても飽きないな」

 

都会より郊外の方が好きだったりする。うるさくないから好きだ。

 

「あ、流そ」

 

俺はシャンプーを流し始める。

体まで洗い終わると、俺は風呂に入った。すると、音で察したのか、有希と咲希が歩いてくる音がした。

しかし、実際入ってきたのは──咲希だけだった。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃんが入ってくると思ったでしょ」

 

なるほど、俺の心はお見通しか。

 

「あぁ。そう思った」

「やっぱり。私が来るなんて予想しないからね~」

 

確かに有希が入ってくることしか考えていない。そう考えると、俺って変態?

 

「お兄ちゃん、髪洗うの手伝ってぇ」

「おう。って、それが目的か!」

 

咲希は「えへへー」と笑っている。絶対これが目的だ。しかし、俺は仕方なく洗うのを手伝っていた。

 

「有希に任せちゃダメだったのか」

「お姉ちゃん、寝ちゃってて……」

「寝てたか。じゃあ仕方ないな」

 

俺は長い髪を洗っていた。それにしても、こんな長かったっけ。

 

「こんな長いっけ?」

「いつも短く結んでるから。ポニーテールにすれば長い感じしないよ」

 

そんなもんなのか……

 

「切ったりしないのか」

「切ろうとは思うんだけど……」

 

咲希は悩んだように言った。

 

「だって、髪、こうなるし……」

 

咲希の黒い髪が所々紫になってくる。光っているようで、俺は思わず髪から手を離した。

 

「嫌だよね……」

「なんでこんな……」

 

俺は咲希に聞いた。自分の中でだが、全ての辻褄があった。

有希が寝ていたのは嘘だ。そして、いつも一人で入っていて、この事がバレないようにしていた。そして、俺に伝えようとした。

 

「えへへ……暴走しちゃったときからこうなっちゃって……」

 

柊が見てたのはこれが原因か。それにしても、なんでこんな……

 

「咲希、有希は知ってるのか」

「今日言った。お姉ちゃん、優しくしてくれたけど……」

 

咲希、なんでこんなことに……相談できる人がいればしたいけど、こんな病気かも分からないことを相談できる人なんているはずない。

 

「咲希、俺はいい。そんな咲希でも、咲希であればいい」

「お兄ちゃん……ありがとう……」

 

俺は咲希の髪を流す。誰かに今度相談しておこう。

 

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