レミリアがカリスマなVR幻想郷に飛び込んでしまった件   作:mazuton

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遅れました。
文字数をじわじわと増やす。

あとで話数をまとめるかもしれません。


4・図書館へ

執事として働くことになり、いくつかの雑務を美鈴さんに教えてもらったあと、紅魔館内にある大図書館に連れてこられた。

その流れでレミリア様の友人である、パチュリー・ノーレッジの紹介もされることに。

 

その後、軽く用事があるとのことで待っていて欲しいといわれ、美鈴さんは図書館からでていった。二人きりになり何を話そうか悩んでいると、パチュリー様から、ここにきた理由を聞かれる。

 

そしてそこで、自分が働くまでの経緯を当時の興奮を思い出しながら話していた。

彼女は最後まで聞いたあとに、軽く鼻で笑った。

 

「それで。あなたはまんまとレミィに丸め込まれてこの館で働くことになったわけね」

「そんな。私は一応、自分の意志でここに」

 

自ら決めたことにはプライドがあったので、彼女の意見に噛みつこうとする。

だが、彼女は悪い魔女かのようにニヤニヤとした笑みを浮かべ、他者のかけた魔法を解くがごとく話した。

 

「全く、笑わせないで頂載。自分の意志できたと思うように仕向けられた、が正解よ。プレッシャーをあなたに直接かけたら脅しになるから、近くの従者に圧をかけたんでしょ。それで、視野が狭くなったところに、自信満々にあなたにとっても悪くない話よ〜、選ぶのはあなたよ〜って。そりゃあ、自分は騙されないぞって思ってそうな真面目くんはコロッといかれちゃうわ」

 

パチュリー様はそう煽ると、今度はケタケタと笑い始めた。原作では喘息持ちで大人しい印象だったが、彼女は表情豊かにこちらを馬鹿にしてくる、まさに意地の悪い魔女を絵に描いたようだ。

 

そう言われてみると、美鈴さんが睨まれていたとき、自分に向けられているわけでもないのに心臓がばくばくして、まともに考えられなくなっていた。

 

でも、それでもあのとき自分は。

 

「げんたろう、だっけ。あなたの意志とやらがあったとしましょうか。選択権がある状態であなたは彼女の問いにYESと答えた。そこから現実を否定するのには非常にハードルが高くなる。なぜなら、人間には自分が選択した道がより良いものだと思い込む性質があるから」

 

「認知的不協和、ですか」

「あら、知っているのね。まぁ、知識だけで何とかならないのが、レミィの凄くて、なおかつ姑息なところなんだけどね」

「パチュリー様は、レミリア様のことがお嫌いなんでしょうか」

「そうね。彼女のやり方は嫌いだわ。天然なのか知らないけど人をどうにかして自然に、自分の都合のいい方向にもっていこうとする」

 

それで私も、なんど騙されたことか。そういいながら彼女は大きなため息をつく。

 

「でも、そうね。相手に損だと思わせないようにするのが天才的よね。実際、あなたも私から種明かしされた後ですら彼女のことを嫌うことなく、むしろ状況を俯瞰して印象がよくなっているんだから」

 

彼女の指摘は当たっていた。

もし、レミリア様の真意がどうであれ、自分が選んだのだ。騙されたとしても自分の責任である。少なくとも、あの選択に後悔はない。

 

「好きか嫌いかで言ったら嫌い。けれど、彼女のあり方は、尊敬しているわ。今みたいに、能力や力をまともに使えないときからあの態度は一貫していた。宣言したことを必ず実現する。彼女は、レミリア・スカーレットという強者を死ぬまで演じきると決めてる」

「演じる、ですか?昔は、あんな感じではなかったとか」

「いえ、少なくとも私が出会ったときからあんな感じよ」

「・・・からかってるんですか」

「かもね。さぁ、仕事に戻りなさいな。たくさん覚えることがあるんでしょ」

 

はぐらかされたと感じて気になって問いかけようとしたとき、ちょうど美鈴さんがごめん待たせちゃったといいながら図書館に戻ってきた。

 

そうして、ひらひらと手を振ると、パチュリー様はもう話すことはない、とアピールするように本を読む作業に移った。原作と性格は違えど、本が好きなのは共通しているらしい。

 

揶揄われたのは少しもやもやしたが、レミリア様をなんだかんだ言って好きそうだし、こちらに悪意を向けてきているわけでもない。

悪い人、いや魔女ではなさそうだ。あの煽りを上手くかわすようになるまで時間はかかりそうだが。

 

美鈴さんに仕事を教えてもらいながら働き半日が過ぎ、すでに外は暗くなっていた。

その日の仕事を終えて。ヘトヘトになりながらも、自分の部屋まで一人で歩いて戻っていた。

 

それにしても、真面目くんか。

昔から、あまり良くない意味で言われてきた気がする。

他者との比較、正解不正解で考える性分なので融通が聞かないところがあるのは自分も認識している。

 

「また、うだうだ考えているのか、げんたろう」

 

ばったりと、これからが活動時間であろうレミリア様に会った。いや、朝型だったか。

原作の知識もさほど役に立たなそうのはパチュリー様と話していてわかった。気にするのはやめよう。

 

自分の悩みについても、隠せる気も、必要もないのでパチュリーと話したことを伝えた。

 

「なるほどな。はっきり言おう。私は、他者や社会を分析し、批評はするが自分の状況は顧みず行動しない。そんな者が大嫌いだ。そいつらは、なんのリスクも負さず安全な保障がある元で、自分の意見を通そうとする」

 

レミリア様もまた、パチュリー様に対して思うところはあるらしい。

言い方は違えど文句の付け方がなんとなく似ている。

 

「私は、わが友であるパチュリー・ノーレッジについて、彼女の意見の多くを肯定していない。彼女が価値を露骨に主張する本にしても、読むだけでは解決しない問題も多くあるし、リスクを冒すことのない論では解決しない問題の多さを私は痛感しているからだ。それでも、まぁ、私は彼女を認めている」

 

相手を褒める前に恐ろしく遠回りするのは、彼女たちのコミュニケーション方法なのだろうか。

レミリア様にも、見た目通りな幼い面もあることに心の中で少し微笑ましく思ってしまう。

 

「知らない知恵、視点を授けてくれるから、でしょうか」

 

彼女を認める理由について、自分の答えを話してみる。

レミリア様は、従者に対して自分の考えを伝えるように徹底的に教育していた。

 

彼女のなかで答えが決まっていても、必ず相手の意見をまず聞く。

誘導することはあっても、強制はしない。

 

「なるほど。それには助かっている。だが、些末なことでもある。彼女は、私が何も持たぬときから今まで、何も変わらずに憎まれ口を叩きつつも私の傍にいた。いくらでも離れることができただろうに。言葉ではなく行動で示したのだ。それは私の今の富や名声、全て投げうってでも彼女に報いる価値を生み出している」

 

それは彼女の覚悟だった。レミリア様はそのときになれば本当に躊躇なくそうするだろう。

言霊というものはあるのだと体感する。

 

話しすぎたな、早く休め。そういってレミリア様は自分の部屋に戻っていく。

 

確かに、最初は流されたかもしれない。でも今は、この人についてきてよかったと感じている。

今は自分が、行動で示すときなのだろうと思い、これからの仕事にも一層取り組もうと気合を入れた。

 

「あ〜あ、つまんない。また、あいつの信者が増えちゃった」

 

自分が部屋に戻ろうと扉を開けたタイミングで、後ろから何か声が聞こえたので振り返る。

そこには誰もいなかった。

 

悪寒が走るのを感じる。

風邪をひいてはいけないと思い、次の日に備えることにした。




次回、11月12日(木)23:00投稿予定。

カリスマである=みんなに好かれている
というわけでもない。

むしろ、敵は増えていく印象。
好かれる人には好かれ、嫌われる人にはとことん嫌われる。

追記:未完にいたしました。



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