転生したら番傘!?あ、持ち主可愛いなら良いです 作:微 不利袖
僕はしがない大学生。...名前?今はもういらない、かな。なんでって、もう死んじゃったから...ん?ならなんでこうやって考えたり受け答えできるのか、だって?あぁ、よく分からないけど、転生?したみたいなんだ。ね、ほんと漫画みたいだよね、この状況
ん?どんな人に転生したの?...うーん、なんというか...人じゃないんだよね。む、最近はスライムになったりだとかそういうのもあるし普通じゃないかって?まぁ、そうだけどさ...
いや番傘は嘘じゃん
ぐぎゅるるる~...
「あぅー...お腹空いたよぉ...」
わざとらしい程に腹の虫が大きく声を上げる。綺麗な水色の髪に、特徴的なのは左右で色の違う瞳...所謂オッドアイというやつだろうか。髪と同じ水色に、それとは反対の赤色となんとも奇抜な様相...普通に可愛らしい......まぁ、なんと言うか...そんな空腹で涙を溢さんとして、僕をさしている少女が番傘...まぁ、僕の持ち主である、多々良小傘...さん?だ
因みに、僕はというと...普通の番傘、とは言えない。これまたなんとも奇抜な...まるで今、畑から引っこ抜いてきたさつまいもみたいな紫。そして何故かついてるおっきな目玉に口、そこからはみ出るほどの大きい舌!......何ですか、これ。...あれかな、唐傘お化け風のなんかおしゃれな番傘になってるのかな、僕...
...というか小傘さん、大丈夫なのかな。これまでもしょっちゅう空腹で道端に倒れ込んでるし...確かに心配ではあるけど、所詮今の僕は番傘。喋るなんて......いや、出来ないのかな...?良く考えたらちゃんと口付いてるし...傘なんて喋れんやろ!って思ってやろうとすらしなかったけど...よし、それじゃ試しに
「あー...てすとてすと、あ!声ちゃんと出「ひぎゃあああ!?!?」へ?あ、ちょ、ってぐえっ!?」
開けると思っていなかった口を開き、声が出ることに僕が驚いたところで悲鳴があがる。何事!?と思う間もなく身体を襲ったのは浮遊感...そして衝撃。まぁ、簡単に言えば投げ飛ばされてしまった。あいたた...
「なっ!?傘っ、しゃべっしゃ、しゃべべべって!何!?なんで!?」
小傘さんに目を向けると、完全に腰を抜かしているのか地面に座り込んだまま、突然喋り始めた僕にビビり散らかしている。いや、まぁ...持ってた傘が言葉放ったら誰だってビックリするか...
「え...あ、あの驚かせてごめ「やっぱりしゃべってるぅ!?ひいいぃ...」......どうしよ」
これは...ちょっと時間掛かる...かも
「へー!そうなんだ!」
「うん...ごめんね、驚かしちゃって」
めちゃくちゃ聞き分け良かった。...まぁ、転生しました!って言っても信じてもらえないだろうから適当に、僕は付喪神的なやつだよ!いつも大事に使ってくれてありがと!って言ったら、なんか納得してくれたようだ。こんなに信じてくれるなんて...ちょっと心痛い...
ついでに小傘...ちゃんで良いかな...に話を聞いてみたところ、妖怪、らしい......ん?え、しかも唐傘お化け...?頭の先から足の先までどこからどう見てもただの少女では?どっちかと言えば僕が唐傘お化けじゃ...?と思ったけれど、この世界では普通らしい。それにしても妖怪かぁ...あ
「そう言えば、お腹空いてたんじゃ無かったっけ」
「あ」
ぐぎゅるるる~...
「思い出したらお腹がぁ~、うぅ...」
...これ言わなかったら大丈夫そうだったのかな...?ひとまず、妖怪さんでもお腹は空くらしい。今は夕方で、夕飯には少し早いけど...でもご飯かぁ...どこかに食事処でも有れば良いけど、こんな林道沿いには無いかな
「え、あ...ご、ごめんね...えっと、ご飯は...」
「む!しーっ...獲物が来たよ!」
「え、獲物...?」
心配する言葉が全て出切る前に、小傘ちゃんの目の色が変わる。そのまま近くの林の陰に隠れると鼻に人差し指を当て、その獲物、が近づいてくるのを待つ...妖怪、獲物、ご飯...え、まさか
「来た!よーし...」
「やっぱり人間...」
嫌な予感は的中。着流し姿の男性が一人、帰路を急いでいるのか、小走りでこちらに向かって来るのが見えた。このまま近くに来たところで襲いかかるつもりなんだろう...少女の姿とはいえ妖怪、やっぱり恐ろしい存在なんだろう
元は人間の僕。流石に現場を見るのは精神的にキツい。大きな単眼を閉じ、耳を...塞ぐ耳も手も無かったや...スプラッタはあんまり得意じゃないんだけど、できるだけ痛みを感じないようにしてあげて欲しい...
近づいて来る足音だけが情報として入ってくる。嗚呼、帰路を急ぐ理由は知りたくない。きっとこの人にも帰りを待つ家族がいるんだろう...ただ、この世は弱肉強食。今度は生態系の上の上に生まれ変われることを祈ります...名も知らぬお方よ
「よし、今だ!」
(南無三!)
ターゲットが射程圏内に入り、いよいよ妖怪の食事、が始まる。飛び出した後、塞ぐことの出来なかった耳に入ってきたのは断末魔でも、血飛沫の吹き出る音でもなく...
「おどろけーっ!」
「はい?」
なんとも間抜けな言葉だった
「うぅ...また驚いてもらえなかったよぉ......」
「うーん、成る程...」
なんとも間抜けな狩りが終わり、色々と事情を聞いた。なんでも、人に驚いてもらうことでお腹を満たすことができるらしい...妖怪って不思議ですね。因みにさっきの男性には軽くあしらわれてしまいましたけどね
ただ、普通の食事でも良いらしい。ならそっちでも、と思ったけれど...確かに驚かすだけでお腹が膨れるならそっちの方が楽かもしれない。驚かせれば、だけどねぇ...
「あれじゃ驚いてもらえないのも仕方ないかな...」
「そんなぁ...うぅ...」
おどろけー!...じゃ、ね。しかも大人の男の人...流石にそれじゃ驚いてもらえないんじゃないかな...
...というか、傘が持ち主を慰めるって絵面、なんかちょっと面白いですね。奇っ怪も奇っ怪ですし
「お家って近いかな...?」
「...近くのお寺にお世話になってる...時々だけど」
お寺...ん?妖怪がお寺に?...良く分かんないけど...時々でもお世話になっている、ということならまぁ、大丈夫なんですかね。滅される、とかそういうことになったらちょっと怖いですけど...
さて、座り込んでしまっている小傘ちゃんの手を引いて、お寺まで行きたいんですけど...生憎手は付いてないし、足もなんか一本しかない。ほんとに絵に描いたような唐傘お化け、ですね...
ん?というか...小傘ちゃんも唐傘お化けだって...でも、人となんら変わらない姿形ですし...僕ももしかしてなんか念じたりしたら...?いや、まさか...
ぽんっ
「...あれ?」
「...ほえ?こ、子ども!?」
ぽんっ、という音と一緒に目線が変わる。何事か、と手を見て...え、手...?いや、というか人型!?自分の身体中を見る。姿形は人、そしてなぜか紫色の着流しに...同じく紫色の笠を頭にのせ、足には下駄。...なんかひと昔前の格好ですね、さっきの男性と言い...いや、というかまさか
「...傘?」
ぽんっ
「へ?...わ、私の傘!」
「...人」
ぽんっ
「わっ!さっきの子ども!」
「...あー、成る程」
なんか、そういう事らしい。やろうと思わなきゃ何も進展しない、なんて良く言いますけど...いや、こんな進展ある?まぁ、それはともかく...
「小傘ちゃん、で良いですかね...?」
「ふぇ?えっと...う、うん」
ぐぎゅるるる~...
「あっ」
「...お寺、行きましょう」
色々ありすぎてお腹空きました...
次回、妖怪寺!?のんびり書いていきますので、また良ければどうぞ!