Another DragonRoad   作:名無しの骸骨

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珍しく時間が空いたのと展開が浮かんだので1日で2話目の投稿となります
ちなみに主人公は現実世界の環境があれなので、考え方なんかは元々アウトローでドライ気味です


薬草採取

 起床後、ティルルとパルラが腕をがっしり掴んでベッドから暫く抜け出せなかったり、起床後に宿で食べた食事のあまりの美味しさに涙を流してしまった事で二人に心底心配されたりなどのトラブルが発生していた

 

 食事面に関しては自分でもある程度想定すべき問題だっただろうが、泣いてしまったのは正直致し方ないと思っている。何せ、現実世界では大体が加工食やサプリメント。牛肉やふわふわのパンなど100年前の大体の食品は図鑑或いは富裕層の食事の中でのみ登場する存在だ。俺や弟達はより貧困層だったからより一層食事には苦労した思い出がある。ユグドラシルにおいても味覚に関しては再現されていなかった事があり、例えそれがこの世界の人々に取って一般的な物であっても俺に取ってはまさしくご馳走だった

 

 そんな俺を見たパルラは元より食いしん坊キャラであるのに、心配そうに自分の御飯を分けようとしてきたし、ティルルは終始ワタワタしていた。宿のカウンターに居た他の冒険者にも不審がられたが、現実世界の事は伏せ、故郷では不味い物しか食べてこなかったと軽く説明すると苦笑いを浮かべながら、気前よく食事を奢ってくれた。色々申し訳なく思うが、美味しかったので頂いた

時間が空いたら色々食事巡りをしてみるのも悪くないのかもしれない

 

「お労しや……ご主人様。このティルル、城に帰りましたら腕によりを掛けて食事を作らせて頂きます!」

 

「それに関しては楽しみに待ってる。いや本当、食事ってこういう事を言うんだな」

 

「急に泣き出すからパルラもビックリしちゃいましたよー。御飯食べるときは一緒に食べましょー」

 

 

 場所は移り変わり、依頼を果たすべく目的地まで来ていた俺達は薬草の詳細を聞く為に近辺の村に来ていた。比較的首都より近い村である為か、治安や安全などは保たれているように感じるが木製ではある物の外壁が高く建てられおり、壁には幾つかの傷が残っている。傷の様子からどうもつい先程の出来事である事や外から見た村の様子が慌ただしく感じられた。想定できるのはビーストマンによる襲撃か或いはまた別の外敵に襲われたか、何にせよ話を聞く為に門番と思われる男に声を掛けた

 

「薬草採取の依頼で来たカッパーの冒険者だ。薬草採取に関する事で聞きたい事があり、この村に来た次第だ」

 

「冒険者か……うちでも薬草が少ないから助かる。ただ村でトラブルが発生してな。村人達は今暇ではない。俺もこの通り周囲を警戒している」

 

「トラブル?」

 

「壁の傷痕を見れば分かるだろうが、1時間前に襲撃があった。小規模だがビーストマンによる襲撃だ」

 

 恐らく都市の一つが陥落した影響であると門番の男は語る

 襲来したビーストマンは8体。村人の死亡者は7名程であり、軽傷者・重傷者に関しては20名にまで至る。ビーストマンの襲撃目的は分かり易く食料目的とされ、女子供が6名連れ去られたらしい

 

「成程、穏やかではないな。ビーストマンの身体能力を考えれば追撃も難しいか……何処に連れ去られたかは分かるか?」

 

「この辺りの地理は大体把握しているが、近くで根城に出来る場所といえばこの先の森しかないだろう……まさか捜索してくれるのか?」

 

「生憎とカッパーではあるが、これでも冒険者になる前は故郷でそれなりの腕前だった。此方としても出来る事はしたい」

 

「依頼ではない為、冒険者に頼むような事ではないが……骸の一つでも持ち帰ってくれれば報酬の一つや二つは村長らと相談し、提供する事を約束しよう」

 

「了解した。此方も捜索を第一とする。異議はないなティルル・パルラ」

 

「分かりました!(分かりましたよー)」

 

「では時間もない。行こう」

 

 あの変な文字出す男の受け売りという訳でもないが、困っている人間を見捨てるのは些か心にしこりが残る。恐らくカルマ値も関係しているのだろうが、村人の信頼を得る機会でもある以上は生かさない手はないだろう

 

 

「森の入り口まで到着した訳だが、状況が状況だ、二手に分かれる」

 

「俺とパルラが東、ティルルとダイダルが西。各々《敵感知/エネミーソナー》及び他探知魔法を使用し、ビーストマンの根城を探してくれ。異常があり次第、念話で報告を頼む。状況によっては転移を使用しろ」

 

「以上だ。行動を開始してくれ」

 

 ティルルはダイダルを肩に乗せ、速やかに西へ向かい、俺とパルラも森の東方面へと捜索を開始した。森は暗く、時期が時期なのか落ち葉が多い。足跡の追うのは難しかった為に探知魔法で追い続けるしかないだろうしかし、森自体がそれ程広くない事・パルラが上位の索敵魔法を使用できる事から、大まかな場所の特定は容易かった。

 

『ティルル、此方はビーストマンの位置を大まかに捕捉した。其方は?』

 

『此処からさらに西に行った所にビーストマンの反応があります』

 

『ビーストマンも二手に分かれているのか。そのまま追ってくれ。発見した場合、敵の能力値とレベルを測った後に問題なければ制圧。村人が生きていたなら、傷つけずに保護してくれ』

 

『了解しましたご主人様。必ずや果たしてみせます』

 

「宜しく頼む。此方も急ごう」

 

「位置は大分絞れました。案内しますー」

 

 索敵魔法を使用したパルラの案内の元、森を駆けてビーストマンの根城を追っていく

ある程度走った所で亜人種らしき者の影を確認した

 

「索敵魔法によれば、ひーふーみー……7体居ますね」

「報告より数が多い。襲撃に来た者が全員ではなかったようだな」

 

 根城として見つけたのは小さな洞穴。入り口に猫顔のビーストマンが2体、門番として立っていた。レベルは凡そ15であり、残り4体と村人は恐らく中にいるのだろう

 

「俺が出ると音が立つな。パルラ、矢で奴らの頭を射抜け」

 

「わっかりましたー」

 

 いつもと同じくマイペース気味に返事を返しつつ、矢を番えたパルラ。一切の音を立てずに発射された矢は見事にビーストマン達の頭を射抜……あまりに高威力だった為に衝撃で頭を粉砕したといった方が正しいか。何にせよ門番の排除には完了し、不可視化など隠密魔法をかけつつ洞穴に侵入する

 

 洞穴の長さは左程ではなく、直ぐに目的の者達は発見出来た。ビーストマン5体が1人の村人を食らっており、残りの村人2名はそれを恐怖に満ちた目で見つめていた。村人の一人が最早手遅れな状況なのは悲しくもあり、哀れにも感じるが其処に一切の動揺は存在しない。あちらの世界に居た頃ならば人間を食われているのであれば動揺もするし、吐き気も催すだろうが何も感じはしなかった。これはライオンが牛を食べている感覚と同じだ。そんな自身が人間ではなくなったという感傷を心の隅に置き、ビーストマンに不意打ちを掛けるべくパルラに念話を通す

 

『村人の2名が無事だな。村人の近くに居る2体のビーストマンは先程と同じ様に射抜いてくれ』

 

『人食いに夢中になってる連中は俺が切り捨てる』

 

 パルラが頷くと同時に自らも動き出す

 不可視化を解き、洞穴の地面を一気に駆けだす。後ろより速射される二本の矢を感じつつ、此方に気づきもしないビーストマンを2体切り捨て、此方に気付き、武器を取り出そうとした者も瞬時に首を切り落とした。村人の近くに居たビーストマンの頭部も既に潰されており、伏兵が居なければ洞穴の制圧は完了したといえるだろう

 

「終わりだな。パルラ、生存者二人に睡眠魔法を掛けておいてくれ。これから色々しなければならない」

 

「分っかりましたー。《竜の眠り歌/ドラゴニック・スリープソング》」

 

 村人の二人は一瞬のことで呆けたような顔をして、状況も把握できないまま眠りにつく。その後、同じく制圧が完了したであろうティルルから念話が届いた

 

『ティルルです。此方も制圧完了しました。しかし、村人が既に一人…』

 

『いや、其処は気にしなくていい。ビーストマンは何体居た?』

 

『6体居ました。此方の想定より多い数です』

 

『了解した。ダイダル、頼みたい事がある。聞いてくれ』

 

『はっ!如何なるご命令であろうとも!』

 

『生存者二名には睡眠魔法を掛けろ。その後、死亡した村人の肉片をかき集めて《真なる蘇生/トゥルー・リザレクション》を発動してくれ。蘇生に応じるようならば、生存者二名の記憶を改竄し村人が殺された瞬間の記憶だけ消去してくれ』

 

『……宜しいのですか? 彼らに其処までする理由も価値もないように見えますが』

 

『いいんだ、生存者が多い方が恩も売れるからな。ティルルはビーストマンを討伐した証の回収と死体の処理を頼む』

 

『了解しました!(御意)』

 

 念話を終了し、同じく《真なる蘇生》が使えるパルラに蘇生を任せて、自分はビーストマンを倒した証である身体の部位を袋に詰め、死体を処理していく

 

 村人達を蘇生する理由は名声の為もあるが、私心も勿論存在した

食われていた村人の顔とそれを見ていた子供の顔が似ていた事から恐らく親子だ。単純な同情であり憐れみではあるが、せめて食われて死ぬ瞬間の記憶だけ消去する事に決めた。

 

 蘇生魔法という存在を知られない為だけにわざわざ記憶を改竄し自分達の行為を隠蔽するというややこしい事もして、彼らの記憶を弄ってしまっているが、必ず無事に村に返さければならない

 

「ご主人様ー。蘇生出来ましたー。一応こっちも睡眠魔法掛けましたけど、死亡した時の記憶が残ってるみたいです」

 

「そうか、蘇生に応じたか。では死亡した際の記憶は消してくれ。わざわざ傷になる記憶を残す必要はない。死んだ本人が蘇生を望むのであれば、俺達の為にも全員何事もなく生き残ったという事にする」

 

「はーい」

 

 ダイダルの念話より蘇生に成功したという報告が入り、其方にも同様の処理を施す

こうして色々と細工を施しつつも結果的に全員生還させたという形で村人を起こした俺達は彼らを連れて村に戻る事とした

 

 

森の入口付近でティルルらと合流し、村に帰還した俺達は改めて村の様子を伺った

治療はある程度完了したのか、それなりの数の村人は忙しそうに村の修復作業に入っている

 

「ほら、到着したぞ。早くお父さん達の元に戻っておいで」

 

「う、うん!」

 

「えっと…ありがとう。騎士のお兄ちゃん達……」

 

子供達は感謝の言葉を告げ、その母親は深々と礼をした後に村人達の輪に戻っていき、俺達はというと報告の為に門番の元に向かっていた

 

「おお、戻ってきたか! 全員生存して護衛してきてくれたと聞く! 本当に助かった! 礼を言う!」

 

「何とか間に合ったようで幸いだ。此方としても手早く行動した甲斐があった」

 

真っ赤な嘘である

村人の二名は死んでいた。その後、蘇生した訳だがマッチポンプという訳でもないので許して欲しいと心の中で謝罪しつつ、報告を続けた

 

「…森に居たのは13体のビーストマンだ。全員この通り殺したが、まだ付近にビーストマンが居る可能性はあるだろう」

 

「13体!?……いや、そうか。それ程の数を相手取れたのか貴方達は……」

 

「総じて不意打ちで片付けた。運が良かっただけだよ」

 

此方が帰ってきた事に気づいたのか、此方に駆け寄ってくる村人達の数が増えた

そのどれもが子供達を救ってくれた事への感謝の気持ちが込められている

 

『人間種なのがあれですけど、悪い気はしませんねー』

 

『まぁそうだな……悪い気はしないよ』

 

パルラの念話を共感と共に流しつつ、門番の勧めで村の村長と呼べる人物に会う事となった

村長は半身が包帯で巻かれており、ビーストマンによってつけられた傷である事は推測できる

見ると傷は深い様に見えるが、傷を抑えつつ此方に歩み寄ってきた

 

「おお、貴方達が……今回は真に有難うございます」

 

「いえ、カッパーとはいえ自分も冒険者ですから……それより傷が深いようですし、あまり動かれない方が」

 

「そうだ、あんまり動くんじゃないぞ村長。傷が開いたら面倒だ」

 

「……そういう事ならば、楽な姿勢で話させて頂きます」

 

 椅子に腰掛けた村長を見つつ、報告を行った。今後の話になるが、13体ものビーストマンが首都付近のこの村を襲った事は偏に大問題であり、巡回兵などは増える事になるだろう。場合に寄っては村の放棄もあり得るかもしれない。報酬に関しては正直今の村ではとても満足できる量は出せない為に冒険者ギルドに事情を説明し、その分の報酬補填をしてもらう事となった

 

「御三方はこれからどうするつもりですかな。本来の依頼は薬草の採取だったとか」

 

「ええ、ただ日が沈んでるのとビーストマンがまたやってくる可能性があります。その為に村に滞在しようかと思っていますが……」

 

「そうであるならば、空き家の一つをお貸ししましょう。ベッドも有りますし、今日は其処で御就寝なさってください。夕飯に関しては宴……などは村のこともあるので開けませんが、村一番の料理上手に料理を作らせます故」

 

「有難うございます。御厚意に甘えさせて頂きますね」

 

 その後はトラブルも発生せず、特別語るべき事もない

 夕飯は滅茶苦茶美味かったし、兎に角美味かった。また泣いたし、例によって心配された。空き家にはベッドがあるといったが何故か1つしかなかったのでまた川の字で寝る羽目になった。正直寝る時位は一人で寝たいが、二人がゴリ押してくるのと二人を雑魚寝させるのも嫌なのでもう何かどうでもいいやと諦めた

 

 翌日、ビーストマンの警戒の為にティルルとダイダルに村の護衛を頼んで、俺達は薬草採取に向かった。大体目的量の2倍を回収した所でさっくりと本来の依頼を果たした俺達は村人達に見送られつつ、村を後にして帰路についた

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