「ふむ…」
私は落ちていた刀を手に持ち振るってみる。
素人目にも分かる、体幹が真っすぐしてなくまともに物を斬ることが出来ないだろう。
体力が切れることはないが師もなく振るっても上達はしないだろうな。
「どうされました無惨さん」
隣にいた珠世さんが刀を振るう私を見て首を傾げながら私に話しかける。
「いや、最近刀が落ちているのをよく見ましてね。そのようなことが起こるなら私も剣術を学んだほうがいいのかと思いまして」
「無惨さんならそのまま殴った方が強そうですけどね」
「流石に人に見られても言い訳が出来るようにしておきたいですからね…」
鞘もあったので刀を収めて腰に吊り下げる。刀はあるのに死体はない、この刀もまだ新しい。長らく放置されていたわけではなさそうである。申し訳ないが護身用としていただいておこう。
「さて、次に行く場所はどちらでしたっけ」
「持っていくんですね。えっと町はずれのうたさんの所ですね。町の人からそろそろ臨月らしく様子を見に行って欲しいと頼まれました」
「おや、お子さんですか。めでたいですね……」
山道を登ると民家が見えた。正面までくると戸が開きそこからひとりの男性が出てきた。
その顔を見た時私は目を見開く
「勝頼…?」
「え?」
戸から出てきたのは20代ほどの青年。その見た目は私がいた家に仕えていた継国勝頼の若い頃に似ていた。きっと彼の子孫だろう、懐かしさに思わず顔がほころぶ。
「失礼、知り合いに似ていたので。私達は流れの医者でして町の者からこちらの様子を見てきて欲しいと言われたのでこちらに来ました」
「そうでしたか…私は継国縁壱と申します。わざわざ来ていただき感謝いたします」
挨拶を済ませて家に入るとそこには縁壱さんの奥さんがいた、とても可愛らしい方でどうやら10年近い付き合いらしい。彼はそろそろ臨月と言うこともあり産婆を呼びに行こうとしていたらしい。
残念ながら珠世さんも産婆の経験がないらしく家で待っていて欲しいらしい。私が呼び行くことも考えたが彼は足がとても速いらしく男がいないのは不安らしい。
「すぐに戻る」
「はい、いってらっしゃい」
うたさんが彼を見送り彼は町の方に向かって走る。その速度に驚いた、彼からは普通の人間とは違うような気がしていたが目を見開くほどの速さだ。思わず口を開けたまま呆けてしまった。
あの速度でもこちらに来るのは翌朝になるだろう、私はうたさんを珠世さんに任せ腰に差した刀を振るってみる。うむ、やはりひたすら振るしかないのか。しかしこの刀は普通の刀とは違うような気がする。そもそも青色の染まった刀など始めてだ、だが芸術品と言うわけではなく普通に使用された痕跡がある。いったい何処の刀匠が打ったものなんだろうか…。
日も落ちて月明かりのみが辺りを照らしている。鬼である私は視界に問題はないが普通の者ならあまり遠くは見ないだろう、それでなぜこのような話をしたかと言うと私の視界に謎の人物がいるからだ。
縁壱殿ではない。その者はゲヒゲヒと不快な声を上げており鋭い牙と額に角が生えていた。私は理解した、こいつは鬼だ。あの
鬼である男は私を確認するとゲヒゲヒと笑いながら私を嗤う。
「貴様、鬼狩りだな。最近一人殺したところだ。お前と同じ青い刀を使っていた。貴様も使うのか? 水の型という剣術を。ゲヒヒ」
どうやらこの刀の持ち主はこいつにやられたらしい。水の型という剣術は知らないが鬼狩りという言葉からこいつのような者を狩る集団がいるのかもしれない。
分かることは一つ、こいつを狩らなければうたさんが危険だと言うことだ。
「(…珠世、血鬼術を使いうたさんを守っていてくれ)」
「(分かりました、お気をつけて)」
珠世に近くにいる時に仕える念話を送り鬼に向き直る。刀はまだまともに使えない、さてどうする…。
「ゲヒヒヒヒッ!」
「-ッ!」
鬼はこちらに飛び掛かってくる。速い、人間では中々見ない速度だ。だが私にとっては遅い!
飛び掛かってくる鬼の手を避けながら刀を左手に持ち替え右の拳で『本気』で鬼の側頭部を殴り砕く。
ぐしゃりと嫌な感覚が手に伝わり鬼の頭部の半分が殴り飛ばされ鬼は地面を転がった。
「ギャアアアアッ! な、なんだお前は!? おおお俺の頭がが!?」
「…やはりすぐに再生するか」
「お前は人間じゃないのか!? クソクソクソッ! 鬼なら何故俺の邪魔をする!」
「…貴様に話す気はない」
再度刀を右手に持ち構える、こんなことなら爺に刀の指南を受けるべきであったな。鬼が襲い掛かってきたのでその手を反対の手で掴みその腕を切断する。だが有効打ではないらしく即座に生える、同じ鬼だから分かるが回復に際限はない。医者殿の話では飢餓状態に陥るとは言っていた気がする。
「ンンググググググッ! 邪魔なんだよ早く食わせろよ!!! 腹が減って仕方ないんだよ! 他人が死のうがどうだっていいだろうが!!!」
「…なんだと?」
鬼の言葉に私の手に力がこもる、確かに弱肉強食としては当然だろう。だからこれは私の八つ当たりだ、医者殿の全てを救おうとした心を侮辱された気になった私の八つ当たりだ。
ミシリと刀がつぶれてしまうのではないかと言う力がこもる。血流を操作し全身の温度を上げ体の稼働力を上げる。
ふと、視界の端にうつった刀が赫色に染まった気がした。
ドンッ
戦い続けいくらか経った頃、軽くそれでいて地面を揺らすような衝撃と共に無惨の姿が消えた。鬼は困惑した、即座に辺りを見渡す。見えない、どこに? どこにいる!?
「ここだ」
その瞬間、鬼の両腕が切断された。切断というよりも叩き切ったという印象だ。それを確認した無惨は即座に反転し両足も切り落とす。そこで疑問に気付いた。両腕の再生が遅い、今切断した足も再生が遅くなっている。
「いてええええええええ!!! なんでだ! 再生が遅い!!」
両手両足を切断され地面を転がる鬼を無惨は横目に日の出を確認する。割と長い間戦っていたようでもう時間だ。
「医者さん…!? これは…!」
日の出を確認すると同時に無惨の後ろから声がかかる、後ろを向くと縁壱が息を切らせながらそこに立っていた。話を聞くと嫌な予感がして全力で走ってきたらしい。その後ろから特徴的な髪色をした青年が走ってきた。無惨はその青年を見ると声を上げる。
「煉獄殿…?」
「むっ! 確かにそうだったが君と私は知り合いだったか!」
「…いえ、こっちが一方的に知っているだけですよ」
「それよりもこれは一体…」
「見ていてください」
その瞬間日が昇る、すると鬼は悲鳴を上げて鬼は地面をのたうち回る。すると体の一部が灰となりそれがどんどん全身に広がる。縁壱はその様子に目を見開く。
その鬼が消滅した後、煉獄は口を開く。
「この生き物は鬼と言うものだ! 説明をしたいところだがその前にやることをすませてしまおう!」
町の方角から産婆が歩いてきて、家から珠世が陣痛が始まったと飛び出してきた。
さいごちょっと難産でした。
刀の色についてですが呼吸の素質があるものは色が変わると言うことにしています。
じゃないとまだ縁壱加入前で刀の色がまだ変わらないと言うことになってしまうので
所々はご都合主義で修正しています
縁壱編は次回で終わらせたい、原作に行くまではガンガンカットしながら行く予定です。