レミリアがカリスマなVR幻想郷に飛び込んでしまった件 作:mazuton
「あなた、そこで何をしているのかしら?」
そこにいたのは紅美鈴であろう人物。
赤い髪を現実でみることはなかなかないが、違和感なく受け入れられる彼女の容姿に舌を巻く。
「あ、いえ。私は」
急に声を掛けられたことで、頭が回らずについ言い訳のような口調になってしまった。ゲームの世界に入りました、とそのまま言うのも違和感があったので、もごもごした感じになる。
最低限名前と、いきなりここに飛ばされたと伝えることができた。
「まあいいわ。私は紅美鈴。そしてここは紅魔館。レミリア・スカーレット様を主としている城よ」
ゲームっぽいなと感じる、いかにもな説明が始まる。
ゼロからでも世界観や主従関係などを把握できるような配慮だろう。
「ここにきた者は、まず、レミリア様と会う決まりになっているわ」
そんな決まり、原作にあったっけ。
まぁ、ゲームだしな。全てを理由づけられる。
それに、AIのランダム生成といっていたし、独自の世界観やルール、紅魔館の大きさなど疑問はちょくちょくあるが、まずは受け入れるしかない。
「さあ、きなさい。げんたろう」
呼ばれるがままに、巨大な城に二人で入っていく。
城門のような場所を通って、紅魔館に近づくと大きさがさらに顕著になる。
原作では、十六夜咲夜が時を操れる、すなわち空間を操れるとして紅魔館の内部の大きさを変えているとか。
それにしては外見もとんでもなくでかいが。
「あの、紅さん」
「美鈴でいいわ。私も、げんたろうと呼んでいるしね」
そういって、紅美鈴はフランクに微笑みかけてきた。
さらっと距離を詰めてくる感じ、とてもAIにはとても思えなかった。
人間である自分よりコミュ力が高い。
彼女がAIだとしたら、作った者がいるのだという事実に驚いてしまう。
「美鈴さん。この建物はなぜこんなに大きいんですか?」
「私にとってはこれが当たり前だからなぁ。げんたろうは、なぜ虎が強いのかって聞かれても困るでしょ?」
確かに。そう言われたら何も言い返せない。
この紅魔館に関して、何の情報を得られぬまま、紅美鈴の主であるレミリア・スカーレットの元に連れられる。
「レミリア様は、この幻想郷を支配しているお方よ」
「そうなんですね」
流石に、八雲紫もいるしそんなことはないだろう。
そう思いながらも相づちを打っておく。
連れられた場所は、王宮にも感じる場所だった。
周りが紅いことを除けば。
「よく来たわね。私がレミリア・スカーレットよ」
そして、現在、レミリア・スカーレットが玉座に座り、足を組んで自分を見下ろしている。
自分は美鈴さんに言われたとおり跪いて話を聞く。
「レミリア様。彼は、げんたろうです」
美鈴さんが自分のことを紹介してくれる。
レミリア・スカーレットは、永遠に紅い幼き月と呼ばれる、500年を生きる吸血鬼の幼女だ。
確かに見た目は小さいが、醸し出す雰囲気は玉座や口調も相まって、とてもじゃないが幼女が出せるものではない。
「さて、げんたろう。いや、〇〇か」
さげていた顔をぱっと上げる。
「な、なんで」
唐突に自分の本名が呼ばれる。
ゲーム内では一言も自分の本名など出していない。
ゲームの抽選販売のときにもなんとなく偽名を使っていたので、自分の本名はさらしていない。どこかで、名前を書いていたか。
いきなりの事態に心臓の鼓動が異常に早くなるのを感じる。
彼女の目は紅く、こちらの全てがわかっているかのように見据えていた。
「お前が何を考えているかあててやろうか。なぜ、このゲームのキャラクターは俺の名前を知っているんだ」
そこで、さらにレミリアの言葉で混乱する。
なぜ、彼女自身がゲームの世界だと認識しているのか。
美鈴さんにバッと目を向ける。彼女は首を傾げており、あまり理解していない様子だ。
ただのゲームのメタ発言。
そうだとしても、目の前にいる彼女に全てを見通されている感覚に息が苦しくなる。
「そう。全て、お見通しなんだ。私には運命がみえるからね」
レミリアはくすくすと笑う。
そこだけみると、可愛らしい10歳くらいの少女の様子だ。
しかし、今の自分にはそんな彼女を微笑ましく見る余裕はなかった。
「人間はわかりやすい脅威よりも、わからないことに恐れを感じる。私はお前にとっての恐れに該当するわけだ。そして、お前は安心する。今の自分がいるのは仮想世界であり、命を奪われる心配はないのだと」
ゆっくりと、確実に、こちらの心の流れを読んでいる。
こんなことが、AIにできるのか?
「知識には3つの領域がある。知っている領域。知らないことを知っている領域。そして、知らないことを知らない領域だ」
レミリアは細長い指を一本ずつ上げながら、最後の一つを強調して伝えてくる。彼女はこちらに言いたいのだ。お前ごときが理解しえない事象が起きているという事実を。
ログアウトをしよう、そう頭に浮かぶ。
「つれないじゃないか、
頭に浮かぶメニュー欄が、ここが現実ではないと理解させてくれる。
しかし、そこにログアウトの文字はなく、自分の逃げ場がないという現状をたたきつけてくる。
メニューを見る為にキョロキョロしていた目が、紅いニ点に集中する。
「ようこそ、幻想郷へ。ここは全てを受け入れる。まぁ、手放すこともないがね」
カリスマおぜう分をもっと補充せねば。
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