ヤクザがダンまちの世界にいるのは間違っているだろうか 作:リョー
「敵の親分はこん中か」
しっかりと手入れのされた黒いスーツは月の光りを反射するくらいの艶があり、グリースできっちりと分けられた髪の間から除く額には脂汗が滲んでいた。黒いベンツの中で煙草の火を揉み消し震える手で回転式拳銃の中に弾が有ることを確認して、銀縁の眼鏡越しにラブホテルの一室を睨んでいた。今夜俺は鉄砲玉になった。そのラブホテルの一室には敵対する組の親分がいる。焼酎を一口、瓶に直接口をつけて飲み込み、深呼吸をすると覚悟を決めて車のドアを開けた。外に出ると夜の冷えた風が頬を撫でた。俺は歩き出し、そしてラブホテルの入口の戸を開けた瞬間、銃声が響いた。
目の前には拳銃を持ったスーツを着た連中がいた。彼らの持つ拳銃からは白い煙がたなびいていて俺は自分の身体を見た。黒いスーツに穴が空き血が滲んできている。まじか。不思議と痛くは無かった。俺は胸から拳銃を抜いて目の前の奴等の頭目掛けてぶっぱなした。そしてゾンビのようにホテルの中を歩き出した。殺した奴の銃を取ってもう片手に持った。荒い呼吸のまま階段を登り、殺害対象がいる部屋の鍵の部分を拳銃で撃って壊した。扉を蹴って開けて中に押し入る。そして情事にはげむ敵の頭に拳銃の弾をぶちこんだ。やった、俺はやった。瀕死の身体のまま歓喜するが、そんな俺の頭を銃弾が貫いた。役目は果たした。それにこんな胴体を撃たれていちゃどのみち死ぬんだ。くそったれな人生だったな。
「こんにちはぁー」
真っ暗な空間に俺は寝ていた。硬い所で眠っていたからか腰がいたい。そんな俺の顔を端正だがどこか憎たらしい顔の男が覗き込んだ。状況の理解出来ない俺にそいつは気分はどうだなど質問を投げかけてきた。
「ここはどこだ?お前は誰だ?」
「私あなたの転生を担わせて頂いております第ウン百代閻魔大魔王と申しますぅー。そしてここはあの世でございますぅー」
「あ?」
「もしかしてあなた自分がお亡くなりになられたことをご存知ないですか?取り合えず自分の足元を確認してみるのがお早いかとー」
そういわれて俺は足元を見た。そこには足はなくイラストでよくみる幽霊のように尻尾みたいなものが一本あるだけだった。俺は自分の顔をぶん殴った。結構思い切りぶん殴った。それはもう痛かった。
「夢じゃねぇのかよ。で、俺はどうなるんだ」
「はい。実はですね貴方は本来死ぬべき人間では無かったのです」
そういうと閻魔は広辞苑の何倍も分厚い本を一つ取り出した。
「これは誰がいつ生まれていつ死ぬのかを記した台帳です。通常ここに示されている通りに人は生まれ死んでいきますが、今回どうしてか狂ってしまって、貴方は予定よりも何十年もはやく死んでしまったのです。いや死なせないことも出来ましたけど頭に二発、胴体に六発も銃弾食らっといて生き残ったってかなり不自然じゃなすかぁ」
まぁ確かにそんなものは化物だ。
「まぁしゃあねぇ」
「あれ?怒んないのですか?」
「生き残ったってどうせ懲役だ。それに起きちまったことはしょうがねぇ。で、俺はどうなる」
「これから貴方に新しい命を与えます。貴方はこことは違う世界に生まれ変わります。完全にランダムです。どこに行くかは今抽選してますのでもう少しお待ちくださぁい」
「そう、か」
新しい命を貰うことに不満は無かった。次はこんな生き方じゃなくて真っ当に生きれたら嬉しい。
「結果が出ましたぁ!貴方が此れから行くのは、、、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか世界です!」
「あぁ!?どこだそりゃ!?」
「ええ!?ご存知ないんですか!?」
聞いたことすらなかった。ろくな場所な雰囲気がしない。
「んだよ、そりゃ当たりか?」
「当たりです!大当たりですよぉ!」
「ったく。まぁもうならいいわ」
「転生するにさしあたって貴方の願いを4つほど聞き入れましょう!なんでも仰って下さい!」
俺は考えてみたが世界のことが分からないから何を選べばいいのか分からなかった。
「よう分からんからお前に任すわ。適当なの選んで付けてくれ」
「左様ですかぁー!」
閻魔はしばらく独り言を呟きながら黄ばんだ紙に何かを書いていた。
「出来ましたよぉ!」
「そうか」
「貴方は向こうの世界にこれから生まれ変わります。貴方は六歳の男の子として向こうに出現します。外見は変わります。ランダムです。前世の記憶は完全には消せませんのでうっすら残っている程度です。ここでの記憶は無くなります。以上でよろしいでしょうかぁー!」
「あぁ。ったく閻魔大魔王ってのはもうちょい威厳のあるもんなんじゃねぇのかね」
「うるさいですぅー、それじゃあいってらっしゃいませー!!」
「ああ、世話んなったな」