仮面ライダーダブル&トリガー ~風都超常犯罪事件簿 ~   作:さじたりうす

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第1話 理不尽のF/バイト志望の秘封俱楽部

 

 

プロローグ

 

 

 

 

風都市一の大富豪・園咲家の広大な敷地内に轟音や咆哮が鳴り響く。

 

そこは園咲家が立ち上げたミュージアムという組織の敷地でもあった。

 

巨大かつ青いドラゴンのような怪物が敷地内の上空と地表を縫うように暴れ狂う。

「ゴォガァオオオオオッ!!!」

 

その暴れるドラゴンは、園咲家当主・琉兵衛がなる幹部クラスのドーパント、テラードーパントと分離したテラードラゴンだ。

 

ドーパントとは風都に跋扈する超常怪人の総称であり、園咲家が街で密造・密売をするガイアメモリーを人体に使用する事で変異する。

 

街で多発する超常犯罪の元凶の大半がこのドーパントによるものだ。

 

テラードラゴンの爪が向かう先には全身がレッドメタリックの青いゴーグルのようなマスクの戦士がいた。

 

レッドメタリックの戦士の名は仮面ライダーアクセル。

 

風都の街に存在する仮面ライダーと呼称される戦士の一人だ。

 

彼は手にするメカニカルなブレード・エンジンブレードの屈折式ジョイントを動かし、専用ガイアメモリー・エンジンメモリーを差し込む。

 

 

『エンジン!!エンジン、マキシマムドライブ!!!』

 

 

さらにグリップトリガーを握り、必殺技に相当する機構・マキシマムドライブを発動させた。

 

その間にもドラゴンの怪物は迫って来る。

 

刀身に炎を宿すエンジンブレードを構えた仮面ライダーアクセルは、かわす事なくエンジンブレードをバッティングするかのように攻め振るった。

 

「っ……!!!覇ぁああああっ!!!」

 

 

 

ザガギャアアアアッ!!!

 

 

 

「ガグゥオオオオオ?!!」

 

仮面ライダーアクセルの斬撃は迫るテラードラゴンの勢慣性力が加わり、右腕を破砕させる。

 

だが、僅かに斬撃が反れて撃破を免れたテラードラゴンは、更に暴れ狂うように低空を蠢き、仮面ライダーアクセルとすれ違う瞬間に尾を唸らせて仮面ライダーアクセルをドォガンと偶発的に吹き飛ばした。

 

「ぐあぁああああ―――?!!」

 

仮面ライダーアクセルは既にこの時点でダメージを蓄積させており、痛恨の極みたる一撃を受けてしまっていた。

 

地面に叩きつけられた彼に舞い戻るようにテラードラゴンが迫る。

 

その勢いとスピードからして次の攻撃を逃れる事は最早不可能なのは明白だ。

 

「ギョゴォアォオオオオッ!!!」

 

「ぐくぅっ……くそっ!!!」

 

手放されて地面に突き刺さったエンジンブレードを取りに行こうにも、ダメージがそれを阻む。

 

だが、次の瞬間、テラードラゴンは突如として明後日の方向へ向きながら、地面に繰り返し激突しながらのたうち回る軌道に変わった。

 

「?!!奴の動きが……変わった?!!一体何が……?!!」

 

その一方、園咲琉兵衛扮するテラードーパントに黒いマントを羽織る白い仮面ライダーが対峙し、一歩、一歩歩みを進めて迫っていた。

 

こちらは仮面ライダーアクセルとは対照的な状況にあり、既にテラードーパントはスパークを断続的に放ちながら苦しむ様相を見せている。

 

「ぐあっっ……ば、馬鹿なぁああっっ?!!こんなことがっっ?!!」

 

「エターナルのマキシマムの特性……敵視した対象のガイアメモリーの効力を無効にする……況してや俺とエターナルは運命的な適合性を持つ……」

 

 仮面ライダーエターナルいわく、テラーメモリーの特性を強制無効にされたため、テラードラゴンも制御不能に陥っていたのだ。

 

不敵なまでのオーラを放つ仮面ライダーエターナルは、マキシマムドライブを発動させるマキシマムスロットルとを兼用させるナイフ状の武器・エターナルエッジを握りしめ、威風堂々とテラードーパントに迫る。

 

羽織るマントとマキシマムスロットルが防弾チョッキのように装備された容姿が威圧感をより際立たさせていた。

 

「私のっ……ガイアインパクトの夢をっ……此処で終わらせてっ……たまるかあぁっ……!!!」

 

「……財団Xと共謀し、俺の故郷をガイアメモリーの実験場と化させていた。それを知った時、実に気に入らなく不快感を覚えた。そして、財団Xによる俺達NEVERとガイアメモリーを競合させる実験の後、競合に敗北した俺達にガイアメモリーを使わせたらどうかという話をもちかけ……」

 

仮面ライダーエターナルはテラードーパントに歩みを進めつつ、自らの回想の中にNEVERと称する彼の仲間達四人が、ガイアメモリーを挿入させられドーパントに変貌する光景を過らせる。

 

その上で園咲琉兵衛が再戦という名目でテラードーパントとして自ら彼らと戦う。

 

しかし、恐怖を増幅させるテラーフィールドに呑まれた事により、NEVER達は心身が恐怖に侵され壊滅してしまう。

 

更に追い討ちをかけるように頭部を変貌させながらテラードラゴンを召喚し、満身創痍の彼らを一網打尽にし、最終的にドーパント化を根本的に根絶させる効果・メモリーブレイクを引き起こさせた。

 

通常のメモリーブレイクは人間だった場合、多少の中毒性を残しつつも、元の人間に戻らせる。

 

だが、多様かつ乱用した場合や、死人から蘇生させたNEVER達の場合はメカニズムは不明ながら消滅に至らせる効果があった。

 

「貴様は死なないはずの俺の仲間達を死に至らせた……俺もまたあんたに完膚無きまでに叩きのめされた……そしてその直後に会った別の競合相手、超能力を持ったクオークスの連中のボスがまた理不尽なガイアメモリー使いだった。そのクオークスの中には逃げたがっている奴もいた……」

 

その回想に過るもう一つのドーパント・アイズドーパント。

 

浮遊する二つの眼球を駆使しながらの攻撃はもちろん、その他にも支配下に置いた対象、即ち逃走を望むクオークスのメンバーを死に至らしめさせる能力も持っていた。

 

仮面ライダーエターナルこと大道克巳は、見せられていたこの行為に耐えかね、宿る正義を滾らせながらミュージアムから財団Xに譲渡されていた変身装置・ロストドライバーとエターナルメモリーを強奪する。

 

そして、克己はロストドライバーを装着し、仮面ライダーエターナルに変身を遂げる。

 

この時、克己とエターナルメモリーの相性が最大値を叩き出し、赤いファイヤーパターン状の腕の色や手・足首の赤い装飾が青に変貌して、本来装備されていない黒いマントまでもが装備される。

 

克己はエターナルという最高の言葉も余る程の力を手にし、エターナルエッジで完膚無きまでのブーメランをアイズドーパントに食らわせ、サムズダウンを贈りながらこれを撃破した。

 

「……その最中に俺はこのエターナルの力と会った。ある意味あんたには感謝してるさ……その一件で故郷の風都がミュージアムの実験場になっていたことも知り、俺達はNEVER研究の第一人者のお袋とクオークスの唯一残っていた逃走懇願者のミーナと共に組織を脱出した」

 

その後克己達は追跡されながらも風都に行き着き、風都市内上空でイーグルドーパントと強奪した輸送機上で交戦。

 

輸送機上での激しい攻防の後に、仮面ライダーエターナルはマキシマムドライブで戦闘力を奪い、必殺技たるライダーキック・エターナルブレイクを見舞い、イーグルドーパントを墜落させた。

 

そしてそのイーグルドーパントは偶然にも風都タワーの風車軸付近に激突し、風都タワーを半壊させながらメモリーブレイクを起こした。

 

その回想を終えた時には、仮面ライダーエターナルはテラードーパントの目の前にいた。

 

「そしてようやく今俺はここに到達した。風都を実験場にしくさった貴様を叩き潰す時にな!!!さぁ、園咲琉兵衛……地獄を楽しみなぁっ!!!」

「ぐぅううう~っ、おのれぇっ……!!!」

 

仮面ライダーエターナルはテラードーパントの眼前でサムズダウンをすると、エターナルエッジでのマキシマムドライブの斬撃技・エターナルスラッシュを応用して滅多斬りにテラードーパントを斬り刻むエターナル・ラッシャー。

 

「はぁああああああああ!!!」

 

 

 

ズゥザバババババババンッッッ、ザガァギャギャギャガガガガギャッ、ザガァバババババババシュガアッッ!!!

 

 

 

「ぐぅぁああっ、あああああがっっ、がはぁあっっ……!!!」

 

怒り、信念、正義を賭した斬撃が幾度もテラードーパントを斬り刻む。

 

一方の仮面ライダーアクセルもまたテラードーパントによる制御が崩壊したテラードラゴンに迫り、アクセルドライバーのマキシマムドライブを発動させる。

 

「チャンスは今しかない……もう一度っ、振り切るぜっ!!!」

 

 

『アクセル、マキシマムドライブ!!』

 

 

アクセルドライバーのアクセルを幾度も回し吹かし、次第に連続で唸りはじめるエンジン音と共に仮面ライダーアクセルは炎を全身に纏いはじめる。

 

燃え上がる炎が猛りに猛りを重ね、唸るエンジン音も高速に唸っていく。

 

そして仮面ライダーアクセルはテラードラゴンに飛び上がり、必殺の後ろ回し蹴り式のライダーキック・アクセルグランツァーを放った。

 

「はぁあああああぁっ!!!」

 

 

ヴゥッッ、ヴンヴンヴンヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ―――

 

ヴゥゥウウウウウンッッ!!! ディキィキュカァアアアアアッ!!!

 

 

 

タイヤ跡を模した蹴り軌道と、タイヤのスキール音を模した攻撃音と共にアクセルグランツァーがテラードラゴンに炸裂した。

 

 着地した仮面ライダーアクセルは顔の一部を削り取られ爆破寸前のテラードラゴンに背を向けて言葉を放つ。

 

「絶望が……お前のゴールだ……!!!」

 

 

 

ドォガァォオオオオォオオオオォオオオオッ!!!

 

 

 

大爆発するテラードラゴン。

 

主たるテラードーパントもまた爆破寸前の所に更なるマキシマムの必殺技・エターナルブレイクを受ける。

 

「うぉらぁあああああっ!!!」

 

 

 

ドズゥガァアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

 

青い炎を纏いながらやや下向きに飛び蹴りを打ち込み、そこから捩じ込むように蹴りを食い込ませる。

 

「ごぉぉおおおおおおおおおっ……?!!」

 

「らぁあああああっっ!!!」

 

 

 

ドォガォオオオオォオオオオン!!!

 

 

そして仮面ライダーエターナルはフィニッシュに跳躍の重い反動をテラードーパントに与えてぶっ飛ばし、着地した。

 

「おおおおおおっ……おおおっ、おおおっ!!!」

 

もがき苦しむテラードーパントに背を向けながら、仮面ライダーエターナルはサムズダウンの仕草を送った。

 

「さぁ……地獄を愉しみな!!!」

 

「あぁあっ……あああっ―――!!!」

 

 

 

ドズゥガァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!

 

 

 

大爆発を起こしたテラードーパントはメモリーブレイクを起こし、園咲琉兵衛から排出したテラーメモリーが砕け散った。

 

「はぁ……はぁ……はぁっ……がはぁっ―――」

 

仮面ライダーエターナルによる二連の豪快なメモリーブレイクは、初老の園咲琉兵衛に多大なる付加を与えるに十分過ぎたが故に、彼を死に至らしめた。

 

大敵を撃破した仮面ライダーアクセルと仮面ライダーエターナルはほぼ同時に一点を見つめた。

 

その先にはもう一人のドーパント・ユートピアドーパントと殴り合う仮面ライダーがいた。

 

その仮面ライダーこそが最も風都を守り続けている仮面ライダー、仮面ライダーダブルだった。

 

そして今、仮面ライダーダブルは最強フォームであるサイクロンジョーカー・エクストリームフォームとなっていた。

 

一方の対するユートピアドーパントもまた極めて高い適合性を有する財団Xの幹部クラスの男・加頭準。

 

究極と究極の力の激突。

 

だが、イニシアチブは仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリームにあった。

 

 

「らぁあああああっ!!!」

 

 

 

ドォガァアアッ!!

 

 

 

「ぐあっっ……おぉおおおおおおっ!!!」

 

 

 

ゴォッッ!!

 

 

 

互いに交互に繰り出される拳だが、ユートピアドーパントの拳は仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリームが左手に握られているシールド「プリズムビッカー」により受け止められ、既にユートピアドーパントを押していた。

 

「ミュージアムと裏で共謀し、散々風都を悲しませた真の元凶!!!況してや風都市民に直接手をかけやがった!!!これ以上風都を汚し続けるなんざ、俺が……いやっ、俺達が絶対に許さねぇっ!!!」

 

この時点でユートピアドーパントは風都市民に直接手を出しており、手に掛けられた市民達は顔がモザイクをかけられたようになり、意識不明にさせられていた。

 

その中には仮面ライダーダブルである私立探偵・左翔太郎とその相棒・フィリップ(園咲来人)と関わりがある人物達もいた。

 

仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリームの右拳のドゴォンと怒りを込めた重い一撃がユートピアドーパントをぶっ飛ばす。

 

「ぐあはっ!!!くぅっ……おのれぇっ!!!」

 

ユートピアドーパントは再び立ち上がり、拳を打ち出す。

 

再度プリズムビッカーでこれを受け止める仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリーム。

 

直後にユートピアドーパントの左拳が入るが、これも受け止めた。

 

「くっくくく!!!かかったな!!!貴様の希望という生体エネルギー、吸い付くさせてもらう!!!」

 

ユートピアドーパントの左腕から仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリームのエネルギーを奪う力が作用する。

 

ユートピアドーパントの特性は相手の希望や感情といった精神力を吸い上げ、自らのエネルギーに転換する能力を持つ。

 

だが、間もなくしてユートピアドーパントはスパークを帯び始めながら苦しみ始めた。

 

「ふふふふ……うぐぅ?!!な、なんだとっ……ば、馬鹿な?!!ぐあああああ……あっ??!」

 

 それは膨大なエネルギーの逆流だった。

 

 ユートピアドーパントの左腕は幾度も小爆発を起こし次第に怯ませていく。

 

「今の俺達にはな……この風都を想う気持ちが、風都の街そのものを傷つけられた怒りで溢れてんだ!!!てめぇなんかにその想いを受け止めきれるわけがねえぇっっ!!!」

 

 強烈な蹴りが入りユートピアドーパントが吹っ飛ばされ、エネルギーオーバーした左腕はボロボロになって白煙を上げていた。

 

「ぐうううっ~……これがっ、ダブルの力?!!まだだぁ!!!まだ終わらん!!!うぐおおおおおお!!!」

 

 体を起こしながら天に唸り、ユートピアドーパントは持てる全エネルギーを放出しながら舞い上がる。

 

 その間にも仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリームは瞬時に対処法を見極め、プリズムメモリーをマキシマムスロットルに差し込む。

 

 

『プリズム!!マキシマムドライブ!!』

 

 

「これが最も有効な攻撃だ……いくよ、翔太郎!!!」

 

「ああっ!!!キメるぜ、フィリップ!!!」

 

 エクストリームメモリーと合体したダブルドライバーの左右のスロットルジョイントを内側に可動させ、また瞬時に開かせ、専用のマキシマムドライブを発動させる。

 

 

『エクストリーム!!マキシマムドライブ!!』

 

 

 ユートピアドーパントがドロップキックを放つ態勢になった瞬間に仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカー・エクストリームも舞い上がり、マキシマム必殺技を繰り出す。

 

「ダブル・プリズム・エクストリーム!!!!」

 

 両者の莫大なエネルギー同士が空中で激突して爆発を巻き起こすも、ダブル・プリズム・エクストリームはそれすらも突破し、一発で80tに及ぶ強烈なキックを連続でユートピアドーパントの胸部に浴びせ続ける。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「ぐうぅああああああぁぁぁあああっ!!!」

 

 

 

 ドォギュドドドドドドドドドドドドドドォォォンッ……ドォグガアアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 

 そして強烈なメモリーブレイクの大爆発が巻き起こり、園咲家の豪邸の上空に炎の華を咲かせその轟音もまた風都の街を駆け巡った。

 

 

 

 …

 

 

 

それから幾つもの年月が流れた風都市。

 

優しい風に気まぐれな風、荒々しい風、恐怖の風、悲しき風、癒す風……様々な表情の風が今日も吹く。

 

街の至るところに風力発電システムが設置されており、その中でも巨大な風車が特徴の風都タワーは今日も街を見守り続けている。

 

以前にイーグルドーパントの落下で破壊された風車は完全に修復されていた。

 

だがその一方で、かつての園咲家組織暗躍が残した闇、ガイアメモリーが絶えず横行していた。

 

ガイアメモリーは使用することにより、使用者を怪人・ドーパントとへと変異させる。

 

ドーパントは様々な凶悪犯罪や事故・災害を発生・誘発させ、未だに街の犯罪要因の代表格に君臨していた。

 

園咲家の組織・ミュージアムから無尽蔵に売買、もしくは第三者から流出したガイアメモリーによる犯罪は、後を立たない。

 

更に昨今、風都市内及び近郊の街においては、ドーパントとは異なる幾つかの種類の怪人が引き起こす超常犯罪も発生していた。

 

街の日常と背中合わせの超常事件が蔓延る中、それらに対して挑む戦士達の存在する。

 

彼らは風都の人々に「仮面ライダー」と呼ばれていた。

 

 

 

 

 

マンションが立ち並び、深堀の浅い川が流れる風都の街の一角にある鳴海探偵事務所。

 

以前はカモメビリヤード場という施設の二階にあったが、老朽化の為に取り壊された為、今は新たに風都の公共施設の一つであるウインドシップ風都の近所に建てられ、一新されていた。

 

二階建ての事務所になった一階相当のスペースには、バイクやクルマが置けるスペースもある。

 

実は以前よりミュージアムの復讐の為に仮面ライダーのバックアップに動いていたシュラウドこと園咲フミネを中心に、協力者達が予め新たな場所を確保していた為、旧事務所と同じく巨大格納庫も存在する。

 

現在フミネは鴻上ファウンデーションという大企業の生体研究所に身を置き、合法的な無毒素のガイアメモリーの開発研究やその他のメカの開発に携わっていた。

 

奇しくもそこには財団Xから逃れてきた死者蘇生研究の第一人者・大道マリアも身を置いていた。

 

鴻上ファウンデーションは鴻上会長兼社長の意向で「欲望に従順な姿勢」を評価するがモットーな故に彼女達は日々自由に研究・開発に時間を割いている。

 

無論、マリアの方は息子である大道克巳の為であり、元クオークスのミーナもまた、克己のバックアップの為にマリアの助手として勤めていた。

 

再び探偵事務所。

 

探偵事務所の中では鳴海探偵事務所の私立探偵・左翔太郎がブラックコーヒーを手に日差しに射たれながら想いふけっている。

 

彼は街のアパレルブランド、「ウインドスケール」をこよなく気に入っており、服装も全てウインドスケールで占めている。

 

(昼下がりの午後はやはりこれに限る……下手なタバコなんかよりも、よっぽどグッとくる……ま、俺はタバコ吸えな……吸わないが……)

 

「いつまでオノレに浸っとんねん!!」

 

突如と翔太郎のハット目掛け、緑のスリッパと突っ込みが炸裂する。

 

同時に探偵の金字塔の芸・「コーヒーぶはー!!」も炸裂した。

 

「ぶーっ?!なにすんだよ?!!人のハードボイルドなコーヒータイムを邪魔しやがって?!!」

 

「逆ギレしてんじゃないわよ~!!何がハードボイルドなコーヒータイムよ?!!早く!!は・や・く報告書出しなさい!!!」

 

そのスリッパの主は鳴海亜希子。

 

ここ、鳴海探偵事務所の若き所長であり、本来の所長だった今亡き鳴海荘吉の娘でもある。

 

亜希子は持ち前のハイテンションに乗せて翔太郎をぎゅーぎゅー押す。

 

「あんたがやってる報告書は古っくさい偽造報告書じゃん!!本来の報告書作ってキリにしてからにしてって言ってんじゃん!!」

 

「な、何が偽造だ!!あれはな!!依頼を終えたお決まりであれだけは絶対譲れねーんだっ!!」

 

「ムキー!!また逆ギレしくさって~!!私は所長よ~!!所長なのよ~!!」

 

「ぐえ~!!う、ウインドスケールのネクタイがシワになるぅ~!!」

 

「やかましい~!!」

 

亜希子は翔太郎のネクタイをぎゅーぎゅー引っ張りながらスリッパを連打する。

 

こんなハードボイルドとは程遠い漫才のような光景もまた鳴海探偵事務所のいつもの光景だ。

 

「ああっ!!後そー、そー!!今日、ココでバイトしたいってコが来るのよ!!」

 

「は?!!バイト?!!聞いてねぇぞ?!!」

 

「うん、今伝えたんだもん。テヘペロ☆」

 

「おい、亜希子ぉおおお!!!」

 

その鳴海探偵事務所の前に、翔太郎と同じくウインドスケールの帽子と衣装を着た黒髪の女子と綺麗な明るいブロンドヘアーの異国の女子が二人で佇んでいた。

 

「鳴海探偵事務所……うん!間違いなくここだよ、メリー!!!」

 

ウインドスケールの帽子の女子は風都大学の生徒らしく、相方の異国の女子・メリーにニヤリとした笑みを浮かべながら言う。

 

「警察や他の探偵事務所では扱わない不思議な事件の依頼も引き受けてる探偵事務所……蓮子、私達本当にここでバイトするの?」

 

「うん!!秘封倶楽部としても、精通しうる要素がある数少ないバイトだからね!!秘封と小遣い稼ぎが両立できるし、それにいつかあたし達で超常現象専門の秘封探偵事務所を立ち上げる夢もあるし!!」

 

ウインドスケールの帽子の女子、蓮子はメリーにウインクすると、鳴海探偵事務所に向けて歩み出す。

 

「もう、蓮子ったら……そもそもそれって需要あるの?」

 

「あるわよ!!この街だからこそ!!」

 

メリーはポジティブに歩を進める蓮子に「しょうがないわねぇ」と言わんばかりの表情をしながら蓮子の後に続いた。

 

蓮子とメリーは階段を上り、事務所の扉をノックする。

 

内側からは何やら騒がしいような賑やかいような声が聞こえ、二人は「え?!」と一瞬立ち止まった。

 

「あ、あのー……バイト志望できた宇佐見です」

 

再度の蓮子のノックに亜希子は気付き、翔太郎を突き飛ばしながらドアに向かった。

 

「はっ?!バイトの子だ!!のけいっ!!」

 

「うお?!!っ~って、マジか?!!いけね、もっとハードボイルドな身なりに……!!」

 

翔太郎はしりもちをつくように元の座っていた椅子に座り、崩れた身なりを慌ただしく整えはじめた。

 

「はいはいはーい!!今開けまーす!!」

 

亜希子がガチッと開けたドアの向こうに蓮子とメリーが立っており、二人はペコッと会釈した。

 

「じゃぁねー……ここ座って~」

 

「失礼しまぁす」

 

亜希子に招き入れられながらソファーに腰かけた蓮子に、視線と会釈を受けた翔太郎はその瞬間に何を走らせる。

 

(っ?!!)

 

翔太郎は直ぐに目深に帽子をかぶり、スッと立ち上がりながらコーヒーメーカーに向かった……が、翔太郎はその最中に机の書類が当たり、バサバサと豪快に床にバラ撒いしまった。

 

「あぁ?!!」

 

「ちょっ、バカ、翔太郎君!!」

 

翔太郎と亜希子があわわ、あわわとなりながら片付ける中、蓮子やメリーも進んでバラ撒かれた書類の片付けを手伝ってくれていた。

 

ようやく片付けが終わるやいなや、今度はコーヒーメーカーで翔太郎は火傷する。

 

「あちっ!!あ……?!!」

 

反射でバッと動かした際に翔太郎の肘が食器に当たり、お約束のような甲高い音を響かせまくった。

 

亜希子は叫ぶ声すらも遠退き、手を額に当てながら「うわぁ……」と呆れるしかなかった。

 

またもや率先して片付けを手伝ってくれる蓮子とメリーに翔太郎と亜希子ペコペコ頭を下げながら片付ける。

 

最早立場がない中、翔太郎と蓮子の指が当たり、よくある「あっ……」というお約束の瞬間が流れ、翔太郎は一時停止する。

 

だが、直ぐに亜希子が翔太郎の後頭部を、無言のままスリッパではたいた。

 

「あだっ?!」

 

 (何ボケっとしくさっとんねん!!!まさかバイトの子に惚の字になったんじゃないでしょーね?!!え?!!)

 

目頭を血走らす亜希子の突っ込みは思いの外スパァンと鳴り、蓮子は思わずプッと吹き出してしまう。

 

そしてなんやかんやでようやく亜希子主宰の面接が始まった。

 

「本っっ当にごめんなさいねぇ……うちのアホが迷惑かけて~」

 

「いやいや、とんでもないです!!」

 

「えっと……宇佐見蓮子さんと、ま……マエリ……ベリー・ハーンさんね。改めまして、所長の鳴海亜希子です。で、食器破壊に続いてコーヒーぶち撒けるフラグ立ててるさっきのアホがうちの探偵でー……」

 

亜希子にそう振られ、翔太郎はムカツキを押さえながら被る帽子を取って自己紹介する。

 

 蓮子とメリーも亜希子の紹介の振り方に思わずクスっと笑っていた。

 

「(亜希子ぉ~!!なんつーヒデー振り方してくれてんだ?!!)あ、改めまして、左翔太郎です。先ほどはご迷惑をおかけしました。今日は素敵なレディ達が面接に来てくれたので、今相応に素敵なおもてなしを……」

 

「それで二人は風都大学の学生さんで、バイトも二人揃っての希望か……わざわざうちを選んでくれたのは?」

 

 亜希子は翔太郎の言おうとしている言葉をねじ伏せるように半ば強引に面接を進めた。

 

 滑ったような状態になった翔太郎は変顔しながらピクピクと小刻みに震えながら脳内で自身にツッコミを入れる。

 

 (亜っ希子ォおおお!!!せっかくのアピールチャンスをっっ……って何思ってんだよ、俺?!!)

 

「あたし達は、他の探偵事務所では扱わない不思議な事件の依頼を請け負っている探偵事務所と聞いて鳴海探偵事務所さんを選んできました!!将来、その手も扱う探偵を目指してまして……今の内から経験にと思って……大学では二人で秘封倶楽部っていうオカルト探偵サークルもやってます!!」

 

「不思議な事件かぁ~……依頼人のお客さん達もよく言う人いるよ~。まぁ、全部の超常現象扱ってはいないけど、そういった悩みを持っていれば極力請け負うようにしてるわよ。流石に徐霊とかの類いは専門外だけど……へぇ~二人でサークルか~……なんかちょうど翔太郎君とフィリップ君みたいね!!」

 

「フィリップさん?」

 

メリーが尋ねると亜希子はもう一人メンバーがいることを伝えた。

 

「ん?あぁ、もう一人の探偵事務所メンバーで、いつも地下倉庫で調べ物してるの。翔太郎君の相棒でね、その二人がお二人となんか重なってね!」

 

時を同じくして、ウインドシップ風都の通りを歩ききってきた様子の小学生の少年が鳴海探偵事務所を見つめていた。

 

「……やっとついた。あそこの探偵さんなら、お母さんとお姉ちゃんを……探してくれるかも!!」

 

少年はきゅっと拳を握りしめ、「よしっ」と表情にも意の決しをだしながら歩を前進させていった。

 

 

 

 

To Be Next Continue

 

 

 





 さじたりうすです。ガンダムWの二次小説執筆中ではありますが、モチベーションが仮面ライダーWとガンダムWを去来するようになり、仮面ライダーの二次小説執筆を我慢する限度が臨界に達し、遂に解き放ってしまいました。

 一年半前に10年遅れでダブルにハマり、仮面ライダーと東方のセットクロスオーバーの概念が好きになって幾年月……

 話しのコンセプト(フィリップが永久にいなくなり、ジョーカーが主人公でいくか、それを序盤にしてフィリップ復活の展開にするか等)やガンダムの両立から出るジレンマ、好きな仮面ライダーの組み合わせのジレンマ(←特殊なこだわりの為)色々悩み描んだ末、今回に至りました。

 10分~20分のMMD動画のイメージで仮面ライダーWの二次小説を軸に色んなクロスオーバーも予定しています。

 ガンダムの小説も長らくお待たせしていて申し訳ありません。こちらも執筆していきますので両二次小説をよろしくお願いいたします。

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