仮面ライダーダブル&トリガー ~風都超常犯罪事件簿 ~ 作:さじたりうす
青山晶少年が依頼する母親と姉の行方の調査に、ガイアメモリが関わる状況が浮上した。
それは翔太郎がウォッチャマンから得ていた情報に起因していた。
「翔ちゃん。自称合法的マッサージサービス・JKヒャッハーなんだけど、どうも裏でガイアメモリに関わってるみたいよ」
「マジかよ?!!」
「経営しているのは格恫喝也。未成年の少女ばかりを引き込んで自称合法的マッサージをさせているケド……裏では売り上げ成績がいい子に部屋を提供してるらしい」
「部屋を?俗に言うVIPってやつか?」
「まぁ、その類いよ……で!!その部屋で裏の店メニューを特定の客対象にもてなすらしいけど、その特定の客の中に……ガイアメモリ売買集団・バレットのメンバーの誰がいるって話!!!」
「おいおい……!!!」
「それと!!もう一つの件の母親の調査の話にあった浮気相手の男!!画像もお・くっ・と・く!!」
「あ、サンキュ」
「この男もとんでもないよ~。田中武明。普段はウインドカルチャースイミングのインストラクターしているんだけど……裏ではネトリのタケアキって言われてて、親御さんの送り迎えに来る美人人妻を主なターゲットにして、体の関係を構築し、あの手の映像作品を作ってるらしい……最終的は奥さんを虜にさせて略奪していく。こいつのせいで大抵の家庭は崩壊し、旦那が泣き寝入りしたり……タチ悪い事に中には夫と子供の目の前で……ってなヤツもあるらしい!!!」
「嘘だろ?!!なんだそりゃあ?!!家族は何やって……てかクビにならねーのかよ?!!警察は?!!」
「当然家族はタケアキとその仲間連中に脅されながらいる。それも理不尽な力の脅し!!!更に撮影前にクスリ替わりのガイアメモリを使わせて楽しむのもヤツのスタイル。警察沙汰にも関わらず、その巧みな脅しや周囲の近所関係もあって泣き寝入りするしかないようだ……とにかくこいつもまたガイアメモリと関わりがあるってことは確実で、噂ではガイアメモリ関係の組織のアタマやってるとか!!でまぁ、これがそのDVD!!」
余りにも生々しくえげつない情報に翔太郎は激しい憤りを覚えた。
極限に街を悲しませる悪そのものがやる諸行。
翔太郎は手渡されたDVDを持ちながら歯軋りし、壁にダンと握った拳を当ててウォッチャマンを軽くビクッとビビらせる。
その苛立ちを紛らわすようにウインドスケールの帽子をパパッとウインドスケールのジーンズに当てはらうと、翔太郎はウォッチャマンから立ち去りながら万冊を二枚指に挟んで彼に情報提供料を追加して渡した。
「サンキュ……それでうまいメシ食ってくれ」
「まいどお~……あ、翔ちゃん!!ソレあくまで情報アイテムだよ?下手に事務所で手首の運動しないでね?そんなのが翔ちゃんのやーっとできた彼女に見られたらドン引きされて終わるよぉ」
「はあ?!!馬鹿かァッッ?!!それに蓮子は彼女どころかつい今日尋ねて来て会ったばっかだ!!!」
情報と現段階のまとめた調査内容とを照らし合わせるとどちらもガイアメモリ犯罪の影がある。
まずは本題に戻り、二人の行方を割り出す事が先決事項だ。
だが、その前に調査をしてもらっている蓮子とメリーの二人はバイト以前の体験であることを踏まえ、これ以上の調査には危険を伴う為に翔太郎は頭を悩ませる。
仮に雇ったとしても危険な調査に変わりはなく、これまた躊躇する。
と、あれこれ考えながらいると不自然に翔太郎は無言で腕を組み続ける形になってしまっていた。
「あの……翔太郎さん??」
心配気に蓮子が翔太郎に問いかけると、翔太郎は「は?!!」となり、帽子の位置を修正しながら蓮子を見た。
「(うッ……まじまじ見ちまうとやっぱりタイプだッ……って違う違う!!!)あ?!あ、ああ、ごめんな。今回の件で色々と考え巡らせていたんだ。とりあえず今日は事務所に戻ろうか」
鳴海探偵事務所に戻る際、さすがに歩き疲れたこともあり、翔太郎はタクシーを止めた。
その帰りの最中、翔太郎は蓮子とメリーの二人に探偵の仕事をしてみての感想を聞いた。
「二人とも、今日探偵稼業体験してみてどうだった?」
蓮子はかぶっていた帽子を取りながら手中に収めながら少し複雑そうな表情で感想を言った。
「え?はい。いきなり……重い内容の依頼だったけど、なんていうかな?確かに不思議な依頼内容とか期待していたのは本音だったんだけど、依頼者の男の子の事思うとそんな期待よりも何とかしてあげたい気持ちがおっきくなってて……人の為に色々調査していくって、こういう感じなんだって思えた。あの、翔太郎さん、いいですか?」
「お?お、おう」
「あたし、この依頼最後まで関わりたいです。例え採用じゃなくてもせめてここまで関われたのなら……最後まで依頼に関わりたいです!!」
「私も蓮子と同じです!!青山……晶君でしたっけ?あの子が安心してもらえる依頼結果を提供したい。あんな幼い内から酷過ぎるわ……かならす助けてあげたい……!!!私からもお願いします!!!今日だけだったら納得できません!!!」
「メリー……」
「あ……ごめんなさい、生意気言ってしまって」
いつになくメリーは感情を少し表に出して訴えていた。
蓮子も彼女の意外な一面を見ると同時に少し心強く思えた。
二人の強い申し入れと想いに触れた翔太郎は帽子を目深にかぶりながらしばらく沈黙する。
こういう時、一番不安なシチュエーションを覚えるものだ。
蓮子とメリーは翔太郎の後ろ姿に息をのむ中、翔太郎はくすっと口許に笑みを浮かべる。
「……探偵稼業は決して綺麗ごとばかりじゃ済まない。確かに不思議な事件の依頼もよく受けるが、今回みたいな現実の重い依頼内容だっていくらでもある……もしマユツバちゃんな探偵志望者だったら、不思議な事件へのこだわりが捨てきれず、今日の時点で『思っていたのと違う』って言いだして辞める。君たちみたいにはならない……」
翔太郎の示唆する言葉に期待が膨らむ蓮子とメリーの二人だが、まだ甘い。
「採用……と言いたいところだけど、判定は依頼を終え切ってからにしよう。今は仮採用ってことで……でもこれだけは言っとくよ。決して危ない状況にまで首を突っ込まないこと。依頼者を危険に晒すような事、状況にさせないこと……とまぁ、仮のバイトだし、ましてやレディに危険を冒してまで守れとは言えないな。危険な状況にさせるのは極力回避するようにするってことかな。いいかな?」
少なくとも評価してくれている意思を読み取れた蓮子とメリーは顔を合わせながら喜び、二人同時に返事をした。
『はい!!』
「……よし」
翔太郎がくすっとしながらそう言った瞬間、タクシー運転手が反応した。
「お客さん達、探偵さんですか?」
「え?そうっすけど?」
「そうですかぁ……」
運転手はそう言うと会話を切り出した割には、全く会話を弾ませる様子もなく再び黙ってタクシーを走らせる。
運転手が話を振って数分の間が経過する中、この運転手から何か腑に落ちないモノを翔太郎は感じていた。
長年の探偵稼業で養われた勘が理屈抜きに感じさせているのだろう。
「……」
その無言の空間に翔太郎のみならず、蓮子とメリーもタクシー運転手から漂う違和感を察知していた。
(え……何、この運転手??自分から話振っといてそれだけ?!タクシー接客業としてどうなのよ……)
(なんだろう??さっきからどことなく不気味な感じの運転手ね。こんな人がタクシー運転手って……)
三人を乗せたタクシーは風都の街中へと向かって行った。
風都市・風葵(かざあおい)区・両替町。
風俗店舗が立ち並び、翔太郎達の調査上で浮上したマッサージ店、JKヒャッハーがある夜の店ストリートだ。
店内では表向きには18歳以上(高校生は含まない)の女の子と謳っているが、実質は現役の女子高生達がマッサージを行っており、過剰なマッサージサービスも横行していた。
その中に青山晶の姉・唯がおり、彼女はVIP嬢の部屋で常連客をもてなしていた。
繊細ともいえる彼女の整った手、指先が日々の疲れを溜めた男達の体を癒す。
「今日も一段とこってますね」
「まーねー。今日もずっとすわりっぱだったからね……なー、唯たん」
「なんですかー?」
「あの秘密メニューそろそろ……」
「くすッ、もうっ☆しょうがないなぁ~……それじゃ、仰向けになってくださいね」
唯は常連客のいやらし気な視線と注文に笑顔で対応すると、常連客の男を仰向けにさせながらズボンのチャックに手をかけた。
他の部屋でも現役女子高生の過剰サービスが横行しており、男達の欲望が跋扈する空間が出来上がっていた。
華々しくも妖しい雰囲気に包まれており、カーテンで仕切られているとは言え、これまた妖しくかつ生々しい音や息遣いさえも聞こえてくる有様だ。
「ありがとうございましたぁ」
もてなした客を笑顔で送り出す唯。
しかしその後間もなくして、先ほどの接客スマイルとは程遠い嫌悪感をむき出しにした表情で執拗に手をジャブジャブと洗う。
「くうっ……!!!」
只でさえ汚らわしい感覚を味わいながら接客を幾度も重ねているのだ。
生理的にもそうせずにはいられなかった。
「いくら洗った所で何も変わらん。皮膚がただ綺麗になるだけに過ぎん。下らない事にいつまでもこだわるな。次の指名客が控えているんだ。例のホテルの出張指名だ。早く仕度を済ませろ」
唯の背後から冷たくも合理的な言葉を投げかける白髪のロン毛パーマの厳ついスーツの男がいた。
彼こそがウォッチャマンの情報に浮上した格恫喝也である。
格恫のプレッシャーに唯は反発するように答えた。
「わかってるわよ!!」
「おー、コワイコワイ」
唯はタオルで感情的に手をふくと、がしゃがしゃとブランド物のカバンにメイクやタオルを入れながら格恫に問いただした。
「ねぇ?!今月の売り上げ、いくら?!!」
格恫はふっと鼻で笑うとそれに答える。
「ふっ……ざっと80万というところだな。またダントツだよ、ダントツ」
「ならもっと……もっと稼いでやる!!!」
飛び出すように手洗い場を後にしていった唯を見ていた格恫は、ニヤケながら呟いた。
「さすがうちのトップ嬢。頼もしい限りだ……」
格恫はその後、店の奥に入りパソコンで現在の売り上げデータを閲覧する。
(唯をあの底辺飲食店から引き抜いたのは間違いなかった。そろそろいい頃だ。裏メニュー接待させるか……VIPの上モノ少女が好みらしいからな……あのお客様は……)
格恫がその流れでデスクワークに入ると、突如として一人の少女が部屋に入るなり、ソファーにうなだれた。
「もう、嫌っ!!あの客っ!!臭いし、キモいし……!!耐えられない!!!」
「そんなこといわずにさ、頑張ろうよ?ね?」
「嫌!!無理!!」
スタッフの男が優しくなだめるも、少女は頑なに拒否していた。
「何事だ?」
「代表、この子接客拒否しちゃって今困ってるんすよ~」
スタッフの情けなさ混じりの対応に苛立った格恫はガタンと席を立ち、少女の髪の毛を強引につかみ上げる。
「おい!!!遊びじゃねえんだっ!!!こちとらビジネスなんだよ!?!おお?!!」
「うくぅっ?!!」
ギリギリと握力で少女の命ともいえる髪を容赦なく握り痛めた上に恫喝を浴びせる格恫。
格恫の常套手段であり、「女という生き物は力と金で従わせる」という彼の心情の表れでもあった。
「腹くくれや!!!腹ぁ!!!なぁ!!?やれぇ!!!接客しろっつてんだよっ!!!」
グングンと幾度か彼女の髪を強く引っ張り上げては止め、引っ張り上げては止める。
やがて少女は涙を流しながら格恫に許しを請いせざるを得なくなり、苦痛と屈辱の声で弱々しくこたえた。
「ご、ごめんなさい……私が……悪かったです……許してください……」
理不尽な言動と力から解放された少女は、涙を滲ませながら部屋を後にしていった。
「使えんな。袋田、次の女を調達してこい。ありゃダメだ」
「はい、代表!!今直ぐにでも調達してきます!!」
「バカやろ、勤務中だろ今!!!勤務外でに決まっているだろ!!!」
「は、はいぃっ!!!」
一方、鳴海探偵事務所ではすっかり疲れはてたのか、晶少年はソファーで寝ていた。
事務処理を終えて彼の様子を見に来た亜樹子がその光景を目の当たりにし、少しばかりホッコリとしたモノを覚える。
「くすっ。晶君、寝ちゃったんだね……何か被せてあげなきゃ」
亜樹子は事務所の奥から一枚の毛布を取り出して、晶少年に被せてあげてみせる。
「……はぁ。それにしても翔太郎君達遅いなぁ……どこまでいったのやら……」
時計は夜の九時を過ぎていた。
亜樹子はスマホを手に取り翔太郎に連絡を取ろうとした時、晶少年が寝言を呟いた。
「……お母さん……お姉ちゃん……」
その寝言から出た言葉と彼の置かれている現状から亜樹子の心が痛んだ。
「……晶君……っ!!必ず、見つけてみせるからねっ……!!」
亜樹子は翔太郎に連絡を入れるものの、通話は一向に出る気配がない。
「もー……経過状況くらい報告しなさいよ~……まさか?!!如何わしいコトしてんじゃないでしょーね?!!」
当方の本人達は如何わしいというよりも、怪し気な状況にさらされていた。
タクシーは目的地を通り過ぎ、線路沿いの車通りが極端に少ないルートを目指し始めていたのだ。
「おいおい……運転手さん、目的地は東風都駅だぜ(てか、どこに向かわせてやがるんだ?)?目的地が過ぎてるんすけど?」
翔太郎の訪ねる言葉にタクシー運転手は答えるコトなくブツブツと言っていた。
この時点で既に翔太郎はタクシー運転手から人外的なものを感じており、懐に忍ばせているとある機器に手を着けていた。
探偵稼業とあるもう一つの種の仕事の経験で培った勘がそう後押しする。
「……?」
運転手は翔太郎の言葉に答える事無くブツブツと言っているばかりか含み笑いさえ見せていた。
不気味な状況だが、幸いにも信号待ちの状態であり、万が一の時には直ぐに出れる状況だ。
その最中、蓮子が強気な口調で運転手に言い放った。
「あの!!さっきから私達、降りるって言ってるでしょ?!!何シカトしてんの?!!新手のインチキ営業なの?!!」
蓮子の怒り口調の声を受けてもブツブツと未だに言い続けている。
メリーがドアレバーに手をかけるが、ロックされていていくら操作しても開かなかった。
「閉じ込められてる……!!!運転手さん、何考えてるんですか?!!こんなことしたらタダじゃ済まされないわよ?!!」
「私はぁ……女性を襲うのが趣味でですねぇ……」
タクシー運転手は荒唐無稽級にとんでもない発言をした瞬間に翔太郎の口元にガッと手をかけて塞ぐ。
「うぐぅっ?!!」
翔太郎の口を塞ぐその力は尋常な力ではなく、やはりタクシー運転手は人外の何かであった。
更にその手に翔太郎はもがきながら声にならない声を上げて抵抗するも、少しばかりタクシー運転手の体を揺さぶるだけだ。
「翔太郎さん?!!この運転手何なの一体?!!」
「蓮子、警察に連絡して!!」
メリーが蓮子に通報を促すと、運転手の衣服を介した胴体から強靭な糸状のものが伸び、彼女達の手首に巻き付いた。
「ひぃっ?!!」
「っぅ?!!」
そしてタクシー運転手はその姿勢のまま前を向き、運転を続ける。
その時点で運転手の腕が増えていた。
線路沿いの車通りの少ない道路を隔てながらやがて街端の山の中へと入っていく。
「山の中にどんどん入ってる?!?これじゃまるで……きさらぎ駅の話の最後の方の展開みたいじゃない!!!」
「確かに。でも蓮子、紛れもなくこの状況は現実よ……きっと今、私達は超常犯罪に巻き込まれてる!!!」
やがてタクシーは「風原(かざわら)山公園」という森林に囲まれた山間の駐車場に到着し、タクシー運転手は停車すると同時に、助手席のドアを解放して腕力のみで翔太郎を投げた。
「うおっっ!?!」
「さぁ……素晴らしい一時の時間です。貴女方は素晴らしいと人目で惚れたので、久しぶりの素晴らしいディナータイムに致します。知ってますか?この山の向こうには風都の街を一望できる夜景が広がっているのです……ロマンチックな環境で共に過ごしましょう……」
「はぁ?!!絶対嫌よ!!!誰があんたなんかに!!!」
「一体……この運転手といい、変な糸といい……まさか、これがこの街で聞く超常犯罪!!!」
「こんな超常現象、こんなタチが悪い秘封活動なんか願い下げよ!!!」
タクシー運転手は薄ら笑いながら身体周を黒い強化スーツを纏わせ、頭にも蜘蛛を意図したようなヘルメットに覆わせた。
そしてマスクを装着し、タクシー運転手は蜘蛛の怪人に変身を遂げた。
『きゃああああああ?!!』
タクシー運転手は蜘蛛男さしずめスパイダーは二人を連れ出し、煌々と月明かりのライトが照らす夜景が一望できる場所へと誘う。
その場所には確かに風都を一望できる情景が広がっていた。
本来ならば好きな男性と来るべきであろう場所であろうが、蓮子とメリーは現実には得体のしれない蜘蛛の男に様々な意味で食べられようとしている。
「やぁあああああっっ!!!」
糸に手繰り寄せられた蓮子の両肩をガシッと掴むスパイダー。
最早絶望的状況と絶望的な未来が蓮子の脳裏に駆け巡っていた。
「蓮子ぉおおお!!!」
メリーも親友の危機に何もしてあげられない状況に、無力さと悔しさを混ぜた涙を流して叫ぶ。
「くくくっ、ひゅひひふふっ、その悲鳴と共に衣服を破る……その瞬間がたまらんのですよおおお!!!」
「いやああああああああ!!!」
ガギャアッッ!!! ガギィンッッ、ガキキャアアンッ!!!
「がぁああ?!!な、なんですか?!!」
突如として飛び交う何かがスパイダーに対し縦横無尽に攻撃を仕掛け、更には彼女達を拘束しているスパイダーの強靭な糸をも斬りちぎった。
そしてそれは駆けつけていた翔太郎に向かい、彼の手の中に納まった。
それはスタッグフォンという鳴海探偵事務所のガジェットツールの一つであり、専用のガイアメモリ―を装填することでガラケーから小型自律型ガジェットのクワガタのマシンにチェンジするものだ。
BGM 「ハードボイルド」
「彼女が来ている服は、この街の一流ブランドの服だ。彼女が好きで選んだその大切な服を破こうなんざ、言語道断だ……」
「翔太郎さん?!!」
「翔太郎さん、無事だったんだ!!!」
「貴様……思いっきり吹っ飛ばしたはずですが、何故歩けるのです?!!何故ここまで来れるのですか?!!」
通常であれば翔太郎は重症を負うか死んでいるかのダメージを受けていた。
だが、翔太郎は自力でここまで来ており、いつにないきざな口調で返す。
「慣れてんのさ。この街の探偵稼業上、人外と争う事なんか特にな……」
翔太郎は赤いメカニカルな機器を取り出し、腹部にそれを当てると、ベルト状の機構が展開し、それが翔太郎に装備された。
その頃、鳴海探偵事務所の地下室で検索疲れの休憩にコーヒーを飲んでいるフィリップにも同様のベルト機構が装備された。
「おやおや……またドーパントかな……いや、違うね」
フィリップはコーヒーをテーブルに置くと、ソファーの近くまで歩いてクリアグリーンのガイアメモリを取り出し起動ボタンを押した。
『サイクロン!!』
この時、翔太郎とフィリップは以心伝心的に繋がっており、双方の状況がわかる状態となっている。
「翔太郎さぁあああん!!!」
「おああ?!!」
蓮子は出会って間もないにもかかわらず、翔太郎の胸に半泣きで飛び込んだ。
それ程までの恐怖を味わい、かつその恐怖から解放してもらえた事に対する安堵の感情からであろう。
「怖かったですッ!!!すっごく怖かった!!!」
「翔太郎さん!!!ありがとうございます!!!お怪我はないんですか?!!」
翔太郎は駆け寄って飛び込んできた蓮子とメリーの頭をぽんぽんと撫でる。
「可愛いバイトの後輩がピンチってぇのに、先輩がちょっとくらいのケガで怯んでられねぇさ」
そう言いながらさり気なく翔太郎は蓮子にウインドスケールの帽子を被せた。
「帽子、タクシーに落としていたぜ。大切な帽子だろ?」
「あ、あたしの帽子……っ!!!」
蓮子は何か心に落ちたようなキュンとしたものを感じた。
翔太郎はそのまま前に向かって歩き出し、スパイダーと相対する。
「邪魔な男ですねぇ……!!!あなたを殺さなければ彼女達は頂けないということは判りましたよぉ……!!!」
「二人とも下がってな……俺が必ず守り通してやる。後、これは鳴海探偵事務所の超秘密事項だ。頼むぜ」
「超秘密事項??」
蓮子の問いにビッと左手を上げたサインで答えると、翔太郎もまた黒いガイアメモリを取り出してスイッチを押した。
『ジョーカー!!』
「いくぜ、フィリップ!!」
「あぁ」
『変身!!』
バッとガイアメモリーを構えた後に、フィリップはサイクロンメモリを機器の向かって左側のスロットルに装填する。
するとサイクロンメモリが消えると共にフィリップの意識もなくなり、そのまま彼はソファーに倒れた。
同じくして、翔太郎の方のスロットルにサイクロンメモリが装填され、それを押し込むともう一方のスロットルにジョーカーメモリーを差し込むと、機器の表に双方のガイアメモリのエンブレムが立体ホログラフィーで表示された。
『サイクロン!!ジョーカー!!』
変身時に流れるサウンドと共に翔太郎は瞬く間に仮面ライダーの姿に変身した。
♪挿入歌 「Over Again」
「な?!!貴様まさかっ……?!!ううぐっ……!!!」
翔太郎とフィリップの意識が一体となった仮面ライダーダブルの姿だった。
翔太郎が身にしたベルト型機器は、仮面ライダーへと変身する為のツール・ダブルドライバーであり、彼らこそが風都の街を超常犯罪から一線で守る仮面ライダーだったのだ。
変身と共にサイクロンメモリの特性である強風が巻き起き、スパイダーを牽制して蓮子とメリーの衣服をなびかせる。
「きゃ?!!翔太郎さんが、変身しちゃった!!?メリー、あれがもしかしてこの街に来てから噂で聞いている、仮面ライダーってやつ?!!」
「私に聞かれてもわかんないってば!!でも凄い安心感感じる……」
「うん……あたしなんか後ちょっとで大切なウインドスケールの服とあたし自身の体が危なかったから、尚更強い安心感感じる……!!!」
広大に広がる風都の夜景を背景に仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーのマフラーが荒ぶるようになびく。
吹き付ける風の中、その背中からはかつて感じたことのない安心感と心強さを蓮子とメリーは感じていた。
「まさかまさかっ!!!この街にいる仮面ライダーとでも言うのか?!!」
「そう……俺は、いや……俺達は仮面ライダーダブル……この街の大切なものを傷つけ、悲しませる奴は俺達が許さない……」
そして仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーはシュっと右手を上げ、左手でスパイダーを指さし、罪を重ねる超常犯罪者達に投げかける言葉を放った。
「さぁ……お前の罪を数えろ!!!」
「きっ……キエぇええええええ!!!」
スパイダーは奇声を発しながら跳躍して殴りかかる。
「……うぉらぁっ!!!」
だが、突っ込むスパイダーに対し仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーは疾風特性を付加させた回し蹴りのカウンターを浴びせた。
ドォガズゥンッ!!!
「がぁああッ?!!」
「じゃあ、こっちからも行こうか?!」
ドォガッッ!!! ゴッッ!!! シュガッ!!! ドォガンッ!!! シュドォガッ、シュドォガァッッ!!!
「うぉらあああああっ!!!」
ドォガオオオオオオオンッッ!!!
シュっと左手を回す仕草をしながら駆け出すと、スパイダーに軽い飛び左脚蹴りを与え、左拳の拳打、右手の手刀、再び右脚蹴り、連続右回し蹴りとスムーズな連続コンボを与え、飛び回し蹴りでスパイダーを豪快に吹っ飛ばした。
「ぐおおおおあッ?!!」
スパイダーを吹っ飛ばすと右半身の意識に宿るフィリップの意識に翔太郎が問いかけた。
「なァ、フィリップ。こいつはなんだ?ドーパントじゃねーぞ?」
「こいつらはショッカーの一味だ。あの財団Xとも繋がっている巨大な秘密結社。人々を誘拐し改造人間を創り上げている悪魔の集団さ。今僕達の目の前にいる奴の目的は彼女達の誘拐。そこに奴の私情が入っていたんだろうね。近年起こっている超常犯罪の一部はショッカーも関わっている」
「ガイアメモリの超常犯罪だけでもはびこりまくってるってのに……ったく……でもま、俺達がいる限り少なくとも風都での勝手はゆるさねえぜ」
「来るよ、翔太郎!!」
スパイダーは両手首や体中のファスナー部から糸を飛ばし、仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーの四肢に巻き付けた。
「こりゃま、よく蜘蛛怪人との戦いでよくある展開だぜ。この後に糸による首チョークとかギリギリが待ってるんだよなァ。カブトは圧倒してたが……」
「メタネタとは余裕だね、翔太郎」
この時すでにスパイダーは糸を縮め、自身を巻き取る反動を使って急接近してきていた。
「ああ。俺達はダブルだ。カブトに肖っていこうぜ。フィリップ、この月夜にふさわしいメモリだ」
「そういうことかい」
仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーの右半身にはフィリップの意識が宿っており彼の意志で翔太郎の右半身を使っている。
サイクロンメモリを引き抜き、ルナメモリを装填した。
『ルナ!!ジョーカー!!』
仮面ライダーダブル・ルナジョーカーとなり、右半身の腕が自在に伸び、接近するスパイダーをしなる腕で叩き落とす。
バガギャアアア!!!
「がごぉおおぉッ?!!」
叩き落としたスパイダーに向かい、右腕による変幻自在な連続拳打の嵐が叩き込まれる。
ドォガォッッ!!! ドォドォドォドォドォドォガガガアアッッ!!! ドォドォドォドォドォドォガガガアア!!!
「ぐぐぐうがががッ……ごごごごがおッ……!!!」
スパイダーの体にマシンガンのごとく打ち込まれる連続拳打。
しかしこれだけではなく、スパイダーの頭を鷲掴みにして持ち上げ、振り回しながら前後交互に地面へ叩きつけ、そこからスパイダーを宙へ投げてみせた。
そして宙へ待ったスパイダーに振りかぶった勢いを乗せた重い拳打を打ち込む。
ドォオオオオオオオンッ!!!
「がぐうごォおおお!!!」
圧倒されたスパイダーは風原山公園の小屋に落下し、小屋の屋根を破壊してしまった。
だが、スパイダーはその瓦礫を押しのけながら立ち上がり、月夜に向かって狂った咆哮を上げる。
「キジュエエエエエエエギイイイイイ!!!ああああああ!!!」
スパイダーは叫びながら仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーに向かって走り出す。
「さぁ、どうする翔太郎??」
「決まってるぜ。メモリーブレイクだ」
『サイクロン!!ジョーカー!!』
再びサイクロンジョーカーにフォームチェンジした仮面ライダーダブルはサイクロンメモリを抜き取り、向かって左腰のマキシマムスロットルにサイクロンメモリを差し込んだ。
『サイクロン!!マキシマムドライブ!!』
突風を自身に纏いながらスパイダーに向かって走り、跳躍をしながらサイクロンエネルギーを両脚に纏わせ、スパイダーに向かって体を横にしながらのジャンプキックを見舞う。
「サイクロン・エクストリーム!!!」
ドォッズガアアアッ、シュドォガアアアアアアアアッッ!!!
ジャンプキックの直撃から、更に体を捻らせての縦軌道のラウンドハウスキックがスパイダーに炸裂し、その体は地面を砕き散らせながら叩き付けられた。
「ぶもォ!!!ぼぞぐゥゥッッ、ぶもッ、ぼぞぐううッ……!!!」
仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーは立ち去りながら、バチバチとスパークを散らしながらもがき苦しむスパイダーにその背中でツッコミと言葉を投げかける。
「それ、違う蜘蛛怪人の遺言だろ?まぁいい……お前は地獄でこの街に犯したその罪を……」
「ぼぞぐううううッッ、ぶもぉぁっ、くうっッ……くぅがあああああああ!!!!」
「……数えろっ!!!」
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッ!!!
仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーは断末魔を上げるスパイダーに振り向きながら左人差し指をかざすと、その言葉に止めを刺されたかの如くスパイダーは爆発四散した。
月明かりと星々、炎、そして風都の夜景をバックに仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーは再び翔太郎の姿へと戻る。
「ふぅ……終わったぜ。二人とも、ケガねーか?」
恐怖と危機は去り、蓮子とメリーは互いに微笑み合うと、自分達の為に戦ってくれた翔太郎の許へと駆け寄っていった。
To Be Next Continued