影山蒼
影山有希
影山咲希
以上3名
グリーン車では平屋席のため、貸し切り状態だった。有希は酒にものすごく弱く、俺は逆にとてつもなく強い。有希は前に、理科の実験でエタノール採取の実験をやったところ、ワインのエタノールの匂いだけで酔ってしまったらしい。俺はというと、今日酒をジョッキ3杯ほど飲んだ(飲みすぎたと思う)が、全く意識もあるし、それにふらつきも一切なかった。さすがに運転するのは自分からダメだと思うが、バレないようで逆に怖い。
俺は有希を寝かせて、デッキに行った。一応咲希に電話しておこうと思ったから。俺は咲希に電話をかけ、しばらく待った。
「もしもし、咲希──」
《お兄ちゃん!あと何分!》
咲希は大声で言った。今は武蔵小杉。あと35分ほどで藤沢。
「どうしたんだよ、あと35分だけど」
《35分?分かった!》
「咲希、どうかした──」
電話は切れてしまった。何があったんだよ。
「……有希はまだ寝てるか」
俺は有希の隣に座った。次は横浜。
(何があったんだろう。あんなに焦ってる咲希、始めてだけど)
普段は焦ることなく、どちらかというとマイペースみたいな感じ。そんな咲希が焦ってるということは、ただ事じゃない。
「んー?どうしたの?蒼くん」
「起きたか。何でもないよ」
とりあえず急いで帰ることにしよう。
23:53、定刻通り藤沢に着くと、俺は有希をお姫様抱っこで抱え、走り出した。
「え?え?蒼くん?」
「ごめん、急ぐぞ」
俺はいつもより明らかに速く家に向かった。
家の少し前にある曲がり角に咲希はいた。俺は有希をおろした。一方の咲希は何かに絶望したかのように立っていた。
「どうした、咲希──」
咲希は俺に向けて風魔法を放ってきた。俺は吹き飛ばされ、背中を強く打ち付けた。
「咲希?」
「…どうしたんだよ、咲希」
俺は立ち上がって咲希のところに立った。
「咲希。魔力か、原因は」
「多分…?あんまり分かんない」
魔力の暴走かなんかだろう。一定の数値を超えたのか。
「そっか。咲希、おいで」
有希は「むーっ」と口を尖らせているが、咲希は少し考えたあと、すぐに来た。
「あっ…」
咲希は猫耳フードを被った。
「近かった…」
「そうか?じゃあ有希、おいで」
「にゃーっ」
有希は俺のバランスが崩れるほど強く抱きついてくる。
「有希はこんなんだけど、咲希は?」
「うぐぐ…」
咲希も有希と同じように抱きつくが、少し遠慮がちだった。
「もっと遠慮なしにくっついちゃっていいんだよ」
「だって私、妻じゃないし…」
「いいよ?別に私の浮気相手じゃあるまいし」
有希もフォローしてくれたことから、咲希の抱く力が少し強くなった。
「よぉし、帰るぞ!咲希!」
「うん!」
咲希は先に家に帰っていった。だじゃれ?ちがうちがう。たまたま出ちゃっただけだ。
「蒼くん、行こ?」
「あぁ、行こうか」
俺は有希と手をつないで家に帰った。
日は飛んで12月。神奈川は雪も降らないからただ寒いだけ。今日の最高気温は10℃。咲希は家に籠り、有希は布団から出てこようとしない。俺も放っておいてるけど。一方の俺はというと、寒いのに耐えれずにこたつの中に肩まで入れて休んでいた。
「あぁ、蒼くんずるーい!」
「寒いし。外出たくないっす」
「だーめ!出て!」
「嫌だ。俺は出ない」
子どもっぽいやり取りをしていると、咲希が言った。
「じゃあ私も入る!」
「それだったらいい」
咲希はこたつの中に入ってくる。暖かいかいからこれでいい。
「あったかいねー」
「お前は猫耳フードあるから暖かいだろ」
「これはファッション!暖をとる為じゃない!」
フードは普通暖かくするためのものだろ。上着だし。
「ここで寝たらどうなるかね」
「出れなくなる?」
「やっぱり?」
出れなくなるよなぁ、こんな暖かかったら。出る方が難しい。
「お姉ちゃんも暖かそう」
「寝てるけどな」
「出れなくなってるのかな」
「寒くてね」
俺と咲希は笑いあっていた。有希は夢の中でどんなことしてるんだろうなぁ。草原をスキップしてそう。
「みかん!」
「じゃあ取ってくるからキャッチして」
俺はのそのそとこたつから出て、みかんを14個咲希に投げた。全てキャッチすると、俺はこたつに戻った。座って食べるように2人とも正座かあぐらをかいている。
「こたつにはみかんだねー」
「そうだな」
2人でみかんを食べていると、有希に申し訳なく思えてくるけど、起きてくるだろ、いつか。起きてこないと俺カップラーメン生活になるし。俺はみかんを食べながら考えていた。有希のことも心配だったし。