俺は新婚旅行に出かける前に、暮らすことになる日暮里の有希の家がある荒川区役所に行って婚姻届を提出。これで有希、咲希の苗字は影山になった。
「影山有希…影山有希…影山…有希…」
有希は何回も新しい名前を呟いていた。空書きしながら鳴れたりもしていた。
「慣れた慣れた!」
「よかった。咲希にも言わないとな」
俺と有希は咲希に新しい名前を教えた。
「咲希、影山咲希になるからな」
「ちょっと書くね。かげって日がつく字だよね」
かげだと「陰」や「蔭」、「影」、「景」などがあり、難しい字だと「翳」なんて字もある。俺は3番目の影。
「あぁ」
咲希はシャーペンで紙に名前を書いた。紙には上手な明朝体で影山咲希と書かれていた。
「上手だね」
「硬筆習ってたから」
咲希は紙を俺に見せた。とても上手だった。
翌日、俺は有希と咲希と一緒に新婚旅行に出かけた。3人は高崎線に乗って高崎まで行こうとした。
「楽しみー」
「そうか。よかった」
俺は空いている車内で有希と一緒に座った。咲希はつり革に掴まって立っている。高崎まで行きたいんだけど、ホテルが…
「んーっ、気持ちいい」
「ゆっくり休んでね」
俺は有希の頭を撫でた。咲希は羨ましそうにこっちを見て、有希は少し身体を揺らして、まるでリズムを取っているようだった。
「蒼くん吹奏楽部だよね」
「高校までな」
「そうなの?初めて知った…」
咲希はちょっと驚いた。有希がしてるのはメトロノームの真似ってことかな?もしかして。有希はメトロノームのように左右に揺れる。
「きゃっ」
電車が有希と逆に揺れて有希はバランスを崩し俺にぶつかった。咲希も俺の後ろにある窓に手をついた。俺はそんなに小さな男じゃないから。そんなのじゃあ怒らない。というか妻だと心配する。
「大丈夫か?」
「あ、うん。ありがとう…」
有希は俺の肩に頭を乗せたままだった。咲希は窓に手を当てたままだった。
電車は鴻巣を出発。2つ隣の席に同じことをしている人がいた。俺はちょっと気になって見ていると、話しかけられた。
「ん?名前は?」
「影山蒼。手をついてるのは咲希。君は」
「月島柊。妻は胡桃な」
「俺の妻は有希だ」
同じくらいの年に見えた。それだとすると、25前後だろう。
「年齢は」
柊が聞いてきた。多分俺と同じ性格だから呼び捨てがいいはず。
「25で今年26」
「あ、じゃあ俺と同じじゃん」
全部がほとんど同じ。結構気が合いそうだった。有希はいつの間にか俺の肩ですっかり寝ていた。
「どこか行くのか」
「新婚旅行なんだけど、ホテルがね」
見つかってないのだ。高崎とかのどっかに泊まろうにも、ネカフェくらいしか空いてないし。
「じゃあ俺の家泊まっていけよ」
「あ、サンキュー。」
俺は柊から胡桃のことを紹介された。有希は寝てるから紹介できない。起きてればなぁ。
「にゃむい…」
胡桃が猫っぽい声を出した。
「猫っぽいのか?」
「ああ、胡桃、気抜くと猫みたいなんだよ」
気を抜くと猫みたいになるって、有希にはない特性だ。有希は気抜くとすごい甘えてくる。疲れたりしたときもそうだ。
俺が柊の家に着くと、女の人が柊を疑わしい目で見ていた。なんか悪いことしたのかな。
女の人との会話が終わると、柊は俺と有希、咲希に言った。
「そこの部屋使っていいから。」
「じゃああそこだけ使う。ありがとう」
3人で指された部屋に向かった。咲希は湯かに寝そべってパソコンを始めた。
「おやすみー」
有希はベットに寝た。俺は暇になってスマホをいじった。
後ろから「ニャー」と声が聞こえて、俺は後ろを向いた。有希の頭から猫耳が生えていた。
「ニャーッ!」
有希は俺に突進する。咲希もそれに気づいて俺をみた。
「お姉ちゃん!?」
俺は有希から離れて柊を呼びに行った。外に出ると柊が丁度こっちに来ていた。
「有希に猫耳出来てるんだけど」
「胡桃もだ。何が起きたんだ」
「さあな。けど、かわいいよな」
「そうなんだよ。治るまで待とうか」
結構簡単に済んだ。俺は部屋にもどって咲希と話をした。
「くっつかないようにしよう、猫耳消えるまで」
「うん。お姉ちゃんなんか怪しいもんね」
俺と咲希は有希からくっつかれないようにして猫耳が消えるのを待った。消えたら思いっきり抱きつこう。
10分くらいで有希の猫耳は消えた。俺は有希にハグした。
「ぎゅーっ!あったかーい!」
有希は喜んでいた。今は14:32。まだ夕飯も食べていなかった。