それが、あなたのご注文なんだね   作:ファットマン

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始めて潜入したのは木組みの町で僕が15歳の時だよ

十分に熱したフライパンにバターを落とし、全体に馴染ませる。

 

溶いた卵を少量フライパンにつけ、温度を確認。

 

「……よし、OK」

 

フライパンに卵を流し込み、素早く揺すりながらかき混ぜる。

少し固まってきたら端に寄せる。

ここからが本番だ。

 

「……よっと」

 

ヘラとフライパンをうまく動かし、天地を返す。

当然ながら難易度は高い、中だけを半熟にするため、オムレツは非常に柔く破れやすい、その上、手間取って焼きすぎると卵焼きになってしまい、ふわとろの食感は失われる。

 

返したあとは素早く形を整え、用意していたチキンライスの上へ。

 

上にケチャップ、生クリーム、パセリで彩り、完成。

 

「……うむ、完璧」

 

我ながら良い出来、既に100回以上は焼いているが、最近はどうにかうまく出来るようになった。

喫茶店の為、軽食がメインだがそれ故、特段に料理人の差が出る。

おじいさんのレシピを熟読し、3桁以上の回数をこなした今でも、昔一度だけ食べたおじいさんの料理には遠く遠く及ばない。

 

ラビットハウスの名前を落とさないためにも、精進あるのみだ。

 

「オムライスとホットサンド、あがったよー」

「はーい!」

 

ココアさんが元気よく返事し、料理を運んでいく。

お客さんは若い女性の二人組。

 

厨房の陰から、料理が口に運ばれるのを見守る。

 

「あ……」

 

お客さんは笑顔だった。

ここからでは会話の内容まではわからないが、少なくとも不味いと思われてはなさそうだ。

 

ほっと胸を撫で下ろしていると、その女性客と目が合う。

 

「っ!」

 

僕は厨房の陰に隠れた。

反応が見たかったとは言え、覗き見なんて、変な風に思われてはいないだろうか……。

 

少し恥ずかしい気持ちになりながらも、頬を一張り。

気を取り直して作業を再開する。

ラストオーダーまではもう一頑張りだ。

 

 

ーー

 

 

「ありがとうございましたー」

 

最後のお客さんが帰り、チノちゃんが店先のドアプレートを『open』から『closed』へと変える。

 

「ふへぇ……今日は疲れたよぉ」

 

ココアさんは終わるなり机に溶けるように突っ伏してしまった。

確かに、今日は少しお客さんが多かったかもしれない。

 

「お疲れ様、ココアさん」

「なるくんもお疲れ様、お客さん、美味しいって言ってくれてたよ」

「本当? それはよかった」

 

自然と口許が緩む。

今までは家族にしか料理を作っていなかったから、人様に出せる料理を作れるのか不安だったが、正直に嬉しい言葉だった。

 

「あと、なるくんのことも言ってたよ」

「僕のこと? 殆ど厨房から出てないはずだけど」

「料理を出したらいつも厨房から様子を伺ってるじゃん」

「……見つかってたの?」

「常連さんには結構見つかってるかなぁ」

「マジか……」

 

顔がかっと熱くなる。

まさか見られていたとは……これからは自重しよう……。

 

「……それで、何て言ってたの?」

 

しかしそれはそれとして、自分がどう言われているのかは気になった。

 

「えっと……『厨房の子、いつもコッソリ見てるのに目を合わすとピューッて奥に引っ込んじゃってカワイイ』って」

「……そう」

 

カワイイ。

カワイイかぁ……。

 

全く嬉しくない言葉だった、いや、悪評じゃないだけマシだが……。

少し落ち込んでいると、ドアベルの音が店内に響いた。

 

「あ、今日はもう終わりで……」

「みんなー! シャロちゃんが大変なの!」

「何事!?」

 

お客さんは入ってくるなり、慌てた声で言った。

聞きなれた声に、聞いたことのある名前。

 

「千夜さん?」

 

入ってきたのは、クラスメイトの千夜さんだった。

手には、バニーのシルエットが描かれた、どことなく如何わしい広告。

 

「あ、なるくん! シャロちゃんが……シャロちゃんが!」

「どうどう、落ち着こう、全く状況が把握できない」

 

とりあえず席につかせ、話を聞く。

 

「へぇ、千夜ちゃんとシャロちゃんって幼なじみだったんだ」

 

千夜さんの口からシャロさんの名前が出たのはそういうことらしい。

まさか、最近全く別の場所で知り合った二人が幼なじみだったとは、世間は狭いとあらためて思う。

 

「そうなの、昨日話してたらこんなチラシを持ってきて、『ここで働く』って……」

「へぇ……自分でお金を稼いでるんだ、やっぱりシャロさんは偉いね……でも、これは」

「そう、とっても良い子なの、でも、お店が……」

 

目の前の如何わしいチラシを見る。

『フルール・ド・ラパン』という名前らしいその店、キャッチコピーは『~心も体も癒します~』とのこと。

 

どう見ても風俗とか、そういうインモラルな店に見える。

 

「きっと如何わしいお店で働くのよ! 怖くて本人に聞けない!」

「なんと!?」

「あのシャロさんがなんでこんな……?」

 

ココアさんとチノちゃんが愕然とした表情で言う。

かくいう僕も、多分同じような表情をしているだろう。

 

お金持ちのシャロさんがこんなお店で働く理由……。

 

ーー親が事業で失敗、多額の借金を抱え、少しでも家計の足しに……。

ーー悪い男に騙され、あれよあれよと言う間に風俗に落とされて……。

ーー上流階級故の抑圧されたストレスから、アブナイ火遊びに……。

 

……ダメだ、どう考えてもネガティブな理由しか出てこない。

 

「……フルールって広告で釣ってるけど普通の喫茶店だったような……?」

 

リゼさんだけは何か引っかかるような表情をしていた。

 

「どうやってシャロちゃんを止めたらいいの……?」

「それじゃあ、この後そのお店に行ってみない?」

「潜入ですね」

「潜入!?」

 

が、すぐにいつものノリになったので、おそらく気のせいだろう、と思う。

 

「お前ら! ゴーストになる覚悟はあるのか!?」

「ちょっとあるよー」

「シャロさんの為になるなら」

「潜入を甘く見るなぁ!」

 

リゼさんの叫びと共にココアさんと千夜さんが立ち上がり、『さー、いえす、さー!』と可愛らしく敬礼をする。

いつも通り、緊張感の欠片もない。

 

いまから向かうのはインモラルな、R-18なお店かもしれないのだ。

事の真偽と動機などをよく調べた上で、シャロさんを説得しなければならない。

偽善、大きなお世話かもしれないが、それでも見て見ぬふりはできない、僕は小さくこぶしを握った。

 

「よし、まずはコールサインを決める!」

「コールサイン?」

「軍で味方を識別するのに使う暗号だよ」

「なるほど、なるくん詳しいんだね」

 

順に指差し、それぞれの名前の頭文字をNATOフォネティックコードへ当てはめていく。

 

「私がリゼ(ロメオ)、なるがナルミ(ノヴェンバー)……」

 

……あれ、そうなると残りの三人は。

 

「……残りの三人はココア(チャーリー1)千夜(チャーリー2)チノ(チャーリー3)だ!」

「なんで私たちだけ一纏めなの!?」

「全員頭がCだからだよ!」

「そこまで考えてなかったんですね……?」

「う、うるさいぞナル……ノヴェンバー! コホン、では各員、私に着いて来い!」

「アイ、アイ、マム」

 

次いで『いえっさー!』と元気のよい掛け声が響き、ロメオ小隊はフルールへと出撃した。

 

 

 

 

――

 

 

 

 

 

「目的の場所はここみたいですね」

 

チラシに記載されていた住所の場所に着くと、そこには周囲の街並みと溶け込む、お洒落な雰囲気の店があった。

正直、想像したような店構えとは違う。

というかよくよく考えてみれば、そういう店って昼はやってないような……?。

 

「いいか? 各員、慎重に覗くんだぞ?」

 

店の周りにある植え込みに身を隠し、慎重に中を覗きこむ。

 

そこには……。

 

「いらっしゃいませー♪」

 

ロップイヤーにミニスカメイドレスを身に纏い、満面の笑みで来客対応をするシャロさんの姿が……。

コスプレめいた格好だが、本人の容姿の良さもあり、どこかの童話から飛び出してきたような現実離れした可愛らしさを醸している。

 

「……な、なんでいるのよー!」

 

悪目立ちしていた一行は、内部への潜入すらかなわずあっさりと発見された。

 

 

 

 

――

 

 

 

「……ここはハーブティがメインの喫茶店よ、体にいい色んな効能があるの」

「あぁ、『心も体も癒す』ってそういう……普通の喫茶店なんですね」

「そうよ、チラシは……店長の趣味ね、客引きのためとはいえ紛らわしいったらありゃしないわ」

 

シャロさんに案内され店の中に通された僕たちは、彼女から誤解の説明をされていた。

彼女の弁の通り、店内には様々なハーブの香りが色濃く漂っており、それだけでリラックスできるような空間となっている。

 

「そもそもこんなありきたりな勘違いをしたのは誰?」

「私たちシャロちゃんに会いに来ただけだよ?」

「いかがわしいってどんな意味です?」

「こんなことだろうと思った」

 

三人があからさまにシラを切る。

シャロさんの目が千夜さんに向く。

 

「……その制服すてきね!」

「コイツか!」

 

ぶっちゃければ全員がグルだが、黙った。

ツッコミ不在って怖い。

 

「ごめん、シャロさん、お仕事中に邪魔してしまって」

「いいのよ、どうせそこの勘違い和菓子に乗せられただけだろうし……」

「でも、シャロさんがこんなところで働いてるなんて思わなかったよ、制服もすごく似合ってるし、意外な一面だね」

「せ、制服も店長の趣味よ、はずかしいからあんまりじろじろ見ないで」

 

全員から好機のまなざしを向けられ、シャロさんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。

 

「隠さなくてもいいのに、シャロちゃんのうさみみ似合ってて凄い可愛いよ、リゼちゃんもそう思うよね」

「あぁ、そうだな」

 

リゼさんはココアさんへ相槌を返しながらも、真剣な表情でシャロさんを見つめていた。

その視線に、シャロさんは余計に縮こまってしまっている。

 

……まぁ、シャロさんにとってリゼさんが単なる先輩以上の存在であることは周知だ、見られたくないのもわかる。

 

ただ、リゼさんはリゼさんで、単に『可愛い』『着てみたい』ぐらいにしか思ってなさそうなのだが……。

 

「そうだ、せっかく来て冷やかすだけなのもあれだし、このままお茶してってもいいかな?」

「……しょうがないわね」

 

しぶしぶとシャロさんよりメニュー表が渡される。

当然だが、某和菓子店のように必殺技の羅列ではなかった。

 

「やっぱり『ダンディライオン』だよね!」

「飲んだことあるんですか?」

「無いよ! でもきっとライオンみたいに強くなれるよ!」

「タンポポって意味わかってないな? ……でも、名前だけじゃハーブティの種類、よくわからないな」

「それなら、それぞれに合ったハーブティを私が選びましょうか?」

 

シャロさんはそう言って、すらすらとハーブティの説明を始めた。

 

「まずココアは『リンデンフラワー』ね、リラックス効果があるわ」

「そうなんだ」

 

少し落ち着けということだろうか。

 

「千夜は『ローズマリー』ね……新陳代謝を促して、肩こりに効くわよ」

「助かるわ、最近またひどくなって……」

 

シャロさんのまなざしが一瞬冷たくなるのを、僕は見逃さなかった。

千夜さんは……どうやら立派なものを持っているらしい。

 

「チノちゃんは甘い香りで飲みやすい『カモミール』はどうかしら?」

「……子供じゃないです、けど、いただきます」

 

以前、コーヒーに砂糖を入れると聞いてのチョイスだろう。

 

「リゼ先輩は最近よく眠れないって言ってたので『ラベンダー』がおすすめです!」

「確かにそうだな、ありがとう」

 

彼女の時だけテンションが高い。

コロッと表情が変わるので、見ていて面白い。

 

「ナルミは……そうね、真っ白で不健康そうだから、滋養強壮にいい『ネトル』はどうかしら?」

「そんなに不健康そうに見える?」

「健康そうには見えないわね」

 

シャロさんはあっけらかんとして言った。

とりあえず筋肉をつけようと思った。

 

「あ、ティッピーには難聴と老眼防止の効果があるものをお願いします」

「え? そ、そうね……『ハイビスカス』が目にいいから、どうかしら?」

「えっティッピーってそんな老けてんの?」

「わたしが子供の頃からいますので、結構な年ですよ……中身も含めて」

「そうなのか……チノにとってティッピーは家族みたいなものなんだな」

「……そうですね」

 

チノちゃんはティッピーを膝の上に置いて撫でながら言う。

その手付きは普段より優しく感じられた。

 

「……恥ずかしい」

 

と、おじいさんは思ってそうだな、と思った。

 

 

 

ーー

 

 

「いい香りのお茶です」

「ちょっとスーってするね」

 

ほどなく注文のハーブティーが配膳され、僕らはまったりアフタヌーンティーと洒落混んでいた。

 

なるほど、ハーブティーは心を落ち着かせてくれる。

僕の飲んでいる『ネトル』が、何処か日本茶を感じさせる味なのもあるだろう。

天井にはシャンデリアすらあるお洒落空間なのに、まるで縁側で日向ぼっこでもしているような感覚になってしまう。

 

「ハーブを使ったクッキーはいかがです? 私が焼いたんですが」

「シャロが作ったのか? それじゃあ、頂くよ」

 

リゼさんが形の整ったクッキーを一口。

 

「おいしい! やっぱりシャロは多才だな、こんなのも作れるなんて」

「そんな大層なものでは……でも、よかったです」

 

言われてシャロさんは顔を赤くして笑った。

リゼさんと話すときだけ表情がコロコロ変わるので、見てて面白い……。

 

「じゃあ私も一口もらうねー」

「いただくわ」

 

それをよそに、ココアさんと千夜さんがクッキーを食べる。

 

しかし、ココアさんはものすごく微妙な表情をした。

 

「……このクッキー、甘くない……」

「そんなことないわよ、おいしいけど」

「じゃあ僕も」

 

クッキーを食べてみる。

普通のクッキーだ、ハーブが効いていて甘さが引き立っている。

おいしい。

 

「甘くて美味しいね、流石シャロさん」

「なるくんも!? えぇ……どうしよう、私の味覚がおかしいの!?」

「その通りよ!」

「ヴェッ!?」

 

シャロさんは口元に不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「……シャロさん?」

「ふっふっふ……『ギムネマ・シルベスタ』を飲んだわね?」

「あのちょっと苦いやつ? 名前がかっこよかったから……」

「『ギムネマ』……糖を壊すもの、の意をもつハーブよ、それを飲むとしばらくの間、甘味を感じなくなるのよ!」

「そ、そんな効能が……!」

 

ココアさんが愕然とした表情をする。

 

「『ギムネマ・シルベスタ』には糖分の吸収を抑える働きがあって、ダイエットにいいのよ」

「そうなんだ! 千夜ちゃん詳しいんだね」

「えぇ、シャロちゃんがよくダイエットに使ってたから、覚えてるの」

「言うなバカー!」

 

 

 

ーー

 

 

 

そのまま僕たちはハーブティーに舌鼓をうち、ゆったりと時間が流れていく。

ハーブティーがなくなる頃には、夜もふける時間帯となっていた。

 

「いっぱい飲んじゃったねぇ」

「お腹の中に花が咲きそうです……」

 

リラックスした気持ちで回りを見てみる。

少し、お客さんの入りが多くなっているようだ。

恐らく仕事帰りなどの人達が入ってきたのだろう。

手が回らないというほどではないが、複数のウェイトレスさんが忙しなく店内を駆けていた。

 

そんな中、シャロさんは僕たちが飲み終わったのを認め、テーブルの上を片付けにやってきた。

 

「シャロさん、大変みたいですし、私たちにできることがあれば言ってください」

「ありがとう、チノちゃん年下なのにしっかりしてるのね」

 

シャロさんは穏やかに笑って、チノちゃんの頭を撫でた。

優しい手付きに、チノちゃんも特に嫌がった様子もなくそれを受け入れる。

 

「『妹』に欲しいくらいだわ」

 

ーーその発言は、自称姉にとっては看過できないものだった。

 

「チノちゃんは私の妹だよ!」

「何言ってるの?」

「いくらシャロちゃんと言えどチノちゃんは渡せないよ!」

「妹じゃないです」

 

いいながらチノちゃんに抱きつこうとするココアさんの顔を、チノちゃんは手で押さえつける。

扱いの差が凄まじい……。

 

「ココアお姉ちゃん、どうどう、落ち着いて」

「うぅ……私の味方はなるくんだけだよ……」

「あぁ抱きつくのは止めてね? 恥ずかしいから」

「……もふもふ成分が足りないよぉ」

「無くても死なないから大丈夫だよ、ほら、このリンデンフラワーを飲んで? 心が落ち着くハーブティーだよ」

 

僕は残っていたハーブティーをそっと差し出した。

ココアさんはそれを飲むと、何処か安らいだ表情になった。

それを見て、リゼさんが僕に耳打ちをしてくる。

 

「……おまえココアの扱いに慣れてきてないか? 初めは『お姉ちゃん』呼びなんて恥ずかしくてやってなかったろ……?」

「そんなつもりは無いですよ、ただ、こう言えばココアさんはチョロ……よく話を聞いてくれるので」

「何を言いかけた?」

 

僕は思いっきり目を反らし明後日の方向を見つめた。

都合が言いとか思っては……いない、と思う、ただ。

 

「……まぁ、言ってあげる度に顔がころころ変わるので、ちょっと意識して言ってるところはあるかもしれませんが」

「そ、そうか……」

 

リゼさんはチノちゃんを横目で見る。

彼女はココアさんの扱いが若干ぞんざいだ。

シャイな彼女なりの信頼の表れともとれるが、そんなことを知らずにココアさんは毎度チノちゃんへアプローチをかけ、悉く玉砕している。

 

「以外にバランスはいいのかもしれない……」

 

リゼさんは一人つぶやいた。

 

「皆さんはリラックス出来ましたか?」

 

話がひと段落したところで、シャロさんが声をかけてくる。

 

「そういえば肩が軽くなった気がするわ」

「少し元気になった気がします」

「体がポカポカしていい感じだよ」

「確かにリラックスできたけど、流石にプラシーボ効果だろ」

 

すっきりとした表情を浮かべる一同。

しかし、ココアさんだけが元気がない……というか。

 

「ココアさん、眠そうだね?」

「うん……」

「え、ハーブティー効きすぎだろ……」

 

ココアさんはこくりこくりと船をこぎ始めており、今にも寝落ちしてしまいそうだ。

リンデンフラワーの鎮静効果が出てきたのだろうか……。

 

「寝てても大丈夫だよ……僕が……背負って帰る、から」

「ありがとう……おやすみ」

 

ココアさんはそのまま机に突っ伏し、穏やかな寝息を立て始める。

リゼさんは心配そうに僕を見た。

 

「……意気込みはいいが、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ、多分……僕も男です、女の子一人くらい」

 

腕まくりをして見せると、細くて白い、周囲の女の子たちと大差ない腕が露出した。

 

 

――5分後。

 

「大丈夫か?」

「だい……だい……だい……」

「だい?」

「ダメ……」

「大ダメか……」

 

結局、ココアさんはリゼさんに手伝ってもらい、ラビットハウスまで運んだ。

まずは筋肉をつけよう、と思った。

 

 

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