嬉しかった。
実弥に好きだと言われて、心臓が飛び出てしまいそうな程嬉しかった。
私はもう随分と前から実弥のことが好きだった。
実弥の優しいところ、人を大事に思うところ、強いところ、笑った顔。
どれも愛おしく思えて、ずっと実弥の隣にいたいと思っていた。
実弥も同じ気持ちだったのが分かって、本当に幸せ。
神様は私を見捨ててはいなかったんだ、と思うくらい。
あの日、父さん達を殺され、実弥に出会った。
それから鬼を狩りながら生きてきて、沢山の人の悲しみと苦しみを見てきた。
悲しい世界を終わらせたい。実弥と一緒なら、きっと何でもできる。
ずっと、実弥の隣で笑っていたい。
ずっと、実弥と一緒に生きていきたい。
辺りはすっかり日が落ちてきて、鬼が活動する時間へと変わっていく。
「行くか」
「うん」
私は実弥の手を握って、再びあの町へと向かった。日が落ちると、町は不気味なほどに静まり返っていて、人の姿はなかった。そればかりか、どの店も閉まっていて、異様な空間になっていた。
「なんで誰も外にでていないんだろう」
「……ゆず、気をつけろよ」
「実弥もね」
「ハッ、お前が俺の心配をする様になるとはな」
「私、もう5年も実弥と組手してるんだよ?そう簡単にやられたりー……
そう言いかけた時だ。急に私の地面だけがなくなり、地面の中へと体が落ちていくような感覚だった。
―なにこれ!?
最後に見たのは私に手を伸ばす実弥の姿だった。必死に手を伸ばしても、あと少し届かず、私の名前を呼んでる実弥の姿を目に焼き付けて、いつの間にか私は意識を失っていた。
「ゆず!!ゆずっ!!!!!!!くそっ!!なんなんだこれは!!!」
―目の前でゆずが消えた!!!これが鬼の力なのか!?
俺は力なく拳を地面にぶつけた。
「くそっ……ゆずっ……!!!!!」
―必ず助ける。必ず……!!!!!!
すると「少年」と、背後から声をかけられた。振り返ると、そこには昼間会った、盲目の男だった。
「哀れなり。せっかく忠告してあげたのになんとも哀れなり。」
「うるセェ!!!てめぇ、鬼狩りなんだろ!?鬼の情報なんかあるなら教えてくれ!!!早くしねぇとゆずがっ!!!」
「昼間に一緒にいた娘が攫われたか」
「今、俺の目の前でこの地面に!!!!」
「そうか。一緒にいたのに守れなかったのか」
「!!!!」
その男の言葉は酷く俺の心を抉った。
「そうだ、俺は一緒にいたのにゆずを…守れなかった。大事な、俺の……命より大事な奴なのにっ」
「……少年よ。己の弱さを知りなさい。そして、強くなりなさい。下ばかり向いていないで立ち上がりなさい。守るために、刀を握りなさい。戦う決意があるなら、私が力を貸そう。少年よ」
「てめぇは一体……」
「君は聞いたことがあるか?鬼狩り専門の組織、“鬼殺隊”のことを」
「鬼殺隊……鬼狩り専門の組織…?」
「そう。私は鬼殺隊の隊員だ。今回、この町で、若い男女が夜な夜な消えているという情報を掴んでやってきた。君たちも気付いていただろう?町の人の可笑しな様子に」
「あぁ」
「どうやら、ここに巣くう鬼は、子供を人質にとり、自分のことを話さない様にと命令をしていた様だ。そして、何も知らずに訪れた旅人や客人を夜になったら攫っていた、ということだ」
「なにィ!?」
「鬼は、人を食った分だけ特殊な力を使えるやつもいる。ここの鬼は、どうやら相当人間を食っている。その証拠に、地面に引きずり込む技を持っているということが分かった」
「くそっ、一層のこと俺も引きずり込んでくれりゃぁ話が早ぇのにっ!!!!」
「ふむ。鬼の居場所には大体検討はついている」
「なに!?どこだ!?」
「この町で唯一明かりがついている所だ」
辺りを見渡すと、全ての店が閉まっているのに1つだけ明かりがついている旅館があった。大きな旅館で、温泉もあるのか湯気が昇っていた。
「そうか。この町の人間に夜は出歩かない様、店も閉じる様伝えてるってわけか。1つだけしか開いてなかったら、ここに来るしかねぇもんなァ」
「さぁ、少年。鬼狩りの時間だ」
「あァ!!!!」
こまちゃんはしばらくお留守番。
危険なので餌だけ置いてかすみそうの花畑でお休み中。