転生したら番傘!?あ、持ち主可愛いなら良いです 作:微 不利袖
「えーっと、こっちで合ってる...かな?」
「うん、このまま真っ直ぐで良いよー」
林道を歩き、時折道の確認をしながら件のお寺へと向かう僕と小傘...ちゃん。辺りは既に暗くなっており、空を朱色に染めていた夕日も山の向こうへその身を隠しきっていた
...というか、呼び方だったり喋り口調だったり、ちょっと定まりませんね...。生前なら外見的には明らかに年上なので、砕けた口調でも良いんですが...今、僕は所謂ショタ?なので色々と難しいところですね...まぁでも
「うぅ~...お腹空いたねー」
「...そうだね」
そんなことは意に介せず、な様子ですね。ま、そのうち慣れるでしょうし今は早いとこお寺に行って、何か食べさせてもらいましょう
「ん?あれは...」
「あ、見えてきたよー!」
道の先...まだ少し遠いけど、林の中に明らかな人工的な...妖工的?とでも言った方がいいのかな...そんな建物が見えてきた。近くまで行くと門の脇にはずらーっ、とお地蔵様が横一列に並んでいるのが見え、その前にはお供え物も幾つか置かれて......いや、まさか
「小傘ちゃん...もしかしてお供え物盗ろうと...」
「むーっ、そんなことしないもん!......たまにしか」
...なんだか可哀想になってきた。妖怪って皆そんなにひもじい生活をしてるんだろうか...ともあれ、ひとまず目的地に着いたことだし...お寺って勝手に入っても良いんだろうか。まぁ、その辺りは何度か通っている小傘ちゃんに任せようかな
空腹に堪えかねたのか、小傘ちゃんは門をくぐり抜け本殿へと続く石畳を進み......途中で90°進行方向を変えた。え、ちょ...?
「小傘ちゃん、本殿はあっちじゃ...」
「んー?ご飯はあっちだよー?」
そう言って指差すのは本殿...では無く、そのお寺に併設されていた墓地、だった。え、お墓...?ということは...
「やっぱりお供え物...」
「ちーがーうー!!」
「つーん」
「...小傘ちゃん」
「つーん」
「......」
この調子である。いや、からかってみたくなったとはいえ、少しやり過ぎてしまった...へそを曲げてそっぽ向いたまま、小傘ちゃんと僕は手頃な墓石の影に隠れている
どうやら、ここでまた誰かを驚かそうとしているらしい...確かに、暗い墓地なら大体のことなら驚いてもらえそうだし。小傘ちゃんでもなんとかなるだろうけど...
「ご、ごめんね...もう言わないから...ね?」
「...もう言わない?」
「うん、言わない」
「......ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「......分かった。私も拗ねてごめんね...」
長きに渡る交渉の末、どうにか和解成立。というか小傘ちゃん、こんなに純粋で良い子だけど妖怪なんですよね...だから人を驚かすのもあんまり得意じゃないんですかね
「ん、しーっ!来たよ...」
「えっと...あ、子供...?」
そんなこんなで獲物が来るのを待っていると、また足音が...二つ、そしてその音の主は...またも和装の子供。僕の今の背格好と同じくらいの男の子、そしてそれより一回り程小さな女の子が二人、行灯を手にこちらへと歩いて来ていた。んー...この世界は僕がいた時代よりかなり前なんだろうか...
「なんでこんな時間に子供が墓地に...?」
「ん?なんかねー、肝試し?でよく来るの」
肝試し...昔でもそういった遊び、というか度胸試しみたいなのは子供の間でやられてたんですね。夕方の時は失敗してたけど、場所が墓地で相手が子供ならお腹も膨れるんじゃないかな...あ、というか
「僕、傘になった方がいいかな?」
「あ、そうだった!うん、お願い」
多分いつも僕...不気味な番傘を振り回して驚かしてるだろうしと聞いてみたところ、やっぱりそうらしい。ひとまずは、と
ぽんっ
「わっ...まだびっくりしちゃうや」
「あはは...あ、もう近いよ、小傘ちゃん」
僕が傘になって準備万端。後は小傘ちゃんのタイミングと技量次第...間合いは十分、射程距離までは後四歩...後三...二、一!
(今だ!)
標的を捉え、番傘を開き、声を上げてその子供たちの目の前へと躍り出る。タイミングは完璧、位置的にも突然視界に僕と小傘ちゃんが現れる角度、そんな絶好のチャンスで...!!
「おどろ、えっ?ふぎゅっ!?」
盛大に転んだ
「うぅ~...もうダメだよぉ~...」
「だ、大丈夫だよ。今度はできるから...ね?」
もう、辛い...小傘ちゃんが不憫でならない。因みにさっきの子供たちにはビックリして貰うどころか、あ、変な傘のお姉ちゃんだー...って言われた。いや、変な傘だけど...
そんな訳でどうにか小傘ちゃんを慰めながら、次の獲物を待つ。なんでも他の子供も肝試しをやろうと、墓地の近くに待機しているらしい...まぁ流石に何回もやれば一回くらいは
「おどろけー!」
一回くらい...
「うぅ...おどろけー!」
一回...
「おどりょ...違う!おどりゅ...じゃなくて、おでろ...うぅ」
......
「お、おどろいてよぉ...」
...えっと
「ひっく...ぐすっ...」
待って待って待って!タイム!ちょっとタイム!審判、タイムお願いしまーす!
「ごめん!次の子たちにちょっとだけ待つように言ってくれるかな!?」
「分かったー」
「変な傘のお姉ちゃん泣いてるー、だいじょーぶー?」
「うえぇ...」
「その同情トドメになっちゃうからやめて!」
ぐぬぬ...こうなったら...
「僕がやるしか...」
「...なんで俺だけ一人なんだよ」
行灯を持ち、そんな愚痴みたいな言葉を吐く。寺子屋で最年長だからって...まぁ、俺より前に行った奴らも大丈夫だったみたいだし、とくに幽霊やらも出るわけじゃあるまいし...とっとと奥まで行って帰るか...
「......ん?」
ザッザッ、と歩く自分の足音以外に何かが聞こえる。なんだ...?妙にそれが気になってしまい、その音の出どころを探す。多分こっちに...あ
「...ひっく、ぐすっ...」
「...子供?」
音の正体は声...それも小さい子供が泣く声、だった。うずくまったまま、自分の膝を抱えて泣いている...寺子屋の子供...?もしかして、誰かとはぐれちまったのか?とりあえず...
「お、おい、大丈夫か?何泣いてるんだ?」
「ぐすっ...お兄ちゃんと...はぐれ、ちゃってぇ...ひっく。暗くて、怖くて...」
どうやら、兄貴と墓参りに来たのは良いもののはぐれた後に日が暮れて、怖くなって動けなくたっちまったらしい...
「そうか...一緒に行くか?」
「ひぐっ...で、でも......あ、お兄ちゃん...?」
「え?」
突然、俺の後ろの方を見てそう溢す子供。思わずそのまま振り返り、後ろを見る...でも、そこには誰もいなかった。そりゃそうだ。俺が墓地に入ってから、俺以外の足音なんざ無かったし...
「おい、別に誰も...」
どしゃっ
「...え」
居ないぞ、と続く言葉は何か、物が落ちる音と目の前の状況に遮られる。居ない。誰も居ない。少し目を離しただけ...なのに、さっきの子供が居ない...勿論、ここから走って何処かへ行った...そんな訳ない。走る音なんて...な、なんで...
とっ
「なっ!?...か、傘...?」
足に何かが当たる。軽い音、その正体は...傘だった。何かが落ちる音...それは多分傘だったんだろう。突然、それが俺の目に偉く不気味に映った。血の気が引く。背筋がゾッとする。思わず一歩退く
支えを失い、ころころと転がる傘...少しして、地面の凹凸に引っ掛かり傘はその動きを止める。いや、待て...一体なんで傘が...それ以上を考える前に、思考が止まる
「...は?」
傘が目を開いた。ギョロリと大きく血走った不気味な単眼はしばらくキョロキョロと辺りを見回す。そして...
「ひっ...!?」
目が、合った。こちらを見た。なんで?なんで傘に目が...それがこっち見て...え、なんで?なんでなんでなんで!?...い、嫌だ...逃げ、逃げなきゃ!逃げ「お兄ちゃん...?」...は?今...喋っ...?
「ぉ、に"いぃぃぢゃあぁあ"あ"あ"!??!!?」
「ひっ...あ"あ"あ"あ"!?」
「ふぅ...これで良いのかな?」
行灯を落とし、脱兎の如く逃げていった少年。...あ、お腹...膨れてる。ほんとだったんだ、小傘ちゃんの話...というか、これで小傘ちゃんのお腹も膨れるのかな...?えっと
「小傘ちゃん、お腹大丈夫?」
「...しょう」
「?こ、小傘ちゃん...?」
わなわなと手を震わせ、何かぶつぶつと言葉を紡いでいる...けどちょっと聞こえない。えっと...小傘ちゃん?しょう...なんとか、と言ってるけど...
心配していると、突然両手をガシッ、と掴まれて酷く興奮したような面持ちで言葉を掛けられる。その言葉に...
「し、師匠と呼ばせて下さい!!」
「え?...えぇっ!?」
今日一番驚かされた
ここまで読んでくれてありがとうございます!のんびり書いて行きますので、また良かったら読んでください!