冬の訪れを感じる天津風。
寒い。十六駆の4人で外の掃除をしているものの、木枯らしが吹いていてとにかく寒い。いい風ね、なんて言ってられない寒さ。
「う〜…最近は寒くて艤装を持つのも辛いです…」
そう言ったのは、しょっちゅう出撃している雪風。
「わかるよ〜。最近は外に出るのも億劫だよね〜。」
そう言ったのは、秘書艦業務で基本室内にいる時津風。
「まったく…カイロ持ってきてあげるわよ…」
そう言ったのは、さっきから掃除をサボるタイミングを見計らっていた初風。さっと暖かい室内に行った。
「はやく持ってきて!島風よりもはやくね!」
そう言って急かす時津風。雪風と似たような服装ではあるけど、タイツを履いている分時津風の方がまだマシと思えるのだけれど。
「あ、そう言えば、」
ふと、思い立ったように時津風が言う。
「天津風って体温高そうだよね〜。」
「あ!わかります!」
時津風に続いて雪風が言う。そう言い、にじりよってくるふたり。
…嫌な予感がする。
「レッツ、湯たんぽ!」
次の瞬間、左右から冷えっ冷えの体の時津風と雪風の体にサンドされた。
「はふ〜、暖かいです〜。」
雪風。代わりに私の体温が奪われてるんだけど。一旦引き剥がそうとしたが、ダブルでサンドされているため身動きが取れない。どうしようかと思っていると、
「ん?天津風達何してるの?」
陽炎達がいた。どうやら遠征帰りらしい。
「ほう。ずいぶん仲が良いようですね。」
そういうのじゃない。ちょっと助けてほしい。
「ちょ…ちょっとこの二人引き剥がして…」
「あ!さてはおしくらまんじゅうしてるんやな?!」
…ん?
「寒かったから丁度いいですね。」
デジャヴュを感じたときにはもう、時すでに遅し。
次の瞬間、さっきの倍の威力でサンドされる衝撃が走った。
◇
カイロを求めて鎮守府を歩く。外に比べれば中は寒くはないが、廊下は別に暖かいわけではない。
…そういえばカイロどこにあるのか知らないわね、私。
まあ、明石さんのとこに行けばあるかな。そう思い、歩みを進める。
木枯らしが吹き、窓が少し揺れる。
しかし、この寒さの中で北方海域にいく出撃メンバーの皆は気の毒ね。雪風が出撃から帰ってきて、寒そうにしているのを見るたびに、下を穿けばいいのでは?、と思う。まあ、アイデンティティ的なものなのかしら。
考え事をしながら歩いていると注意は散漫になるもので、曲がり角から歩いてきている人に、出会い頭にぶつかりそうになった。それでも間一髪のところで避けられたのは、相手が妙高姉さんだったからだと思う。
妙高姉さんにカイロは何処にあるかを聞いて、妙高姉さんとは別れた。
ちなみに、なぜこんなにも説明がざっくりとしているのかというと、ぶつかりそうになった瞬間、トラウマが蘇り、恐怖であまり、どういった状況だったかを覚えていないからである。
カイロはやっぱり、明石さんのとこにあるらしい。
道中、暁型姉妹が手をつないで歩いていたり、北上さんが大井さんの背中と服の間に手を突っ込んでいたり、綾波が敷波のほっぺたを手で挟んでいたり、三隈さんが最上さんにくまりんこしていたりするのを見かけた。
皆、姉妹と仲がいいな…、と思いながら明石さんのところで、一応余分にカイロを貰った。
カイロを持って、掃除場所に戻ってくると、そこには雪風と時津風と、姉達が塊になっていた。よく見ると、真ん中に天津風の吹き流しが見えた。
…。
他のみんなはもう暖まってるっぽいし、カイロは自分で使おう。
どこか疎外感と肌寒さを覚える初風であった。